作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

高次脳機能障害後遺障害等級

高次脳機能障害の後遺障害等級の裁判例|等級認定のシステムや基準も紹介

高次脳機能障害?後遺障害等級?

高次脳機能障害の後遺障害の等級とは?

高次脳機能障害の後遺障害等級についてお悩みの方からはよく以下のような疑問や質問が寄せられます。

  • ・高次脳機能障害の後遺障害の等級認定システムや基準とは?
  • ・高次脳機能障害の後遺障害等級について争われた裁判例とは?
  • ・高次脳機能障害で後遺障害が認定されないケースはある?

ご覧の記事では交通事故にくわしい弁護士が高次脳機能障害の後遺障害等級について徹底解説していきます。


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高次脳機能障害の後遺障害等級|認定の流れ、基準の解説はコチラ

当サイトでは、高次脳機能障害の後遺障害等級について

  • 認定システムの流れ
  • 症状の程度ごとの認定の基準

などを解説した特集ページを用意しています。

  • 後遺障害の申請の流れはどうなっているのか
  • 高次脳機能障害のどのような症状が何級に該当するのか

について知りたい方は上記のリンクをご利用ください。

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高次脳機能障害の後遺障害等級|裁判例を紹介

高次脳機能障害の賠償額は、その態様により億を超すものから後遺障害として認められず比較的低額となったものまで幅広いものとなります。
ここに交通事故により高次脳機能障害を負い、賠償について争いになった裁判例をいくつかご紹介します。

高次脳機能障害、意識障害の交通事故裁判

比較的高額な事例①

まずは、高次脳機能障害により3億3398万289円の賠償が認められた裁判例です。

賠償額3億3398万289円の交通事故裁判
被害者 事故当時大学院博士課程1年生の男性
事故車両の助手席に同乗
加害者 ・事故車両の運転者
・レンタカー会社
事故態様 高速道路において中央分離帯の縁石に車両が激突。
その後視線誘導板にも激突し横転したという事故。
被害者のケガ ・急性硬膜下血腫
・脳挫傷
・肺挫傷
・両側前腕開放骨折
など

*東京地方裁判所 平成16年6月29日判決 事件番号『平成13年(ワ)第17934号』

この事例において、被害者には

  • 記憶障害、認知障害、人格変化などの重度の高次脳機能障害
  • 嗅覚障害、半盲、四肢麻痺などの神経症状
  • 外傷性てんかんの発作のおそれ
  • 半盲症

などが残存しました。

後遺障害は、

  • 脳機能の傷害部分について1級3号
  • 半盲症については9級3号

の認定をうけ、併合して1級となっています。

賠償額3億3398万289円の主な内訳
慰謝料 4400万円
うち、父母にそれぞれ400万円
逸失利益 150749519
将来にわたる介護費 17653173

*東京地方裁判所 平成16年6月29日判決 事件番号『平成13年(ワ)第17934号』

被害者は学業優秀であり、国内外の薬学、化学の専門誌に論文を投稿し投稿料も得ていたほどでした。
逸失利益について、裁判では製薬会社への入社は確実であったとし、大卒男性労働者の平均年収の1.4倍の基準で計算されました。

意識障害で高額な事例

頭部に外傷を負ってしまったときには、遷延性意識障害を呈してしまうケースもあります。

遷延性意識障害

植物状態、植物人間と俗称される。
昏睡状態から開眼できる状態にまで回復したものの、周囲との意思疎通を喪失したという状態を指す。

厳密にいえば高次脳機能障害とは関係ありませんが、ここで遷延性意識障害の裁判例も参照してみましょう。
賠償総額1億6517万9906円の事例です。

賠償額1億6517万9906円の交通事故裁判
被害者 55歳専業主婦の女性
加害者 ・第一事故の運転者
・第二事故の運転者
事故態様(第一事故) 高速道路上にて、飲酒運転をしていた第一事故加害者車両が被害者車両に追突。
加害者車両は現場から逃亡した。
事故態様(第二事故) 第一事故により道路上で動けなくなっていた被害者車両に第二事故加害者車両が衝突。
車から出て付近に佇立していた被害者にも車両をぶつけた。
被害者のケガ びまん性脳損傷の傷害を負った

*福岡地方裁判所 平成18年9月28日判決 事件番号『平成16年(ワ)第218号』

この事例において被害者は遷延性意識障害、いわゆる植物状態となりました。
その態様は判決文にも記されています。

ベッドに寝たきりの状態で意識は全く戻らず、(略:夫)の呼び掛けにも応ぜず、手足は全く動かず、胃に開けた穴を通じて流動食等を流し込む方法によって栄養を摂取し、おむつに排尿し排便している
(略)

引用元:福岡地方裁判所 平成18年9月28日判決 事件番号『平成16年(ワ)第218号』

後遺障害は1級だと認定されています。
賠償額の主要な内訳は以下の通りです。

賠償額1億6517万9906円の主な内訳
慰謝料 4050万円
うち、夫への慰謝料600万円
逸失利益 29223576
将来にわたる介護費 56913720

*福岡地方裁判所 平成18年9月28日判決 事件番号『平成16年(ワ)第218号』

逸失利益は、当時の女性労働者全年齢平均年収351万8200円をもとに算出されました。

平均的な賠償額の裁判例

当法律事務所が調査したところ、高次脳機能障害での賠償額の平均値は実例19件において約7079万円でした。

この金額に近い、賠償額7702万9026円の裁判例をご紹介します。

賠償額7702万9026円の交通事故裁判
被害者 電気設備工事の現場監督をしていた44歳男性
事故当時は自転車を運転
加害者 事故当時原動機付自転車を運転してた男性。
事故態様 信号のない交差点で出合い頭に衝突。
加害者側の一時停止義務違反。
被害者のケガ ・急性硬膜外血腫
・頭部打撲
・頭蓋骨骨折
など

*横浜地方裁判所 平成24年1月27日 事件番号『平成22年(ワ)3842号』

こちらの事故について、被害者には

  • 発動性の低下、記憶障害、遂行機能といった高次脳機能障害
  • 両目の視野狭窄

といった症状が残存しました。

後遺障害としては、

  • 高次脳機能障害と身体性機能障害については7級
  • 両目の半盲症については9級

併合して6級が認定されました。

賠償額7702万9026円の主な内訳
慰謝料 1460万円
逸失利益 56790165
将来にわたる介護費 なし

*横浜地方裁判所 平成24年1月27日 事件番号『平成22年(ワ)3842号』

逸失利益について労働能力の喪失率は、

  • 60歳までは56%
  • 60歳~67歳までは67%

とされました。

事故前年の被害者の年収776万6290円をもとに計算され、上記の金額となりました。

高次脳機能障害について後遺障害が認定されないケース

頭部外傷による交通事故裁判の中には、後遺障害にあたる高次脳機能障害が残存したとは認められなかった事例もあります
そういった事例は後遺障害が認められた事例と比較し、より低額な賠償額となります。

賠償額の低額な事例

高次脳機能障害を訴えたものの、後遺障害が認定されなかった事例を紹介します。
賠償額は220万5555円です。

賠償額220万5555円の交通事故裁判
被害者 無免許の15歳男性。
事故当時は原動機付自転車に3人乗りをしていた。
加害者 普通乗用自動車を運転する男性。
事故態様 加害者が信号無視をして交差点に進入、被害者車両と衝突した。
被害者のケガ ・出血性ショック
・顔面打撲、挫滅創
・重症頭部外傷
・脳挫傷
・びまん性軸索損傷
など

*名古屋地方裁判所 平成27年3月27日判決 事件番号『平成25年(ワ)507号』

この事故について、被害者は高次脳機能障害が残存したと主張したものの、裁判でそれが認定されることはありませんでした

重症頭部外傷による意識障害が継続した期間は(略)基準を充足しない。
(略)
画像資料上で(略)慢性脳室拡大・脳萎縮所見を認めるに足りる証拠もない。
(略)
神経心理学的検査上も特段の問題は指摘されていない。
以上によれば、被告(略)に高次脳機能障害の後遺障害の残存を認めることは困難である。

引用元:横浜地方裁判所 平成24年1月27日 事件番号『平成22年(ワ)3842号』

賠償額の主な内訳は以下の通りです。

賠償額220万5555円の主な内訳
慰謝料 181万円
逸失利益 なし
将来にわたる介護費 なし

*名古屋地方裁判所 平成27年3月27日判決 事件番号『平成25年(ワ)507号』

後遺障害の認定がされなかった場合、賠償額が低額なものになることがお分かりいただけるかと思います。

高次脳機能障害の実例を知りたいという方はコチラ

当サイトでは高次脳機能障害について、その入通院期間や賠償額を参照できるデータベースを公開しています。
掲載されている事例はすべて実際の交通事故裁判に基づくものです。

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過去蓄積されてきた裁判例に基づく基準よりも、さらに低額な基準

に基づいて示談を締結しようとしてきます。

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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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