子供の交通事故｜慰謝料の相場は？子供の死亡、軽傷で違う？飛び出し・同乗事故を解説

交通事故慰謝料には、①入通院慰謝料（傷害慰謝料）、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料の3種類があります。

このうち、①②については、子供でも大人でも、基本的に相場は変わりません。

これに対して、③死亡慰謝料については、その人の属性によって相場が異なります。
子供は扶養される立場にあるため、一家の支柱等と比べて金額が下がる傾向にあります。

算定基準は3種類ある？

交通事故の慰謝料は3種類ありましたが、算定基準も3種類あります。

3つの算定基準の使い分けは？

これらの算定基準は、慰謝料を計算する場面ごとに使い分けられています。

自賠責基準は、自賠責保険の保険会社に保険金を請求するときに用いる算定基準です。

任意保険基準は、任意保険の保険会社が、示談交渉のたたき台となる金額を提示する際に用いる算定基準です。

弁護士基準は、別名「裁判基準」とも呼ばれ、裁判例の相場を基準化したものです。
被害者が弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士は、弁護士基準で算定した慰謝料金額をもとに任意保険会社との示談交渉をすすめます。

弁護士基準が最も高額？

3つの算定基準のうち、弁護士基準は最も高額です。
自賠責基準は最も低額です。
任意保険基準は、自賠責基準とほぼ同額または少し上回る程度の金額です。

実際に裁判をすれば、任意保険会社は、弁護士基準（裁判基準）の金額を支払う必要がでてきます。

裁判のコストに加えて、金額も上がるとなれば、示談交渉に前向きにならざるを得なくなりますよね。
そのため、弁護士基準で示談交渉をすすめれば、保険会社の示談金を増額させる可能性を高めることができるのです。

自賠責基準の計算方法は？

自賠責基準は、1日につき4,200円として「治療期間」または「実治療日数の2倍」のいずれか少ない日数をかけて計算します。

弁護士基準の相場は？

弁護士基準では、「赤い本」に入通院慰謝料算定表というものがあります。

入通院慰謝料算定表とは、入院期間・通院期間を基礎に、慰謝料相場を一覧にした表です。

入通院慰謝料算定表はこちら。

入通院慰謝料算定表については、こちらのリンクでご確認いただけます。⇊

軽傷（打撲・他覚所見のないムチウチ）の入通院慰謝料算定表はこちら。

重傷の入通院慰謝料算定表はこちら。

自賠責と弁護士基準を比べてみると・・・

自賠責と弁護士基準を比べてみると、次のような金額になります。

後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて相場が存在します。

自賠責基準と弁護士基準を比べてみると、その差は歴然です。

※慰謝料の単位は万円

自賠責基準の相場は？

自賠責基準の死亡慰謝料は、350万円です。

自賠責では、ご遺族が慰謝料を請求することもできます。
子供が死亡した場合、遺族の慰謝料請求権者は父母（養父母含む。）です。

慰謝料金額については、請求権者の人数によって異なります。

• 請求権者1人の場合は、550万円
• 請求権者2人の場合は、650万円
• 請求権者3人の場合は、750万円

となります。

※慰謝料の単位は万円

弁護士基準の相場は？

弁護士基準の死亡慰謝料については、次のとおりです。
弁護士基準の相場は、「本人＋遺族」の金額になっています。
子供の場合は、一家の支柱や母親に比べて低額です。

個別の事案では、具体的な事情によって、上記の金額が増減する可能性があります。

増額事由としては、加害者側の故意・過失、不誠実な態度、被害者の親族が精神疾患に罹患したような場合が考えられます。

裁判例で増額された事例は？

たとえば、加害車両が男児2名に衝突した死亡事故では、加害者が音楽のリズムに合わせて車体を左右に振るべく右に急ハンドルを切ったところ、車体を制御できなかったという運転の態様の悪さから、子供の死亡慰謝料の相場を上回る2,800円がそれぞれ認められました（名古屋高判平29.9.28　自保ジャ2011･105）。

こちらの事故は、交差点で自転車と自動車が衝突した事案です。
被害者の女児（12歳）は、骨盤骨折などにより出血性ショック死しています。

※平成18年（ワ）1763号

死亡本人の慰謝料は2,000万円です。
近親者の慰謝料は、両親に対してそれぞれ400万円ずつ、弟に対して200万円が認められました。
したがって、死亡慰謝料の合計額は3,000万円です。

この事故では、加害者が4件の交通違反歴を有していたこと、車両にはテレビやスモークフィルムなど安全確認の支障となる設備を維持していたこと、慰謝の措置を講じていないこと等から、慰謝料増額につながりました。

こちらの事故は、自転車と自動車の出会い頭の衝突事故です。
被害者は、頸椎捻挫・腰椎捻挫等を負いました。

※平成22年（ワ）14028号

こちらの事故では、後遺障害が認定されなかったため、入通院慰謝料のみが認められています。

こちらの事故は、車両同士の衝突事故です。
被害者は、0歳5ヵ月の男児で、受傷から11日後に死亡しています。

※平成19年（ワ）第952号

子供の死亡慰謝料の相場は、2,000万円～2,500万円であるところ、この事案では2,800万円と認定されています。

このように慰謝料が増額されたのは、交通事故の加害者について、ひき逃げ、無免許、当初に虚偽供述をしていたこと、損害の慰謝がなかったこと等が理由です。

※平成14年（ワ）第3461号

こちらの事案では、45万円の入通院慰謝料が認められました。

受傷によりピアノの演奏ができず、卒業試験がうけられず留年しています。
留年した年の授業料や逸失利益については、慰謝料とは別に損害賠償が認められています。

交通事故がトラウマになってしまい、PTSDを発症してしまう人も中にはいます。

PTSDとは、心的外傷後ストレス障害の略です。
生命・身体の脅威となるような外傷的出来事により心に大きな傷を負い、フラッシュバックや感情の麻痺、不眠やイラつきなどの症状が出るといわれています。

PTSDと入通院慰謝料

PTSDで精神科・心療内科に通院した場合に、入通院慰謝料が認められる可能性があります。
この記事の最初でお話ししたとおり、入通院慰謝料の計算方法は、大人も子供も変わりません。

もっとも、精神症状については、個人の性格の問題とされてしまうおそれもあります。
そのため、PTSDを発症するような重大な事故であったと主張することが大切です。

PTSDと後遺障害慰謝料

PTSDについて、後遺障害等級認定がされれば、後遺障害慰謝料をもらうことができます。

認定される等級としては、9級、12級、14級です。

PTSDの症状が疑わしい場合には、精神科や心療内科への通院が必要です。
PTSDになったとまではいえなくても、入通院の付き添いが必要になるケースも多いでしょう。

その場合、付添看護料について請求できる可能性があります。

①東京地裁平成15年12月8日
②東京地裁平成26年11月27日
③大阪地裁平成21年1月30日

子供の交通事故でもらえるお金について、ご不明点があれば、弁護士の無料相談を是非ご活用ください。

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保険会社との示談においては、保険会社独自の支払基準にもとづく慰謝料が提示されます。
弁護士基準による算定額とは大きな差があるため、提示された金額に疑問がある場合には、まずは弁護士までご相談ください。