作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
外傷性散瞳|後遺障害の慰謝料はいくら?認定等級は?気になる症状・治療法は?
外傷性散瞳は、後遺障害につながる恐れのある眼の障害です。「がいしょうせいさんどう」と読みます。
この記事では交通事故で外傷性散瞳の後遺症が残った場合、後遺障害は認定されるのか?、慰謝料はいくらもらえるのか?などを弁護士視点で解説します。
この記事のポイント
外傷性散瞳の後遺障害認定申請は、「被害者請求」がオススメ
被害者請求時に「検査結果」を提出し、外傷性散瞳を客観的に主張
損害賠償・示談交渉・慰謝料交渉は弁護士に依頼
交通事故で目をケガすると、どのように治療して、生活を取り戻していくかが大切です。
- 外傷性散瞳とは何?治療法はどんなものがある?
- 外傷性散瞳は後遺障害に認定される?
- 後遺障害に認定された場合の損害賠償は?
順番にみていきましょう。
目次
外傷性散瞳の後遺障害…症状は?治療法はある?
外傷性散瞳とは?どんな症状?
外傷性散瞳とは
鈍的な打撲などにより散瞳(瞳孔が過度に拡大されたままの状態)を起こしたものをさします。
多くは鈍的な衝撃により瞳孔括約筋になんらかの障害を負ったことが原因となります。
外傷性散瞳の症状
まぶしさやぼやけ、視力低下といった症状をきたします。
合併症のリスク
前房出血や眼窩内出血、眼底出血、高眼圧などを合併するケースもあると考えられています。
眼が外傷を受けた直後、外傷性散瞳の状態であるかは、すぐに分からないことが多いとされています。症状もさまざまに発現しますので、眼を負傷した場合は、必ずすぐに眼科を受診するようにしましょう。
外傷性散瞳の治療法は?コンタクトを使う?
外傷性散瞳の多くが瞳孔括約筋になんらかの障害を負ったことによるので、瞳孔括約筋の障害を取り除く必要があります。
しかし、瞳孔括約筋の損傷は時間経過での回復が報告されている一方、現状は根本的な治療法などはないと言われています。
交通事故直後だけでなく、眼科は継続して受診しましょう。また、外傷性散瞳にかぎらず、できるかぎり「事故直後」に受診した病院への通院が望ましいです。それは、事故直後からの変化を追えるからです。
コンタクトの使用
通常、暗いところから明るいところへ行くと、瞳孔は小さくなります。瞳孔括約筋に障害が発生してうまく収縮ができず、瞳孔は開いたままになったり、収縮率が下がると、光量が調節できずに「まぶしい」と感じます。
「虹彩付きのコンタクトレンズ」をつけると、まぶしさが軽減できると言われています。
しかし、交通事故の治療については医師との連携が重要です。勝手に購入してコンタクトレンズを装着するなどは危険です。必ず医師に相談をし、判断をしてもらいましょう。
外傷性散瞳、後遺障害の等級と後遺障害等級申請のポイント
交通事故で負った被害は、一生懸命治療をしても、「後遺症」として残ってしまうことがあります。
「これ以上治療を継続しても、改善が見込めない」と判断するタイミングを症状固定といいます。「症状固定」かどうかの判断は、医師の意見が尊重されます。
症状固定の時点で身体にのこったものを後遺症といいます。
「後遺障害」として認定されるために、申請をしましょう。
後遺障害認定は、障害の部位・程度などによって1級~14級までの等級に分けられます。
後遺障害等級認定を受けることは、簡単なことではありません。
残念ながら、後遺障害として認められず、「非該当」という結果になることも珍しくはありません。その場合は異議申立てをしていくことになります。次の記事では、後遺障害等級について解説しています。記事内で、非該当となった場合の対応も解説していますので、参考にしてください。
外傷性散瞳の後遺障害等級は何級?
外傷性散瞳の後遺障害等級とその内容をまとめました。
第11級相当 |
---|
両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
第14級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの |
羞明:強い光を受けた際に、不快感や眼の痛みなどを生じること
外傷性散瞳の後遺障害等級は、
片眼か両目か
感じるまぶしさの程度
労働に与える影響
この3点が等級の分かれ目になります。
交通事故で顔面部に衝撃を受けた場合、外傷性散瞳のほかにも影響がでることもあるでしょう。外傷性散瞳と視力障害または調節機能障害が同時に発生している場合は、「併合」の方法を用いて相当等級を定めるとされています。
等級の併合とは
系列がちがう複数の後遺障害が残った場合、後遺障害等級を「併合」して1つの等級とする考え方
- 5級以上の後遺障害が2つ以上⇒重い方の等級を3つ繰り上げる
- 8級以上の後遺障害が2つ以上⇒重い方の等級を2つ繰り上げる
- 13級以上の後遺障害が2つ以上⇒重い方の等級を1つ繰り上げる
視力障害については、次の記事でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
後遺障害等級認定の申請方法は?
次に、後遺障害等級認定の申請方法を確認しましょう。
認定申請は被害者請求で行うのがオススメです。
症状固定の判断については、医師の意見が尊重をされると説明しました。
後遺障害等級認定は医師ではなく、損害保険料率算出機構という第三者機関に後遺症認定の等級を含む全ての損害調査を委託することになります。
申請方法は事前認定と被害者請求という2つがあります。
イラストで見てみましょう。
事前認定
事前認定でおさえたいのは
- 被害者が加害者側の任意保険会社に書類を提出していること
- 必要書類の準備が加害者側の任意保険会社であること
です。
被害者にとっては、申請の手間が最小限で済むというメリットがあります。一方で、どんな資料で後遺障害認定を申請したかは被害者には分かりません。
また、加害者側の任意保険会社が、最大限被害者に有利な等級認定がなされるように工夫してくれることも期待できません。
次に被害者請求をみてみましょう。
被害者請求
被害者請求でおさえたいのは
- 被害者自身で加害者側の自賠責保険会社に書類を提出していること
- 必要書類の準備は被害者自身で行うこと
資料の準備を被害者自身で行うという大変さがあります。
一方で、被害者にとって有利に認定してもらえるように、工夫をすることができます。
また、弁護士に依頼をすれば、資料収集の代わりに行えますので、デメリットはなくなります。後遺障害認定を適正に受けることが最大の目的です。目的を達成するには被害者請求のほうが、より良い手段でしょう。
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
メリット | 被害者の手間は 最低限で済む |
後遺障害等級認定の可能性を高められる |
デメリット | 申請が不透明 | 被害者自身に手間がかかる |
申請の主体 | 加害者側の 任意保険会社 |
被害者自身 |
被害者請求の具体的な方法について順を追ってみてみましょう。
① 被害者は、加害者側の任意保険会社に被害者請求を行うことを伝えます。
これらの書類を、加害者側の任意保険会社から被害者宛に送付してもらいましょう。
- 交通事故証明書
- 診断書
- 診療報酬明細書の写しの送付
- ② 被害者は、加害者側の自賠責保険会社に被害者請求に必要な書類を送付してもらうように依頼します。
- ③ ①②の資料と、自分で集めた検査結果などの添付資料を、加害者側の自賠責保険会社に提出します。自分で用意する必要のある資料を例示します。
- 支払請求書
- 請求者本人の印鑑証明
- 交通事故証明書(加害者側の任意保険会社から受けとる)
- 事故発生状況報告書
- 診断書(加害者側の任意保険会社から受けとる)
- 診療報酬明細書(加害者側の任意保険会社から受けとる)
- 症状を裏付ける科学的根拠
特に「症状を裏付ける科学的根拠」は重要です。
後遺障害認定のポイントとして、「自覚症状」ではなく「他覚症状」、つまり「誰が見ても明らかに事故による影響が残っている」と分かる必要があります。
事前認定と被害者請求についてもっと知りたい方は、次の関連記事も読んでみてください。
後遺障害等級認定申請:事前認定と被害者請求
次に、外傷性散瞳で後遺障害等級認定を受けるための具体策を一緒に検討しましょう。
外傷性散瞳で後遺障害等級認定を受けるためには?
外傷性散瞳で後遺障害等級認定を受けるためのポイント
(1)被害者請求で認定申請をすることで検査結果などの医証を示す
(2)仕事への「影響」を明確に述べる
(1)被害者請求で申請
被害者請求は、提出する資料を自分で決めることができます。必ず「外傷性散瞳」であることを示す検査結果を提出しましょう。
外傷性散瞳は、眼の「対光反応」を見ることで分かります。
対光反応とは、光が瞳に当たると瞳が縮む反応です。
電子瞳孔計を眼に直接あてて反応を見る「直接反射」
電子瞳孔計を眼にあてて、反対の眼の反応を見る「間接反射」
これらをみます。
対光反応は反射のひとつです。自分で意識をして変えることができないので、嘘をついたりできません。客観的な検査結果と考えられており、提出する資料として信頼性が高いものです。反応が悪い(瞳が縮まない)と、まぶしさを強く感じることになります。外傷性散瞳の場合、瞳孔が拡大したままか、瞳孔収縮率が低くなります。
後遺障害の等級認定に医師の協力は不可欠です。治療の経過を見ながら後遺症の残る可能性をたずねたり、後遺症が残った場合は後遺障害認定の申請を出すことを伝えてみましょう。
後遺障害等級認定の申請に必要な書類の一つに、医師のみ作成が可能な「後遺障害診断書」があります。ほかにも、医師の意見書なども後遺障害等級申請では有効な資料です。医師とは良い関係を築いておきましょう。
(2)仕事への影響
「労働に与える影響」も等級を決めるポイントです。仕事に多大な支障をきたすことを明確に主張しましょう。
たとえば、外傷性散瞳に苦しむ人は、まぶしさを軽減するためにサングラスを着用する人もいるようです。しかし、仕事によってはサングラス着用が困難な場合もあるでしょう。その場合は、仕事を辞めざるをえない状況になるかもしれません。そして、ハンディキャップをもったままの転職活動は不安も多いでしょう。
弁護士に相談すると、これまでの判例などを元に、被害者の被った仕事への影響を説得的に主張できます。「何」を「どのように」主張すればよいかは、弁護士と一緒に考えていきませんか。
外傷性散瞳、慰謝料などの損害賠償はいくら?
外傷性散瞳の慰謝料は?損害賠償の内訳をチェック
外傷性散瞳では、どんな損害賠償を受けとれるのでしょうか。順番に見てみましょう。損害賠償は2つに大別できます。
- 傷害部分:外傷性散瞳の治療費や、治療で受けた精神的苦痛への慰謝料など
- 後遺障害部分:外傷性散瞳という後遺障害が残ったことの精神的苦痛に対する慰謝料や損害への補償
後遺障害部分の逸失利益、後遺障害慰謝料については、後遺障害等級の認定を受けると請求が可能です。
損害賠償・傷害部分
治療費:ケガの治療費用
通院交通費:治療のために通院した交通費
入院雑費:入院した場合に必要になった費用等
休業損害:ケガで休業した期間の収入減額分の補償
入通院慰謝料:入院や治療で受けた精神的苦痛に対する慰謝料
その他:診断書の作成や資料の収集にかかった費用など
損害賠償・後遺障害部分
逸失利益:後遺障害がなければ将来得られたはずの収入から減額した収入への補償
後遺障害慰謝料:後遺障害で受けた精神的苦痛に対する慰謝料
外傷性散瞳での慰謝料・損害賠償の相場
慰謝料などは、どのくらいの金額になるのか明示することはできません。それは、一人ひとりの治療期間や治療内容・ケガの程度によって変わるからです。
しかし、どのくらいの相場となるのか事前に知っておきたいところです。そこで、慰謝料などの損害賠償の相場が一番高くなる方法をお伝えします。
外傷性散瞳の慰謝料、弁護士に相談して増額へ
重要
弁護士基準で慰謝料を計算しないと「受けとれるはずの金額」からずいぶん低い金額を受けとることになりかねません。
慰謝料の計算には3つの基準があります。
(1)自賠責保険の基準
(2)任意保険の基準
(3)弁護士の基準
3つのうち「弁護士基準」が最も慰謝料の相場が高くなります。
まず「自賠責保険」と「任意保険」とは何かを確認しましょう。
①自賠責保険の基準
車の運転者に加入義務のある「自賠責保険」での計算基準
補償内容には上限があり、被害者救済の最低限の補償が目的
②任意保険の基準
車の運転者が任意で加入する「任意保険」での計算基準
補償内容は保険ごとに設定されています。
交通事故の賠償は「自賠責保険」だけでは足りないこともあるので、自賠責保険で足りない部分の補てんが目的
2つの保険の関係は、このようなイメージです。
最も慰謝料の相場が高い弁護士基準を確認してみましょう。
③弁護士基準
裁判で使われる計算基準
弁護士が加害者側と示談する時にもこの基準を用います。
加害者側の保険会社は弁護士基準での慰謝料提案はしないからです。自賠責保険や自社保険(任意保険)で算出した金額を、被害者に提案します。
損害賠償・示談交渉は、弁護士に任せてみませんか。弁護士が被害者の代わりに、弁護士基準で、被害者に最も良い結果を目指して示談交渉を進めます。
外傷性散瞳での後遺障害認定を考えている人、示談交渉をする方へ
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弁護士相談のおすすめのタイミングはイラストのとおりです。当てはまっている人は、まさにベストな相談時期を逃さず、早めに弁護士に相談しませんか。
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まとめ
一度示談を取り交わすと、後から変更するのは難しくなります。示談前にひと呼吸おいて、「本当にこの金額は適正かな?」と立ち止まってください。そして、弁護士に相談することをオススメします。外傷性散瞳の症状の程度や仕事への影響度合いは、個別に違います。被害者の話をしっかり聞き、他に主張すべきことがないかを弁護士と一緒に考えてみませんか。
アトム法律事務所は、東京・大阪・福岡をはじめ、全国各地に事務所を設けています。どの事務所も駅から近く、交通アクセスのよい立地です。次のページに各事務所・支部の一覧が確認できますので、相談時の参考にしてください。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
交通事故での外傷性散瞳Q&A
外傷性散瞳は交通事故後すぐに分かりますか?
外傷を受けた直後には分からないこともあるようです。症状の出方は様々にありますので、負傷した時は早急に眼科を受診しましょう。外傷性散瞳の代表的な症状としては、強いまぶしさ・ぼやけ・視力低下があげられます。 外傷性散瞳|症状・治療法など基本情報
外傷性散瞳は後遺障害何級に該当する?
交通事故による後遺障害としては、11級・12級・14級相当と認定される可能性があります。「片眼か両目か」「まぶしさの程度」「労働に与える影響」などの項目が等級の分かれ目となるでしょう。また、系列の違う複数の後遺障害が残った場合は「併合」というルールで後遺障害等級が繰り上がることもあります。 等級のルール「併合」とは
外傷性散瞳を後遺障害に認定してもらうには?
後遺障害の認定を受けるには、申請をしなくてはいけません。申請方法は①事前認定②被害者請求と2つあり、どちらで認定申請するのかは被害者が決められます。被害者請求は被害者にとって手間がかかりますが、後遺障害認定を有利に進める工夫ができます。 2つの申請方法の違いと被害者請求の詳細
後遺障害慰謝料で損をしないためには?
後遺障害慰謝料を算定する基準は3つあり、中でも「弁護士基準」で慰謝料を算定すると最も相場が高くなります。一方で相手方の保険会社からは、自賠責保険の基準や任意保険の基準にもとづいて算定された金額を提示されます。弁護士基準で慰謝料を計算しないと「受けとれるはずの金額」からずいぶん低い金額を受けとることになりかねません。 弁護士基準で慰謝料を算定するメリット