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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
人工関節は、主に交通事故によるけがで骨が壊死してしまった場合や、関節を構成する部分の骨や組織が損傷した場合に置換します。
人工関節にすることで何か症状が出るのでは、自分自身の関節ではなくなるので後遺障害として認められるのでは、とお思いの方も多いでしょう。
人工関節によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
人工関節の置換術は多くの場合1~2時間程度で終わります。
人工関節の耐用年数は昔よりものびていて、今では20年以上と言われています。
金属やセラミックなどでできた、関節を構成する骨の代替物となるもの。
交通事故による人工関節への置換の原因となるのは、
などで、これらは主に骨折によって発生します。
こうなると関節を動かしにくくなったり、動かすと痛みを感じたりするため、損傷を受けた部分を切除し、代わりとなる人工関節を埋め込みます。
人工関節の置換術は、整形外科で受けることになります。
人工関節置換術に至るまでのけがの治療も整形外科で受けると思いますので、そのままの流れで手術を受けます。
股関節の人工関節全置換術を例とすると、
となることが多い。
人工関節置換術の場合、手術自体の費用は37万6900円です。
ただ、手術前の検査費用、人工関節費用、入院にかかる諸々の費用等を合わせると、180万~250万円程度かかると思われます。
ただし、保険や高額療養費制度を利用することで、実際の負担は減らすことができます。
人工関節置換術を受け、後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害により今後も受け続ける精神的苦痛に対する損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償。
(異動・退職を余儀なくされた、出世が難しくなったなど)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、後遺障害慰謝料の金額は示談交渉で決められるということがあります。
次項で後遺障害慰謝料の金額をご紹介しますが、それらはあくまでも基準です。
交渉次第ではこれからご紹介する金額よりも低額な金額になる場合もあります。
慰謝料の増額交渉は弁護士でないと聞き入れてもらえないことも多いので、示談交渉については一度弁護士に相談しておくことをお勧めします。
では、実際に人工関節で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。
後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出された資料のみを見て行われます。
そのため、提出資料で伝えるべきことをしっかり伝えることが重要です。
等級獲得のために伝えるべきことは、以下の3点です。
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。
では最後に、後遺障害等級認定を申請する際のポイントをまとめておきます。
症状固定までに6ヶ月以上の治療期間がある
以下3点が伝わる資料を提出する
交通事故によるけがのために人工関節置換術を受けると、以下のような後遺障害等級に該当します。
人工関節の置換
等級 | 内容 |
---|---|
6級 | 1上肢または1下肢の3大関節中の2関節に人工関節を挿入置換し、その関節の可動域角度が1/2以下になった |
8級 | 1上肢または1下肢の3大関節中の1関節に人工関節を挿入置換しその関節の可動域角度が1/2以下になった |
10級 | 1上肢または1下肢の3大関節中の1関節に人工関節を挿入置換した(可動域制限なし) |
上肢の3大関節とは肩・肘・手首のことで、下肢の3大関節とは股・膝・足首のことです。
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
人工関節への置換による後遺障害慰謝料は以下のようになります。
人工関節への置換
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級 | 498万円 | 1180万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
10級 | 187万円 | 550万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
人工関節に置換すると、痛みやしびれを感じるようになることもあります。
そうした場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
人工関節による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
何を以てこの区別を行うかについては、
が大きな判断要素となります。
しびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、医学的な証明が十分とは言えないものの症状があることは推定できるという場合は14級9号に該当します。
ですので、より高い等級に認定されるためには、以下のことが重要になります。
人工関節置換術を受け、なおかつ痛みやしびれが残るなどで、後遺障害等級が複数認定される場合があります。
そのような場合には、認定された等級を考慮してそれらを併合した等級が導き出されます。
後遺障害慰謝料や労働能力喪失率は、この「併合等級」を参考にして決められます。
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
人工関節による痛み・しびれ
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級 | 93万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
人工関節への置換は、交通事故による骨の壊死などを原因として行われます。
骨の壊死に至るまでに痛みや苦痛を感じますし、人工関節も耐用年数が伸びているとはいえ20数年と言われており、長年使っていると取り替え手術が必要になることもあります。
にも関わらず、適切な後遺障害等級に認定されなかったり、低い示談金額を提示されたりする場合があります。
適切な後遺障害等級に認定され、十分な賠償金を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
後遺障害等級認定の申請や示談交渉などを弁護士に一任することで、手続きの煩雑さなどから解放されるうえ、専門家の視点から対策を練ることができます。
人工関節による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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