作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
手首骨折の後遺症|手術や治療は?しびれ・痛み・変形も後遺症?後遺障害慰謝料はいくら?
この記事のポイント
- 手首骨折の後遺障害には「痛み・しびれ」「曲がらない」「変形」などがある
- 検査結果などの科学的根拠を元にした後遺障害認定が重要
- 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能
手首の骨折は、
- 直接手首が加害者側と接触して骨折する
- 転んだ拍子に地面に手をついて骨折する
など、色んな状況で発生してしまいます。
手首の骨折は日常生活で大きな不自由になります。
この記事では交通事故による手首の骨折を弁護士が解説します。
適切な慰謝料の獲得を目指していきましょう。
- 手首の骨折は必ず手術する?
- 後遺症はどのようなものがある?
- 手首の痛み・しびれ・変形・曲がらない…これって後遺障害になる?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
手首骨折は交通事故でも発生頻度が高いものです。
専門用語では橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)とも呼ばれています。
骨密度が関連しており、高齢者は特に注意が必要です。
手首骨折の基礎知識|もしも手首を骨折してしまったら?
手首骨折の症状
手首の骨折は「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」とも呼ばれています。
肘から手首までには2本の骨(長管骨)があります。
そのうち、ひじから親指側の骨を橈骨(とうこつ)といいます。
橈骨の中でも手首に近い部分の「橈骨遠位端」といい、いわゆる「手首」のことです。
そのほかにも専門的にいうと「手首骨折」の分類されうる骨折は
- 尺骨遠位端骨折(しゃっこつえんいたんこっせつ)
- 遠尺骨遠位端骨折(えんしゃっこつえんいたんこっせつ)
- 舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)
- 手根骨骨折(しゅこんこつこっせつ)
このような呼び方があり、すべて手首骨折とされる症状名です。
手首骨折には以下のような症状があります。
- 痛い
- しびれている
- 動かしづらい
- 変形している
病院では、まずX線検査が行われます。これは骨折の有無、程度を診断するものです。
骨折のずれ(転位)が起こっていたり、粉砕している場合はCT検査を実施します。
手首骨折の治療、リハビリはいつ?
まず病院は整形外科の受診となります。
治療方法は
- ギプスで固定
- 医療用の針金で固定
- 医療用の金属板固定
主にこの3つから、被害者の骨折の程度や年齢を考慮して選択します。
医師の話をよく聞くようにしましょう。
比較的軽度の時には手術をせずにギプスで固定する「保存治療」が選択されるようです。
リハビリ
ギプスによる固定は必要なのですが、固定状態が続くことで別の症状(関節の範囲が狭くなるなど)が起こってしまいます。
ですので、リハビリはギプスをとる前から開始することが多いようです。
手首骨折の後遺症|しびれ・痛みは後遺障害にあたる?
後遺症(後遺障害)
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
手首骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
手首骨折の後遺症
- 痛みやしびれを感じる
- 手首が動かない
- 動かせる範囲が限られてしまう
- 変形してしまった
- 骨折部がぐらぐらする
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
【参考】舟状骨骨折をした場合
舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)は、橈骨遠位端骨折と同じくらい多い骨折です。
手の関節にある8つの小さな骨(手根骨)のうち、親指側に近い位置にあります。
舟状骨は骨折しても、明らかな腫れや変形が起こりにくいとのことです。
また、骨そのものも小さいので目立たず、見過ごされてしまう可能性も否定できません。
また、舟状骨自体が血行が良くない位置にあるので、治りが遅い特徴があります。
放置されて骨がくっつかない状態になると、偽関節(ぎかんせつ)という状態になり、ぐらぐらと異常な動きを見せます。
「偽関節」の箇所では骨の変形が進みます。
すると、動かしづらさや痛みの元になってしまいます。
手首骨折で慰謝料が増えるって本当?
手首骨折の後遺症により増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益
上述した後遺障害等級に認定されると、加害者側から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害の逸失利益
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
逸失利益については下記の関連記事でも紹介しています。
気になる方はぜひ読んでみてください。
<関連記事>逸失利益の仕組み・計算方法
後遺障害等級の申請方法|手首骨折の場合
では、実際に手首骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
①症状が固定される
一定期間治療を継続すると
- 怪我が完全に治る
- 症状の改善が見込めなくなる
に分かれます。
「改善が見込めない時期」のことを症状固定といいます。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6ヶ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
②後遺障害診断書・画像検査結果などの用意
医師から症状固定の診断を受けたら、次は後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害診断書は、医師に作成を依頼しましょう。
医師に作成してもらった後遺障害診断書などをつかって、後遺障害の申請をします。
方法は2種類あります。
(1)事前認定
(2)被害者請求
この2つについて違いをみていきましょう。
事前認定
被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出します。
→そのほかの資料などは加害者の任意保険会社が用意して提出します。被害者はどのような資料が提出されているかは分かりません。
被害者が資料収集などをする必要がないので、手間は最小限で済みます。
被害者請求
被害者が経過証明書などその他の資料も用意して自賠責保険に提出します。
すべての書類・申請の提出を被害者が行います。
→事前認定と比べると被害者の負担は大きくなります。
後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査したり、不利な状況があればその事由などの説明を添えることができます。
→後遺障害認定を受けるための工夫ができます。
→手首骨折箇所の検査結果など、CT・MRIなどの科学的根拠を示せることも「被害者請求」の強みです。
ちなみに、被害者請求のデメリットの一つである「書類などの収集の手間」については、弁護士が代わりに行うことが回避できます。
被害者請求かつ弁護士への依頼が、後遺障害認定を受けるためには最も効果の高い選択肢といえます。
比較
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
③損害保険料率算出機構による審査
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
手首骨折の後遺症が「身体に残っている」ことを示せるかがポイントです。
例えば「形が変わってしまった」と書くだけではなく、
- 交通事故前後の比較写真を用いる
- 変形した角度を測定する
など、誰がみても変形と分かるような示し方が必要です。
そして審査結果をふまえて自賠責保険会社が等級認定を行い、被害者へ結果が通知されます。
より細かな認定手順などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
手首骨折による「痛み」「しびれ」の後遺障害
手首骨折による痛み・しびれの後遺障害等級は何級?
骨折が治った後でも、指先や手首に
- 痛み
- しびれ
こういった感覚が残ってしまう場合があります。
認定される後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
手首骨折による痛み・しびれ
等級 | 内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
痛みやしびれは後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
どちらで認定されるかは、「痛い」「しびれている」など被害者本人にしか分からない自覚症状を検査結果や画像所見などの医学的証拠をもって示せるかで変わります。
医学的所見がみられる場合は12級13号、症状の説明ができる場合は14級9号となる傾向があります。
しかし「痛み」「しびれ」はなかなか後遺障害認定されづらい性質があります。
「14級」の方が後遺障害等級としては軽度とされていますが、そもそも「14級」と認定される保証はありません。
ですので、後遺障害認定を目指すなら交通事故の解決実績が豊富な弁護士への相談・依頼をしましょう。
後遺障害慰謝料
痛み・しびれの後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
加害者側から提案される金額(自賠責基準)と、弁護士が交渉で使う基準(弁護士基準)では3倍以上の差が出ます。
痛み・しびれで100万円を超える慰謝料を受けとる可能性がある一方で、提案される金額は約30万円…。
加害者側から提案される金額での示談は避けることをおすすめします。
手首骨折で「手首が曲がらない」場合の後遺障害
手首骨折によって手首が曲がらない時の後遺障害等級は何級?
「手首が曲がらない」ことも手首の骨折の後遺障害に認められます。
- 手が思うように曲がらない
- 手が曲がりにくくなった
手首に関する不自由で認定を受ける可能性がある後遺障害等級は次の通りです。
後遺障害等級
手首骨折により手首が曲がらない
等級 | 症状 |
---|---|
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
3大関節とは
上肢というのは、肩から指先までのことです。
3大関節とは
上肢にある肩・ひじ・手首を上肢の3大関節といいます。
「用を廃する」とは
「用を廃する」とは次のような意味です。
関節の用を廃す
- 関節がまったく動かない
- 神経麻痺などにより外部からの力では動くものの、自力ではまったく動かせない
- 障害のない関節と比べ可動域が1/10以下のもの(手首では目安として20度以下)
関節の機能に著しい障害を残すもの
… 障害の無い関節と比べ可動域が1/2以下のもの(手首では目安として80度)
節の機能に障害を残すもの
…障害の無い関節と比べ、可動域が3/4以下に制限されているもの(手首では目安として125度)
上記に示した「角度」とは
- ① 背屈(手首を反らす運動)
- ② 掌屈(手首を倒す運動)
この①②合計の角度をさします。
手首の可動域別で後遺障害等級をまとめると次の通りです。
後遺障害等級
手首の可動域と後遺障害等級
等級 | 症状 |
---|---|
8級6号 | 手首がまったく動かない~可動域が障害の無い関節の1/10以下 |
10級10号 | 手首の可動域が障害の無い関節の1/2以下* |
12級6号 | 手首の可動域が障害の無い関節の3/4以下* |
*この基準を超えても認められる場合がある(参考可動域の結果による)
参考可動域とは、
- 手首を親指側に曲げる
- 手首を小指側に曲げる
表の症状にわずかに当てはまっていなくても、参考可動域の角度をみて等級認定がなされることもあります。
後遺障害10級の場合をみてみましょう。
<参考>
後遺障害等級10級
認定基準である「傷害のない関節の可動域の1/2」を10度まで上回っている場合次のように考えます。
参考運動を確認し、<親指側に15度、小指側に30度以下しか可動域がない場合>は10級認定される可能性があります。
もし「手首が曲がらない」という症状で後遺障害認定を受けようと思っている方は、このように「曲がらなさ」を数値で示していかなくてはいけません。
弁護士に相談・依頼していただけたら、検査結果を踏まえた認定等級の見通しなどもお伝えすることができます。
手首骨折により手が曲がらない場合の後遺障害慰謝料の相場は?
手首が曲がらない場合、認定される可能性がある後遺障害等級は次の3つがあげられます。
なお、手首以外にも肩などに異なる後遺障害が認定されたならば、次に示す3つの等級よりも高く認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料
手首が曲がらない場合の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級6号 | 324万円 | 830万円 |
10級10号 | 187万円 | 550万円 |
12級6号 | 93万円 | 290万円 |
認定される等級は8級から12級と幅広くあります。
ポイントとしては、8級・10級では2.5倍以上、12級では3倍以上の金額差がついてしまうことです。
弁護士に依頼すると「弁護士費用」が心配という声はよく聞きますが、弁護士費用を支払ってもなお、自賠責基準よりも高い金額をもらえるケースがほとんどです。
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手首骨折による「変形」の後遺障害
手首骨折による変形の後遺障害等級は何級?
骨折してしまった結果、骨が正しい位置で戻らずに、変形してしまうことがあります。
この章では手首骨折による変形を中心にチェックしていきましょう。
後遺障害等級
手首骨折による変形
等級 | 症状 |
---|---|
7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残す |
CHECK
長管骨というのは、手・足(四肢)にみられる長く伸びた管状の骨のことをさします。
手首近辺には、橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)という2本の長管骨があります。
親指側から肘にかけての骨が橈骨(とうこつ)、小指側から肘までが尺骨(しゃっこつ)です。
著しい運動障害とは
骨がくっつかず、その部分が本来異なる可動域となってしまうことを偽関節といいます。
偽関節が異常に動いてしまうために、常に硬性補装具が必要なことをさします。
長管骨の変形には次のような事例があげられます。
いずれかに当てはまる場合は、長管骨の変形となります。
- ① 橈骨および尺骨の両方が15度以上屈曲して不正癒合したもの(いずれか一方のみでも、その程度が著しいものは該当)
- ② 橈骨又は尺骨の端部分の骨がくっついていない状態
- ③ 橈骨又は尺骨のいずれか一方に偽関節を残すもので、硬性補装具を必要としないもの
- ④ 橈骨又は尺骨の端部分のほとんどを欠損したもの
- ⑤ 橈骨若しくは尺骨(それぞれの端部分を除く)の直径が2分の1以下に減少したもの
手首骨折による変形の後遺障害慰謝料の相場は?
後遺障害慰謝料
手首変形の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
7級9号 | 409万円 | 1000万円 |
8級8号 | 324万円 | 830万円 |
12級8号 | 93万円 | 290万円 |
手首が変形してしまい、常に硬性補装具が必要になってしまうと1000万円の後遺障害慰謝料が基準となります。
しかしこれは弁護士に依頼した時の基準値です。
加害者側から提案される金額はその半分にも満たない409万円が基準値となっています。
今後大変な不自由と共に生きていくのに、何も知らずに示談してしまうと、弁護士依頼の金額路比べて半分程度しか受けとれない可能性があります。
手首骨折の後遺症に関するお悩みは弁護士にご相談ください
手首は骨折しやすい部位です。症状によっては、指がほとんど動かなくなったり、しびれという神経症状で残ったり…。生活面で大きな支障が出ます。
解説の通り、あらゆる後遺障害において「弁護士基準」で慰謝料を計算するだけで、加害者側から提案される金額よりも大幅に増額されます。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
そして、保険会社との示談交渉などを一任することで、手続きの煩雑さや加害者とかかわらなければいけない精神的な負担から解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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