作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故で植物状態|遷延性意識障害の後遺症?後遺障害慰謝料はどのくらい?
この記事のポイント
- 植物状態は脳へのダメージによる「遷延性意識障害」が原因
- 植物状態は後遺障害等級1級が認定される可能性がある
- 弁護士に示談交渉を依頼することで2~3倍の増額が期待できる
植物状態とは、脳に大きなダメージを負うことで意識不明のまま寝たきりの状態がつづくことをいいます。最も重い後遺障害とされています。一生涯つづくかもしれない植物状態という障害に対して適切な慰謝料などの補償は得られるのでしょうか。
- 植物状態の原因となる遷延性意識障害とは?
- 植物状態が後遺障害と認定される具体的な基準は?
- 後遺障害認定で得られる慰謝料の金額とは?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
植物状態は脳への深刻なダメージが原因となります。交通事故や転倒、スポーツなどで頭部への強い外傷がきっかけとなることが多いです。
植物状態の基礎知識|後遺障害に該当するのか?
植物状態の原因|遷延性意識障害とは?
植物状態といわれる状態は、「遷延性意識障害」であることをさします。遷延性意識障害の原因となるのは、交通事故などによる頭部(脳)への強いダメージです。
植物状態の原因
- 脳内出血
- 脳梗塞
- くも膜下出血
- 脳挫傷
- 硬膜下血腫
などこのような病名が原因となることが多いです。
植物状態の症状
植物状態はほとんど寝たきりの状態であるため、あらゆる場面で介助が必要とされます。具体的には、以下のような症状になります。
植物状態の症状
- 自力での移動ができない
- 自力での接触ができない
- 便失禁
- 尿失禁
- 声を出せても意思疎通がむずかしい
- 目をあけて眼球を動かせても認識することができない
寝たきりの状態がつづくことで、誤嚥性肺炎・尿路感染症などを引き起こす可能性もあります。
植物状態は後遺障害に該当する?
後遺症(後遺障害)
十分な治療をおこなっても、回復の兆しが見込めない状態で残存する症状
交通事故の被害では、障害の部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
植物状態は後遺障害に該当することになります。
植物状態で慰謝料は増加するのか
植物状態で増加する保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益
後遺障害等級に認定されることで、交通事故の相手方から支払われる金銭が増加します。
後遺障害が残ったことで支払われる金銭の一つが「後遺障害慰謝料」です。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことで被った精神的苦痛に対する損害賠償
さらに後遺障害慰謝料の他に支払われる金銭として「逸失利益」があります。
逸失利益
後遺障害を負ったことで労働能力が失われ、将来的に得ることができたはずの収入が減ることへの補償
<計算方法>
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
逸失利益を算定するうえで用いられる「労働能力喪失率」は、障害の部位・程度、被害者の職業・年収などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合における年収算定方法、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
後遺障害等級の申請方法|植物状態の場合
植物状態で後遺障害等級の申請をし、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを確認しておきたいと思います。
①症状固定
治療を継続しても症状の改善が見込めない「症状固定」という状態になると、医師からその診断が出されます。
後遺障害等級認定を受ける場合、事故から原則的に約6か月以上経過している必要があります。6か月よりも治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなるので注意が必要です。
②後遺障害診断書と医学的所見の用意
症状固定の診断が出されたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請方法として、2つのパターンがあります。
事前認定:「後遺障害診断書のみ」を被害者が任意保険会社に提出
被害者請求:後遺障害診断書とその他の医学的所見も用意して被害者が自賠責保険に提出
被害者請求は資料を集める手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利になる資料を自分で精査できるのが強みとなっています。弁護士に資料集めを任せることもできます。
比較
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料を集める手間がない | 自分で資料の確認ができる |
デメリット | 自分で資料の確認ができない | 資料を集める手間がかかる |
③損害保険料率算出機構の審査
提出された資料をもとに損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査をおこないます。
植物状態における後遺障害認定の審査では、
- 充実した記載内容の後遺障害診断書であること
- 十分な画像所見がそろっていること
- 交通事故と植物状態の因果関係が説明できること
- 生命維持に必要な身のまわりの処理動作において、常に他人の介護を要する状態であること
主にこのような点が主張できるかどうかが重要になります。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定をおこないます。
後遺障害等級の申請についてさらに詳しくはこちら
交通事故による「植物状態」の後遺障害
交通事故による植物状態の後遺障害等級は何級
交通事故による植物状態で認定される後遺障害等級は以下のようになります。
後遺障害等級
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)
等級 | 症状 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
認定基準
▼常に介護を要するもの
次の①②いずれかに該当すること
- ① 食事、入浴、用便、更衣などに常時介護を要する
- ② 高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要する
遷延性意識障害で植物状態になってしまうと現代の医学では元の健康な状態に戻ることはむずかしいです。程度はさまざまではあるものの回復したケースもみられますが、ほとんどの場合は常に介護を要する寝たきりの状態になってしまう可能性が高いです。
交通事故による植物状態の後遺障害慰謝料の相場
慰謝料の金額は、相手方が算定に使用する基準(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が算定に使用する基準(弁護士基準)で大きく異なります。
交通事故による植物状態に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
後遺障害慰謝料
交通事故による植物状態(遷延性意識障害)
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
弁護士に依頼することで1.75倍の後遺障害慰謝料を請求できます。慰謝料の増額を希望される方は、早い段階からの弁護士相談が重要になります。
また、ここで示している後遺障害慰謝料は、交通事故で受けた被害に対する損害賠償のひとつにすぎません。後遺障害慰謝料にくわえて、治療費・介護費用、休業損害などさまざまな損害が合計されることになります。
植物状態に関するお悩みは弁護士にご相談ください
植物状態は死には至りませんが、寝たきりの状態でその後の人生が奪われることになります。
にも関わらず相手方の保険会社から提示を受ける示談金(損害賠償)は、損害に対して不十分であることが多くみられます。
損害に対して補償を十分に受け取るには、弁護士に依頼することがポイントです。
保険会社との示談交渉など弁護士に一任することで、
- 慰謝料が増額する可能性が高まる
- 面倒な手続き
などから解放されます。
植物状態におちいったことに対する慰謝料はどのくらいになるのか、後遺障害等級の申請方法など、専門家としての視点でお話しすることができます。
まずは、気軽にLINE・電話での無料相談を利用して弁護士にご相談ください。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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