作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故の外傷性てんかん|症状は自覚できる?イーケプラなど薬で治る?運転の可否とは
「交通事故で外傷性てんかんを負ってしまった…」
交通事故による外傷性てんかんについてお悩みをお持ちの方からはよく以下のような疑問や質問が寄せられます。
- 交通事故による外傷性てんかんの症状や原因とは?
- 交通事故の外傷性てんかんは薬で治る?予防できる?
- 外傷性てんかんになったら運転できなくなる?
ご覧の記事では交通事故にくわしい弁護士が交通事故による外傷性てんかんについて徹底解説していきます。
目次
交通事故による外傷性てんかん|症状と原因
交通事故で頭部に外傷を負ったときには「外傷性てんかん」の症状が残存してしまうケースがあります。
まずは外傷性てんかんの
- 原因
- 症状
について解説していきます。
症候性外傷性てんかんとは?|脳挫傷や脳損傷、脳震盪が原因となる?
てんかんは、
「脳の電気信号の異常により発作が生じる」
という態様の傷病です。
てんかんは大きく2種類に分類できます。
てんかんの種類
特発性てんかん
脳そのものについて病変は認められないという態様のてんかん
症候性てんかん
脳そのものに病変が認められるという態様のてんかん
交通事故によって生じる外傷性てんかんは、
- ① 事故により頭部に衝撃を受け、
- ② 脳自体に何らかの損傷がおよび、
- ③ 電気信号の異常が生じるようになる
という流れとなっています。
そういった意味で、外傷性てんかんはすべて症候性てんかんとなります。
脳の損傷(脳の病変)を原因とするてんかん、というわけです。
脳震盪で外傷性てんかんになる?
一般的に、脳震盪では外傷性てんかんは生じないとされています。
たしかに脳震盪の後には、
- イライラしやすくなる
- 頭痛が生じる
といった後遺症が生じることもありますが、これらは普通1か月ほどで消失します。
ただ、脳震盪かと思っていたら実は脳損傷も負っており、それが原因でてんかん発作が生じるというケースは考えられます。
頭部外傷の検査
頭部外傷の検査にあたっては、CTやMRIが用いられます。
CT検査とMRI検査
CT検査
X線を身体に照射する検査。
X線の透過率などをコンピューターで解析し、身体の内部を画像化する。
MRI検査
強力な磁気を身体にあてる検査。
強力な磁気により身体内の水素原子を共鳴させて、その信号をもとに身体の内部を画像化する。
脳に損傷を負った際、これら検査を用いても具体的な異常を見つけることができない場合もあります。
てんかんの外科手術の際、初めて脳の損傷や傷痕、萎縮などが認められる、といったケースもあるのです。
外傷性てんかんの症状|発作中のことを自覚できる?
日常生活の中で突然、てんかん発作が間欠的に起こる
これが外傷性てんかんの症状となります。
外傷性てんかんにおけるてんかん発作の種類は、主に以下の3つに分けられます。
外傷性てんかんの発作の種類
単純部分発作
脳の一部分で異常な電気信号が発せられて起こる。
意識ははっきりとしている発作。
複雑部分発作
脳の一部分で異常な電気信号が発せられて起こる。
意識障害が生じ得る態様の発作。
二次性全般化発作
脳の一部分で起こった電気信号の異常が脳の全体に波及し起こる。
意識障害が生じる態様の発作。
外傷性てんかんの場合、いきなり脳全体で電気信号の異常が生じるということはないと言われています。
まず脳の一部分で電気信号の異常が起こり、稀にその異常が脳全体に波及するという態様となります。
単純部分発作
単純部分発作は、具体的に以下のような症状が現れます。
症状 | |
---|---|
単純部分発作 | ・手足や顔がつっぱる ・ねじれる ・けいれんする ・異常な光や色が見える ・人の声が聞こえる ・手足がしびれる ・吐き気を催す など |
発作の始まりから終わりまで意識ははっきりとしており、発作の内容も記憶に残ります。
複雑部分発作
複雑部分発作は、発作の震源地がどこなのかにより症状が大きく異なります。
発作の震源地としては、
- 前頭葉
- 側頭葉
が挙げられます。
意識障害 | 症状 | |
---|---|---|
複雑部分発作 (前頭葉) |
ほぼ無 | ・身体全体を激しくくねらせる ・自転車を漕ぐような動きをする など |
複雑部分発作 (側頭葉) |
有 | ・急に動作を止める ・ぼーっとする ・口をもごもごと動かす ・手を叩く など |
前頭葉の発作では身体全体を使った大きな動きの発作が生じます。
ただ意識にまで影響が生じることは稀で、多くのケースで発作のはじまりから終わりまで記憶は維持されます。
側頭葉の発作では意識障害が生じ、発作が生じた自覚は得られず、発作の記憶も残りません。
ぼーっとして動かなくなる発作の他、
- 口をもごもごと動かす
- 手を叩く
など、無意味な行動を繰り返す発作(自動症)もあります。
二次性全般化発作
二次性全般化発作では、まず上記の単純部分発作や複雑部分発作が生じます。
その後、「強直間代発作」と呼ばれる発作に移行します。
強直間代発作
大きなうなり声をあげ転倒、意識が消失して手足を伸ばした格好で強直する。
口を固く食いしばり、呼吸が止まる。
その後しばらくして、手足を一定のリズムで揺らし続ける。
強直間代発作の後には頭痛や筋肉痛、吐き気や嘔吐が見られる場合もあります。
また、発作後そのまま睡眠状態に移行するケースもあります。
発作後のもうろう状態
側頭葉の複雑部分発作や二次性全般化発作など、意識障害を伴う発作は、発作の終了後にもうろうとした状態になる場合も多いです。
意識がはっきりしないまま辺りをふらつくなどするため、
- ものにぶつかる
- 道路に飛び出す
- 熱いものに触る
など、事故につながるおそれもあります。
交通事故による外傷性てんかん|薬で治る?予防と予後
ここからは外傷性てんかんの治療法や予後についてみていきましょう。
外傷性てんかんの治療法|イーケプラとは?薬で予防できる?
外傷性てんかんの治療法は薬物治療が主となります。
薬物治療について効果がなかったとき、外科的な治療も選択肢に挙がります。
外傷性てんかんの薬物治療
まず「抗てんかん薬」の服用による薬物治療が行われます。
抗てんかん薬は、脳の電気信号の異常に対し、その興奮を抑えるはたらきをします。
抗てんかん薬としては主に以下の薬が使用されます。
外傷性てんかん治療の主な薬
- イーケプラ錠
- ビムパット錠
- テグレトール錠
- ラミクタール錠
- エクセグラン錠
など
これら薬について、基本的には単剤を毎日決まった容量を飲み続けることになります。
効果が表れなければ、医師の指導の元で量を増加させていきます。
薬の併用
これら薬を単剤で飲み続けても効果がない場合、別の薬が選択されるほか、2剤を併用するケースもあります。
たとえば、イーケプラ錠の効能・効果には、併用療法による強直間代発作への有効性が明記されています。
〔効能・効果〕
てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
引用元:大塚製薬「イーケプラ錠500mg」添付文書より
なお、抗てんかん薬治療によるの長期寛解率は60~70%と言われています。
薬物治療で寛解に至らなかった場合には、外科的な治療も検討されます。
外傷性てんかんの外科治療
外傷性てんかんにおいて、手術の適応となるのは以下の3つのてんかんです。
外傷性てんかんの手術適応症例
- ① 器質病変が検出された部分てんかん
- ② 器質病変を認めない部分てんかん
- ③ 一側半球の広範な病変による部分てんかん
①と②の治療
器質病変、つまり脳それ自体の損傷が観測できている場合には、その個所に対し手術を行います。
脳の損傷を確認できていない場合でも、脳波の検査などで原因部位が特定できているなら手術の適応です。
手術の内容は、以下の通りです。
方法① | 脳の異常が生じている部位を切除する |
---|---|
方法② | 脳の異常が生じている部位に対し、一定の間隔で切れ込みを入れる |
異常が生じている箇所について、切除しても脳全体の機能への影響がない、もしくは少ない場合には切除が行われます。
脳機能への影響が考えられる場合には、治癒効果は劣るものの一定の切れ込みを入れる方法が選択されます。
③の治療
脳の片側の広い範囲に損傷が及んでいるという場合には、以下の手術が検討されます。
方法① | 異常側と健康側の左右の脳の連絡を断つ |
---|---|
方法② | 異常が生じている方の大脳を切除する |
こちらは事故後、異常が生じている方の大脳の機能が廃絶されている人について、手術の適応となります。
具体的には、重度片麻痺や感覚障害、半盲などの症状を負っている方です。
手術療法の予後
これら外科的な治療を施しても、てんかん発作が寛解しないケースはあります。
異常部位の切除など、根治術の寛解率は70%強と言われています。
また、そもそも異常が生じている箇所について手術を行えないというケースもあります。
外傷性てんかんは、100%治すことができる傷病ではないという点について留意が必要です。
外傷性てんかんの後遺障害等級について知りたい方はコチラ
交通事故により外傷性てんかんが残存してしまった場合には、後遺障害等級の認定をうけるべきです。
後遺障害等級の認定をうけることで、
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
について賠償され、もらえる賠償金の金額が大幅に増大し得ます。
外傷性てんかんの、症状ごとの後遺障害等級について知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
外傷性てんかんの運転の可否
かつて、てんかんは免許の絶対欠格事由でした。
現在は法改正が進み、一定の要件を満たしたてんかん患者の方について運転免許を取得、更新できます。
その要件とは、具体的には以下の4つです。
てんかん患者の免許取得要件
下記の、いずれかに該当すること。
- ① 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師が「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
- ② 発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師が「今後、数年程度であれば、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合
- ③ 医師が1年間の経過観察の後、「発作が意識障害及び運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
- ④ 医師が2年間の経過観察の後、「発作が睡眠中に限って起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合
免許取得、更新の際には、これらいずれかに該当することを示す主治医の診断書が必要となります。
なお、免許取得や更新の際の質問票に虚偽の回答をした場合には刑罰が科せられます。
また、
「安全運転できない状況であることを知りながら運転して人身事故を起こした場合」
にはより重い刑罰が科せられる決まりとなっています。
てんかんによる運転の可否や、事故発生時の責任や刑罰について知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
交通事故による外傷性てんかんは弁護士に相談
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