作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故退職

交通事故で退職した場合の慰謝料や休業損害、雇用保険、逸失利益を解説!

交通事故で退職したらどうなる?
  • 交通事故で退職したから、定年退職の場合よりも退職金が少なくなった…
  • 交通事故で仕事を退職したら、慰謝料は請求できる?
  • 交通事故で退職後、再就職先が決まるまでの収入はどうする?

交通事故によるけがでやむを得ず仕事を退職した場合、退職金や失業中の収入などについて不安を感じがちです。
どのような賠償請求ができるのか、どのような退職理由にすべきなのかについて、詳しく解説していきます。

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交通事故で退職した場合の収入に関する賠償金4種

①後遺障害逸失利益

交通事故で負った後遺障害によって退職し、得られる収入が減ってしまった場合には、逸失利益を請求することができます。

後遺障害逸失利益

交通事故による後遺障害によって労働能力を失ったことで得られなくなった収入に対する補償。

後遺障害逸失利益を請求するためには、

  • 後遺障害等級が認定されていること
  • 後遺障害により減収している、減収が見込まれること

が重要になります。

後遺障害逸失利益は、以下のように計算されます。

後遺障害逸失利益の計算

収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数

労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとに目安が決められています。
ライプニッツ係数は、基本的には症状固定時年齢~67歳までの期間に対応する係数を用います。

②退職金差額

交通事故で仕事を退職した場合、定年退職の場合と比べて退職金が低額になることが考えられます。この退職金差額については、以下の条件がそろうと、加害者側に請求できる可能性があります。

退職金差額請求の条件
  • 交通事故によるけがと退職または退職金減額との間に相当の因果関係が認められる
  • 交通事故がなければ被害者は定年までその会社で働いていたという蓋然性が認められる
  • 退職時に退職金が支払われる蓋然性がある

ただし、実際には退職金差額は加害者側に請求しない場合も多いです。

理由としては、退職金差額を請求することで結果的に請求できる賠償金額が下がる可能性があるからです。
定年が60歳として、実際に計算式を見てみましょう。

退職差額金を請求しない場合

実際の定年が60歳であっても基本的に67歳までを労働期間をみなして後遺障害逸失利益を計算する。
したがって、以下のようになる。

退職金差額を請求しない場合
退職金差額なし
逸失利益事故前の収入を用いて67歳までの逸失利益を計算
退職差額金を請求する場合

定年を60歳として退職差額金を考えるため、後遺障害逸失利益でも60歳までを労働期間として考えないとおかしい。
ただ、60歳までを労働期間と考えても、そこから再雇用で67歳まで働くと考えることができる。
したがって、以下のようになる

退職金差額を請求する場合
退職金差額あり
逸失利益60歳まで:事故前の収入(a)から計算
6167歳まで:再雇用時の収入(b)から計算
※a>b

上記からもわかる通り、②の場合には、60~67歳の間の逸失利益が①よりも低額になります。

  • 退職金差額を請求しない代わりに①の方法で逸失利益を請求する
  • 退職差額金を請求する代わりに②の方法で逸失利益を請求する

という2つの方法を比較したとき、結果的に前者の方が金額が高くなることも多いです。

そのため、実際には退職金差額は請求しないということが多いのです。

③雇用保険の失業手当

交通事故で退職した場合、雇用保険の補償である、失業手当を受けられる場合があります。
雇用保険の補償を受けられる条件は以下の通りです。

雇用保険の補償を受けられる条件
  • 就職する積極意思といつでも就職できる能力がある
  • 離職以前の2年間に通算して12ヶ月以上(※)の被保険者期間がある

※けがなど一定のやむを得ない理由での離職の場合は、離職日以前の1年間に通算して6ヶ月以上の被保険者期間が必要

雇用保険は基本的に、退職日の翌日から1年間支給されます。
ただし、けがなどのため30日以上働くことができない場合には、最長で3年間、支給を受けることができます。

雇用保険で受け取れる金額は、退職時年齢、退職前6ヶ月間の1日当たりの賃金、勤続年数等から決まります。

④休業損害

休業損害とは、交通事故によるけが等で休業した間の収入を補償するものです。したがって、基本的には休業した日数分が支払われます。

ただし退職後すぐに再就職先が見つからない場合には、

  • 実際に再就職先が見つかるまで
  • 再就職先が見つかるまでの期間として相当と考えられる期間

のうち短い方に対して、休業損害が支払われます。

実際、退職後も休業損害が認められた例をご紹介します。

麻酔科勤務医(男・固定時52歳、脊柱変形11級7号)につき、(略)休業によりその職を別の医師に交替し、復職を申し出た時には復帰できず職を失ったとして、事故前の収入を基礎に、退職時から他院に勤務するまでの5ヶ月間245万円余りを認めた。
(京都地判平27.3.19 交民48・2・391)

引用元:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻 2019』(日弁連交通事故相談センター東京支部)

退職で慰謝料が増額される可能性も

退職が交通事故を原因としたものであると認められた場合には、退職も慰謝料の増額事由として認められる可能性があります。

ただし、

  • 認められたとしても数十万円程度と考えられる
  • 弁護士による交渉でないと増額の可能性は低い

という点に注意が必要です。

増額交渉(弁護士なし)

慰謝料の金額は、基本的に加害者側任意保険会社との示談交渉で決められます。

特に退職による慰謝料など特別な事情については、弁護士による主張でないと聞き入れてもらえないことが多いのです。

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交通事故で退職する場合は理由に要注意

交通事故で退職する場合は「会社都合」で

交通事故で退職した場合でも、退職理由が「会社都合」でないと、交通事故と退職の関連性を証明できなくなります。その結果、交通事故による退職で生じた損害の賠償請求が難しくなるため、注意が必要です。

自己都合退職にならないためのポイント2つ

退職の手続きによっては、意識しないまま自己都合での退職になってしまう可能性もあります。

  • 自己都合での退職になってしまわないため
  • 交通事故による退職での損害賠償請求をするため

に気を付けるべきことについて確認しておきましょう。

退職の際の注意点
  • 退職勧奨に応じて退職願を出さない
  • 離職票、退職証明書の離職理由は会社都合と記載してもらう

交通事故によるけがで労働能力を失ってしまうと、会社側から退職勧奨を受けることがあります。しかし、それを受け入れて退職願を出してしまうと、退職者が自ら望んで退職したと判断されかねません。

したがって、退職願は出さない方がベターです。

また、離職票退職証明書は、雇用保険で失業手当を申請したり示談交渉で交通事故と退職との関連性を証明したりするために必要です。理由部分が自己都合となっていないか、しっかり確認しておきましょう。

この他、交通事故によるけがを受けて会社都合で退職したことを証明する資料としては、以下のものがあります。詳しい退職理由に応じた資料を受け取っておくと安心です。

会社都合退職の証明資料
退職理由資料
解雇解雇理由証明書
退職勧奨退職勧奨に応じた際の待遇の説明書
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交通事故で仕事を退職する場合は弁護士に相談

交通事故での退職を弁護士に相談する3つのメリット

弁護士に退職を相談するメリット
  • 慰謝料増額を交渉してもらえる
  • 妥当な賠償金額を主張してもらえる
  • 退職時の注意点を確認してもらえる
増額交渉(弁護士あり)

交通事故で退職した場合、それが慰謝料の増額事由になる場合もあります。しかし、上でも開設した通り、このような特殊な増額事由は、弁護士による主張でないと認められにくいのです。

また、示談交渉の相手である加害者側任意保険会社は、後遺障害逸失利益を低めに算出して提示してくる傾向にあります。
このような低めの提示額を妥当な金額に増額するための主張も、弁護士によるものでないと受け入れられないことが多いです。

また、退職時に退職勧奨などを受け、会社都合での退職が難しく感じた場合も、弁護士がいると安心です。

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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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