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交通事故で後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料の他、逸失利益を請求することができます。
聞きなれないけれど非常に大切な逸失利益。
ここでは後遺障害を負った場合の逸失利益について、弁護士とともに解説していきます。
目次
逸失利益とは、交通事故に遭い後遺障害等級が認められた場合に加害者側に請求できる賠償金です。
具体的な意味・賠償対象は以下の通りです。
交通事故で被った後遺障害により労働能力を喪失した結果、失うことになった収入に対する補償金。
逸失利益は後遺障害のために収入が減った場合、その減収分を補償するというものです。
しかし、すべての後遺障害が減収につながるとは限りません。
後遺障害の重さや部位、被害者の職種によっては減収が生じないこともあります。
そのような場合でも、逸失利益を受け取ることはできるのでしょうか。
交通事故がなければ得られたであろう収入と、被害者が交通事故後実際に得られる収入の差を損害とする考え方
交通事故による労働能力の喪失を財産的損害とみて損害額の算出をする考え方
ただし、実際に明らかな減収が生じていなくても、逸失利益が認められることもあります。
年齢や性別、職種を考慮し、今後の昇進や職業選択の幅に影響が出ると判断された場合です。
また、逸失利益としては認められなくても、慰謝料として考慮される場合もあります。
では、現実に減収は発生していないものの逸失利益が認められた判例を見てみましょう。
内容 | |
---|---|
職種 | 商社営業マン |
後遺障害 | 外部醜状 歯科補綴 神経症状 |
判決 | ・年間数百人の得意先、仕入れ先に対する営業活動を行っている ・精神的苦痛が大きい ・人と会うのに気が重くなり、消極的になるなど仕事の能力が低下 ・将来の昇給、昇進にも影響を及ぼしかねない状態 以上のことから、10年間にわたり10%の逸失利益を認めた |
名古屋地方裁判所 平成元年(ワ)第3643号 損害賠償請求事件 平成3年1月25日
交通事故における逸失利益の計算方法は以下の通りです。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
では、逸失利益の計算方法について詳しく説明していきます。
労働能力喪失率とは、後遺障害によって失った労働能力の割合を示したものです。
後遺障害等級に応じた基準が定められています。
その一部を見てみましょう。
労働能力喪失率 | |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | |
3級 | |
4級 | 92% |
略 | |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
しかし、上記の表は労災補償を目的に定められたもので、通常の損害賠償請求の際には参考にされる程度です。
つまり、実際の喪失率が上記表の基準と合わないと判断され、より現実に近い喪失率が認められることもあるのです。
そのことは、過去の判例でも明言されています。
交通事故による傷害のため、労働能力の喪失・減退を来たしたことを理由として、得べかりし利益の喪失による損害を算定するにあたつて、上告人の援用する労働能力喪失率表が有力な資料となることは否定できない。しかし、損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、被害者の職業と傷害の具体的状況により、同表に基づく労働能力喪失率以上に収入の減少を生じる場合には、その収入減少率に照応する損害の賠償を請求できることはいうまでもない。
引用元:最高裁判所第2小法廷 昭和47年(オ)第734号 損害賠償請求事件 昭和48年11月16日
この判例では、上記表の基準よりも大きな労働能力喪失率も認められうると述べています。
注意しなければならないのはその逆もありうるということです。
つまり、上記表の基準よりも小さな労働能力喪失率が認められる場合もあるということです。
表記載の労働能力喪失率を参考にしつつも、実際は現実の労働能力喪失率を判断するということなので、示談の際に争点になりやすいポイントです。
逸失利益とは、交通事故に遭わなければ将来得られるはずだった収入を一度にもらうということです。
その逸失利益を貯金・運用していくと、その収入を得られるはずだった頃には利息が付いて増額します。
これを、中間利息といいます。
その中間利息を見越して、予めその分を引いておくために計算式に組み込むのがライプニッツ係数です。
逸失利益の計算式を調べていると、ライプニッツ係数ではなくホフマン係数を適用したものが出てくることがあります。
ただ、現在はライプニッツ係数を適用する計算方法が主流となっているので、計算の際はライプニッツ係数を使うといいでしょう。
ライプニッツ係数は労働喪失期間の長さによってその数値が決まっています。
その数値は簡単に調べることができますが、2020年の民法改正の影響を受けるので、注意が必要です。
詳しくは、下記『民法改正と交通事故の逸失利益』をご覧ください。
逸失利益の計算で使う基礎収入は、以下のように算出します。
交通事故前年度の年収
交通事故前年度の申告所得
ただし必ずしもこの通りに基礎収入が算出されるとは限りません。
その一例として、以下の判例を見てみましょう。
救急救命士の資格を有する消防士(男・固定時32歳)の脊椎変形(11級7号)につき、学歴は高卒であるが、事故前年の年収570万円余は大卒男性年齢別平均額を6%上回っていたことから、賃セ男性大卒全年齢平均の6%増しである696万9288円を基礎とした
引用元:名古屋地判平19.2.23 交民40・3・782)
主婦や学生、失業者など無職の人は、後遺障害等級が認定されても逸失利益を請求できないのでしょうか。
まず主婦についてですが、主婦の家事労働は労働とみなされます。
したがって、逸失利益を受け取ることができます。
主婦の基礎収入は以下のように算出されます。
女性労働者の全年齢の平均年収(380万円ほど)
学生も、交通事故に遭い後遺障害が残れば逸失利益を請求することができます。
学生の場合の基礎収入算出方法は以下の通りです。
高校生以下
学歴計の男女別労働者全年齢平均
大学生
大卒の男女別労働者全年齢平均
ただし、高校生でも大学進学を希望していれば大学生と同じように基礎収入を出すことがあります。
また、大学生で就職先が決まっていた場合には、就職先の給与をもとに基礎収入を出すこともあります。
なお、これらの平均年収を出す際に参照する賃金センサスは、厚生労働省のホームページで確認できます。
学生の場合基礎収入の他に気になるのが、労働能力喪失期間がいつから始まるのかということでしょう。
学生の労働能力喪失期間の開始時期は、以下のようになっています。
時期 | |
---|---|
高校生以下 | 高校卒業時 |
高校生 (大学進学の蓋然性有) |
大学卒業時 |
大学生 |
ではここで、実際に交通事故に遭った中学生が大学進学を希望していた場合の判例を見てみましょう。
中学生(男・固定時15歳)の右小脳症状(14級)につき、高等学校に進学し、大学進学を希望していることから、賃セ男性大卒全年齢平均612万1200円を基礎とした
引用元:岡山地判平5.2.25 交民26・1・272)
失業者でも、将来働いて収入を得る可能性が認められれば、逸失利益が認められます。
しかし、高齢者などで今後も働いて収入を得る可能性が低いとみなされると、逸失利益は認められません。
失業者ながら収入を得ていたとしても、それが後遺障害の関係しない方法であった場合には、逸失利益は認められません。
不動産所得や年金、株式配当などです。
無職の人の基礎収入の算出方法は以下の通りです。
失業前の年収
※再就職先が決まっていた場合は、再就職先での収入から算出することも
後遺障害とは、治療を経ても治らず残った症状のことを指します。
したがって、後遺障害による逸失利益の労働能力喪失期間は、被害者の一般的な稼働上限年齢とされる67歳までとされることが多いです。
しかし、この労働能力喪失期間が限定される場合もあります。
等の場合がそれにあたります。
その他、後遺障害の改善傾向が認められなくても、むち打ちや神経症状の場合は労働能力喪失期間が限定されがちです。
むち打ちや神経症状は後遺障害12級、14級に当たります。
では、むち打ち、神経症状による後遺障害等級12級、14級の労働能力喪失期間の目安を見てみましょう。
むち打ち、神経症状による後遺障害等級12級の労働能力喪失期間は、5年から10年として処理されることが多いようです。
東京地方裁判所民事27部という交通事故関連の訴訟を専門に扱う部門では、10年とすることが多いようです。
同じくむち打ち、神経症状による後遺障害等級14級の労働能力喪失期間は、5年以下として処理される傾向が強いようです。
東京地方裁判所民事27部では5年とすることが多いようです。
12級 | 14級 | |
---|---|---|
傾向 | 5~10年 | 5年以下 |
東京地裁民事27部 | 10年 | 5年 |
ただし、これはあくまで傾向です。
むち打ちや神経症状の仕事への影響度、その永続性を主張することで、より長い期間が認められることもあります。
交通事故における損害賠償については、民法で規定されています。
その民法が、2020年4月1日から変わります。
それにより、交通事故の逸失利益にも変更点が出てきます。
ポイントは、法定利率の変更です。
それについて、見ていきましょう。
上記のように、民法が改正されることによる、法定利率が下がります。
この結果、受け取ることのできる逸失利益の金額が上がります。
民法改正で法定利率が下がることにより、逸失利益全体から控除される中間利息も減ります。
もう少し具体的に見てみましょう。
逸失利益全体から控除される中間利息
=年間利率5%と考えた場合の中間利息
逸失利益全体から控除される中間利息
=年間利率3%と考えた場合の中間利息
※年間利率は3年ごとに検討する変動制
民法が改正されても、算出される基礎収入は変わりません。
しかし、そこから控除される中間利率が変わります。
年間利率3%の中間利息は年間利率5%の中間利息より少ないのは明らかです。
その結果、加害者側から受け取れる逸失利益が増えるというわけです。
法定利率の改正に伴って、逸失利益の計算で用いるライプニッツ係数の数値も変わります。
ライプニッツ係数を調べる際には、それが民法改正前のものか後のものか、よく確認しましょう。
では、どれくらい違いが生じるのか見てみましょう。
今回は、以下のケースを想定して計算してみます。
①従来の逸失利益
550万×14%×ライプニッツ係数(11.27406625)
=約868万1031円
②民法改正後の逸失利益
550万円×14%×ライプニッツ係数(13.16611847)
=約1013万7911円
交通事故で後遺障害が残ったら、逸失利益について弁護士に相談しましょう。
そうすることで、
というメリットがあります。
逸失利益の計算の際、必ずしも後遺障害等級に沿った労働能力喪失率が適用されるとは限りません。
実際の労働能力喪失率がもっと高いなら、もっと高い喪失率を適用できます。
弁護士に相談すると、機械的に計算するのではなく、このようにより実態に即した逸失利益を計算してもらえるのです。
また、示談交渉相手である加害者側任意保険会社は、
労働能力喪失率や労働能力喪失期間を実際よりも低く見積もってくる
ことが少なくありません。
こうしたことに気づき、示談交渉の中で適切な金額になるよう主張するのは難しいです。
しかし弁護士に依頼していれば、こうした示談交渉も代行してもらえます。
では、ここでアトム法律事務所による示談交渉で逸失利益が増額した事例をご紹介します。
① | ・被害者の足の欠損について、労働能力喪失期間5年と提示された ・足の欠損で労働能力喪失期間5年というのは明らかに不合理 ・67歳までの26年間を労働能力喪失期間として主張 ・逸失利益が71万円から226万円に |
---|---|
② | ・後遺障害等級12級の労働能力喪失率について、加害者側保険会社は14%が基準のところ8%~10%と主張 ・障害が残った箇所に生じる運動制限などを理由に14%を主張 ・労働能力喪失率14%として交渉成功 |
こうした相談をしたいものの、弁護士費用や敷居の高さが気になって相談できない人もいます。
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弁護士費用特約を利用すると、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。
岡野武志
実際に減収が生じていなくても逸失利益を受け取れるのかについては、判断が割れるところです。
実は逸失利益については、差額説と労働能力喪失説という2つの考え方があります。
差額説が採用される場合には、逸失利益が認められない可能性が高いです。