作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

肩鎖関節脱臼後遺症

肩鎖関節脱臼の後遺症|後遺障害慰謝料は?腕があがらない…8級と12級の違いは?

肩鎖関節脱臼の後遺障害とは?

肩鎖関節(けんさかんせつ)は鎖骨と肩甲骨の間にある関節です。
交通事故では、転倒の際に肩や肘を強打したために肩鎖関節脱臼が起こることがあります。特に自転車事故などで多くみられるようです。
そして脱臼が治ったとしても、痛みやしびれ、肩があげられないなどの後遺症が残ることがあります。
この記事では、肩鎖関節脱臼による後遺障害について紹介します。

  • 肩鎖関節脱臼の後遺症にはどのようなものがある?
  • 後遺症の等級はどのようにして決まる?
  • 肩鎖関節脱臼の後遺症により受け取れる慰謝料はいくら?


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交通事故の肩鎖関節脱臼はどのようなもの?

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首の方から鎖骨をなぞっていくと、肩の近くにでっぱりがあります。
そこが遠位端と呼ばれる鎖骨の端であり、ここで肩甲骨と接しています。
この骨と骨の向かい合った部分を2種類の靱帯が支え、肩鎖関節(けんさかんせつ)を形作っています。
関節を支える靱帯が損傷し、鎖骨が上方向に跳ね上がってしまった状態を肩鎖関節脱臼と呼びます。

肩鎖関節脱臼の症状

肩鎖関節脱臼が起こると、関節部や靱帯に痛みや腫れが生じます。
さらにその痛みにより、肩があげられなくなることがあります。
また外部から見て、鎖骨の先端がぽっこりと浮き上がった状態になることもあります。

肩鎖関節脱臼の治療&手術

肩関節の脱臼にはいくつかの段階があります。
靱帯が断裂していない場合(捻挫)、靱帯の一部のみが断裂している場合(亜脱臼)の場合、保存療法を行います。
三角巾などで固定し、様子を見てリハビリを行うものです。
保存療法に効果がない場合、靱帯が完全に断裂してしまっている場合(脱臼)、何度も脱臼を繰り返している場合には手術による関節固定や靱帯の修復を行うこともあります。
手術を行う場合、入院期間は約4日間ほどで済むことが多いようです。

肩鎖関節脱臼の後遺症(後遺障害)3種類|放置はNG!

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状を後遺障害と呼びます。
肩鎖関節脱臼により生じる後遺障害には、以下のようなものがあります。

肩鎖関節脱臼の後遺障害
  • 腕があげられなくなる
  • 鎖骨の変形
  • 痛み、しびれ

後遺障害はその部位や重さなどにより、14段階の後遺障害等級で区分されます。
それぞれの後遺症が実際にどのような症状・等級となるかは、次の章で詳しく解説します。

また、肩鎖関節脱臼には痛みがさほど生じず、脱臼したままで放置されることもあります。
それにより、筋力低下や関節部の慢性的な痛みなどを生じる恐れもあるため、必ず整形外科を受診するようにしてください。

後遺障害が認定されると慰謝料が支払われる?等級との関係は?

①後遺障害慰謝料

後遺障害が残った場合に支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

慰謝料金額相場の3基準比較

後遺障害等級に認定されると、その等級に応じて後遺障害慰謝料を得ることができます。
後遺障害慰謝料を含む慰謝料には、3つの算定基準があります。

  • 自賠責保険での金額算定に使われる自賠責基準
  • 各保険会社での金額算定に使われる任意保険基準
  • 過去の裁判例に基づいた弁護士基準

②逸失利益

もう一つ、後遺障害の等級に応じて支払われる金銭が逸失利益です。

逸失利益

後遺障害により労働能力が喪失し、将来の収入が減少することに対する補償
基礎収入×労働能力喪失率×{(67-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数}で計算する

逸失利益とは

実際にどの程度労働能力が喪失したと認定されるかについては、後遺障害ごとに詳しく説明します。

基礎収入の導き方・収入がない場合・症状固定時に67歳以上である場合などの計算式については、以下のページをご覧になってください。


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肩鎖関節脱臼による「腕があがらない」後遺症

腕があがらない後遺症は8級?12級?

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肩鎖関節脱臼により、肩の痛みから腕を上げられなくなってしまうことがあります。
このような関節の機能障害に関する後遺障害等級は以下のようになっています。

後遺障害等級

肩鎖関節脱臼による腕*があがらない症状

86
上肢の三大関節中の一関節*の用を廃したもの
1010
上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
126
上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

*肘・手首関節にも障害が生じている場合は、より上の後遺障害等級が認定される

用いられている専門用語をわかりやすく言い換えると、以下のようになります。
ここでの角度は、主要運動である屈曲(体の前面で腕をあげる動き)・外転(体の側面で腕をあげる動き)の角度を指します。
(もう一つの主要運動である内転運動は常に0度となる)

用語

関節の用を廃す
… 関節がまったく動かない~または障害のない関節と比べ可動域が1/10程度以下のもの
(肩関節では目安として屈曲20度以下、外転20度以下両方の基準を満たす)
※肩関節の場合、この数値を超えても肩甲上腕関節が骨性強直していることがレントゲンで確認できる場合には「関節の用を廃したもの」となる。

関節の機能に著しい障害を残すもの
… 障害の無い関節と比べ可動域が1/2以下のもの
(肩関節では目安として屈曲90度以下、外転90度以下いずれかの基準を満たす)

関節の機能に障害を残すもの
…障害の無い関節と比べ、可動域が3/4以下に制限されているもの
(肩関節では目安として屈曲135度以下、外転135度以下いずれかの基準を満たす)

後遺障害等級は、主に関節の可動域によって決定されるということがわかります。

さらに、可動域がわずかに基準を上回る場合であっても、等級に認定されることがあります。
その場合、伸展(体の背面に腕をあげる動き)外旋と内旋の合計値(床と並行に腕を移動させる動き)の角度どちらかが基準を満たす必要があります。

可動域1/2制限の超過が10度までの場合
…障害の無い関節と比べ伸展の可動域が1/2以下(肩関節では目安として25度以下)、または外旋と内旋の合計値が1/2以下(肩関節では目安として70度以下

可動域3/4制限の超過が5度までの場合
…障害の無い関節と比べ伸展の可動域が3/4以下(肩関節では目安として40度以下)、または外旋と内旋の合計値が3/4以下(肩関節では目安として105度以下

以上の情報を簡単にまとめなおすと、以下のようになります。

再掲

肩鎖関節脱臼による腕があがらない症状*

等級 内容
86 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/10程度以下
1010 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/2以下
126 障害の無い関節と比べ関節の可動域が3/4以下

*ここにある基準を超えても、等級が認められる場合もある

なお、角度については

  • 他者が手を添えて曲げた角度で比較を行う
  • 角度は5度単位で切り上げる

ことになっています。

つまり、後遺障害診断書などに「屈曲92度」などの記述があればそれは間違いであり、正しくは「屈曲95度」ということになります。

肩鎖関節脱臼により腕があがらない後遺症の慰謝料はいくら?

腕があげらない症状により後遺障害等級に認定された場合、支払われる後遺障害慰謝料は以下の通りです。

後遺障害慰謝料

腕があがらない症状

自賠責基準 弁護士基準
86 324万円 830万円
1010 187万円 550万円
126 93万円 290万円

3つの基準の中で最も低い自賠責基準弁護士基準とでは、3倍程度差がつくことがわかります。
相手方の保険会社は、個人の増額交渉にはなかなか応じてくれません。
一方で、弁護士に依頼することで弁護士基準での慰謝料請求が可能となります。
今後の社会生活のためにも、より高額の慰謝料を目指したい方はぜひ弁護士にご相談ください。

肩鎖関節脱臼により腕があがらない後遺症の逸失利益はいくら?

腕があげられない症状により後遺障害等級に認定された場合、基本となる労働能力喪失率は以下の通りです。

逸失利益

腕があがらない症状

労働能力喪失率
86 45%
1010 27%
126 14%

基本的には、「痛みで片腕がほとんどあげられない場合、45%の労働能力が喪失している」と認定されることになります。
この点が相手方との間で争いとなった場合は、腕があげられないことで日々の業務にどのような支障が出ているか説明しなければいけません。
弁護士に依頼し、そういった交渉をストレス無く進めるのも選択肢の一つです。

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肩鎖関節脱臼による「鎖骨の変形」の後遺症

鎖骨の変形は後遺障害12級?

肩鎖関節脱臼により鎖骨が関節から外れてしまい、肩にでっぱりが生じたような鎖骨の変形が起こることがあります。
その場合に認められる後遺障害等級はこちらです。

後遺障害等級

肩鎖関節脱臼による鎖骨の変形

125
鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

ここでいう「変形」とは、裸体になったとき変形が明らかにわかる程度のものであることが必要です。
例えば、レントゲンなどで変形が発覚する程度のものでは12級に該当しません。

鎖骨の変形の慰謝料はいくら?基準次第で290万円にも

鎖骨の変形により後遺障害等級に認定された場合、支払われる後遺障害慰謝料は以下の通りです。

後遺障害慰謝料

肩鎖関節脱臼による鎖骨の変形

自賠責基準 弁護士基準
125 93万円 290万円

鎖骨の変形の逸失利益はいくら?

肩があげられない症状により後遺障害等級に認定された場合、基本となる労働能力喪失率は以下の通りです。

逸失利益

鎖骨の変形

労働能力喪失率
125 14%

もっとも、鎖骨の変形についてはただちに労働の支障となるとは言いにくい部分です。
そのため、まったく労働能力喪失を認めなかった判例もあります。(大阪地判平成17年12月9日)

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肩鎖関節脱臼による「痛み・しびれ」の後遺症

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれは後遺障害何級になる?

肩鎖関節脱臼によって神経が損傷し、神経由来の痛みやしびれが残存することがあります。

後遺障害等級

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれ

1213
局部に頑固な神経症状を残すもの
149
局部に神経症状を残すもの

これらの文言によれば、痛みやしびれの程度によって等級が変化するように思えます。
ですが実際は、主に他覚的所見の有無によって等級は決定されます。

他覚的所見

画像検査や神経学的検査によって確認できる、客観的な身体的異常

通常、後遺障害等級は障害の重さによって決定します。
ですが痛みなどは目視できず、客観的に判断しづらい症状です。そのため、認定の際に他覚的所見が重視されます。

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは?

局部とは体の一部、神経症状とは痛みやしびれなど神経由来の症状を指します。
「頑固」については明確な基準はなく、

  • 骨の損傷などがMRI検査やCT検査で確認できている
  • 損傷部位と痛み・しびれの生じる部位との医学的な関連性
  • 痛みやしびれの存在を証明する検査結果

などの医学的な裏付けが揃い、痛み・しびれ症状を医学的に証明可能であれば、後遺障害等級12級に認定される可能性があります。

14級9号「局部に神経症状を残すもの」とは?

他覚的所見に乏しい場合、痛みやしびれの原因となった損傷を証明するのは困難です。
それでも一定以上の通院期間があり症状が一貫している・事故直後に損傷が確認できているなど、痛み・しびれ症状を医学的に説明・推定可能であれば、後遺障害等級14級に認定される可能性があります。

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれの慰謝料はいくら?

痛み・しびれにより後遺障害等級に認定された場合、支払われる後遺障害慰謝料は以下の通りです。

後遺障害慰謝料

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれ

自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれの逸失利益はいくら?

痛み・しびれにより後遺障害等級に認定された場合、基本となる労働能力喪失率は以下の通りです。

労働能力喪失率

肩鎖関節脱臼による痛み・しびれ

等級 労働能力喪失率
1213 14%
149 5%

なお、神経症状については馴れや訓練により労働能力の回復が見込めるとして、労働能力喪失期間が短く認定される場合があります。

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肩鎖関節脱臼の後遺症についてのご不安は弁護士にご相談ください

記事のまとめ

今回の記事をまとめると、以下のようになります。

  • 肩鎖関節脱臼による後遺障害には肩が上がらない症状、鎖骨の変形、痛みやしびれなどがある
  • 肩が上がらない症状の後遺障害等級は関節の可動域で決まる
  • 鎖骨の変形が後遺障害にあたるかは裸体を見て変形が確認できるかで決まる
  • 肩の痛みやしびれの後遺障害等級は他覚的所見の有無で決まる
  • 後遺障害等級により慰謝料が支払われる。弁護士に依頼することでより高額な慰謝料を請求できる

肩鎖関節脱臼の後遺症でのお悩みは弁護士にご相談ください

LINE相談

肩鎖関節脱臼は、交通事故で肩を打ってしまうことなどで起こります。
まずは事故後に整形外科を受診し、きちんと診断書を得るようにしてください。
その後の後遺障害等級申請の手続きや、相手方との交渉、損害額の計算などはぜひ弁護士にお任せください。
そのような手のかかる手続きを一任することで治療やリハビリに専念でき、いち早く日常生活を取り戻すことにつながります。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。
少しでも気になることがございましたら、お気軽にご相談ください。


弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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肩鎖関節脱臼の後遺症Q&A

肩鎖関節脱臼はどんな後遺症が残る?

肩鎖関節脱臼における後遺症の症状としては、腕があげられなくなる鎖骨の変形痛みやしびれなどが主にあげられます。肩鎖関節脱臼では、十分な治療をつづけても、完治せずに何らかの後遺障害が残ることが考えられます。 肩鎖関節脱臼の後遺症

肩鎖関節脱臼の後遺症は慰謝料増額に影響する?

肩鎖関節脱臼による後遺症が後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料逸失利益の請求が追加で可能になります。これらは後遺障害の等級に応じて金額が算定されることになります。逸失利益は等級に加えて、障害の部位や程度、職業などの要素から総合的に判断して金額が決められることになります。 後遺障害の認定で支払われる損害賠償

腕が上がらない後遺障害の等級は?

肩鎖関節脱臼によって腕が上がらなくなるといった後遺障害は、上肢の三大関節中の一関節の用を廃したものの場合は8級6号、上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すものの場合は10級10号、上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すものの場合は12級6号の等級認定が予想されます。 腕が上がらない後遺症の後遺障害等級

鎖骨変形の後遺障害等級は?

肩鎖関節脱臼によって鎖骨が変形したという後遺障害では、鎖骨・胸骨・ろく骨・けんこう骨または骨盤骨に著しい変形を残すものの場合は12級5号の等級認定が予想されます。著しい変形とは、裸になった時に明らかに変形していることが分かる程度とされています。 鎖骨変形の後遺障害等級

痛み・しびれの後遺障害等級は?

肩鎖関節脱臼によって痛みやしびれが残るような後遺障害では、局部に頑固な神経症状を残すものの場合は12級13号、局部に神経症状を残すものの場合は14級9号の等級認定が予想されます。12級と14級の差は、痛みやしびれの自覚症状を医学的に証明できる他覚的所見があるかどうかで判断されます。 神経症状(痛み・しびれ)の後遺障害等級

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