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車の修理代がかさむ、後遺症が残る、通院のために仕事を休まなければならない…。
交通事故にあうと、そんな様々な負担が襲ってきます。
そんな時、被害者にとって支えとなるのが相手方から支払われる慰謝料です。
ですが、何も知らないままだともらえる金額が少なくなってしまうかもしれません。
今回は、こういった疑問についてお答えしていきます。
目次
第七百十条 他人の身体(略)を侵害した場合(略)損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用元:民法710条
ここでいう「財産以外の損害に対して」支払う損害賠償の一つを慰謝料といいます。
では財産以外の損害とは何なのでしょうか?
精神的な損害に対し、金銭でそれを和らげる目的で支払われる賠償金
事故の損害というと、まず車の修理費や治療費といった具体的なものが浮かびます。
物品に関する損害を物損、人の生命身体に関する損害を人損といいます。
ですが、例えば怪我をしてしまったという精神的苦痛も、人損に含まれるのです。
慰謝料は、そういった精神的な苦痛に対して支払われる賠償金です。
人損 | 物損 | |
---|---|---|
内容 | 人体・生命・精神への損害 | 物品への損害 |
賠償額 | 事案により異なる | 主に実費 |
怪我をしてしまったのが辛い、あるいは傷が残ってしまった、近しい家族が死んでしまった…。
事故によってもたらされる精神的苦痛には、3つの種類があります。
傷害慰謝料とは、傷害を負ってしまったこと自体の精神的苦痛への賠償を指します。
「入通院慰謝料」と呼ぶ場合もあります。この別名通り、
医療機関に入院・通院をしていたことが必要です。
後遺障害慰謝料とは、後遺症が残ってしまったことの精神的苦痛への賠償を指します。
後遺障害等級という基準に認定されなかった場合には原則支払われません。
死亡慰謝料とは、(本人または近親者が)死亡してしまったことの精神的苦痛を賠償するものです。
傷害慰謝料 | 後遺障害慰謝料 | 死亡慰謝料 | |
---|---|---|---|
対象となる精神的苦痛 | 傷害を負ったこと | 後遺症が残ったこと | 本人・近親者が死亡したこと |
金額を左右する事情 | 入通院期間 傷害の部位・程度 |
後遺障害等級の級 介護の必要の有無 |
死亡者の家庭内の立ち場 |
痛みや辛さへの耐性は人それぞれであるため、精神的苦痛を金額で評価するのは通常困難です。
そこで慰謝料を支払わなければいけない保険会社・支払うよう請求する弁護士は、それぞれに算定基準を有しています。
以下、順に見ていきましょう。
自賠責基準とは、車を所有する人ならば加入が義務づけられている自賠責保険が定めたものです。
被害者に対し最低限の補償をするものなので、上限額は明確に決まっています。
また、3つの基準の中で最も低い金額になっています。
任意保険基準とは、自動車の運転者が加入する任意保険会社が定めたものです。
保険会社それぞれの商品・保証内容があるためその基準は公開されていませんが、
一般的に自賠責基準より高く、弁護士基準より低い金額になります。
弁護士基準とは、過去の裁判例を元に導かれた慰謝料の支払い基準です。
この3つの中では最も金額が高く、さらに実際の裁判例に沿っているので現実に即した額となっています。
基本的には、弁護士基準で慰謝料を請求するようにしていきましょう。
3つの基準
自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|
性質 | 被害者への最低限の補償額 | 自賠責保険で補償しきれない部分の補償額 | 過去の裁判例から導き出した補償額 |
金額 | 最も低い | 自賠責基準より高く、 弁護士基準より低い |
最も高い |
ここで、具体的な例を見て自賠責基準と弁護士基準のおおよその慰謝料額を比較してみましょう。
具体的な事由により、金額が上下することがあります。
自賠責基準と弁護士基準
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
入院3カ月・通院3カ月(実治療日数40日)の傷害慰謝料 | 71万4000 | 188万 |
後遺障害等級1級の後遺傷害慰謝料* | 1100万 | 2800万 |
専業主婦の妻を残し夫が死亡した場合の死亡慰謝料 | 1100万 | 2800万 |
*介護が不要かつ被害者に被扶養者がいない場合
弁護士基準は自賠責基準と比較して、より高額な慰謝料を受け取れることがわかります。
では実際の金額はどのように計算するのか、解説いたします。
ここでは、入通院慰謝料が弁護士基準でいったいいくらになるのかについて考えていきます。
入通院慰謝料は、傷害の種類と入通院期間、入通院日数により、以下の計算シートに従って決定します。
なお、他覚所見のないむち打ちなどの場合はこちらの計算シートを使用します。
では具体例を見ていきましょう。
青信号を歩いていたところ車にはねられて左側頭部頭蓋骨骨折、脳挫傷、左手首骨折
入院2カ月、通院7カ月(実通院日数100日)の場合
他覚所見(医学的な裏付けがなく、自覚症状だけのもの)のないむち打ち、軽い打撲、軽い挫傷などの場合、その程度の軽さから、通常より低額な慰謝料が基準となります。
この例の傷害は頭蓋骨骨折なので、通常通りの基準となります。
通院の期間は、
の時期に終了します。
通院日数については、原則として入通院期間を基準として算定しています。
ですが通院が長期にわたる場合は、
で算定することがあります。
今回の例では、通院が長期にわたると判断された場合であっても
前者の方が小さいので、通院期間は210日(7カ月)となります。
計算シートの「入院2カ月」の縦軸、「通院7カ月」の横軸を参照します。
交わった部分の188万円が、この事例での傷害慰謝料です。
では通院期間が1カ月に満たない場合、あるいは〇カ月〇日と半端な場合はどのように計算するのでしょう。
車と接触し他覚所見のないむち打ちの症状
入院なし、通院期間20日で完治
入通院日数に端数が出た場合、1カ月を30日と計算し、翌月までの増額ぶんを日割りして計算します。
この例では軽傷の表を見て、
(通院1カ月の慰謝料-通院0カ月の慰謝料)×20日/30日という算定をします。
具体的に請求できる慰謝料は、(19-0)×20/30≒12万6666円となります。
「交通事故対応」を売りにしている整骨院に通った場合でも、通院扱いになるのでしょうか。
結論から言うと、通院として扱われるためには条件があります。
マッサージ療法や電気治療、鍼灸などは治療のために受けたのか、健康維持のために受けたのか判断が難しいものです。
そのため、原則として通院とは認められません。
医師の指示によって整骨院に通院した場合には、例外的に認められます。
指示がなくとも治療経過に照らして有効・相当な範囲であれば認めたケースもありますが、
基本的には医師に診断情報提供書に記載してもらうなどして、医師の指示のもと通院したことがわかるようにしましょう。
本格的な診療が終了し、リハビリのために通院しているようなとき。
このような場合も、リハビリが治療のために必要と認められるならばその期間に基づいて慰謝料は支払われます。
しかしながら、マッサージや湿布薬をもらうばかりの漫然治療を続けるのはよくありません。
その場合必要な治療のための通院とみなされず、慰謝料どころか治療費も打ち切られる場合があります。
通院期間に対して通院日数が少なすぎないか、そもそも通院日数が少なくないか、を保険会社はチェックします。
頻度と日数が「通院」と認められるかの重要な要素ですので、意識しましょう。
交通事故における慰謝料は示談金の一部として支払われます。
当事者双方が合意して解決する際に支払われる損害賠償金の総額。
慰謝料のほか、治療費や休業による損害への賠償などを含む。
すなわち、示談金が支払われる時期=慰謝料の振り込み時期です。
では、それまでにどういった手順があるのでしょうか。
簡単に交通事故の発生から慰謝料の振込みまでの流れを見ていきましょう。
交通事故が発生し、双方の保険会社に連絡がいきます。
傷害を負ってしまった被害者は治療を開始します。
この時の治療費は、原則として相手方の保険会社が支払ってくれます。
傷害が完治した、あるいは症状がこれ以上よくならない、と判断されたならば治療の終了です。
入通院期間はこの時期を基準にして算定します。
入通院期間が終了した時期から、相手方保険会社との交渉が始まります。
争う場合、相手方は自賠責基準または任意保険基準で、こちらは弁護士基準での金額を主張していくことになるでしょう。
交渉が難航し、示談による落としどころが見つからなかった場合、
といった手続きに入る可能性があります。
示談が成立し、支払い額が決定するととうとう慰謝料が振り込まれます。
送られてくる示談書に署名押印して返送すると、ようやく口座に振込がなされます。
治療が終了し、示談が成立してからとなります。
示談が成立してからは約2週間程度で振り込まれる場合が多いようです。
なお、弁護士が交渉を担当している場合は、一旦弁護士の口座に振り込まれるため、さらに数日遅れる場合があります。
その他、慰謝料に関する疑問についてもご説明します。
交通事故の死亡慰謝料は、被害者の家庭内での立ち位置によって変わってきます。
こちらは、弁護士基準での遺族慰謝料を含んだ死亡慰謝料です。
死亡慰謝料はいくらになる?
家庭内の立ち位置 | 金額 |
---|---|
一家の支柱*である場合 | 2800万 |
母親・配偶者である場合 | 2500万 |
その他の場合 | 2000万~2500万 |
*家庭の収入の大部分を担っている者など
すなわち被害者が主婦であった場合、その者が欠けると生活が困難になるような一家の支柱が被害者である場合と比べ、
死亡慰謝料がやや低額になります。
傷害慰謝料の場合は、家庭内の立ち位置に基づくような規定はありません。
ですが示談金に含まれる
などが給与所得者よりも低く評価される場合があります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
主婦の休業損害・逸失利益
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十七 (略)保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの(略)
引用元:所得税法9条1項17号
慰謝料は、精神的苦痛を和らげるために支払われる性質のものです。
よって、新たに財産を得るという性質のものではないため、課税対象になりません。
保険会社の担当者は、必ずしも被害者に親身になった提案をしてくれるとは限りません。
本当に言われるがままにしていてよいのか、示された慰謝料は適正なものなのか、ご不安なこともあるかと存じます。
アトム法律事務所ではLINE、電話での相談を受け付けています。
お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
交通事故の慰謝料は、弁護士が介入することで大幅な増額が見込めるものでもあります。
金額の見積もりや費用との兼ね合いなどについても、どうぞお聞きください。
野尻大輔
「弁護士基準」は過去の裁判例を元にしているため、基準が変わる可能性もあります。
さらに、あくまで弁護士が代理人となって交渉を行った時に得られた金額が基準となっているので、一般人がこの額で交渉するのは困難です。
「弁護士基準」並みの慰謝料を請求したい場合は、是非弁護士にご相談ください。