作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
耳鳴り|後遺障害等級は何級?慰謝料、逸失利益など交通事故の示談金を解説
耳鳴りの後遺障害が残ってしまい、どこからも音が聞こえないのに、耳や頭蓋骨内に音を感じるようになった・・・。
昼間は大丈夫でも、寝ようと布団に入ると「じんじん」と耳鳴りがして、なかなか寝付けないなんてこともあるでしょう。
- 耳鳴りの後遺障害の原因、治療法はどんなもの?
- 耳鳴りの後遺障害認定を受けると慰謝料が増えるって本当?
- 耳鳴りの後遺障害の慰謝料はいくらもらえる?
- 耳鳴りの後遺障害でも逸失利益の補償はある?
今回は、このような「耳鳴りの後遺障害」に関する疑問を解説します。
目次
耳鳴りの後遺障害とは?原因、治療法、診断基準は?
耳鳴りの原因は?ムチウチが原因に…?
耳鳴りの原因は、聴覚伝達路やその周辺に何らかの異常が生じたことと考えられています。
ですが、医学的には十分には解明されていません。
交通事故により、頭部や頚部に強い衝撃が加えれることによって、耳鳴りが起きるケースもあります。
さらに、原因をさかのぼって特定してみると、次のような場合に耳鳴が生じる可能性があります。
外傷性鼓膜穿孔(がいしょうせいこまくせんこう)
- 鼓膜が破れてしまうこと。
- 激しい痛み、難聴、出血を伴うことが多い。
軽度外傷性脳損傷(MTBI)
30分以内の意識消失、24時間未満の健忘症など「軽度」の意識障害後に生じる様々な症状のこと。
次のような症状をともなう。
- 感覚障害(味覚・嗅覚・かすみ目)
- 高次脳機能障害(注意力散漫、記憶できない、言葉がうまく話せない、理解できない等)
- 身体障害(平衡感覚障害、嚥下障害)
- 自律神経症状(吐き気、目眩、頭痛、寝不足)
- 精神・行動変化(いらいら、うつ、依存的)
むちうち
- 頸椎捻挫、外傷性頚部症候群とも呼ばれる。
- 突発的に頸椎に強い力が加わり、首が前後に強く振れることで発症する。
- 首の痛み、手のしびれ、ふらつき、吐き気、めまい等を伴うことが多い。
耳鳴りの治療法は?
耳鳴りの問診で聞かれることは?
問診では、次のような点について聞かれます。
問診の内容
- 症状は急に始まったか、徐々に感じるようになったか
- 症状はずっと続いているか、良くなったり悪くなったりするか
- 耳鳴りはどんな音か(高い/低い、拍動する、電子音のように一定しているなど)
- 以前に耳の病気や難聴を指摘されたことはあるか
- 長期間騒音のある場所にいるか
- ほかの症状はあるか
耳鳴りでは何科を受診すべき?
耳鳴りについては、まずは耳鼻咽喉科の受診を考えましょう。
もっとも、次のような症状がある場合は、脳の異常が疑われます。
- 手足の動きが悪い
- 顔が左右非対称になる
- ろれつが回らない
などの症状がある場合は、脳神経外科や脳神経外科の受診も考えましょう。
また、精神面でストレスをかかえて耳鳴りがする場合もあるようです。
身体的な異常がない場合、心療内科の受診も考えてみましょう。
耳鳴りの治療方法は?薬物療法や手術が必要?
耳鳴りの根本的な原因が分かる場合には、その治療がおこなわれます。
耳鳴りの治療法は?
外傷性鼓膜穿孔
自然治癒のほか、鼓膜にあいた穴をふさぐ手術
軽度外傷性脳損傷
点滴、開頭手術など
むちうち・頸椎捻挫
ネックカラーによる固定、リハビリなど
原因がはっきり分からない場合は、決定的な治療法がないといわれています。
一般的には、薬物療法で、精神安定剤、ビタミン剤、血管拡張剤、代謝改善剤など耳鳴りを止めるための薬が処方されます。
耳鳴りの後遺障害等級は何級になるのか
後遺障害等級の認定とは?
後遺障害等級の認定とは、後遺障害の重さを認定してもらう手続きです。
後遺障害の重さは、1級から14級にわかれており、1級がもっとも重い等級になります。
入通院治療が終了し、症状固定をむかえたら、後遺障害診断書などの必要書類を準備して、損害保険料率算出機構に申請します。
後遺障害認定の申請手続は、被害者請求と事前認定の2通りです。
被害者請求とは、被害者みずからが申請する手続きです。
事前認定とは、被害者が保険会社を通じて申請する手続きです。
被害者請求の場合、より柔軟に認定に資する書類を提出できるので、認定を受ける者にとって有利といえます。
被害者請求のデメリットとして、資料の準備など手間がかかりますが、弁護士などに助言を求めながら進めていきましょう。
被害者請求 | 事前認定 | |
---|---|---|
手続の手間 | かかる | かからない |
有利な医証 の提出 |
できる | できない |
不利な事情 の補足 |
できる | できない |
耳鳴りの後遺障害等級は?
難聴を伴う耳鳴りが「後遺障害」になる?
耳鳴りが「後遺障害認定」されるためには、その耳鳴りが必ず30dB以上の難聴をともなうものでなければなりません。
認定される可能性のある「等級」は何級?
そして、耳鳴りの後遺障害等級は、耳鳴りの症状に応じて、12級相当、14級相当が認定されることになります。
後遺障害認定のポイントとなるのは、
- 「著しい耳鳴り」なのか、単なる「耳鳴り」か
- 検査によって医学的に証明できるのか、合理的に説明できるにすぎないのか
といった点です。
12級相当:耳鳴りに係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの |
---|
①30dB 以上の難聴を伴うこと ②検査により、耳鳴りが存在すると医学的に評価できること ※検査とは、ピッチ・マッチ検査及びラウドネス・バランス検査などをさす。 ※「ピッチ・マッチ検査」とは、耳鳴りしている音の高さを図る検査。 ※「ラウドネス・バランス検査」とは、耳鳴りの大きさを測る検査。 ※昼間は外部の音によって耳鳴が遮蔽(しゃへい)されるため自覚症状がなく、夜間のみ耳鳴の自覚症状を有する場合には、単なる「耳鳴」として扱われる。 |
14級相当:難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に説明できるもの |
---|
①30dB 以上の難聴を伴うこと ②耳鳴の自覚症状があること ③耳鳴りのあることが外傷等から合理的に説明できること |
※後遺障害等級表には、外傷性散瞳がそのまま当てはまる障害がないため、表に掲げる障害に準じて等級が決められる。
難聴の30dBはどのくらいの大きさの音?
ちなみに、音の大きさが25dB以上40dB未満の軽度難聴については、小さな音や騒音がある中での会話の聞き間違いや、聞き取りにくさを感じるレベルといわれています。
音の大きさ | 具体例 | 難聴のレベル |
---|---|---|
20dB | 木のそよぎ | 《正常~軽度》 ささやき声、 図書館の声が 聞こえない |
40dB | 小雨の音 | 《軽度~中等度》 日常会話が 聞きづらい |
60dB | 日常会話 | 《中等度》 日常会話が 聞きづらい |
80dB | ピアノの音 | 《高度》 日常の会話が 聞こえない |
110dB | クラクション | 《重度》 耳元の大声が 聞こえない |
120dB | ジェット機 の通過音 |
難聴の程度については、オージオメーター検査を受けることになります。
後遺障害認定の申請には、必ず「オージオグラム」を後遺障害診断書に添付しなければなりません。
オージオメーター
オージオメーター
- ヘッドフォンをあてて機械から出る音を聞いて、「ピー」という音が鳴ったらボタンを押す検査。
- 音の高さごとに、どれぐらいの強さの音なら聞こえるのかを調べる。
オージオグラム
オージオメーターを使用した聴力検査の結果を記した書面のこと。
オージオメーター検査は、2回目と3回目の測定値の平均で認定されます。
2回目と3回目の測定値に10dB以上の差が認められる場合は、さらに聴力検査をおこなって、2回目以降の検査で、その差がもっとも小さいもの(10dB未満)の平均値によって認定されることになります。
耳鳴りの後遺障害の示談金はいくら?
耳鳴りの示談金の内訳は?
治療中の損害について
まず、耳鳴りの治療中の損害として、治療費、休業損害、入通院慰謝料などの賠償金がもらえます。
治療費 |
---|
交通事故による怪我の治療にかかった費用。 必要かつ相当な範囲内で実費が補償される。 |
休業損害 |
治療中に仕事を休んだために減少した収入に対する補償。 |
入通院慰謝料(傷害慰謝料) |
入通院を余儀なくされた精神的苦痛に対する慰謝料。 入通院の治療期間に応じて慰謝料金額が算定される。 |
後遺症に関する損害について
次に、耳鳴りの治療終了後の損害として、後遺障害に関する逸失利益、慰謝料などの賠償金がもらえます。
これは、いわゆる「後遺症」についての損害賠償金です。
これらの賠償金については、その後遺症について後遺障害等級が認定された場合にのみ受け取ることができます。
後遺障害逸失利益 |
---|
後遺障害によって稼ぐことができなくなった将来の収入に対する補償。 |
後遺障害慰謝料 |
後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料。 |
その他
そのほか、物損があれば修理費を賠償してもらえます。
被害者の方が亡くなられた場合には、死亡に関する逸失利益、慰謝料などの賠償金がもらえます。
耳鳴りの慰謝料の相場は?等級で決まる?
後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級ごとに相場があります。⇊
ここでは、弁護士基準と自賠責基準の相場を整理しました。
等級 | 弁護士基準 | 自賠責基準 |
---|---|---|
12級 | 290 | 93 |
14級 | 110 | 32 |
※単位:万円
弁護士基準、自賠責基準とは?
慰謝料の算定基準には、弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準の3種類があります。
慰謝料の算定基準
①弁護士基準
- 裁判例をもとにした慰謝料の相場
- 3つの算定基準のなかで最も高額
②任意保険基準
- 任意保険の保険会社独自の支払基準
- 自賠責基準とほぼ同額か少し上回る
③自賠責基準
自賠責保険の支払基準
保険会社から提示される示談金は、裁判の相場をもとにした弁護士基準と比べて、どうしても少額になりがちです。
交通事故で適正な慰謝料金額を知りたい方は、無料相談などを活用して弁護士までお尋ねください。
耳鳴りの逸失利益はある?
逸失利益とは?後遺障害で思うように働けないときの補償?
耳鳴の後遺症によって、今までどおりに労働できなくなってしまった場合、本来ならば得られたであろう収入が得られなくなった損害について、賠償請求ができます。
このような損害のことを「逸失利益」といいます。
- 以前の労働能力を100%とした場合に、現在の労働能力は何%なのか(労働能力喪失率)
- 後遺障害によって思うように働けない期間は、何年間なのか(労働能力喪失期間)
- 将来受け取るはずだった収入を、現在受けとれる利益はどのくらいあるのか(中間利息控除)
というような視点で、逸失利益は計算されます。⇊
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 |
---|
基礎収入 | 被害者に後遺障害がなければ 将来的に得るはずであった年収 |
---|---|
労働能力 喪失率 |
後遺障害によって 年収を低下させる割合 |
労働能力 喪失期間 |
後遺障害によって 年収が低下する期間 |
ライプニッツ係数 | 逸失利益を一括で受け取るにあたって 現在価値に修正するための係数 |
労働能力喪失率は?等級ごとに決まっている?
耳鳴で問題になる後遺障害等級の労働能力喪失率は、次のとおりです。⇊
第12級 |
---|
14% |
第14級 |
5% |
このような等級ごとの相場をもとに、個別事案にあった労働能力喪失率が決定され、逸失利益が計算されることになります。
実際に認められた労働能力喪失率は?
実際の裁判例では、次のような後遺障害等級と労働能力喪失率が認定されています。
被害者 | 36歳・男・ 事務職会社員 |
---|---|
後遺障害 | 右耳難聴、耳鳴り(14級) |
労働能力 喪失率 |
5% |
労働能力 喪失期間 |
31年間 (36歳~67歳) |
被害者 | 29歳・男・ タクシー運転手 |
---|---|
後遺障害 | 外傷性頚部症候群 左耳鳴り、難聴(14級) |
労働能力 喪失率 |
14% |
労働能力 喪失期間 |
8年間 |
被害者 | 63歳・男・ ホテルフロント警備会社勤務 |
---|---|
後遺障害 | 難聴・耳鳴り(12級) |
労働能力 喪失率 |
14% |
労働能力 喪失期間 |
10年間 |
逸失利益についてはこちらの記事もどうぞ。⇊
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- 入通院慰謝料
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さいごに一言
耳鳴りが交通事故の後遺障害として認定されるには、交通事故のあと、なるべく早く病院を受診することが必要です。
耳鳴りの症状が、交通事故によるものである(交通事故と因果関係のある後遺障害)といえなければならないからです。
事故からしばらく経って耳鳴りを発症するという方も多くおられるので、症状が出た時点でなるべく早く病院を受診してください。
また、耳鳴の後遺障害について適切な等級を認定してもらうには、医師の後遺障害診断書に必要十分な記載をしてもらう必要があります。
眼球破裂以外の後遺障害を負っているケースも多く、複数の後遺障害を適切に認定してもらわなければなりません。
医師は治療のプロですが、書類作成のプロとはいいがたい側面があります。
後遺障害認定のポイントについては、交通事故に詳しいアトム法律事務所の弁護士に是非一度おたずねください。
今後の示談交渉や、後遺障害等級認定の流れなど、ご不明点があればお気軽にご相談ください。
早期にご不安を解消していただくことが、適切な示談金を獲得する近道です。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
岡野武志弁護士