作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故によるくも膜下出血|高次脳機能障害とは?後遺症の等級は?
ご家族が交通事故に遭い、くも膜下出血を負ってしまった…
くも膜下出血をはじめとする頭部外傷を負ってしまったとき、認知障害や社会的行動障害などを引き起こす高次脳機能障害などの後遺症が残存してしまうこともあります。
ご家族が高次脳機能障害を患うと、日常生活などにも大きな影響が出ます。
- くも膜下出血とは?
- 高次脳機能障害とはどんな後遺症?
- 高次脳機能障害の後遺症等級は?
今回は、「くも膜下出血や高次脳機能障害などの後遺症」について詳しく解説していきます。
目次
交通事故によるくも膜下出血|高次脳機能障害はどんな後遺症?
そもそも「くも膜下出血」とは?
人の脳は、外側から皮膚、頭蓋骨、硬膜、くも膜、軟膜によって守られています。
くも膜下出血とは、くも膜と軟膜の間で出血が生じているという状態のことを言います。
交通事故によるくも膜下出血では、頭蓋骨の骨折や、脳挫傷、びまん性軸索損傷など、他の頭部外傷を併発しているケースも珍しくありません。
また、種々の後遺症が残存することもあります。
身体の麻痺、運動障害、言語障害などのほか、認知機能や社会的行動に障害が生じたりする「高次脳機能障害」を負ってしまうこともあります。
くも膜下出血による高次脳機能障害の症状は?後遺症は?
交通事故に遭うと後遺症として、高次脳機能障害を引き起こすことがあります。
高次脳機能障害とは、脳の損傷により、認知障害や社会的行動障害などを引き起こす障害です。
認知障害などの症状として挙げられるのは、記憶力・記銘力注意力・集中力・遂行機能などの障害です。
具体例としては、
- 新しいことを覚えられない
- 同じ質問を何度も繰り返す
- 気が散りやすい
- 指示されないと行動できない
などが挙げられます。
社会的行動障害とは、意欲・自発性の低下や、感情・欲求のコントロールの低下、対人関係の障害などのことをいいます。
たとえば、
- 周囲に合わせた適切な行動ができない
- 我慢ができない
- すぐ怒る
- 相手の気持ちを考えられない
などが挙げられます。
以上のような症状が起こると、仕事をしたり学校生活を送ることが困難になります。
重症である場合は、介護が必要となることもあります。
また、高次脳機能障害の症状は、骨折などのように目で見て確認することができない症状です。
事故後、すぐに気づくことが難しいケースもあります。
くも膜下出血による高次脳機能障害の治療法は?
高次脳機能障害は、リハビリによって回復することがあります。
もっとも、高次脳機能障害の症状や程度や種類は様々です。
すべての高次脳機能障害がリハビリによって回復するとはいえません。
どのくらいの期間で症状が改善するのかは人によって異なります。
しかし、一般的には高次脳機能障害の発症から数年ほどで症状回復の限界がくるようです。
よって、交通事故後はできる限り早い段階からリハビリを開始することが必要となります。
また、高次脳機能障害はご家族をはじめ、周りのサポートが非常に大事です。
突然、ご家族の性格が変わってしまい非常に戸惑っている方もいらっしゃると思います。
しかし、交通事故に遭い、高次脳機能障害になって苦しい思いをしている被害者にとっての支えはご家族です。
身近にいる方が日常生活やリハビリのサポートを行うことがよりよい回復への近道です。
くも膜下出血による高次脳機能障害の後遺障害等級を解説|認定基準とは?
くも膜下出血による高次脳機能障害の後遺症の等級は?
交通事故によって、後遺症が残ると、被害者は「後遺障害の認定手続き」を行います。
後遺障害認定後、後遺障害等級が認められると、被害者は等級に見合った自賠責保険金などを受け取ることが可能です。
後遺障害認定の手続きについては以下の記事をご覧ください。
後遺症の等級は1~14級までで、等級ごとに認定基準が定められています。
残存する症状が重大なほど、数字の低い等級になります。
高次脳機能障害の等級は、症状によって大きく異なることがあります。
高次脳機能障害では、1級・2級・3級・5級・7級・9級の認定がされる可能性があります。
内容については以下の表を確認しましょう。
まとめ
高次脳機能障害の後遺障害等級
1級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
以上の等級によって、受け取れる保険金などの金額も大きく異なります。
適切な後遺症の等級認定を受けることが十分な保険金を受け取るための第一歩です。
後遺症の等級の申請などについてさらに詳しくは以下の記事をご覧ください。
後遺症の等級認定についてのページ
くも膜下出血による高次脳機能障害の後遺症認定の基準は?
高次脳機能障害は、目で障害を確認することができません。
よって、症状を医学的に証明することが困難といえます。
明らかに画像診断で脳に異常が見られる重症の場合はともかく、中度・軽度の症状だと、画像所見の確認も難しいといわれています。
また、本人に自覚症状がないことも多いです。
家族などの身近にいる方が異変に気づくケースがほとんどであり、発見が遅れてしまうこともあるようです。
高次脳機能障害を医学的に判断するためには、意識障害や画像所見、医師による所見、家族や介護者等から得られる情報が用いられます。
もっとも重要視されるのが、意識障害と画像所見(CT・MRI)です。
高次脳機能障害の検査には、CTやMRIなどによる画像検査に加えて、神経心理学的検査などその他の機能検査も行います。
神経心理学的検査では、知能検査や記憶検査、遂行機能検査などが行われます。
例
代表的な検査
WAIS-R(ウェクスラー成人知能検査) |
世界でもっとも使用されている成人用の本格的な全般性脳機能検査。知識や単語、算数などの言語性検査と絵画完成や積木模様などの動作性検査から成り、これらの検査に2時間近い時間を必要とする。 |
MMSE(ミニメンタルステート検査) |
見当識・記憶・注意・言語などの障害を総合的に検査するもの。5~10分ほどで検査が可能。 |
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール改訂版) |
日本で最も広く用いられている検査。MMSEと同じく、短時間で簡便に全般的に評価することができる。 |
SLTA(標準失語症検査) |
聞いて理解する、話す、読む、書く等の検査を行うもの。 |
WMS-R(日本版ウェクスラー記憶検査) |
国際的にもっともよく使用されている記憶検査。言語をつかった問題と図解をつかった問題からできている。 |
三宅式記検査 |
聴覚性言語の記憶検査。2つずつ対にした関連のある対語(飛行機とパイロット等)と関連のない対語(机と野球等)を読み聞かせた後、片方を読んでもう一方を想起させるもの。 |
WCST(ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト) |
世界的に利用されている、カードを用いて前頭葉の機能を評価し、遂行機能障害の検査をするもの。 |
FAB(前頭葉機能検査) |
WCSTと同様に、前頭葉の機能を検査するものであるが、短時間で簡単におこない、信頼性も高い検査。 |
交通事故による高次脳機能障害では、頭部外傷によって意識消失を伴ったかどうかが判断において非常に重要です。
また、画像所見によって脳室拡大や脳萎縮などの異常が認められることも大きな判断材料となります。
画像所見だけではなく、事故前と性格などにどのような変化が見受けられるか判断材料になりますので、身近な方からの情報も非常に重要です。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。