交通事故｜顔の傷の慰謝料、後遺障害等級は？外貌醜状のポイントを弁護士が解説

後遺症について慰謝料をもらうには、まずは後遺障害等級の認定が必要です。
交通事故の実務では、等級に応じて慰謝料の相場が存在しています。

「顔の傷」についても、目立つ傷跡が残ってしまった場合、後遺障害認定の対象になります。

後遺障害等級の認定とは、後遺障害の重さを認定してもらう手続きです。
後遺障害の重さは、1級から14級にわかれており、1級がもっとも重い等級になります。
「顔の傷」が大きければ大きいほど、認定される等級は重くなります。

そして等級が上がれば上がるほど、慰謝料の相場も高額になっていきます。

入通院治療が終了し、症状固定をむかえたら、後遺障害診断書などの必要書類を準備して、損害保険料率算出機構に申請します。
個別の事案で異なりますが、症状固定までは目安としておよそ6ヵ月といわれています。

後遺障害認定の申請手続は、被害者請求と事前認定の2通りです。
被害者請求とは、被害者みずから申請する手続きです。

事前認定とは、被害者が保険会社を通じて申請する手続きです。

被害者請求の場合、みずから書類を準備できるため、提出書類の幅が広がります。
保険会社をとおすよりも、認定してもらいやすい資料を多く提出できるのです。
そのため、後遺障害認定を受ける被害者にとって有利といえます。

裏を返せば、申請準備の手間がかかるということですが、弁護士などに助言を求めながら根気よく進めていきましょう。

「顔の傷」は、外貌（がいぼう）の醜状障害（しゅうじょうしょうがい）のひとつです。

「顔の傷」については、その醜状の程度によって、次のような後遺障害等級が認定されます。⇊

【7級12号】「外貌に著しい醜状を残すもの」とは

後遺障害7級12号の「外貌の著しい醜状」とは、次のようなものです。

※「手のひら大」とは、指の部分を除いた手の面積。被害者の手のひらの大きさを基本とする。

【9級16号】「外貌に相当程度の醜状を残すもの」とは

後遺障害9級16号の「外貌に相当程度の醜状」とは、次のようなものです。

【12級14号】「外貌に醜状を残すもの」とは

7条12号（「著しい醜状」）や、9級16号（「相当程度の醜状」）と対比して、12級14号は「単なる『醜状』」と呼ばれることも多いです。

後遺障害12級14号の「外貌に醜状を残すもの」とは、次のようなものです。

【小括】「顔の傷」の後遺障害等級は何級になる？

複数の「傷」を「1個の傷」と評価できるとき

交通事故で顔面に外傷を受けた場合、複数の顔の傷が残る可能性があります。
それらの複数の傷が「1個の傷」と評価できるならば、それらの面積や長さを合算して後遺障害が認定されます。

例

12級14号の「傷」が2つあった場合、9級16号が認定される。

申請の際の注意点

「1個の傷」と評価できるかという点については、具体的な認定基準がありません。

• どのような傷が「相隣接」、「相まって」といえるのか
• どのような傷が「人目につく程度の醜状」といえるのか

など、認定機関の主観的な判断が入るおそれがあります。

後遺障害認定の申請をする際には、獲得したい等級の認定基準に照らして、慎重に申請する必要があります。

聞き取り調査では、獲得したい等級を認定してもらえるように、「顔の傷」が何級何号に当たる傷なのかという点について、具体的に主張していく必要があります。

治療中の損害について

まず、「顔の傷」について治療中の損害として、治療費、休業損害、入通院慰謝料などの賠償金がもらえます。

後遺症に関する損害について

次に、「顔の傷」の治療終了後の損害として、後遺障害に関する逸失利益、慰謝料などの賠償金がもらえます。

これは、いわゆる「後遺症」についての損害賠償金です。

これらの賠償金については、その後遺症について後遺障害等級が認定された場合にのみ受け取ることができます。

その他

そのほか、物損があれば修理費を賠償してもらえます。
被害者の方が亡くなられた場合には、死亡に関する逸失利益、慰謝料などの賠償金がもらえます。

後遺障害慰謝料の相場は？

後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級ごとに相場があります。⇊

ここでは、弁護士基準と自賠責基準の相場を整理しました。

※単位：万円

弁護士基準、自賠責基準とは？

慰謝料の算定基準には、弁護士基準、任意保険基準、自賠責基準の3種類があります。

保険会社から提示される示談金は、裁判の相場をもとにした弁護士基準と比べて、どうしても少額になりがちです。
交通事故で適正な慰謝料金額を知りたい方は、無料相談などを活用して弁護士までお尋ねください。

逸失利益とは？思うように働けないときの補償？

交通事故による怪我が原因で、今までどおりに働けなくなり、本来ならば得られたであろう収入が得られなくなった損害について、賠償請求ができます。

このような損害のことを「逸失利益」といいます。

• 以前の労働能力を100％とした場合に、現在の労働能力は何％なのか（労働能力喪失率）
• 後遺障害によって思うように働けない期間は、何年間なのか（労働能力喪失期間）
• 将来受け取るはずだった収入を、現在受けとれる利益はどのくらいあるのか（中間利息控除）

というような視点で、逸失利益は計算されます。⇊

労働能力喪失率は？等級ごとに決まっている？

後遺障害等級ごとの労働能力喪失率は、次のとおりです。⇊

※要介護第1級・要介護第2級の労働能力喪失率は、いずれも100％。

このような等級ごとの相場をもとに、個別事案にあった労働能力喪失率が決定され、逸失利益が計算されることになります。

逸失利益についてはこちらの記事もどうぞ。⇊

逸失利益の相場を判例と計算方法から導こう

交通事故で後遺障害が残ったとき・被害者が死亡した時に支払われる「得られなくなった」収入の補償である『逸失利益』。その計算方法と近時の事例を紹介。ただし計算式通りの額が得られるとは限らない？増額するために出来ることは？便利な2020年民法改正後のライプニッツ係数表つき。

交通事故の弁護士.jp

実際に認定された労働能力喪失率は？

「顔の傷」は、手足の麻痺や欠損と異なり、外見の問題なので、逸失利益が否定される傾向が強いです。

しかし、「顔の傷」のために配置換えがあったり、職業選択の幅が狭くなるなど、労働能力に直接的な影響があるような場合には、逸失利益が認めらる可能性があります。
ただ、そのような場合でも、労働能力喪失率や労働能力喪失期間については、通常の相場を下回ることが多いでしょう。

なお、逸失利益が否定された場合、慰謝料で調整される可能性があります。
後遺障害慰謝料については、先ほどお話ししたとおり、等級ごとの相場があります。
逸失利益が否定された事案では、慰謝料について相場を上回る金額が認定される事例も散見されます。

*法改正前には、女性の醜状障害と区別されて認定基準が定められていた。現行法では、12級14号に該当する。

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さいごにひとこと

「顔の傷」については、形状や大きさなどを基準に後遺障害認定がおこなわれます。
治療が終了して症状固定をむかえたら、早急に後遺障害等級認定を申請しましょう。

症状固定までの期間は、一般的には約6ヵ月といわれています。
時間の経過とともに、傷が自然に収縮することもあるため、タイミングを逃さないことが重要です。

また、「顔の傷」の後遺障害について適切な等級を認定してもらうには、医師の後遺障害診断書に必要十分な記載をしてもらう必要があります。
医師は治療のプロですが、書類作成のプロとはいいがたい側面があります。
後遺障害認定のポイントについては、交通事故に詳しいアトム法律事務所の弁護士に是非一度おたずねください。

重い等級を獲得できるかどうかは、申請者の主張の仕方しだいで結果は大きく変わります。
適切な等級を認定してもらえるように、弁護士と一緒に被害者請求の準備を進めましょう。

今後の示談交渉や、後遺障害等級認定の流れなど、ご不明点があればお気軽にご相談ください。
早期にご不安を解消していただくことが、適切な示談金を獲得する近道です。