交通事故後の吐き気は何科で治療？めまい、頭痛を伴う場合は後遺症？

そもそも、吐き気という症状が何故発生するのか考えてみます。
吐き気や嘔吐の感覚は、脳の最下部であり、背骨の中を通る脊髄のすぐ上にある延髄の嘔吐中枢がつかさどっています。
この嘔吐中枢が刺激されることで、吐き気が生じます。
嘔吐中枢が刺激される原因には様々なものがありますが、そのうちの一つに交通事故などの外傷があるのです。

*必ずしも嘔吐を伴うとは限らない

むちうち症といった言葉を聞いたことがあるでしょうか。
交通事故で追突など、大きな衝撃を受けた時に首が「むち」のように振れ、背骨の内部の組織を損傷してしまった症状です。
そして、嘔吐中枢のある延髄は、背骨の中を通る脊髄のすぐ上にあります。
つまり交通事故の衝撃によってむちうち症になり、脊髄周辺が傷ついてしまった結果、そのすぐ上にある嘔吐中枢が刺激されることがある、ということです。

実際に、むちうち損傷の患者につき29%に吐き気・嘔吐症状が認められたというデータがあります。
（『交通事故におけるむちうち損傷問題第二版』 38頁より）
吐き気と一緒に首の痛みがある場合は、まずむちうち症を疑ってください。

また、交通事故後に吐き気と同時に頭痛やめまいを生じることもよくあります。
頭痛やめまいもまた、むちうち症でよくみられる症状の一つです。

頭痛が起こる原因

むちうちによって頭痛が起こるメカニズムは、完全には解明されていません。
ですが事故の外傷で首が引っ張られることで脳への血流に異常を生じる、または後頭部の感覚をつかさどる首部分の脊髄にある神経への刺激により頭痛が生じるとも言われています。
実に、慢性化したむちうち患者の78%に頭痛があるというデータもあります。

めまいが起こる原因

めまいにも様々な原因がありますが、首の骨の変形や圧迫で脳の血流に障害が発生したためにめまいが生じることもあります。
むちうち患者の23%にめまいが生じている、というデータもあります。

むちうち以外にも、さらに重い要因で吐き気が生じていることがあります。
脳震盪や脳出血、脳挫傷といった症状でも嘔吐中枢が刺激されて吐き気をもよおすことがあります。
こちらの場合は頭部外傷や脳の損傷といったより重態な症状ですから、早い治療が必要です。
交通事故で頭を打って吐き気が生じた、というような時はたかが吐き気と思わず、診察を受けるようにしましょう。

吐き気といえば消化器内科や外科がまず思い浮かぶかもしれません。
ですが交通事故後の吐き気は、まず整形外科に行ってください。
整形外科は、骨や周辺の神経を専門とした診療科であり、むちうち症の場合はまずここにかかるのが良いでしょう。
めまい・頭痛を伴うときも同様です。

また、むちうちの問題ならば整形外科よりも近所の整骨院に行きたいとお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、最初の診療は整形外科で行うことをおすすめします。
交通事故では、「事故によって怪我を負った」という証明のため、事故発生直後の診断書が重要です。
ですが整骨院の先生は医師ではないため、重要な診断書を書くことが出来ないのです。
また、その他にも整形外科と比べると以下のような注意点があります。

*骨折と脱臼については応急手当または医師の同意がある場合に限る
**症状に有効かつ相当な場合、特に医師の勧めがあった場合に限る

整骨院では出来る施術に限りがあり、適切な治療が受けられない恐れがあります。
また後述しますが、整骨院に通った治療費は補償されないことがあります。
まずは整形外科を受診し、できれば医師の指示を受けたうえで必要に応じて整骨院に通院するようにしましょう。

むちうち症自体は、治癒期間について様々なデータがありますが平均して3~6カ月ほどが治療期間と言われています。
一方で6カ月以上症状が継続する例もあり、吐き気も同様に継続することもあります。
多くはむちうち症の治癒と共に症状も薄れますが、6カ月以上継続することもあるようです。

吐き気を含むむちうち症の治療費は、事故の相手方に支払ってもらえるのでしょうか。
前提として、治療費は必要かつ相当な実費全額を支払ってもらえます。
ですが、以下の治療費は「必要かつ相当でない」として支払ってもらえないこともあります。

*いずれも具体的な状況によって認められることもある

吐き気による入院費も支払ってもらえる？

実際に、嘔吐を主な理由として入院した際の個室使用料が問題となった事案があります。
この例では点滴や検査などの必要があったとして、個室使用料を含む治療費の賠償が認められました。（神戸地判平成10年6月25日）

整骨院での施術費も支払ってもらえる？

整骨院での施術費も、診療時間上整骨院にしか通えなかった、一定の効果があったなどの「治療に必要・相当」と言える事情があれば支払ってもらえます。

一方で

• 医師の勧めが無かった
• 治療日が整形外科と重複していた（しようと思えば整形外科で治療することができた）
• 通院日数における割合が多い

などの事情がある場合、「施術費の〇割のみ」という限定的な形で支払いが認められることもあります。

交通事故によって傷害を負った場合、その入通院日数・期間・頻度などに応じて入通院慰謝料が支払われます。
交通事故で支払われる慰謝料には、3つの基準があります。

• 自賠責保険での金額算定に使われる自賠責基準
• 各保険会社での金額算定に使われる任意保険基準
• 過去の裁判例に基づいた弁護士基準

相手方から提示される慰謝料の金額は、自賠責基準や任意保険基準で算定したものです。

ですが弁護士に依頼することで、それよりも高額な弁護士基準の額の慰謝料を受け取ることが可能です。

そしてこちらは、治療終了までの期間・通院日数などを記入するだけで慰謝料を計算してくれる計算機です。
最初に「軽傷・むちうち」の項目を選んだうえで、実際の慰謝料額がいくらになるか計算してみましょう。

この後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料が追加で支払われます。
では、むちうちの後遺障害は何級になるのでしょうか。
通常、むちうちの後遺障害等級は次のうちどちらかになります。

*弁護士基準での金額

ここでいう神経症状とは、主に痛みやしびれを指します。
ですので、残念ながら「吐き気がある」というだけでは後遺障害とは認められにくいということになります。
もっとも、吐き気・めまい・頭痛といった症状は多くの場合首の痛みを伴っています。ですからそれが後遺障害として認められれば、慰謝料を受け取ることができます。

実際のむちうちでの後遺障害等級獲得の手続きは、以下のページをご覧ください。

むちうちの後遺症認定、実は難しい？首の痛みなどの症状、検査や治療方法は？

交通事故によって生じる傷害で最も多いと言われる「むちうち症」。いったいどんな症状で治療にはどれくらいかかるのかを解説。さらに後遺症として認めてもらうためのチェックポイントも完全分析。必要なのは通院期間よりもある検査の有無？適切な検査・治療で満足のいく解決を目指そう。

交通事故の弁護士.jp

慢性的な吐き気は辛いのに、慰謝料には加算されないのか…と残念に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、吐き気があることで損害賠償額が増える可能性があります。
損害賠償に含まれる項目の1つ、逸失利益で長く続いている吐き気の存在が考慮された例があるのです。

ここでの労働能力喪失期間とは、通常は後遺障害等級で決まります。

では、実際に吐き気が考慮された事例を見てみましょう。

頭痛、吐き気を伴う痛みが持続していることが認められることから、通常のむち打ちの場合に比して、一定の調整をするのが相当であると解される（略）後遺障害については、別表第2第14級に該当し、通常5％とされるところ、原告の症状等に鑑み、9％とするのが相当である

引用元：福岡地判平成26年2月13日

後遺障害14級で、本来であれば労働能力喪失率5%のところ、吐き気などの症状があることから9%と認定されています。
ちなみに、この認定のおかげで被害者は逸失利益につき107万7640円の増額を叶えています。
吐き気のような症状がある場合は、きちんと一貫して主張することが、有利につながるかもしれません。

交通事故による吐き気は様々な傷病の症状として発生します。
たかが吐き気、と思わないでください。日常に支障がでるぶんは、しっかりと相手方から補償を受けるべきです。
そのための交渉や資料の収集、手続きなどはぜひ弁護士にお任せください。
とは言っても、急に弁護士に依頼するのには勇気がいります。
まずは費用や症状のことなどを、LINE・電話での無料相談でご質問ください。
弁護士があなたの立場に立ってお答えします。
交通事故後の吐き気に関するご不安は、アトム法律事務所にお気軽にご相談ください。