作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

高次脳機能障害後遺症

高次脳機能障害|後遺症の症状を解説 くも膜下出血とは?等級認定のシステムとは?

高次脳機能障害の後遺症とは?

高次脳機能障害の後遺症とは?

高次脳機能障害の後遺症についてお悩みの方からはよく以下のような疑問や質問が寄せられます。

  • ・高次脳機能障害の後遺症の症状とは?
  • ・高次脳機能障害の後遺症の等級とは?
  • ・高次脳機能障害の後遺症の示談金はいくらが適正?

ご覧の記事では交通事故にくわしい弁護士が高次脳機能障害の後遺症について徹底解説していきます。


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高次脳機能障害|後遺症の症状を解説

高次脳機能障害は脳の活動の中でもより知的な部分についての障害です。

まずは、

高次脳機能障害を呈しやすい傷病

高次脳機能障害の具体的な症状

について解説していきます。

高次脳機能障害になり得る症状|交通事故によるくも膜下出血とは?

外傷による高次脳機能障害は、頭部に強い衝撃をうけて脳に損傷が及んだことを原因として生じます。

この外傷による脳損傷は、

局所性脳損傷

びまん性脳損傷

に大別できます。

局所性脳損傷

頭蓋内の特定部位に何らかの損傷などが生じたという病態を「局所性脳損傷」と言います。

具体的には、

脳挫傷

くも膜下出血

硬膜下血腫

硬膜外血腫

などです。

頭皮の下の構造は、上から順に、

頭蓋骨

硬膜

くも膜

くも膜下腔

軟膜

となっています。

これらの部位のどこが出血したか、損傷したかにより病名がわかれるわけです。

局所性脳損傷の主な症状
脳挫傷
脳そのものについて、
・挫滅したり
・挫滅に伴って出血したり
・浮腫(むくみ)が生じたり
するという病態。
くも膜下出血
くも膜と軟膜との間に出血が生じているという病態。
髄液で満たされたくも膜下腔に出血が広がる。
硬膜下血種
硬膜の下に出血が生じるという病態。
血は短時間のうちにゼリー状に固まり脳を圧迫する。
脳挫傷による出血に伴って発症しやすい。
硬膜外血腫
頭蓋骨と硬膜のあいだに出血が生じるという病態。
血はゼリー状に固まって脳を圧迫する。
外傷によるものは、多くは頭蓋骨骨折を伴う。

びまん性脳損傷

びまん性脳損傷とは、脳全体に何らかの損傷が及んだということを総括する傷病名です。

局所性脳損傷が生じていないのに意識障害を呈している「びまん性軸索損傷

局所性脳損傷が生じていないのに頭蓋内圧が高まっている「びまん性脳浮腫

などが挙げられます。

びまん性軸索損傷についてくわしく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。

高次脳機能障害の症状|意識障害との関連は?

脳損傷の受傷直後には、何らかの意識障害が生じることが通常です。
外傷による意識障害の判定には、以下のグラスゴー・コーマ・スケールなどが使われます。

グラスゴー・コーマ・スケール
観察項目 反応 スコア
開眼 自発的に 4
呼びかけにより 3
痛み刺激により 2
無反応 1
言語反応 ・今日の日付
・ここの場所
・周りの人
が言える
5
会話が混乱している 4
不適切な単語 3
意味不明の発声 2
無反応 1
運動反応 命令に従う 6
痛み刺激に対し手が動く 5
腕などへの痛み刺激に対し脇を広げて逃避する 4
異常屈曲 3
伸展 2
無反応 1

*項目ごとの合計点数が低ければ低いほど重症

意識障害がより重く、より長く続くほど予後が悪化すると言われています。

高次脳機能障害の症状とは?

高次脳機能障害というのは、記憶や判断、思考や感情のコントロールなど知的で高度な脳の運動に対する障害を指します。

その症状は

神経認知障害

社会行動障害情動障害

に大別でき、具体的には以下のような症状を呈します。

主な高次脳機能障害の症状
神経認知障害 ・記憶力や判断力、注意力の低下
・物事を計画を立てて達成する能力の低下
・自己洞察性(病識)の低下
など
社会行動障害
情動障害
・攻撃性、易怒性、幼稚性の高まり
・意欲低下
・病的嫉妬
など

その様態も、ひとりで自立して生活できる程度のものから常時介護が必要なレベルのものまで多様です。

MITBは高次脳機能障害になる?

軽度外傷性脳損傷、通称MTBIについても触れておきましょう。
MTBIは以下に該当する頭部外傷を指します。

軽度外傷性脳損傷(MTBI)の条件

以下の2つの条件を満たす。

① 混迷や見当識障害、 30分以下の意識消失、24 時間以内の逆行性健忘、一過性の神経学的な異常などを呈した。

② グラスゴーコーマスケール(意識障害の重症度判定表)において、13~15点に該当する。

グラスゴーコーマスケールにおいて13~15点の人は意識障害のレベルが軽度であると判定されます。

MTBIの後遺症

MTBIにおいては、

頭痛

めまい

嘔気

不眠

動悸

生理不順

性欲減退

発汗異常

などの他、四肢の麻痺高次脳機能障害に類する症状などを呈すケースもあるとされています。

MTBIでよく争いになるケース

MTBIはCT検査やMRI検査などをしても画像所見が得られないケースがあります。

つまり、

検査上は異常がなく、ただ後遺症だけが残存している(らしい)

という状況が生じる場合もあるのです。

そのようなとき、

後遺障害の等級の認定

賠償金の算定

などにおいて争いが生じるケースも多くなってしまいます。

2

高次脳機能障害|後遺症(後遺障害)の等級

交通事故により後遺症を負ったときには、後遺障害の認定をうけることを目指します。

後遺障害とは

一般用語としての「後遺症」のうち、

一定の要件を満たし賠償の対象となるような症状

のことを

後遺障害

と呼称します。

後遺症と後遺障害の違い
後遺症 治療終了後に残存する症状
(一般用語)
後遺障害 一定の要件を満たす後遺症

交通事故において後遺障害の認定の有無は、賠償額の面で大きな差を生みます。

高次脳機能障害の等級認定システム、期間

まず、後遺障害の申請は症状固定後に行います。

症状固定のタイミング

症状固定後に残存した後遺症について、後遺障害の何級にあたるのか検討されるというわけです。

後遺障害の申請の流れ

後遺障害等級認定の手続きの流れ

後遺障害の等級を判断するのは、「損害保険料率算出機構」という第三者機関です。
こちらの機関に後遺障害の認定を申請するわけですが、その際には主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。

後遺障害診断書

どのような内容の後遺症が残存したのか、医師の所見が記された診断書。

後遺障害診断書は、後遺症の残存の度合いについて証明する一番有力な証拠となります

後遺障害診断書の入手後、実際に損害保険料率算出機構に後遺障害認定の申請をすることになります。
申請の方法は2つに分けられます。

事前認定

ひとつ目は事前認定と呼ばれる方法です。
これは、相手方の任意保険会社に手続きをすべて代行してもらうという方法です。

事前認定の流れ
被害者請求

2つ目の方法は被害者請求と呼ばれるものです。
これは、必要書類の準備などをすべて被害者側が行うという方法です。

被害者請求の流れ

これら申請を行った後、回答が返ってくるまでの期間はケースバイケースです。

高次脳機能障害について被害者請求をした場合、大雑把に

「おおむね2か月~6か月ぐらい。さらに6か月を超す可能性についても否定はできない」

といった捉え方をしていただければ、外れることは無いかと思います。

事前認定と被害者請求、どちらがいいのか

事前認定は、

後遺障害診断書の作成を済ませて相手方保険会社に提出すれば後は待つだけ

という手軽さが最大のメリットです。

他方、後遺障害診断書を提出した後はすべて相手方保険会社任せとなってしまいます。
後遺障害の認定がなされやすいように特別な努力、工夫などをしてくれることは普通ありません。

事前認定のメリット、デメリット
メリット ・手間がかからない
デメリット ・認定に向けた特別な努力、工夫ができない
・申請過程を把握できない
・認定の結果がわかるのが遅い
など

被害者請求では、より認定されやすいような努力や工夫を自らの手で行うことができます。

例えば、

治療の過程を示す診断画像などを添付する

事故の状況を示す事故発生状況報告書を添付する

といった工夫は、後遺障害等級認定の可能性を引き上げます。

被害者請求のメリット、デメリット
メリット ・自分に有利な医証などを提出できる

・自分に不利な事情を補う文書を提出できる

・認定の結果がはやくわかる

など

デメリット ・手間がかかる

なお、手間がかかるというデメリットについてですが、これは弁護士に依頼して手続きを代行してもらうことで解消できます。
今まさに後遺障害の申請についてお悩みの方は、弁護士に一度相談してみるのがおすすめです。

高次脳機能障害の3、5、7、9級認定基準|認定されないケースとは?

ここで高次脳機能障害について、

どのような症状なら何級に該当するのか

といった具体的な等級基準についてご紹介します。

介護や看護が必要な高次脳機能障害

介護や看護が必要な様態の高次脳機能障害では、以下の等級に認定され得ます。

高次脳機能障害の後遺障害(介護の必要:有)
障害の内容 慰謝料*1 労働能力喪失率*2
11 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2800万円 100
21 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2370万円 100

*1あくまで原則的な弁護士基準での慰謝料の相場
*2あくまで原則的な相場

介護の必要がある後遺症については、

常に介護が必要なのか

随時介護が必要なのか

によって認定の基準が異なります。

「常に介護が必要」の意味

「常に介護が必要」と認められるのは、以下のいずれかに該当する高次脳機能障害です。

食事、入浴、用便、更衣などに常時介護を要する。

高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要する。

「随時介護が必要」の意味

「常時介護が必要」と認められるのは、以下のいずれかに該当する高次脳機能障害です。

食事、入浴、用便、更衣などに随時介護を要する。

痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻発する意識障害などのため随時他人による監視を必要とする。

自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどは困難であり、外出の際には他人の介護を必要とする。

介護の必要まではない高次脳機能障害

介護の必要性がないという様態では、

どの程度の労務に服すことができるのか

によって等級が決められます。

高次脳機能障害の後遺障害(介護の必要:無)
障害の内容 慰謝料*1 労働能力喪失率*2
33 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 1990万円 100
52 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1400万円 79
74 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1000万円 56
910 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円 35

*1あくまで原則的な弁護士基準での慰謝料の相場
*2あくまで原則的な相場

労務に服せるかどうか見るにあたっては、以下の4つの能力について検討されます。

検討される4つの能力

意思疎通能力
「職場で他の人と意思疎通を図ることができるか」

問題解決能力
「課題を与えられた際、手順通りに仕事を進めることができるか」

作業負荷に対する持続力・持久力
「作業に取り組んだ際、その作業へ集中を持続することができるか」

社会行動能力
「大した理由もなく突然感情を爆発させる、などといったことがないか」

等級ごとに、これら能力の喪失の度合いによって等級が決まります。

等級の認定基準
33
終身労務に服することができないもの
4つの能力のうち、1つを完全に喪失した
or
4つの能力のうち、2つ以上の能力の大部分が失われた
52
特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4つの能力のうち、1つ以上の能力の大部分が失われた
or
4つの能力のうち、2つ以上の能力の半分程度が失われた
74
軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4つの能力のうち、1つ以上の能力の半分程度が失われた
or
4つの能力のうち、2つ以上の能力の相当程度が失われた
910
服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
4つの能力のうち、1つ以上の能力の相当程度が失われた

喪失した

大部分が失われた

半分程度が失われた

相当程度が失われた

という語句ですが、これは問題解決能力を例に以下のように定義されています。

喪失した

課題を与えられても手順通りに仕事を進めることが全くできず、働くことができない

大部分が失われた

1人で手順通りに作業を行うことは著しく困難であり、ひんぱんな指示がなければ対処できない

半分程度が失われた

1人で手順通りに作業を行うことに困難が生じることがあり、時々助言を必要とする

相当程度が失われた

1人で手順通りに作業を行うことに困難が生じることがあり、たまには助言を必要とする

労務に服せる高次脳機能障害

4つの能力について、業務遂行に影響が生じるほど失われなかった場合であっても、以下の等級に該当する可能性は残ります。

高次脳機能障害の後遺障害(労務に服せる)
障害の内容 慰謝料*1 労働能力喪失率*2
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 14
149 局部に神経症状を残すもの 110万円 5

*1あくまで原則的な弁護士基準での慰謝料の相場
*2あくまで原則的な相場

12級13号と14級9号の差は、CTやMRIなどにより他覚的な所見が認められるか否かによります。

後遺障害等級が認定されないケース

高次脳機能障害における後遺障害等級につき、等級の最も軽い14級9号の定義を正確に記すと以下のようになります。

14級9号の定義の詳細

通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの。
MRI、CTなどによる他覚的所見は認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められるものが該当する。

これに該当しなかった後遺症は、後遺障害として認められません。
一例を挙げると、以下のような交通事故裁判例があります。

後遺障害が認められなかった事例
被害者 無免許の15歳男性。
事故当時は原動機付自転車に3人乗りをしていた。
加害者 普通乗用自動車を運転する男性。
事故態様 加害者が信号無視をして交差点に進入、被害者車両と衝突した。
被害者のケガ ・出血性ショック
・顔面打撲、挫滅創
・重症頭部外傷
・脳挫傷
・びまん性軸索損傷
など

*名古屋地方裁判所 平成27年3月27日判決 事件番号『平成25年(ワ)507号』

この事故について、被害者は高次脳機能障害が残存したと主張したものの、裁判でそれが認定されることはありませんでした

重症頭部外傷による意識障害が継続した期間は(略)基準を充足しない。
(略)
画像資料上で(略)慢性脳室拡大・脳萎縮所見を認めるに足りる証拠もない。
(略)
神経心理学的検査上も特段の問題は指摘されていない。
以上によれば、被告(略)に高次脳機能障害の後遺障害の残存を認めることは困難である。

引用元:横浜地方裁判所 平成24年1月27日 事件番号『平成22年(ワ)3842号』

後遺障害の認定にあたっては、

画像所見の有無

その他検査所見

症状の経過、意識障害の軽重

事故態様

などを総合考慮すると言われています。

画像所見がないというだけで、後遺障害の認定をされなくなるというわけではありません。

ただその他の事情もすべて鑑みた上で、

残存した後遺症は後遺障害にあたらない

交通事故と残存した障害の間に因果関係がない

と判断されれば、認定はされないわけなのです。

高次脳機能障害で弁護士に依頼するメリット

繰り返しになりますが、高次脳機能障害ではCTやMRIなどの画像所見が得られないケースも多いです。
症状と交通事故による受傷の因果関係について争いになるケースは多くあります。

後遺障害の申請にあたっては、認定に有利な所見や事故状況などをしっかりアピールするべきです
交通事故にくわしい弁護士に早期から依頼することで、自身に有利な証拠書類をもれなく作成、保管、提出できます

賠償額の増額

人身交通事故において通常、相手方の任意保険会社は

過去蓄積されてきた裁判例に基づく基準よりも、さらに低額な基準

に基づいて示談を締結しようとしてきます。

慰謝料金額相場の3基準比較

言うまでもなく、裁判例に基づく基準による補償の方がより適切な賠償の基準であると言えます。
しかし保険会社も営利組織であり、一般的に被害者の方からの増額交渉には応じようとしません。

弁護士に依頼することで増額の可能性は大きく上がります。

増額交渉(弁護士あり)

さらに増額の見込みと弁護士費用とを比較し、事故被害者の方がどれだけ利益を得られるか具体的に提案することもできます。
まずは弁護士に相談し、個別事情に応じたより的確かつ具体的な情報を手に入れるのがおすすめです。

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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

全国10事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業以来、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2019年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。