作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
眼球破裂の後遺症|手術は必要?失明・視力低下も後遺症?後遺障害慰謝料はいくら?
この記事のポイント
- 眼球破裂の後遺障害には「失明」「視力低下」「調節機能障害」などがある
- 慰謝料の金額は、影響の範囲が「両目」か「片一方」か、どれくらい視力・調節機能が失われたかで変わります
- 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能
眼球破裂ときくと、文字通り「眼球」が破裂してしまったように感じます。
実際には、目に大きな衝撃が加わり、角膜・強膜が破れた状態をさします。
角膜や強膜は眼球を覆う膜の一部が破れることを眼球破裂といいます。
眼に怪我をする…聞いただけでも痛々しく、実際に後遺症が心配です。
眼球破裂によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
- 手術は必要?
- 後遺症はどのようなものがある?
- 視力の低下は後遺障害になる?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
眼球破裂とは、眼球を覆う角膜や強膜が、外からの衝撃によって破れることをいいます。
重度の場合は失明にもつながりますので、早急に病院へかかりましょう。
眼球破裂|症状や主な治療方法は?何科にかかるべき?
眼球破裂の症状
眼球破裂には以下のような症状があります。
- 眼が痛い
- 視力が下がった
- 眼が充血している
- 眼がむくんでいる
- 眼が見えない
最も重症の場合、眼が見えなくなる失明の危険性もあります。
また、交通事故でガラスなどの鋭利なものが目に刺さってしまったら、眼球破裂と同時に、さらに内部まで影響が及び異物感が表れることもあるようです。
また、片目に発生した眼球破裂の影響を受けて、交通事故で外力などを受けていないもう片方の目にも視力の低下が起こりえます。
眼球破裂は何科で治療を受けるべき?
眼科または救急科が望ましいです。
眼球破裂は早期対応が重要とされています。
また、眼球破裂を引き起こすほどの外力を顔面に受けています。
眼球破裂だけではなく、頭を強く打つ・顔面を打ち付けるなどで他の部位にも怪我・異常が発生している場合もあります。
交通事故発生時の状況について、できるだけ詳細に医師に伝えることがポイントです。
眼球破裂の治療・手術|手術は必要?近くの眼科に転院できる?
超音波検査、細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)、CT検査などで、破裂が発生している部位や異物混入の有無、合併症の有無を調べます。
破れた孔が大きい時には、感染症対策とし抗菌薬治療も開始されます。
軽度の場合は治療用コンタクトを使うこともありますが、重症の場合は手術を行います。
損傷の程度が比較的軽度の場合は、手術で縫合することが可能です。
しかし、破れがひどい場合や、破裂部分からの眼の組織流出がひどい場合には、眼球を摘出しなくてはいけなくなります。
眼球の摘出は失明を意味し、大変重度の後遺障害となります。
転院をしたい…/転院するには…?
手術は緊急性と専門性が高いことから
- 交通事故現場近くの病院へ搬送されてそのまま手術
- 手術の設備などが整った大きな病院で手術
こういった対応がとられます。
しかし、眼球破裂での修復手術が終わっても、すぐに視力の回復が認められるわけではありません。
手術後も継続的な通院が必要です。
そうなると、自分の生活範囲内にある眼科に転院したいと思うのは当然のことです。
通院先の変更は可能です。しかし、転院をよりスムーズにするためにやっておくべきことがあります。
手術した医院に紹介状を書いてもらうこと
→転院先で円滑に治療・経過観察ができます
加害者側の保険会社に連絡すること
→手術費同様、治療費も加害者側に支払いを求めることになります。
通院先が変わることは伝えておく必要があります。
交通事故後の病院通院に関しては次の関連記事でも解説していますので、参考にしてください。
<関連記事>交通事故の通院に関して
眼球破裂の後遺症|視力低下は後遺障害にあたる?
後遺症(後遺障害)
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
視力低下を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
眼球破裂の後遺症
- 失明
- 視力の低下
- まぶしさを強く感じる
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
【参考】高次脳機能障害、外貌醜状の可能性
先ほども触れましたが、眼球破裂が起こるほどの衝撃を頭部・顔面に受けていると
- 高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)
- 外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)
これらにも注意が必要です。
どんな症状なのか確認しておきましょう。
高次脳機能障害
脳が損傷することで、「認知」「行動」「人格」などの障害が起こります。
- 性格が変わってしまう
- 物を覚えておくことができない
などの症状がみられ、日常生活への適応能力が失われたり、低下する障害のことです。
外貌醜状
人の目に触れやすい部分の傷・変色をさします。
線状の傷や、火傷など傷が治った後に皮膚に残る痕(瘢痕・はんこん)、色素沈着による変色などがあります。
これらは眼球破裂とは全く別のものです。
↓思い当たる人、関心のある人は<関連記事>もお役立てください↓
<関連記事>高次脳機能障害
眼球破裂で慰謝料が増えるって本当?
眼球破裂の後遺症により保険金増額|後遺障害慰謝料と逸失利益
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害の逸失利益
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
逸失利益の計算は少し複雑です。関連記事では、逸失利益が自動で計算できる<計算機>や逸失利益の仕組みを紹介していますので、ぜひ活用してみてください。
逸失利益は、加害者と意見が食い違いやすいところです。
計算機の結果通りの慰謝料を獲得できるかは、被害者の主張をいかに認定してもらうかがポイントになります。
弁護士は交渉の専門家です。特に、交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。
後遺障害等級の申請方法|眼球破裂の場合
では、実際に眼球破裂での後遺障害等級の申請から後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
①症状が固定される
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定といいます。
眼球破裂ですと
- 視力の回復が見込めない
- まぶしいと感じる状態が改善しない
このような状態が当てはまるでしょう。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
②後遺障害診断書・視力低下などに関する所見の用意
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
事前認定
被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する方法です。
被害者側の手間は最小限で済みます。
被害者請求
被害者は、後遺障害診断書以外にも
- 後遺障害等級認定を有利にすすめる資料
- 認定を受けるために不利な情報への補足説明
などを併せて提出できます。
提出資料を自分で精査できるのが強みといえます。
POINT
弁護士に資料収集作業を任せることもできますので、弁護士に依頼して被害者請求をするのが最も「慰謝料の増額」が見込めて「手間もかからない」選択肢です。
比較
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
③損害保険料率算出機構による審査
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
審査は「書面」で行われます。ですので、「視力障害」を主張するならば視力検査結果を添えるなど、客観的な資料の提出が必須です。
また、外貌醜状の場合は傷の程度を確認するための面談が行われることもあります。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
<関連記事>後遺障害等級の申請について
眼球破裂による「失明」「視力低下」の後遺障害
眼球破裂による「失明」の後遺障害等級は何級?
眼球破裂では多くに視力障害が発生します。
視力障害は
- 「両目」なのか「片目」なのか
- どの程度視力が低下したかが
この2つが等級の分かれ目といえます。
認定される後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
眼球破裂による失明
両目 | 等級 |
---|---|
両目の失明 | 第1級1号 |
片目 | 等級 |
他眼0.02以下 | 第2級1号 |
他眼0.06以下 | 第3級1号 |
他眼0.1以下 | 第5級1号 |
他眼0.6以下 | 第7級1号 |
1眼が失明* | 第8級1号 |
*もう片方の眼の視力は0.6を超える
失明とは次のように定義されています。
失明
- 眼球を亡失(摘出)したもの
- 明暗の区別がつけられないもの
- なんとか明暗の区別が分かる程度のもの
- 暗室にて眼前で証明を点滅させ明暗がわかること(光覚弁)
- 手掌を眼前で上下左右に動かし動きの方向がわかること(手動弁)
ちなみに、視力は「万国式試視力表」を使って測定します。
視力は、矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズを装着した時の視力)で測ります。
ただし、
- 左右の眼の屈折状態にずれ
- 網膜に映る像の大きさや形にバラつき(不等像視)
こういった状況・眼の状態によって矯正の仕方が変わります。医師の指示に従うようにしましょう。
次に視力低下に関する後遺障害等級を確認してみましょう。
後遺障害等級
眼球破裂による視力低下
両目の視力低下 | 等級 |
---|---|
0.02以下 | 第2級2号 |
0.06以下 | 第4級1号 |
0.1以下 | 第6級1号 |
0.6以下 | 第9級1号 |
片目の視力低下 | 等級 |
0.02以下 | 第8級1号 |
0.06以下 | 第9級2号 |
0.1以下 | 第10級1号 |
0.6以下 | 第13級1号 |
視力も同様に
- 両目か片目か
- 両目・片目それぞれの視力
をもとに「後遺障害等級」が分けられます
眼球破裂による「失明」「視力低下」の後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料
失明・視力低下の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級1号 | 1100万円 | 2800万円 |
第2級1号 | 958万円 | 2370万円 |
第2級2号 | 958万円 | 2370万円 |
第3級1号 | 829万円 | 1990万円 |
第4級1号 | 712万円 | 1670万円 |
第5級1号 | 599万円 | 1400万円 |
第6級1号 | 498万円 | 1180万円 |
第7級1号 | 409万円 | 1000万円 |
第8級1号 | 324万円 | 830万円 |
第9級1号 | 245万円 | 690万円 |
第9級2号 | 245万円 | 690万円 |
第10級1号 | 187万円 | 550万円 |
第13級1号 | 57万円 | 180万円 |
両目の失明は最も重い「後遺障害1級」に認定されます。
慰謝料は、弁護士が交渉する金額は2800万円ですが、加害者側から提案される金額目安は1100万円。その差は2.5倍にもなります。
あらゆる等級において少なくとも2倍は違うことが分かります。
同じ後遺障害ですが、弁護士に依頼すれば2倍の増額が期待できます。
交通事故による失明・視力低下は、次の関連記事でも解説しています。
眼球破裂の後遺症「失明」「視力低下」でお悩みの方、知りたいことがある方は是非お読みください。
<関連記事>
眼球破裂による「調節機能障害」の後遺障害
眼球破裂による調節機能障害の後遺障害等級は何級?
眼球には、見たい物との距離に応じて自動的にピントを合わせる機能(調節機能)があります。
その機能は加齢とともに低下するものですが、交通事故で失われてしまうと後遺障害として認定される可能性があります。
内容を確認してみましょう。
後遺障害等級
眼球破裂による調節機能障害
等級 | 症状 |
---|---|
第11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの |
第12級1号 | 1眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの |
「著しい」とは
「著しい」とは「程度がひどい」という意味だと思ってください。
何と比べて<程度がひどい>のかは決められています。
アコモドポリレコーダーという機器で検査をします。
著しいとは
両目ともに調節機能障害が起こっているなら
→年齢の平均値と比べて1/2以下の値であれば著しい
片目だけに調節機能障害が起こっているなら
→正常なもう一方の眼と比較して1/2以下の値であれば著しい
年齢別の調整力は下表のとおりです。
年齢 | 調整力(D) |
---|---|
15–19 | 9.7 |
20–24 | 9.0 |
25–29 | 7.6 |
30–34 | 6.3 |
35–39 | 5.3 |
40–44 | 4.4 |
45–49 | 3.1 |
50–54 | 2.2 |
55–59 | 1.5 |
60–64 | 1.35 |
65– | 1.3 |
※55歳以上で健眼がない場合は後遺障害認定の対象外
ちなみに、交通事故の被害者が事故当時55歳を超えており、交通事故により両目の調節機能の値が低くても、一定程度の加齢によるものとして後遺障害認定はされません。
眼球破裂の後遺症に関するお悩みは弁護士にご相談ください
眼球破裂は、重度の場合「失明」にいたる大きな負傷です。そして、高次脳機能障害や外貌醜状など、他の怪我・後遺障害も併発する可能性があり、注意が必要です。
失明に至らないまでも、視力が失われて戻ることが期待できないということは、被害者の人生に大きな負荷がかかります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
眼球破裂による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
まずはお気軽にLINE・電話での無料相談をご利用ください。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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