作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故後遺障害可動域

交通事故の後遺障害|可動域制限に手術や治療は必要?後遺障害慰謝料はいくら?

可動域制限の後遺障害とは?
この記事のポイント
  • 交通事故では、上肢や下肢などの関節に可動域制限が生じる場合がある
  • 慰謝料の金額は可動域制限が生じた関節の数や程度、他覚所見の有無などで異なる
  • 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能

交通事故では、怪我の後遺症として関節の可動域制限が生じる場合があります。
原因となるけがは骨折や脊髄・神経の損傷、脳の損傷など様々ですので、もし自分の怪我でもこうした後遺障害(後遺症)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
各関節の可動域の測り方、後遺障害等級、後遺障害慰謝料について、弁護士が解説いたします。

  • 関節の可動域制限の治療に手術は必要?
  • 関節の可動域はどう測る?
  • 関節の可動域制限の後遺障害等級後遺障害慰謝料は?

藤井宏真医師

奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医

藤井 宏真医師

関節の可動域制限の原因には、骨の癒合不良や神経・脊髄の損傷、脳の損傷など様々なものが考えられます。

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可動域制限の基礎知識|交通事故で可動域制限が生じたら何科に行く?

可動域制限の後遺障害|可動域制限はどこに生じる?

交通事故によって可動域制限が生じる主な部位としては、以下が挙げられます。

可動域制限が生じる部位

上肢

  • 肩関節
  • 肘関節
  • 手関節(手首)

下肢

  • 股関節
  • 膝関節
  • 足関節(足首)

それぞれの可動域の測り方や等級については次の章で詳しく説明します。

可動域制限は何科で治療を受けるべき?

可動域制限は、交通事故によるけがの結果生じるものです。
そのため、まずは各けがに応じた科で治療を受けることになります。
適切な科が分からない場合には、まずは総合病院へ行くことをお勧めします。

可動域制限の治療&手術

可動域制限が生じるようなけがに対して手術を行うかどうかは、可動域制限の原因となっているけがやその程度によって異なります。
例えば骨折の場合、骨折による骨のずれが大きい場合には、プレートなどを入れて内側から骨折部を固定するため手術を行います。
しかし軽度の骨折であれば、ギプスなどを用いて外部から骨折部を固定するため、手術は行われません。

また、けがの治療が落ち着いきて可動域制限がある場合は、リハビリ科でリハビリ治療を行う場合もあります。

可動域制限で慰謝料が増えるって本当?

可動域制限で増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益

可動域制限が後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償

また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。

後遺障害の逸失利益

後遺障害が残り労働能力を喪失したことで減ってしまった将来の収入に対する補償。
(移動や退職を余儀なくされた、出世が難しくなったなど)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数

「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとに決まっていますが、障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。

注意点として、

  • 後遺障害が残っても必ずしも等級認定されるとは限らない
  • 示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は、低めに計算されている

ということがあります。

後遺障害等級認定も示談交渉も、弁護士に相談することで専門家としてのアドバイス・サポートを受けることができます。

加害者側から示談金額の提示を受けたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害等級の申請方法|可動域制限の場合

では、実際に可動域制限で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。

②後遺障害診断書など書類の用意

症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。

提出資料
  • 後遺障害診断書
  • 医師による診断書
  • 診療報酬明細書
  • 交通事故証明書
  • 後遺障害の存在や症状を裏付ける資料

後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ
  • 事前認定:被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する
  • 被害者請求:被害者が提出資料一式を自賠責保険に提出する

被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる

後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出された資料のみを見て行われます。

そのため、提出する資料が重要なポイントとなります。

等級を得るためには、

  • 後遺障害と交通事故との関連性
  • 後遺障害の存在と症状の裏付け
  • 症状が将来を通してこれ以上改善しないと思われること

が伝わる資料を提出することが大切です。

③損害保険料率算出機構による審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。

より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。

では最後に、後遺障害等級認定を申請する際のポイントをまとめておきます。

ポイント|後遺障害等級認定の申請手続き
  • 症状固定までに6ヶ月以上の治療期間がある
  • 以下3点が伝わる資料を提出する
  • 後遺障害の存在とその症状の裏付け
  • 交通事故と後遺障害の関連性
  • 後遺障害が将来にわたり回復が見込めないこと
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可動域制限の後遺障害|上肢の可動域制限

上肢の可動域制限の測り方

交通事故で可動域制限が生じる主な上肢の関節は、

  • 肩関節
  • 肘関節
  • 手関節(手首)

であり、これらを「上肢の3大関節」といいます。

これらの可動域をどのように測るのかご紹介します。

なお、関節の可動域を図るときは、

  • 可動域制限がない方の関節と比較する
  • 自力で動かせる範囲ではなく、人が手で動かして動く範囲を見る

ということが基本になります。

①肩関節の可動域の測り方

肩関節の可動域は、以下の方法から図られます。

肩関節の可動域
屈曲 手首と肘を伸ばし、気を付けの状態から体の前を通り天井へ向かって腕を上げる
伸展 手首を肘を伸ばし、気を付けの状態から体の後ろに腕を上げる
外転・内転 手首を肘を伸ばし、気を付けの状態から体の横を通って天井まで腕を上げる(外転)。
同じようにしてもう一方の腕がある方向に腕を動かす(内転)。
外旋・内旋 手首と肘を伸ばし、体の前に地面と水平になるよう腕を伸ばす。
そこから左右に腕を動かす。

②肘関節の可動域の測り方

肘関節の可動域は、以下の方法から図られます。

肘関節の可動域
屈曲 気を付けの状態から、肘を曲げて肘から下を上げる。
回外・回内 肘から下が床と水平になるよう肘を直角に曲げ、手のひらを床と垂直になるようにする。そこから手のひらを左右に90度ずつ倒す。

③手関節の可動域の測り方

手関節の可動域は、以下の方法から図られます。

手関節の可動域
屈曲・伸展 手首を伸ばし、床と水平になるようにする。そこから手首を曲げて手のひらを上下に動かす。
橈屈・尺屈 手首を伸ばし、床と平行になるようにする。床との平衡は保ちつつ、手首を左右に曲げる。

上肢の可動域制限の後遺障害等級は何級?

上肢の3大関節に可動域制限が生じた場合の後遺障害等級は、以下のようになります。

後遺障害等級

上肢の可動域制限

等級 内容
1 両方の肩・肘・手首が可動域を失った
5 片方の肩・肘・手首が可動域を失った
6 1上肢の3大関節中の2関節が可動域を失った
8 1上肢の3大関節中の1関節が可動域を失った
10 1上肢の3大関節中の1関節の可動域が1/2以下になった
12 1上肢の3大関節中の1関節の可動域が3/4以下になった

上肢の可動域制限の後遺障害慰謝料の相場は?

慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
腰椎横突起骨折による顔面醜状・鼻の欠損に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

上肢の可動域制限

等級 自賠責基準 弁護士基準
1 1100万円 2800万円
5 599万円 1400万円
6 498万円 1180万円
8 324万円 830万円
10 187万円 550万円
12 93万円 290万円

等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。

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可動域制限の後遺障害|下肢の可動域制限

下肢の可動域制限の測り方

交通事故で可動域制限が生じる主な下肢の関節は、

  • 股関節
  • 膝関節
  • 足関節(足首)

があり、これらを「下肢の3大関節」といいます。

これらの可動域をどのように測るのかご紹介します。

①股関節の可動域の測り方

股関節の可動域は、以下の方法から図られます。

股関節の可動域
屈曲 仰向けになって寝て、股関節を曲げて足を上に持ち上げる
伸展 うつぶせになって寝て、股関節から足を上に持ち上げる
外転・内転 仰向けに寝て、ひざを伸ばしたまま片足を左右に動かす。
もう一方の足の方向に動かす(内転)場合は、もう一方の足を上げてその下を通す。
外旋・内旋 仰向けになり、片足を上げて股関節と膝関節をそれぞれ90度にする。
その状態でひざを軸にしてひざから下を左右に動かす。

②膝関節の可動域の測り方

膝関節の可動域は、以下の方法から図られます。

膝関節の可動域
屈曲・伸展 足を延ばしてうつぶせになり、膝を曲げる。

③足関節の可動域の測り方

足関節の可動域は、以下の方法から図られます。

足関節の可動域
屈曲・伸展 足首を直角に曲げ、そこから足首を曲げたりのばしたりする

下肢の可動域制限の後遺障害等級は何級?

交通事故で下肢に可動域制限が生じた場合、後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

上肢の可動域制限

等級 内容
1 両方の股関節・膝・足首が可動域を失った
5 片方の股関節・膝・足首が可動域を失った
6 1下肢の3大関節中の2関節が可動域を失った
8 1下肢の3大関節中の1関節が可動域を失った
10 1下肢の3大関節中の1関節の可動域が1/2以下になった
12 1下肢の3大関節中の1関節の可動域が3/4以下になった

下肢の可動域制限の後遺障害慰謝料の相場は?

下肢の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

下肢の可動域制限

等級 自賠責基準 弁護士基準
1 1100万円 2800万円
5 599万円 1400万円
6 498万円 1180万円
8 324万円 830万円
10 187万円 550万円
12 93万円 290万円
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交通事故で関節に可動域制限が生じると、様々な日常的な動作に影響が出てきます。
にも関わらず、妥当な後遺障害等級が認定されなかったり、低額な慰謝料や逸失利益を提示されることがあります。
適切な等級を獲得し、十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
後遺障害等級の申請手続きや示談交渉などを一任することで、準備の負担を軽減しながらも十分な対策をとることができます。
可動域制限による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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