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今回は、高次脳機能障害の後遺症(後遺障害)について特集します。
交通事故で頭を強く打って、いったん意識を失い、そのあと意識は回復したけれど、
このようなケースでは、高次脳機能障害という後遺症(後遺障害)が疑われます。
今回は、このような「高次脳機能障害の後遺症」の疑問について整理していきます。
高次脳機能障害とは、脳の高次脳機能に生じた障害のことをいいます。
交通事故で脳損傷を受けた場合、言語・思考・記憶・学習などに障害をきたすことがあります。
このような傷害のことを「高次脳機能障害」といいます。
外見上は傷害があることがわかりにくく、ご家族から指摘されて気づく方もおられます。
後遺症については、きちんと「後遺障害等級認定」を受けましょう。
示談金や慰謝料の金額にも差がでてきます。
「外傷性くも膜下出血」や、「びまん性軸索(じくさく)損傷」などが原因で、高次機能障害が残るといわれています。
「くも膜下出血」というのは、脳卒中の一種で、「くも膜」の下で脳の血管が破れて出血するものです。
「びまん性軸索(じくさく)損傷」とは、脳全体が損傷するものです。
脳に損傷を受け昏睡状態に陥ると、脳の機能が一部停止してしまいます。
その結果、意識が回復しても、高次脳機能障害が残ってしまうのです。
① 外傷性くも膜下出血 |
---|
脳の血管の一部が破裂し、くも膜下に出血。 動脈瘤(どうみゃくりゅう)が破裂によって起こることが多いが、交通事故などの「外傷性」のくも膜下出血もある。 |
③ びまん性軸索損傷(びまんせいじくさくそんしょう) |
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頭部に外傷を負ったあと、頭部CTを撮影しても脳出血などの異常は認めないが、意識障害が数時間以上続く病気。 |
③ 脳挫傷(のうざしょう) |
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頭部への強い衝撃で、脳に損傷や出血が発生。 |
高次脳機能障害の症状としては、
などです。
それぞれの症状について、簡単にまとめてみます。
交通事故の後に物忘れがひどかったり、人の名前が覚えられないなどの症状がある場合、「記憶障害」かもしれません。
「注意障害」は、ぼんやりしていて注意力散漫といった症状です。
「遂行機能障害」とは、見通しを立てたり、計画的な行動がとれない症状のことです。
「病識欠落」とは、自分に障害があることを否定したり、歩けないのに歩けると言ったりする症状もあります。
このほか、
などの認知障害もおこりえます。
高次脳機能障害が残ると、性格が変わることもあるようです。
具体的には、次のような性格の変化が生じる可能性があります。
相手の立場や気持ちを思いやることができず、よい人間関係を作ることができない。
一つのことにこだわって、容易に変えられない。
以前と比べてやる気がわかない。すぐ眠ってしまう。
交通事故による後遺症については、「後遺障害等級認定」を受けることによって、等級に応じた慰謝料や逸失利益の支払いを受けることが出来ます。
「後遺障害」というのは・・・
精神的、身体的毀損状態が将来においても回復困難と見込まれる状態、つまり、障害が残って、治療してもこれ以上の改善が望めない状態
のことをいいます。
後遺障害等級認定は、「被害者請求」または「事前認定」のいずれかの方法で申請します。
そして、損害保険料率算出機構の調査事務所による等級認定を受けることになります。
後遺障害等級認定の流れについては、こちらもご覧ください。
後遺障害等級認定に関するページ
高次脳機能障害について後遺障害等級認定を申請するのは、人によって異なりますが、治療開始から1年後くらいが目安です。
交通事故で頭を強く打ったけれど、すぐには症状がでなかった場合でも、脳外科などのMRI検査を受けておくことをお勧めします。
事故後の脳の状態を画像に残しておくことで、その後、症状がでてきたときに後遺障害等級認定に役立つ医学的証拠を残すことができるからです。
高次脳機能障害について、認定される可能性のある等級は、次のとおりです。
1級は、常に介護を要する状態です。
食事・入浴・用便・更衣等について介護が必要です。
2級は、随時介護が必要な状態です。
一人で外出することも困難で、日常生活の範囲が自宅内に限定されているような状態です。
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
---|
3級は、記憶力、注意力、新しいことを学習できない、障害の自己認識、円滑な対人関係維持などに著しい障害がある状態です。
就労がまったくできない、または困難な状態といえます。
5級は、3級ほどではありませんが、新しい作業を学習できず、環境の変化に順応することがむずかしい状態です。
単純な作業で、繰り返し作業などであれば、就労ができる状態です。
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
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7級は、一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同様の作業をおこなうことができない状態です。
9級は、一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業維持力などに問題がある状態です。
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
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以上の等級に該当しなかったとしても・・・
脳損傷について医学的にみて合理的に推測できる場合
12級、14級が認定される可能性もあります。
12級12号 | 局部にがん固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
---|
頭に関する後遺障害等級認定について、詳しく知りたい方は、以下のリンクもご覧ください。
頭の後遺障害等級に関するページ
意識障害については、、JCS(Japan Coma Scale)または、GCS(Glasgow Coma Scale)という評価方法がつかわれています。
重度の場合には6時間程度、軽度の場合には1週間程度の意識障害がある場合、高次脳機能障害が残る可能性が高いといわれています。
意識障害の程度 |
---|
頭部外傷後の意識障害 (半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3~2桁、GCSが12点以下) |
意識障害の継続期間 |
少なくとも6時間以上継続 |
高次脳機能障害が残る可能性 |
永続的な高次脳機能障害が残ることが多い |
意識障害の程度 |
---|
健忘症あるいは軽度意識障害 (JCSが1桁、GCSが13点~14点) |
意識障害の継続期間 |
少なくとも1週間以上継続 |
高次脳機能障害が残る可能性 |
高次脳機能障害を残すことがある |
JCS・GCSの基準については、こちらをご覧ください。
意識障害の判断基準(JCS・GCS)に関するページ
脳に障害があることを認定するための資料として重要なのが、画像上の所見です。
脳のCT画像やMRI画像などの画像上の所見が認定に大きな役割を果たします。
脳挫傷(のうざしょう)や、外傷性くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血などと異なり、びまん性軸索損傷の場合は、検査画像からは明確な損傷が確認しにくいといった問題があります。
そのような場合、脳室拡大・脳萎縮の有無を確認するなどして、高次脳機能障害が生じていると合理的に説明できる可能性があります。
後遺障害等級認定に詳しく、後遺障害診断書の作成に積極的な医師を見つけることが大切です。
交通事故処理について経験豊富な弁護士に相談することで、解決の糸口を見つけられる可能性もあります。
さきほど見てきた様々な症状については、医師の診察による所見だけではなく、家族や同僚、同級生などに聞き取り調査が実施されることもよくあります。
交通事故の前から被害者の方の人格・性格を知っている人に話を聞くことで、被害者の方の具体的な症状や、障害の程度を把握しやすくなるからです。
聞き取り調査のほかには、認知障害を評価するために神経心理学的検査が実施されることもあります。
神経心理学的検査には、WAIS-Ⅲ、WMS-R、三宅式記銘力検査などがあります。
など
など
後遺障害等級認定に必須なのが、「後遺障害診断書」です。
画像上の所見や精神症状に関する検査などの結果と、後遺障害診断書の内容が照合されて、後遺障害があるかどうか認定されることになります。
作成費用は、病院によって異なりますが、全国平均では約6,000円といわれています。
保険会社に費用を請求するために、領収書を保管しておきましょう。
慰謝料算定の基準には、自賠責基準、任意保険の支払基準、裁判基準(弁護士基準)の3つがあります。
まず、自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に規定されている基準です。
つまり、加害者が自賠責保険に加入していれば、必ず支払ってもらえる金額のルールです。
しかし、最低限度の金額しか支払われないため、交通事故の被害者の方にとって満足のいく金額とはいいきれません。
次に、任意保険の支払基準とは、加害者が任意保険に加入している場合、その任意保険会社の支払基準のことです。
支払基準については、保険会社の内部情報であるため、公表されていません。
実情としては、自賠責と同じくらいの金額であったり、それよりは少し高額という程度のようです。
さいごに、裁判基準(弁護士基準)とは、
に用いられる基準です。
裁判基準(弁護士基準)によれば、慰謝料相場は3つの基準のうち、最も高額になります。
交通事故の被害者の方が弁護士に相談すると、この裁判基準(弁護士基準)による示談交渉を有利に進めることができます。
裁判基準 弁護士基準 |
自賠責基準 | 任意保険基準 | |
---|---|---|---|
金額 | 高額 | 低額 | 中くらい |
内容 | 弁護士の交渉 | 最低限度 | 保険会社のルール |
被害者側 | 有利 | 不利 | 不利 |
具体的な慰謝料相場については、次の表をご覧ください。
任意保険会社の支払基準は、保険会社によって異なり、公表もされていないため、ここでは裁判基準(弁護士基準)と自賠責基準を比較できる表にしました。
裁判基準(弁護士基準)と自賠責基準の差額についても、かっこ内に表示したので参考にしてみてください。
等級 | 裁判基準・ 弁護士基準 |
自賠責 (差額) |
---|---|---|
1 (別表第1) |
2,800 | 1,600 (1200) |
1 (別表第2) |
1,100 (1,700) |
|
2 (別表第1) |
2,370 | 1,163 (1,203) |
2 (別表第2) |
958 (1,412) |
|
3 | 1,990 | 829 (1,161) |
5 | 1,400 | 599 (801) |
7 | 1,000 | 409 (591) |
9 | 690 | 245 (445) |
12 | 290 | 93 (197) |
14 | 110 | 32 (78) |
※慰謝料の単位は万円
こちらの慰謝料計算機では、慰謝料の相場に加えて・・・
など、合わせて自動で計算できます。
登録不要、通院日数など簡単な項目を入力すればすぐです。
是非ご活用ください。
後遺障害等級認定の申請方法として、被害者請求がおすすめです。
なぜならば、被害者請求は、被害者みずからが申請手続きをおこなうので、認定機関を説得できる副次的な資料を添付しやすいからです。
ただ、申請手続については、一般の方にとっては複雑だと思います。
法的手続きのプロである弁護士と二人三脚で進めていきましょう。
このようなお悩みで法律事務所をお探しの方へ。
アトム法律事務所では、交通事故の弁護士相談窓口を設置しています。
お問い合わせ・相談ご予約の受付時間は・・・
問いません。
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このような方も、ぜひご利用ください。
高次脳機能障害の後遺症を認定してもらうには、医学的知見が重要になってきます。
それと同時に、どのように申請すれば後遺障害等級認定を獲得できるかという法的な視点も非常に重要です。
アトム法律事務所の弁護士は、医師と提携して後遺障害等級認定にとりくんでいます。
高次脳機能障害の後遺障害等級でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
早期のご相談が、お悩み解決の秘訣です。
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野尻大輔
交通事故により脳に損傷を受け、認知障害、人格変化などが生じ、日常生活への適応能力が低下、障害の程度によっては社会復帰がむずかしくなるケースもあります。