作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

後遺障害

後遺障害|「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」は後遺症?交通事故の後遺障害慰謝料はいくら?

歯の欠けは後遺障害になる?
この記事のポイント
  • 歯の後遺障害には「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」などがある
  • 慰謝料の金額は、影響を受けた歯の本数で異なる
  • 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能

口腔内で歯が折れたり、欠けたり…。
顔面を打ち付けるなど強い衝撃を受けると、交通事故の被害が歯に及ぶことがあります。
一度欠けた歯は自然と伸びて元に戻ったり、失ったところに生え変わることはありません。
歯の後遺障害について、適切な慰謝料の獲得を目指していきましょう。

  • 後遺症はどのようなものがある?
  • 歯の欠損、歯の欠け・折れは後遺障害になる?
  • 歯の欠損、歯の欠け・折れは後遺障害慰謝料はいくら?

藤井宏真医師

奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医

藤井 宏真医師

歯の喪失や欠損に対しては、補綴(ほてつ)、ブリッジやインプラントなど損傷の程度に応じた処置がとられます。

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歯の後遺障害の基礎知識|症状は?何科に行く?インプラント治療も損害賠償できる?

症状|歯の欠損、歯の折れ・欠け

は大切な役割をもっています。
例えば物をかむことがあります。
そして言葉を発することにも歯が関連しています。
ですので、交通事故で歯を失ったり、欠けや折れが発生すると、物をかんだり、言葉を話すことに不自由が発生します。

  • 物をかめない(かむのが難しい)
  • 物を飲み込めない(飲み込みづらい)
  • 言葉が発音できない(発音しづらい)

歯には多くの役割があります。

歯の欠損、歯の折れ・欠けは何科で治療を受けるべき?

歯科を受診しましょう。

さらに、口だけでなく顔面への影響がひどい場合は形成外科での処置が必要な場合もあります。

関連記事:顔の傷の後遺症認定

強い衝撃を顔面に受けているので、頭部への影響も考えられます。
もし何の異変も感じないとしても、総合病院や整形外科を受診して、記憶が鮮明なうちに事故状況をきちんと医師に話してください。

歯の欠損、歯の折れ・欠けの治療とは?放置でもいい?

歯の喪失や欠損には補綴(ほてつ)処置がとられます。
補綴とは、歯が折れたり欠けたりした部分に入れ歯をしたり、クラウンをかぶせたりして、歯の働きを補うことをいいます。

歯の折れや欠けは、放置して自然に治るということはありません。
本当に軽微な欠けであれば問題ないようですが、欠けたところが口の中の粘膜を傷つけたり、傷つくことで細菌感染などを引き起こし、他のトラブルを招いてしまいます。
そもそも「軽微な欠け」かどうかは、素人では判断がつかないものです。
ですから、歯科医師の指示をあおぐようにしましょう。

歯の治療で気を付けたいこと

インプラント治療に関しては、日本で開始されたころは保険適用外の治療法でした。

保険適用外ということは、治療費の全額を支払う必要があるということです。

関連記事:交通事故の治療費には健康保険が使える

以前と比べると、インプラント費用についても損害賠償として認められる傾向にあります。
しかし、必ず認められるとは限りません

また、詰め物についても注意が必要です。
虫歯治療などで、「白い詰め物だと保険が使えない」など聞いたことはありませんか。
白い方が元来の歯に近いので、見栄えは良いものになります。
しかし、損害賠償請求においては「見栄えだけ」を追求した治療は認められにくいです。

保険適用外の治療や素材には審美性だけでなく、「素材として丈夫」などの耐久性が高いものもあります。
一度、弁護士に相談してみることをオススメします。

歯の欠損、歯の折れ・欠けは後遺障害にあたる?

後遺症(後遺障害)

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される

歯の欠損、歯の欠け・歯の折れは後遺障害として認定される可能性があります。

歯の欠損、欠け・折れ

歯の完全な喪失

⇒交通事故の治療のために「抜歯」した場合も含みます。

著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)

それぞれがどのような定義であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。

【参考】言語・そしゃく機能に影響している場合

先ほども触れましたが、歯には「言葉を発音する」役割があります。
歯の多くを失ってしまったり、顎を含む口腔全体に被害がでると・・・

  • 物を噛んだり飲み込んだりする機能(そしゃく機能)
  • 言葉を発音する機能(言語機能)

これらに重大な影響が及ぶ可能性があります。
重い後遺障害として損害賠償を求めていくべきものです。

言語機能・そしゃく機能への後遺障害でお悩みの方、関心のある方は関連記事も併せてお読みください。

関連記事内で詳しく解説しています。

「咬めない、飲み込めない、言葉が出づらい…<後遺障害等級と慰謝料>の一覧」を参考にしてください。

歯の欠損、歯の折れ・欠けで慰謝料が増えるって本当?

歯の欠損、歯の折れ・欠け|後遺障害慰謝料と逸失利益の適正な増額を目指す

上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。

後遺障害の逸失利益

後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数

なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
逸失利益の計算は少し複雑です。簡単な情報入力ですぐに逸失利益がわかる「計算機」は次のページからご利用いただけます。

気を付けたいのは、労働能力の喪失です。

歯を失ったり、欠けたり折れたりすることと労働能力の喪失は結びつきづらいものです。

被害者自身で交渉をすると、

  • 労働能力の喪失有無で意見が対立して、被害者側の主張が受けいれてもらいにくい
  • 「基礎収入」を低く見積もられる

このように被害者側に不利な状況になりかねません。

増額交渉(弁護士あり)

交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼すれば、被害者の話をよく聞き、適正な慰謝料・逸失利益の獲得を目指します。

後遺障害等級の申請方法|歯の欠損、歯の折れ・欠けの場合

では、実際に歯の欠損、歯の折れ・欠けで後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。

②後遺障害診断書・交通事故前後の歯の状況、処置に関する資料の用意

症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。

歯の後遺障害診断書は、他の後遺障害診断書と書式が違います。持参前には十分確認しましょう。

後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
(1)事前認定
(2)被害者請求

事前認定
事前認定の流れ

被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出します。
後遺障害診断書は医師に作成を依頼するものです。
⇒被害者の手間が少ないというメリットがあります。

一方で、加害者側の任意保険会社が最終的にどんな資料を提出したか分からないというデメリットがあります。
仮に思っているような後遺障害等級の認定がされなかったり、最悪の場合は非該当(後遺障害等級なし)となった時に、結果に対する納得感を感じづらいかもしれません。

被害者請求
被害者請求の流れ

被害者が経過証明書などその他の資料も用意して自賠責保険に提出します。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を併せて提出したり、逆に認定に不利な状況があれば補足説明を添えるなどの工夫が可能です。

特に後遺症を示す医学的なデータ・検査結果後遺障害認定には必須なので、被害者請求での認定申請を推奨します。
被害者の方が治療に専念しやすいように、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる
後遺障害認定申請

被害者請求 + 弁護士依頼 = 最大限の効果が期待できる

③損害保険料率算出機構による書面審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。

審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。

重要なのは、「歯が〇本折れました」という報告をすることではありません。

  • 事故前後の口腔内の状況比較
  • 何本の歯にどんな処置を施したのか
  • 仕事にどんな影響が出ているか

など、できるだけ「丁寧に」「詳細に」記述していきましょう。

後遺障害認定をするのは、被害者の診察をしている歯科医師ではありません。第3者だということがポイントです。

後遺障害等級認定が・・・

  • 想定していた等級で認定されなかった
  • そもそも後遺障害認定されなかった(非該当とされた)

後遺障害認定は、交通事故の解決実績が豊富な弁護士にサポートできることがたくさんあります。一緒に適正な後遺障害認定と慰謝料の獲得を目指しましょう。

後遺障害認定についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。

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歯の後遺障害「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」を弁護士が解説

歯の後遺障害「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」の後遺障害等級は何級?

歯の後遺障害においては「本数」によって後遺障害等級が分かれます。
歯の後遺障害で認定される後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」

等級 内容
1014 14歯以上に歯科補綴を加えたもの
114 10歯以上に歯科補綴を加えたもの
123 7歯以上に歯科補綴を加えたもの
135 5歯以上に歯科補綴を加えたもの
142 3歯以上に歯科補綴を加えたもの

本数に数えるべき「歯」は、次のように定義づけされています。

  1. ① 歯の完全な喪失
  2. ② 著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)

著しい欠損とは歯冠部の体積の4分の3以上をいいます。

歯は

「歯冠部」と「歯根部」

に分かれています。

歯冠部とは、歯ぐきより上の「歯が見えているところ」をさします。

まとめ

歯の見えているところの体積が4分の3以上失われたら、著しい欠損として「本数」に数えます。

POINT1

本数には「乳歯」「親知らず」は含みませんので、注意が必要です。

POINT2
  • 交通事故の処置として、残った歯冠部を切除することもあります。切除したことで②の状態になったものへの補綴(ほてつ)も、②と同様にみなされます。
  • 失われた歯のために「ブリッジ」をするとします。その際、該当する歯の両側を削る必要があります。削られてしまった歯が②の状態になったら、事故で失った歯そのものに加えて、両側の2本も交通事故により失った歯といえます。

歯の後遺障害「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」の後遺障害慰謝料の相場は?

慰謝料の金額の算定方法は、加害者側が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
歯の後遺障害に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」

等級 自賠責基準 弁護士基準
1014 187万円 550万円
114 135万円 420万円
123 93万円 290万円
135 57万円 180万円
142 32万円 110万円

等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍~3倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。

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歯の後遺障害「歯の欠損」「歯の折れ・欠け」に関するお悩みは弁護士にご相談ください

LINE相談

歯が失われることは後遺障害として認められます。
にも関わらず、加害者側の保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。

保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
歯を失ったり、欠けたり、折れたり…慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
まずはお気軽にLINE・電話での無料相談をご利用ください。


弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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交通事故で歯が折れたときのQ&A

交通事故で歯が折れたら後遺障害に認定される?

歯の折れ・欠けで後遺障害認定されるのは①歯の完全な喪失(治療のための抜歯含む)②著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)の2点です。著しい欠損とは、歯冠部の体積の4分の3以上をいいます。歯冠部は歯ぐきより上、大まかにいうと「歯が見えているところ」になります。そしてこのような歯が3本以上あると、何らかの後遺障害等級に認定される可能性があります。 言葉を発音する機能にも影響する?

インプラントも治療費に認められる?

インプラントに関しては、必ず認められるとは限りません。また、詰め物についてもその見栄えだけを追求した素材などは「治療」よりも「審美」に近いとみなされる場合があるからです。損害賠償請求で認められなければ、ご自身で負担することにもなりかねません。一度弁護士の見解をたずねてみるのも有効でしょう。 歯の治療で気を付けたいこと

歯が折れたことの後遺障害認定を受けるには?

後遺障害認定を受けるには、後遺障害認定の申請が必要です。申請を開始するタイミングは、治療が終わってからになります。申請方法は2つから選ぶことができ、どちらにもメリットとデメリットがあります。申請後、一定の審査機関による審査の後に後遺障害等級の通知を受けることになります。認定されない場合は「非該当」とされます。 後遺障害認定の流れをチェック

歯が折れたら後遺障害等級は何級ですか?

①歯の完全な喪失②著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)に当てはまる「歯の本数」に応じて等級は決められることになります。後遺障害14級2号:3歯以上、後遺障害13級5号:5歯以上、後遺障害12級3号:7歯以上、後遺障害11級4号:10歯以上、後遺障害10級14号:14歯以上です。 歯の本数の数え方にも要注意

歯が折れたら後遺障害慰謝料はいくらもらえる?

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに一定の目安があります。さらに、慰謝料を算定する基準によってもちがいます。たとえば、後遺障害10級自賠責保険の基準:187万円、弁護士基準:550万円後遺障害13級5号自賠責保険の基準:57万円、弁護士基準:180万円です。他の後遺障害等級も、弁護士基準で算定すると最も相場が高くなります。ちなみに、弁護士基準での交渉には、弁護士の存在が欠かせません。 後遺障害等級ごとの慰謝料を知りたい

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