作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
外傷性散瞳の後遺障害認定基準は?慰謝料を3倍に増額する方法がある
この記事のポイント
- 外傷性散瞳の後遺障害には「強いまぶしさを感じる」「視力が下がった」「視界がぼやける」などがある
- 慰謝料の金額は、就労への影響や、視力低下の程度で異なる
- 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能
外傷性散瞳(がいしょうせいさんどう)は、瞳にあらわれる症状のことです。
目や目の周辺に外傷を受けることで、瞳が拡大されたままの状態となってしまっています。
瞳が拡大されたままの状態を散瞳といいます。
交通事故の結果、目に後遺症が残ってしまうと、元の生活に戻れる?仕事に支障は?という様々な不安がでてきます。
まぶしさを強く感じたり、視力が低下したり、視界がぼやけたり…こういった症状により受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
- 手術は必要?
- 後遺症はどのようなものがある?
- 強いまぶしさ、視力低下は後遺障害になる?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
鈍的な打撲などにより、瞳孔が過度に拡大されたままの状態になることがあります。瞳孔括約筋になんらかの障害を負ったことが主な原因とされます。外傷性散瞳では「まぶしさ」や「ぼやけ」といった症状がみられます。
外傷性散瞳とは|症状と後遺障害認定の申請方法
外傷性散瞳の後遺障害|3つの症状に注目
外傷性散瞳には以下のような症状があります。
- まぶしさを強く感じる
- 視力が下がった
- 視界がぼやけている
交通事故直後は出血していることが多く、外傷性散瞳の状態であるかどうかわからない場合も多いとされています。
ペンライトで両方の目について瞳孔の大きさ、動きなどを観察します。
外傷を受けたほうの目は、反対の目と比べて瞳孔が大きいままの散瞳状態にあると分かります。
外傷性散瞳は後遺障害認定される?
後遺症(後遺障害)
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
外傷性散瞳を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
外傷性散瞳の後遺症
- 強いまぶしさを感じる
- 視界がぼやける
- 視力が下がる
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
外傷性散瞳の後遺障害慰謝料が増えるって本当?
外傷性散瞳の後遺症により増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益
後遺障害等級に認定されると、加害者側から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つに後遺障害慰謝料があります。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害の逸失利益
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
複雑な計算式をつかわず、「計算機」でもすぐ分かります。下記の関連記事より「計算機」を試してみてください。
外傷性散瞳での逸失利益については、労働能力喪失率がポイントとなります。
「まぶしい」とか「視力が下がった」というのは、あくまで被害者本人にしか分からない感覚でしょう。
その感覚を第3者に理解してもらうには工夫が必要です。
交通事故の解決実績が豊富な弁護士であれば、被害者本人の自覚症状を「検査」で他覚的に示すことなど、どんな風に主張すればいいかを一緒に考えます。
外傷性散瞳|後遺障害等級の申請方法
では、実際に外傷性散瞳で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
①症状が固定される
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6ヶ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
②後遺障害診断書・検査結果などの提出
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
- 被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する事前認定
- 被害者が経過証明書などその他の資料も用意して自賠責保険に提出する被害者請求
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
比較
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
③損害保険料率算出機構による書面審査
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。
後述しますが、外傷性散瞳状態であることを示すには対光反応が有効です。
また、視力が下がっているのであれば、視力検査の結果を交通事故前後で比較することで事故との因果関係が示せるでしょう。
重要なのは書面で分かることです。
ただ「まぶしいです」と書くのではなく、実際にまぶしい状態にある医学的な証拠を併せて提出することが基本です。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
外傷性散瞳は何科で治療を受けるべき?
眼科を受診しましょう。
目に衝撃を受けても、被害者自身には外傷性散瞳かどうかは判断できないかと思います。
目に外傷を受けると、外傷性散瞳以外にも重い怪我の可能性があります。
ですので、まず早めに眼科を受診してください。
外傷性散瞳の治療法|自然に治る?コンタクトをつける?
外傷性散瞳は瞳孔括約筋に何らかの障害を負ったことで起こっていますので、瞳孔括約筋の異常を回復する必要があります。
瞳孔括約筋の損傷は時間経過での回復が報告されていますが、現状は根本的な治療法などはないと言われています。
コンタクト着用に関して
通常は、暗いところから明るいところへ行くと瞳孔は小さくなります。
目に入る光の量を調節する機能を持っている瞳孔が常に開いた状態となるので、明るいところでも多くの光が目に入ってしまいます。
そして、まぶしさを強く感じることになります。
このまぶしさを軽減するために、「虹彩付きのコンタクトレンズ」をつけることも有効のようです。
しかし、散瞳状態の程度や個人差はあると思いますので、医師の指示をあおぐようにしましょう。
コンタクトレンズの装着は事後承諾ではなく、必ず相談してから行ってください。
【参考】合併症の危険性
外傷性散瞳を引き起こすほどの強い衝撃が目の周りに加わると、
- 前房出血
- 眼窩内出血
- 眼底出血
- 高眼圧
などを併発しているケースも考えられます。
見た目だけで判断をして「異常なし」のために病院へ行かない、という選択は避けてください。
もし後から何かの異常に気付いて交通事故の損害賠償をする時、事故発生日から病院の受診まで日があいてしまうと交通事故との因果関係について、加害者側から疑念を抱かれてしまいます。
最悪の場合、治療費・通院費などの支払いを加害者側が拒否するという事態になりかねません。
ご自身の身体のためにも、まずは病院へ行きましょう。
外傷性散瞳の後遺障害①まぶしさ②ぼやけ
外傷性散瞳の後遺障害等級|まぶしさ・ぼやけ
外傷性散瞳によるまぶしさ・視界のぼやけについては次のような後遺障害等級に相当すると考えられています。
第11級相当 |
両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
第14級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
羞明とは、簡単に言うと「強いまぶしさ」によって不快感や眼の痛みが引き起こされることです。
対光反射
電子瞳孔計で瞳に直接光を当てて、2つの「対光反射」をチェックします。
- ① 直接反射:眼に直接光を当て、光が当てられた方の眼の反応をみる
- ② 間接反射:眼に直接光を当て、光が当てられていない方の眼の反応をみる
まぶしさを感じると、通常は瞳孔が縮み、目に入る光の量を少なく調節します。
つまり対光反射がみられない・鈍いと散瞳状態にあるといえます。
反射は自分で意識をした運動ではありません。
嘘をついたり、大げさにふるまったりができませんので客観的で信頼性の高い検査結果とされています。
外傷性散瞳の後遺障害慰謝料|まぶしさ・ぼやけ
慰謝料の金額の算定方法は、加害者側が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
外傷性散瞳によるまぶしさ・ぼやけに対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
後遺障害慰謝料
外傷性散瞳によるまぶしさ・ぼやけ
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
11級相当 | 135万円 | 420万円 |
12級相当 | 93万円 | 290万円 |
14級相当 | 32万円 | 110万円 |
11級では、弁護士が交渉する基準は「420万円」です。しかし、加害者側から提案される金額の基準は135万円と、半分以下です。
加害者側から提案される金額を受け入れる(示談成立)する前に、一度弁護士に相談すると良いでしょう。
弁護士に依頼すると弁護士費用が心配というお声を耳にしますが、弁護士費用を支払ってもなお手元に残る金額は増額することがほとんどです。
もし料金でご不安なところがあれば、アトム法律事務所の無料相談を活用してみてください。
外傷性散瞳の後遺障害③視力低下
外傷性散瞳の後遺障害等級|視力低下
視力低下も後遺障害として認められます。
認定されうる後遺障害等級は次の通りです。
後遺障害等級
外傷性散瞳による視力低下
両目の視力低下 | 等級 |
0.02以下 | 第2級2号 |
0.06以下 | 第4級1号 |
0.1以下 | 第6級1号 |
0.6以下 | 第9級1号 |
片目の視力低下 | 等級 |
0.02以下 | 第8級1号 |
0.06以下 | 第9級2号 |
0.1以下 | 第10級1号 |
0.6以下 | 第13級1号 |
両目か片目かということ、視力の低下具合が等級の分かれ目となります。
▼失明を伴う場合の関連記事「交通事故による失明」
外傷性散瞳の後遺障害慰謝料|視力低下
後遺障害慰謝料
視力低下の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
第2級2号 | 958万円 | 2370万円 |
第4級1号 | 712万円 | 1670万円 |
第6級1号 | 498万円 | 1180万円 |
第8級1号 | 324万円 | 830万円 |
第9級2号 | 245万円 | 690万円 |
第10級1号 | 187万円 | 550万円 |
第13級1号 | 57万円 | 180万円 |
視力低下の程度に応じて後遺障害等級が分かれています。
どの等級も弁護士基準は自賠責基準の金額を2倍以上上回っていることが分かります。
特に第10級1号は3倍近く変わります。
外傷性散瞳の後遺症に関するお悩みは弁護士にご相談ください
外傷性散瞳は日常生活に大きな影響を及ぼします。たとえば「サングラス」をつけることでまぶしさが軽減できても、サングラスをしながらできる仕事はあまりないかもしれません。周囲の協力・理解があれば別ですが、すべての仕事において認められるわけではないでしょう。
それにも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
外傷性散瞳による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。