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交通事故の怪我の治療をしに行ったら「健康保険は使えない」と言われた…。
これは本当なんでしょうか?
目次
こういった、健康保険にまつわる疑問について答えていきましょう。
犯罪や自動車事故等の被害を受けたことにより生じた疾病は、医療保険各法(健康保険法(略))において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされています。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/iken/dl/vol11_01.pdf
交通事故に関する怪我の治療にも、健康保険は利用できます。
そのことは平成23年に厚生労働省が出した通知にも書かれています。
では、どういった場合に「健康保険は使えない」と言われるのでしょうか。
まず、法律上の理由で健康保険の利用が認められない場合があります。
などは保障の必要性や、労災保険が優先するといった理由から健康保険の利用が認められません。
それ以外にも、病院側の理由によって健康保険は使用できないと説明される場合があります。
日本医師会のアンケート調査では、交通事故全体での健康保険使用率は19.9%となっています。
さらに、使用の申出をしたが病院側からの説得により使用をとりやめたという事例があることも明らかにされています。
健康保険利用を断ることがある理由として、病院側は以下のように語っています。
相手が対人賠償保険に加入しており、本人が人身傷害補償保険に加入している場合は、入院のように治療費が高額になる場合でも、加害者、被害者双方に負担は生じないので健康保険を使用する必要はない。
引用元:日本医師会労災・自賠責委員会答申書 (http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20140129_3.pdf)
この主張をもとに考えてみましょう。
対人賠償保険:自動車事故の相手側の身体・生命に損害を負わせた時の補償
人身傷害保険:自動車事故の自分の身体・生命への損害の補償
対人賠償保険と人身傷害保険
対人賠償保険 | 人身傷害保険 | |
---|---|---|
補償の対象 | 相手方の身体・生命への損害 | 自身の身体・生命への損害 |
上記の医療機関の主張からすると、これらの保険が使えず被害者に負担が生じる場合は健康保険を利用すべきです。
具体的には、以下のようなシチュエーションになります。
対人賠償保険 | 人身傷害保険 | |
---|---|---|
加入率 | 88.1% | 79.0% |
無制限としている割合 | 99.5% | 5.8% |
出典:『自動車保険の概況2017年度版』・『損害保険料率算出機構統計集2016年度版_自動車保険統』
このデータから、自分と相手双方がどちらの保険にも入っていない確率は約2.5%となります。
また双方無制限保証ではなく被害者に負担が生じうる場合で考えると、約11.8%となります。
更に、交通事故におけるひき逃げの発生率は全体の事故数の約3.3%(平成30年版交通安全白書)となっています。
人身傷害保険は、補償上限を最低額の3000万円以下としている人が54.6%を占めます。
よって治療費が高額になって上限を超えてしまった場合などにも、十分な補償を受けられない可能性があります。
なお、ひき逃げの場合は、政府保障事業に治療費を請求することになります。
ここでの請求は健康保険利用が前提となっているので、必ず健康保険を利用しなくてはいけません。
健康保険利用によるメリット・デメリットをまとめておきます。
健康保険利用について
健康保険を利用する | 健康保険を利用しない | |
---|---|---|
メリット | (過失がある場合など)受け取れる慰謝料が増えることがある 自己負担になった場合に負担額が減る |
治療が無制限に受けられる |
デメリット | 治療に制約が生じることがある | 治療費・その他の損害が十分補償されない場合がある |
患者自身が加入している健康保険の保険者に「第三者行為による傷病届」による届出をします。
なお、この手続きが終わるまでは自由診療となることもあります。
治療終了後、健康保険の保険者は支払った治療費を責任割合に応じて加害者側に請求します。
「第三者行為による傷病届」があると、この工程がスムーズに進むのです。
「交通事故証明書」の入手方法については以下のページを参照してください。
健康保険は本人の意思によって使用が決定されます。
病院側がメリット・デメリットを説明してくるので、それを聞いて判断しましょう。
健康保険を利用すべき場合であること・「第三者行為による傷病届」を提出したことを伝えれば、健康保険を利用できるはずです。
それでも聞いてもらえない場合、病院を管轄する県庁に連絡することで、健康保険が利用できることもあります。
緊急を要さないのであれば、健康保険の利用に消極的でない医療機関を選びなおすという選択肢の一つです。
骨折・脱臼・捻挫、打撲、挫傷などの急性の怪我の治療については、健康保険を利用できます。
なお、骨折・脱臼については事前に医師の同意が必要です。
後から健康保険が使えない、という事態を避けるためにもまずは医師のもとで治療を受けましょう。
① | 日常生活の疲れなどからくる治療 |
---|---|
② | 医療機関と並行して受診している場合 |
③ | 通勤・業務中の怪我の場合 |
自由診療をしていたけれどもやはり健康保険利用に切り替えたい…。
そういった時、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
通常の場合、健康保険の使用による金銭の流れは
といった手順になっています。
これが交通事故となった場合は、①~③の手順に加え
といった手順が加わります。
自己負担分や立て替えた治療費については、相手方の保険会社に請求することになります。
原則として、治療に必要な範囲であれば全額示談金の一部として支払われます。
考えられるのは、相手方保険会社から治療費の打ち切りをされた場合です。
その後の治療費は、治療に必要な範囲であれば後から相手方に請求できます。
ですが立替になる以上、少しでも支出は抑えたいとことです。
「第三者行為による傷病届」を提出したうえ、健康保険を利用して通院する旨の説明が必要です。
症状が残っている場合は、必ず通院を続けるようにしてください。
治療費を立て替えるお金が無いからといって通院をやめると、示談の際に不利になります。
一番良いのは、そもそも治療費支払いを打ち切られないようにすることです。
医師や弁護士の協力を借りることで、治療費の打ち切りを延長できることもあります。
健康保険への切り替えは、患者本人が意思表示をし医療機関が承諾した日からの適用となります。
そのため、さかのぼって健康保険を利用していたものとして取りあつかうことは通常できません。
加害者が任意保険に加入しておらず、自賠責保険にしか入っていない場合があります。
こういった時は、健康保険を利用するべきです。
何故ならば傷害事故だと、自賠責保険からは最大で120万円しか支払われないためです。
治療費が100万円、慰謝料・休業損害などが100万円となった場合
(過失割合10:0)
実際の受け取り金額
健康保険を利用しない場合 | 健康保険を利用する場合* | |
---|---|---|
①損害の合計額 | 100万+100万=200万円 | 30万+100万=130万円 |
②受け取れる金額 | 120万円 | 120万円 |
③病院に支払った額 | 100万円 | 30万円 |
④被害者の損益(③-②) | 20万円 | 90万円 |
*3割負担として計算
相手方が任意保険に加入していない場合、治療費だけで自賠責保険の限度額を占めてしまうことがあります。
するとその他の慰謝料や休業損害が十分に補償されないことがあるのです。
上記の例では、健康保険を利用しない場合に慰謝料・休業補償は20万円しか賠償されていません。
ですが健康保険を利用した場合は、慰謝料・休業補償が90万円賠償されていることになるのです。
なお、相手方が任意保険に入っている場合にも健康保険を使用することはマイナスにはなりません。
治療費は原則として全額請求できます。
ですが治療が不必要・不相当だとされた場合、支払われないことがあるのです。
こういった万一のリスクに備え、治療費を抑えておくことが有用です。
交通事故で被害者・加害者双方に過失があり、またその割合が争われることがあります。
その場合、健康保険を使った方が負担が少なくなる場合があります。
過失割合がどのようなものか詳しくは、以下の記事を御覧ください。
交通事故の過失割合が加害者:被害者で8:2、被害者の治療費が100万円の場合
治療費の負担額
健康保険を利用しない場合 | 健康保険を利用する場合* | |
---|---|---|
①病院に支払った金額 | 100万円 | 30万円 |
②請求できる金額 | 100万×0.8=80万円 | 30万×0.8=24万円 |
③被害者の負担額(①-②) | 20万円 | 6万円 |
*3割負担として計算
過失がある場合、過失割合ぶんの治療費は自己負担となります。
そこで健康保険を使い治療費を抑えておくことで、最終的な負担額を減らすことが出来ます。
少しでも過失がある場合や、過失割合で争っている場合は健康保険を利用しましょう。
交通事故の治療にあたっては常に不安がつきまといます。
健康保険を使うべきか、怪我が治らないのではないか、きちんと補償がされるのか、相手方との交渉が長引くのではないか…。
そのような時は、ぜひ弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。
24時間利用できる窓口を用意して、被害者の方ひとりひとりにあったアドバイスをいたします。
弁護士に依頼することで資料の収集、保険会社との交渉などを一任できます。
治療に集中的に打ち込み、早く日常生活に復帰するお手伝いをいたします。
まずはお気軽にご相談ください。
健康保険は交通事故の怪我の治療に使えます。ただし、無免許運転・飲酒運転中の交通事故や通勤・業務中の交通事故などは、補償の必要性・労災保険優先などの観点から、法律上、健康保険の利用が認められていません。 病院側の理由で健康保険が使えない?
切り替えは可能です。「第三者行為による傷病届」の提出、健康保険を利用して通院する旨の説明が必要です。ちなみに、健康保険に切り替える前の自由診療の分までさかのぼって、健康保険を利用していたものとして切り替えることは通常はできません。 自由診療から健康保険への切り替え
①相手方が任意保険未加入のとき②過失割合に争いがあるときなどは、健康保険を利用して治療を受けることをおすすめします。治療費が被害者の自己負担になってしまうなど、不利益が起こるリスクが想定されるからです。 健康保険を使ったほうがいい理由
野尻大輔
自由診療の方が健康保険よりも病院側の利益が大きくなるというのが第一の理由と考えられます。
また、健康保険による治療は、使用できる薬剤の種類・量・リハビリの回数などに制約があります。
一方で交通事故の治療は緊急を要し、後遺症を残さないためにも制約のない治療が理想です。
そのため、病院側としては「健康保険適用のせいで適切な治療ができない」という事態を避けたいのです。