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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
外傷性てんかんでは、脳から発せられる電気信号に異常が生じることで発作が起こります。
発作が起きると体が勝手に動いたり意識を失ったりするため、後遺障害として残ったらと不安な方も多いですよね。
外傷性てんかんで残る後遺障害の症状やそれに該当する後遺障害等級、慰謝料について、弁護士が解説します。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
外傷性てんかんは、頭部外傷による脳の圧迫・損傷・低酸素状態を原因として発生します。
交通事故の場合は、受傷後8日以降に発生する晩発てんかんが多いです。
外傷性てんかんの症状は発作として現れます。
その発作には、単純部分発作、複雑部分発作、二次性全般化発作があります。
それぞれについて見ていきます。
原因 | 脳の一部で異常な信号が発せられる |
---|---|
症状 | ▽異常が生じた部位により異なる ▽発作中意識はある |
異常が発生した部位別の症状は、以下のようになります。
単純部分発作では発作中も本人に意識はありますから、意識はあるのに自分の体が勝手に動くというような状態になります。
原因 | 前頭葉または側頭葉で異常な信号が発せられる |
---|---|
症状 | ▽異常が生じた部位により異なる ▽発作中意識障害が生じる |
複雑部分発作では発作中に意識を失うため、発作中のことを覚えていなかったり意識が朦朧としていたりします。
異常が生じた部位別の症状は、以下のようになります。
前頭葉
側頭葉
原因 | 脳の一部での信号の異常が脳全体に波及する |
---|---|
症状 | ▽手足を伸ばし硬直 ▽歯を食いしばり呼吸停止 ▽手足を一定のリズムでゆらす など ▽意識障害がある |
二次性全般化発作は、初めは脳の一部で異常が生じていたものが脳全体に広がり、体の硬直や呼吸の停止といった症状に発展する発作のことです。
この場合も意識障害が生じるため、発作中のことは覚えていません。
外傷性てんかんは、精神科、神経内科、脳外科などで診てもらうことができます。
調べると全国的にてんかんセンターが設立されていることが分かりますので、そこにかかるのもいいでしょう。
他にもてんかんの専門医を調べると、てんかんを専門とする医師や病院が分かりますので、そちらにかかることもお勧めします。
外傷性てんかんでは、基本的に抗てんかん薬を使った投薬治療を行っていきます。
てんかんを治すというよりはてんかんの発作を抑制するという治療です。
適切な治療により、70%~80%の人は薬によって発作をコントロールできるようになります。
しかし中には、どのような薬をどのように組み合わせても、なかなか効果が表れない場合もあります。
そうした場合には、てんかんで発作を起こす部分を切除する手術を行うこともあります。
これ以上治療を行っても大幅な改善は見られないと判断された症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
外傷性てんかんでは、薬によって長期間発作が起きなかった結果、薬の服用をやめても発作が起こらなくなるということも期待はできます。
しかし、すべての場合において完治するは言い切れません。
「交通事故の後遺障害」という観点から言えば、てんかんが後遺障害に当たるかどうかは発作の頻度、脳波から決まります。
たとえ数年にわたって発作が出ていなくても、てんかん特有の脳波が確認されればそれは後遺障害として認定されます。
てんかんが交通事故の後遺障害として認定される基準については、次項をご覧ください。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害により労働能力が失われたことで減った将来の収入への補償
(異動・退職を余儀なくされた、出世が難しくなったなど)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、
ということがあります。
後遺障害等級認定も示談交渉も、弁護士に相談することで専門家としてのアドバイス・サポートを受けることができます。
加害者側から示談金額の提示を受けたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
では、実際に外傷性てんかんで後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。
後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出された資料のみを見て行われます。
そのため、提出資料で伝えるべきことをしっかり伝えることが重要です。
等級獲得のために伝えるべきことは、以下の3点です。
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。
では最後に、後遺障害等級認定を申請する際のポイントをまとめておきます。
外傷性てんかんが後遺障害として認められる基準とその等級は、以下の通りです。
外傷性てんかん
等級 | 内容 |
---|---|
5級 | 1ヶ月に1回以上発作Aがある |
7級 | 数ヶ月に1回以上発作Aがある 1ヵ月に1回以上発作Bがある |
9級 | 数ヶ月に1回以上発作Bがある 薬の服用で発作がほぼ完全に抑制されている |
12級 | 発作はないが、明らかにてんかん特有の脳波が認められる |
発作A
発作B
発作A以外のてんかん発作
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
外傷性てんかんの後遺障害慰謝料は以下のようになります。
外傷性てんかん
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
5級 | 599万円 | 1400万円 |
7級 | 409万円 | 1000万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
12級 | 93万円 | 290万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
外傷性てんかんになると、長期間の投薬治療が必要になります。
また、発作や発作の際の意識障害から、日常的に不安を感じたり、車の運転の際には一層の注意が必要になったりします。
このように日常的な影響も多いにも関わらず、後遺障害等級が認定されなかったり、低額な慰謝料・逸失利益の提示を受けることがあります。
適切な後遺障害等級を獲得し、損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
様々な手続きの煩雑さなどから解放されるうえ、専門家の知識や経験に基づいた対策をとることができます。
外傷性てんかんによる慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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岡野武志弁護士