作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

後遺障害

歯の後遺障害とは?後遺障害等級認定・慰謝料増額のポイントを弁護士が解説

歯や口腔の後遺障害・慰謝料増額

交通事故でを完全に失った…、大部分が欠けてしまった…
また、重度になれば言葉が出づらい…、噛めない…
こういう症状もありえます。
これらは後遺障害として認められる可能性があります。

  • どんな症状が残ると後遺障害認定される?
  • 可能性のある後遺障害等級は?
  • 後遺障害慰謝料はどれくらいもらえる?

歯の後遺障害認定は、ざっくりいうと歯の本数がポイントになります。
何本の歯に対して、どれくらいの影響が出たら「後遺障害」となるのか。
また、歯だけでなく口腔機能全体にも目を向けておくことが重要です。
適切な後遺障害等級認定慰謝料の獲得を目指しましょう。


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歯の後遺障害|どんな症状?対処や治療法は?

後遺症(後遺障害)はどんなものがある?

歯の後遺障害は「歯そのもの」への影響と、「口腔機能」への影響があります。「後遺障害認定」における歯そのものへの影響は、次のような2つの定義があります。

  1. ① 歯の完全な喪失
  2. 著しく欠損した歯に対する補綴(ほてつ)
補足
  1. ① 交通事故の治療上で必要となり抜歯された本数も含みます。
  2. ② 「著しい」とは歯冠部の体積の4分の3以上をいいます。

歯は「歯冠部」と「歯根部」に分かれており、歯冠部とは、歯ぐきより上の歯が露出しているところをさします。

また、交通事故の怪我への処置の一環として残った歯冠部を切除することもあります。切除したことで②の状態になったものへの補綴(ほてつ)も②と同様にみなされます。

たとえば、失われた歯のために「ブリッジ」が必要になったとします。その際には、該当する歯の両側を削る必要があります。そうして削られてしまった歯が②の状態になったら、事故で失った歯そのものに加えて、両側の2本も交通事故により失った歯といえます。

歯がもたらす口腔機能への影響

次に口腔機能への影響について考えてみましょう。

歯を失ったり、欠けたりすることは口腔内全体へ影響を及ぼすこともあります。

  • 多くの歯を失ってしまった
  • 交通事故の怪我の程度が激しく、顎全体に傷害がおよんだ

たとえば、こういうシーンが考えられるでしょう。

次のような機能に影響を与える可能性があります。

  • 物を噛んだり飲み込んだりする機能(そしゃく機能)
  • 言葉を発音する機能(言語機能)

歯の配列、上の歯と下の歯の咬み合わせ、あごの開き具合が「そしゃく機能」や「言語機能」に関連しています。
交通事故で歯に影響があるということは、口の周りに外部からの衝撃が加わったものと考えられます。
「歯」だけでなく、口腔機能も注視する必要があります。

治療・対処法は?リハビリの必要も?

歯の喪失・欠けの治療

歯を失ったり、欠けたりした場合の対処法からみていきます。

歯の喪失・欠損

「補綴(ほてつ)」が主な対処法になります。

「補綴(ほてつ)」というのは耳慣れない言葉ですので、まず意味を確認しておきましょう。
公益社団法人日本補綴歯科学会によると、「補綴(ほてつ)」は次のように定義されています。

「補綴(ほてつ)」は「ほてつ」と読みます。歯科治療における補綴とは,歯が欠けたり、なくなった場合にクラウンや入れ歯などの人工物で補うことをいいます。

引用元:http://hotetsu.com/p2.html

具体的には

  • 入れ歯をつける
  • 合金やレジンでつめる
  • インプラント治療を行う

などの選択肢が考えられます。

インプラント費用について

以前はインプラント治療は健康保険の適用外であり、費用は高額なものと判断されていました。
ですので、義歯などの他の選択肢がとれる場合、インプラント治療の費用が認められないこともありました。

近年では、医師がインプラント治療が最善であると判断した場合はインプラント治療費が認められる事例も珍しくありません。

また、インプラント治療は定期的なメンテナンスが必要です。
インプラント治療費とは別に、将来のメンテナンス費用が認められた判例もあります。

<判例>インプラント関連費用の認定
◆インプラント治療費:1063804
◆インプラント治療のための矯正費:987,000
◆インプラントのメンテナンス費用622055
✓道路を歩行中に前方から直進してきた自動車に接触
✓顔面多発裂傷、顔面骨多発骨折、歯牙(3歯)欠損の障害
インプラント治療費・インプラント治療のための矯正費・将来のインプラントメンテナンス費を認めた。
なお、将来の矯正メンテナンス費用については認めなかった。

仙台地判平24.2.28

紹介した事例では、

  • インプラント治療のための矯正費用
  • インプラント治療費
  • インプラントの将来メンテナンス費

まで認められた事例となります。

しかし、どんな治療でも認められるというわけではありません。
たとえば審美性を重視した高額治療などは、損害賠償として適切ではないと判断される可能性が高いです。
あくまで交通事故の損害賠償になるので、事故にあう前よりも優れた状態にすることは認められにくいです。

口腔機能低下の治療

次に口腔機能の喪失・低下への対処法をみていきましょう。

口腔機能の喪失・低下

顎の機能を助けるためには「顎顔面補綴装置」という機能改善を目的とした特殊な入れ歯を装着したリハビリの必要性もあるそうです。専門的な訓練をしながら、機能改善を目指していくことになります。

これらのリハビリはどの歯科医院でも行っているというわけではないそうです。主治医とよく話し合い、進めましょう。

通院先を変更するなら?

通院先の変更は可能です。
ただし、変更希望を加害者側の保険会社には伝える必要があります。治療方針や治療内容、通院の利便性など合理的な理由を伝えることがポイントになります

加害者側の保険会社に何も伝えずに転院することや、転院を繰り返すことは避けるようにしましょう。治療費の支払いを拒否されるなど、不信感につながってしまいます。

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歯の本数・口腔機能により後遺障害等級と慰謝料が決まる

歯の本数別<後遺障害等級と慰謝料>の一覧

交通事故示談金の内訳

被害者が受けとるお金の内訳はこのようになっています。

「逸失利益の意味を簡単に知りたい」「入通院慰謝料の計算方法を知りたい」などの疑問は関連記事で詳細を解説しています。

ここからは「後遺障害慰謝料」について確認します。
後遺障害慰謝料は「後遺障害」と認定されたら支払われる慰謝料です。
後遺障害認定では、歯科補綴(ほてつ)を行った歯の本数がポイントになります。歯の本数別の「後遺障害等級」と「後遺障害慰謝料」をみていきましょう。

歯科補綴を加えた本数と後遺障害等級と慰謝料
14歯以上
1014 550万円
10歯以上
114 420万円
7歯以上
123 290万円
5歯以上
135 180万円
3歯以上
142 110万円

表内の慰謝料は「後遺障害慰謝料」というもので、後遺障害認定されたら支払われます。
実際の治療費、手術費用などの損害であったり、治療という苦痛への慰謝料(入通院慰謝料)は、別に支払われます。
ですので、歯の本数が3本に満たない場合に何も支払われないわけではありません。

ただ、表の要件に当てはまっていない場合に「後遺障害」認定を受けることは難しくなります。
つまり、2歯未満の場合はこの金額を受けとることは難しいのです。

後遺障害に認定されない「歯」がある

歯の喪失や欠損が発生しても後遺障害に認定されない歯があります。
それは親しらず乳歯です。

ポイント

親しらず・乳歯は後遺障害の認定対象にはならない

後遺障害認定のポイントの「本数」には含みませんので、注意が必要です。

咬めない、飲み込めない、言葉が出づらい…<後遺障害等級と慰謝料>の一覧

失った歯の本数や口腔内の状態次第で、そしゃく機能言語機能に障害が出る可能性についても解説してきました。

このような場合に認められる可能性がある後遺障害等級や慰謝料をみてみましょう。

口腔の障害|後遺障害の等級・慰謝料
12号|2,800万円
両方が該当
・流動食しか食べられない
4種の語音のうち3種以上が発音不能
32号|1,990万円
片方が該当
・流動食しか食べられない
4種の語音のうち3種以上が発音不能
42号|1,670万円
両方が該当
・粥や粥に準じたもの以外食べられない
4種の語音のうち2種が発音できず、綴音機能に障害があるため言語だけで意思疎通ができない
62号|1,180万円
片方が該当
・粥や粥に準じたもの以外食べられない
4種の語音のうち2種が発音できず、綴音機能に障害があるため言語だけで意思疎通ができない
96号|690万円
両方が該当
・固形食物の中に咀嚼できない又は十分に咀嚼できないものがある*
4種の語音のうち1種の発音ができない
103号|550万円
片方が該当
・固形食物の中に咀嚼できない又は十分に咀嚼できないものがある*
4種の語音のうち1種の発音ができない

*医師の認定が必要

表に示した言葉について説明していきます。

4種の語音

語音(ごおん)は母音と子音に分けられます。
母音は声帯の振動、子音は舌や歯、唇や声帯のすきまを使って発音します。
語音は次の4種類に分けることができます。

(1)口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)
(2)歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、しゅ、し、ざ行、じゅ)
(3)口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
(4)咽頭音(は行)

綴音

綴音(ていおん・てつおん)は2つ以上の単音が互いに結合した音のことです。
例えば、「紙」は「k」「a」「m」「i」の4つの単音から構成されています。
コミュニケーション・会話をするうえでは欠かせないもので、綴音機能に障害があると言語だけで意思疎通をすることが困難になります。

後遺障害等級の併合・加重とは?

後遺障害は一つだけで認定される場合と、複数の後遺障害が認定される場合があります。
歯の後遺障害でで知っておきたいのは加重併合という後遺障害等級の考え方です。

加重

交通事故にあう前からすでに身体障害があった人が、交通事故により同一部位に後遺障害が残ったために身体障害の程度を加重したもの

歯の後遺障害に置き換えて考えてみましょう。

例えば、もともと3本の歯を失っていた人(あるいは歯冠の4分の3以上の体積が欠けていた人)が、交通事故でさらに4本の歯を失ったとします。
実際の交通事故で失った本数は4本ですが、合計7本の歯に後遺障害認定に当てはまる歯がある状態です。
この際、後遺障害は「7歯以上」の加重第12級となります。

事故前の3本の喪失(あるいは欠け)の状態は既存障害第14級に相当するとされ、この分が控除されます。
⇒後遺障害慰謝料は290万円(12級認定)ー110万円(既存障害14級)=180万円となるのです。

併合

同一の交通事故で異なる後遺障害が残った場合、より重い方の後遺障害等級を採用する

歯の後遺障害と、嚥下機能の後遺障害の両方が起こっている場合、より重い後遺障害の等級で認定を受けることになるでしょう。

「加重」や「併合」の可能性がある場合は、一度弁護士にご相談下さい。一人ひとりのお話をしっかり伺い、考えられる後遺障害等級をお伝えします。

また、後遺障害認定を目指す方には知っておいてほしいポイントがあります。
それは、後遺障害認定を申請する被害者請求という方法です。
被害者自身で申請資料を集めたりと手間はかかりますが、より適正な後遺障害認定が見込める方法です。
次の関連記事でご確認いただくか、弁護士への問い合わせをおすすめします。

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後遺障害認定・慰謝料増額は弁護士にご相談下さい

弁護士に依頼する最大のメリット

慰謝料金額相場の3基準比較

このイラストは慰謝料の相場を表しています。
「自賠責保険の基準」、「任意保険の基準」、そして「弁護士基準」です。
このイラストを見て弁護士基準での獲得を目指したいと思いませんか?

メリット

弁護士に依頼すると「弁護士基準」で示談交渉ができて、受けとる金額が増える

「弁護士基準」は弁護士・裁判所が使う適正な基準です。
一方で、「自賠責保険の基準」や「任意保険の基準」は、加害者側の保険会社が使う基準です。加害者側から提案される金額は低いのです。

「でも弁護士費用が心配…」

こう思った方もいるでしょう。

  • 弁護士費用特約
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これらがキーワードです。知らずに損をしてはいけません。

弁護士費用特約は被害者加入の任意保険に特約として付いている場合があります。家族の誰かが加入していれば使えますので、ぜひ確認してください。実質負担0円で弁護士に依頼できますし、特約を使ったからといって保険の等級に悪影響が出ることはないでしょう。(特約内容・範囲は必ずご確認ください)

また交通事故の被害者に向けて無料相談を行っている法律事務所はたくさんあります。
時間制限などの条件は事務所ごとに異なりますが、一定の範囲内で無料で法律相談ができます。

増額交渉(弁護士あり)

弁護士の存在は、加害者側・加害者側の保険会社に対して「裁判になる可能性」を示すことができます。
というのも、示談がまとまらなければ、いずれにせよ裁判で弁護士基準(裁判所の基準)となります。
「そうなる前に事前に弁護士基準で支払おう…」というのが加害者側の心理です。

弁護士費用に関する不安の次に「実際の弁護士事務所選び」がポイントです。
弁護士事務所はたくさんあり、相談先を探すだけでも大変なことです。
そこで、「交通事故に強い弁護士」の観点で事務所選びを始めてはいかがでしょうか。
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まとめ

後遺障害はこれからの人生に大きな影響を残してしまいます。治療中や示談前に、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。「この金額は正しいのかな?」「相手方にこんなことを言われちゃったけど…」、今は「些細な」質問・疑問だと思っていることが、より良い解決へのカギかもしれません。アトム法律事務所は相談窓口を多数設けています。安心してお問い合わせください。

弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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