作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
脳挫傷の後遺症(後遺障害)が交通事故で残った?慰謝料の仕組みを解説
- 交通事故による脳挫傷の症状とは
- 交通事故の脳挫傷で後遺症・後遺障害は残るのか
- 脳挫傷ではどんな慰謝料が請求できるのか
目次
交通事故における脳挫傷の症状
脳挫傷の症状|意識不明、くも膜下出血の併発?
脳挫傷は、脳が損傷・出血した状態をいいます。交通事故の衝突や、頭部への強打などによって頭部へ強い衝撃を受けることで受傷します。外傷性脳挫傷という診断名が出されることがあります。
交通事故の衝突によってハンドルや前方座席に激しく頭をぶつけるなどして脳挫傷を負うケースが多いです。
脳挫傷による症状はさまざまです。
脳挫傷による主な症状
- 吐き気
- おう吐
- 頭痛
- 手足の麻痺
- 感覚障害
- ろれつが回らないなど言語障害
- けいれん発作
- 意識障害、意識不明
- 脳ヘルニア
脳挫傷によってこのような症状がみられることになります。場合によっては、外傷性くも膜下出血を合併することも多いようです。
頭部に衝撃を受けた部位の脳が損傷することもあれば、頭蓋骨内部で脳が揺さぶられて頭蓋骨に打ち付けられることで損傷することもあります。
交通事故で脳挫傷を負う場合は、頭蓋骨を骨折していたり頭から出血するなどすることがほとんどです。このような場合は、怪我をしたことは一目瞭然です。しかし、外見上は怪我を負っていなくても目に見えないところで負傷している可能性があるのが脳挫傷の怖いところです。
脳挫傷の症状は、交通事故の発生から数時間後に現れることもあります。そのまま放置すると症状が悪化して、意識不明の重体などに陥る可能性があります。事故直後は何ともなかったとしても必ず病院に行ってくわしい検査を受けるようにしてください。
交通事故にあったら?
必ず病院行き、頭を負傷している場合はとくに精密検査を受けること
脳挫傷では画像検査が行われるのが主で
- MRI
- CT
- レントゲン
などを受けるのが一般的です。
脳挫傷の治療は手術?
脳挫傷では脳の一部が損傷しています。損傷によって脳組織は破壊されるので、脳そのものが再生することはありません。
したがって、治療によって脳挫傷による損傷自体をもとの状態に戻すことはできないという点では、根本的な治療法がないと言えます。
脳挫傷で起こった脳出血・脳浮腫(むくみ)で脳を圧迫するなどして、頭痛や吐き気など何らかの症状が出ることがあります。このような症状を取り除くために、出血や脳浮腫に対して手術・投薬といった対症療法がとられることになります。
交通事故で脳挫傷…後遺症は?
交通事故で脳挫傷を負うと、治療をおこなっても後遺症が残る可能性があります。後遺症と一口に言っても、いわゆる植物状態といわれる遷延性意識障害といった重篤なものから頭痛など、比較的軽い症状までさまざまです。
どのような後遺症が残るのか代表的な症状を見ていきたいと思います。
後遺症の症状①頭痛・めまい
脳挫傷では、「頭痛・めまい」の後遺症が残る可能性があります。脳挫傷は外傷性くも膜下出血を併発しやすく、脳内の出血によって頭痛やめまいが引き起こされることになります。
頭痛やめまいは脳挫傷だけでなく、むちうちなどでも発症する可能性もあります。何が原因で頭痛などがおこっているのか精密検査によって原因を特定することがポイントです。
後から痛みが出てきた場合はこちらをご覧ください。
後遺症の症状②てんかん
脳挫傷では、「外傷性てんかん」という後遺症が残る可能性があります。
外傷性てんかんとは交通事故など外部的な衝撃によって発症したてんかんで、
- 意識消失
- けいれん発作
などの症状を慢性的に引き起こします。
交通事故の脳挫傷が原因でてんかん発作がつづくのであれば、てんかんの頻度や症状の程度に応じた後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺症の症状③嗅覚・味覚障害
脳挫傷では、「嗅覚・味覚障害」の後遺症が残る可能性があります。鼻や目そのものが損傷を受けるなどしなくても、脳挫傷によって脳に損傷を受けると感覚機能に障害が発生する可能性があります。
嗅覚障害、味覚障害の症状例としては、
- においを全く感じない
- においがかすかにしか感じられない
- 目が全く見えない
- 目がかすかにしかみえない
などがあげられます。
後遺症の症状④性格変化?認知症?高次脳機能障害
脳挫傷では、「高次脳機能障害」という後遺症が残る可能性があります。
高次脳機能障害の後遺症が残ると事故後、
- 物忘れが激しくなった
- 怒りっぽくなった
- ぼんやりしていることが増えた
など性格が変わったようになることがあります。
脳機能の障害なので一見して分かりにくいことから、高齢の方が事故にあわれた場合、加齢による認知症であると勘違いされてしまうこともあります。交通事故による高次脳機能障害であるかどうかの判断は脳外科など専門の医師による慎重な判断が必要です。
後遺症の症状⑤遷延性意識障害
脳挫傷では、「遷延性意識障害」という後遺症が残る可能性があります。一般的に植物状態といわれるような、重度の昏睡状態が継続する状態をいいます。
自分自身の力で動くことができず、
- ① 起き上がれない
- ② 自力で食事がとれない
- ③ トイレに行けない
- ④ 発語が困難になる
- ⑤ 意思疎通がとれない
- ⑥ 目でものを追えても認識できない
このように、寝たきりの状態になります。
後遺症から回復…脳挫傷のリハビリは?
脳挫傷によって破壊された脳組織は再生されることはありませんが、残った脳が失った部分の役割をになうことができる可能性があります。リハビリなどによって脳機能の回復がめざされることになります。
リハビリの内容は?
- 寝返り・起き上がりなどの基本動作を通して、運動機能の回復をはかる
- 手芸・工芸・家事・仕事などの動作を通して、生活に必要な動作・社会適応能力の回復をはかる
- 発音・発声などの動作を通して、話す・聞くなどの機能の回復をはかる
後遺症の症状に合わせてリハビリの内容はさまざまです。作業療法士や理学療法士などのサポートを受けながら、後遺症からの回復を目指します。
脳挫傷による後遺症なし/ありの慰謝料
後遺障害が認定されるかどうかで、このように請求できる損害賠償の項目が変わってきます。つまり最終的に受け取ることができる金額に影響が出てくるということを意味します。
後遺症なし/後遺症ありごとの慰謝料・損害賠償についてそれぞれ見ていきたいと思います。
脳挫傷による後遺症なしの慰謝料
脳挫傷で後遺症が残らなかったり後遺障害等級に該当しない場合に、事故の相手方に請求できる損害賠償はつぎのとおりです。
▼症状固定前 |
---|
治療費 |
治療にかかる費用 |
通院交通費 |
通院にかかる交通費 |
入院雑費 |
入院にかかる雑費などの損害賠償 |
休業損害 |
怪我をして仕事を休んだりした分の収入減に対する補償 |
入通院慰謝料 |
入院や治療で受けた精神的苦痛に対する慰謝料 |
その他 |
診断書作成費などの損害賠償 |
主にこのような項目の慰謝料・損害賠償を請求することができます。
脳挫傷による後遺症ありの慰謝料
脳挫傷で後遺症が残って後遺障害等級に認定された場合に、事故の相手方に請求できる損害賠償はつぎのとおりです。
▼症状固定前 |
---|
治療費 |
治療にかかる費用 |
通院交通費 |
通院にかかる交通費 |
入院雑費 |
入院にかかる雑費などの損害賠償 |
休業損害 |
怪我をして仕事を休んだりした分の収入減に対する補償 |
入通院慰謝料 |
入院や治療で受けた精神的苦痛に対する慰謝料 |
その他 |
診断書作成費などの損害賠償 |
▼症状固定後 |
逸失利益 |
後遺障害が残って将来的に得られなくなった収入減に対する補償 |
後遺障害慰謝料 |
後遺障害が残った精神的苦痛に対する慰謝料 |
主にこのような項目の慰謝料・損害賠償を請求することができます。逸失利益と後遺障害慰謝料は、後遺障害等級が認められた場合にのみ請求することができます。
慰謝料の総額を計算したい
慰謝料などの損害賠償として請求できる項目についてご理解いただけたと思います。では、それらすべてを算定するとどのくらいの総額になるのか気になると思います。そんなときはこちらをお使いください。
こちらの計算機を使えば、簡単に慰謝料をはじめとした損害賠償の相場を知ることができます。
「保険会社が示した示談金は正しい金額なのか?」
「慰謝料増額の可能性はないのか?」
など気になることがある方は、まずはこちらをお試しください。
脳挫傷で後遺障害等級の認定は得られる?
後遺症と後遺障害の違い
ここまでの解説で幾度か「後遺障害」という言葉が出てきたと思います。後遺障害等級の認定についてお話しする前に、後遺症との違いを簡単におさえておきたいと思います。
後遺症とは、傷害や病気など治療をうけても完治せず身体・肉体に何かしらの症状が残ることを言います。
対して、後遺障害とは、治療を続けても症状が良くも悪くもならない状態(症状固定)となり労働能力が喪失することを言います。
後遺障害等級は後遺障害の程度を1~14級までの等級で区分し、等級に応じて慰謝料が設定されています。
脳挫傷で後遺障害等級認定の可能性は?
後遺障害等級の認定を受けるためには、専門の認定機関による審査に通る必要があります。後遺症が残った人すべてが後遺障害等級に認定されるわけではありません。
このようなポイントをおさえることで、後遺障害等級の認定の可能性を高めることができます。
交通事故の脳挫傷に関するお悩みは弁護士に相談
ご案内|アトムの弁護士相談
交通事故で脳挫傷を負ったら、治療費や休業して得られなかった収入などお金のことで不安が多いと思います。とくに後遺障害を負われた方はさらに将来にわたっての不安が募ることでしょう。
交通事故で怪我や後遺障害を負ったら、最後まであきらめずに適正な慰謝料が得られるように対応することが大切です。そのために、弁護士の力を借りてみるのも一つの手です。
「保険会社が言う示談金の金額に疑問がある」
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
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