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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故の被害にあい顔面に外力が加わったり、眼に衝撃を受けたり…。
眼に後遺症が残ると、日常生活への影響は必至です。
本記事では眼にのこった後遺症が、どんな後遺障害なのか?後遺障害等級は何級か?慰謝料の相場は?という気になるポイントを解説します。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
眼に直接外力が加わっていなくても、眼の周辺や顔面に強い衝撃を受けた場合は、速やかに病院を受診しましょう。受傷部位をできるだけ正確に医師に伝えることが大切です。
眼を怪我すると次のような症状が表れる可能性があります。
症状 |
---|
✓眼が痛む ✓眼が充血している ✓むくんでいる ✓見えにくい ✓物が二重に見える ✓強いまぶしさを感じる ✓眼球が動かしにくい ✓吐き気がする ✓眼がくぼんでいる |
症状の中には自覚症状があるものと、周囲から声をかけられて気づくものがあるかもしれません。
また、症状は一つではなく複数の症状を同時に感じることもあります。
当てはまるものはもちろん、その他にも気になることは医師にもれなく伝えるようにしてください。
眼科を受診しましょう。
そのほか救急科へ運ばれて処置が行われることもあるでしょう。
交通事故の発生状況やケガの程度によって分かれます。
特に、被害者が子供の場合の眼窩底骨折(眼底骨折)や、失明の恐れがあるほどの怪我(眼球破裂など)は救急科での対応も必要になるでしょう。
もちろん、救急で運ばれた病院が生活圏から離れていて、その後の通院・治療に不便という場合は転院することも可能ですので安心してください。
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
眼の後遺障害は
この2つに大別されます。
その他には、後述する「外傷性散瞳」や「流涙」といったものもあります。
眼の後遺障害として発生する可能性がある「後遺症」をいくつか列挙します。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
なお、目に関するその他の後遺障害としては「外傷性散瞳」もあげられます。
瞳孔の収縮率が下がることで、強いまぶしさを感じてしまいます。
外傷性散瞳について関心のある方は以下の関連記事もお読みください。
こういったことから、顔に傷が残ってしまうことがあります。
外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)として後遺障害に認定される可能性があります。
外貌醜状に認定されるポイントは、傷の形や傷の大きさなど複数あります。
そして眼科ではなく形成外科で治療や修復をすることになるでしょう。
顔の傷に関しては、関連記事もあります。
気になる方は是非合わせて読んでみてください。
後遺障害等級に認定されると、加害者側から支払われる金銭が増額します。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
逸失利益の計算は少し複雑です。以下のページでは逸失利益計算の仕組みや「計算機」を紹介しています。
自動で簡単に逸失利益や慰謝料を算出できます。
注意したいのは、労働能力喪失率を加害者側が認めない場合です。
たとえば、「まつげが生えない」というだけでは、労働能力喪失は主張しづらいかもしれません。
しかし、仕事内容に制限を受ける可能性は否定できません。
もし労働能力喪失率についてお困りのことがあれば、示談を交わす前に弁護士に相談・依頼をしてください。
眼に残った後遺症について後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
これ以上治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなってきます。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。
また、認定において不利な状況があれば、その状況を説明する資料などを付けてカバーが可能です。
弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
被害者請求をして、弁護士に依頼することが最大限の結果の早道です。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
そして、審査結果をふまえて、自賠責保険会社が等級認定をします。
原則、審査は書面のみで行われます。
「視力が低下しました」と記載するだけでなく
例えばこのように被害者と面識のない人にも、身体に残った後遺症の状況を正しく理解できるようにしましょう。
ちなみに「外貌醜状」に関しては、書面審査だけでなく、面談が実施されるケースもあります。
より細かな後遺障害認定の詳細については以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
眼球の障害には
などがあります。
それぞれの後遺障害等級と等級ごとの慰謝料目安をみていきましょう。
眼球の障害には失明、視力低下などがあげられます。
認定される可能性がある後遺障害等級は以下のようになります。
視力低下
両目 | 等級 |
---|---|
0.02以下 | 第2級2号 |
0.06以下 | 第4級1号 |
0.1以下 | 第6級1号 |
0.6以下 | 第9級1号 |
片目 | 等級 |
0.02以下 | 第8級1号 |
0.06以下 | 第9級2号 |
0.1以下 | 第10級1号 |
0.6以下 | 第13級1号 |
失明・視力低下は、眼の後遺障害として両目か片目か、視力はいくつになったかで判断されます。
第2級2号、第4級1号、第6級1号、第8級1号、第9級1号、第9級2号、第10級1号、第13級1号のいずれかに認定される可能性があります。
「失明」の定義づけもありますので、おさえておきましょう。
失明によって認められる可能性がある講師要害等級は次の通りです。
失明
両目 | 等級 |
---|---|
両目の失明 | 第1級1号 |
片目 | 等級 |
他眼0.02以下 | 第2級1号 |
他眼0.06以下 | 第3級1号 |
他眼0.1以下 | 第5級1号 |
他眼0.6以下 | 第7級1号 |
1眼が失明* | 第8級1号 |
*もう片方の眼の視力は0.6を超える
失明も視力低下と同様に、両目か片目か、見える方の眼の視力によって判断されます。
第1級1号、第2級1号、第3級1号、第5級1号、第7級1号、第8級1号の認定を受ける可能性が考えられます。
失明は、後遺障害等級(1級~14級)の中でも後遺障害の程度が重く、少なくとも第8級の認定となるでしょう。
視力低下と失明による後遺障害慰謝料について、後遺障害等級に対応させてみましょう。
次の表の通りです。
失明・視力低下の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級1号 | 1100万円 | 2800万円 |
第2級1号 | 958万円 | 2370万円 |
第2級2号 | 958万円 | 2370万円 |
第3級1号 | 829万円 | 1990万円 |
第4級1号 | 712万円 | 1670万円 |
第5級1号 | 599万円 | 1400万円 |
第6級1号 | 498万円 | 1180万円 |
第7級1号 | 409万円 | 1000万円 |
第8級1号 | 324万円 | 830万円 |
第9級1号 | 245万円 | 690万円 |
第9級2号 | 245万円 | 690万円 |
第10級1号 | 187万円 | 550万円 |
第13級1号 | 57万円 | 180万円 |
慰謝料の金額の算定方法は、
で大きく異なります。
3つの基準の慰謝料相場をチェックしてみましょう。
このイラストの通り、実際に「弁護士基準」がすべての等級において2~3倍の金額となっています。
同じ後遺障害であるのに、基準が違うだけで金額がこれだけ変わってしまいます。
眼球には、見たい物との距離に応じて自動的にピントを調節する機能があります。
交通事故の被害にあい、この調節機能に何らかの障害が発生すると、第11級1号、第12級1号に認定される可能性があります。
調節機能障害・運動機能障害
等級 | 内容 |
---|---|
第11級1号 | 両目の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
第12級1号 | 1眼の眼球に著しい節機能障害又は運動障害を残すもの |
アコモドポリレコーダーという機器を用いて検査します。
それぞれ調節機能障害が生じているのが片目か両目かで、比較対象が変わります。
片目の場合
調節力の異常が発生していない眼と比較します。2分の1以下ならその目に著しい調節機能と認められます
両目の場合
年齢別の調節力の平均と比べて判断されます。
年齢別の調節力の平均は次の通りです。
表の数値と比べて2分の1以下の値ならば著しい調節機能障害があると判断されます。
年齢 | 調整力(D) |
---|---|
15–19 | 9.7 |
20–24 | 9.0 |
25–29 | 7.6 |
30–34 | 6.3 |
35–39 | 5.3 |
40–44 | 4.4 |
45–49 | 3.1 |
50–54 | 2.2 |
55–59 | 1.5 |
60–64 | 1.35 |
65– | 1.3 |
※55歳以上で健眼がない場合は後遺障害認定の対象外
著しい運動障害とは、眼球の注視野の広さが2分の1以下に減少したことをいいます。
注視野は、頭部を動かさずに眼球のみを動かして直視することのできる範囲のことです。
運動機能の障害は、「ヘススクリーンテスト」や「ゴールドマン視野計」で測定します。
ヘススクリーンテスト | |
---|---|
視標を赤と緑のガラスで見た時の両目の位置ずれを確認します。 | |
ゴールドマン視野計 | |
頭部を固定したまま眼球のみを運動させ、直視できる範囲(注視野)をさします。 単眼視平均:約50度 両眼視平均:約45度 平均の2分の1以下に減っている場合は運動障害が考えられます。 |
調節機能障害や運動機能障害は、第11級1号、第12級1号に認定される可能性があります。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第11級1号 | 135万円 | 420万円 |
第12級1号 | 93万円 | 290万円 |
12級では、加害者側からは100万円を下回る後遺障害慰謝料を提示されるかもしれません。
しかし弁護士が交渉をする基準は「290万円」とその差は3倍以上になります。
視野障害では第9級3号、第13級3号に、複視では第10級2号、第13級2号に認定される可能性があります。
視野障害
等級 | 内容 |
---|---|
第9級3号 | 両目に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
第13級3号 | 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの |
視野障害を示すには「ゴールドマン視野計」を用いて視野の検査をします。
1点を見つめている時の「同時に見える広さ」を計測して、合計8方向の視野の角度の合計を確認します。
正常視野の角度の60%以下となった場合に視野障害が考えられます。
正常視野は以下の通りです。
方向 | V/4 |
---|---|
上 | 60 |
上外 | 75 |
外 | 95 |
外下 | 80 |
下 | 70 |
下内 | 60 |
内 | 60 |
内上 | 60 |
複視では第10級2号、第13級2号に該当する可能性があります。
複視
等級 | 内容 |
---|---|
第10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
第13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
複視については正面を見た場合に複視状態となるか、視野障害では両目に及ぶかで変わります。
視野障害・複視それぞれについて、該当する後遺障害等級に応じて慰謝料の相場が決まっています。
等級別に確認しましょう。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第9級3号 | 245万円 | 690万円 |
第10級2号 | 187万円 | 550万円 |
第13級2号 | 57万円 | 180万円 |
第13級3号 | 57万円 | 180万円 |
視野障害や複視の程度によって等級はさまざまです。
しかし、どの等級でも加害者側提案の金額は、弁護士基準を下回っていることでしょう。
金額がご不安な方は、「この金額が妥当か」をぜひ弁護士に相談してみてください。
まぶたの後遺障害には
があります。
まぶたの欠損とは、物理的にまぶたの一部を失ったりして「まぶた」がないことで、眼球を覆えないことが後遺障害になりえます。
著しい運動障害とは、まぶたを開けたときに<「瞳孔領」を完全に覆うもの>、まぶたを閉じたときに<「角膜」を完全に覆うことができないもの>をいいます。
まぶたの欠損・運動障害
等級 | 内容 |
---|---|
第9級4号 | 両目のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第11級2号 | 両目のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
第12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
第13級4号 | 両目のまぶたの一部に欠損を残すもの |
第14級1号 | 1眼のまぶたの一部に欠損を残すもの |
著しい欠損とは
→まぶたを閉じても角膜を「完全に」おおえないもの
角膜は黒目のことです。つまり、黒目が完全に覆えないほどの欠損を「著しい欠損」といいます。
一部欠損とは
まぶたを閉じたときに「白目」が見えてしまっている状態になる欠損をさします。
それぞれ等級に応じた基準額があります。確認してみましょう。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第9級4号 | 245万円 | 690万円 |
第11級3号 | 135万円 | 420万円 |
第11級2号 | 135万円 | 420万円 |
第12級2号 | 93万円 | 290万円 |
第13級4号 | 57万円 | 180万円 |
第14級1号 | 32万円 | 110万円 |
いずれの等級でも、弁護士基準が上回っています。
弁護士は14級でも110万円を目安に交渉します。
これは自賠責保険では12級以上に相当する金額ですので、やはり「弁護士基準」で交渉することが、受けとる金額の増加につながるといえます。
まつげはげも後遺障害に認められる可能性があり、それぞれ認定されうる後遺障害等級は次の通りです。
まつげはげ
等級 | 内容 |
---|---|
第13級4号 | 両目のまぶたの一部にまつげはげを残すもの |
第14級1号 | 1眼のまぶたの一部にまつげはげを残すもの |
続けて、後遺障害等級に応じた慰謝料の相場を見ておきましょう。
ちなみに、まつげはげとは、まつげが生えている周辺2分の1以上がはげている状態のことです。
等級 | 自賠責保険 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第13級4号 | 57万円 | 180万円 |
第14級1号 | 32万円 | 110万円 |
まつげはげについても、片目なのか・両目なのかが等級の分かれ目です。
どちらの等級でも、弁護士基準の相場は3倍となりますので、弁護士への相談がおすすめです。
眼の後遺障害は、後遺障害1級から14級までたいへん幅広いものです。
そして、最悪の場合は失明に至ることもあるなど、被害者自身はもちろん被害者を支える近親者の生活まで一変させてしまいかねません。
にも関わらず、加害者側の保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士への依頼がのぞましいでしょう。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけでなく、手続き・やり取りの煩雑さなどから解放されます。
眼の後遺障害はさまざまです。
慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
まずはお気軽にLINE・電話での無料相談をご利用ください。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士