作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

バイク事故足切断

バイク事故で足切断…実際に起きたら保険金は1億円以上?事例でわかる慰謝料相場

バイク事故で足を切断したら?
この記事のポイント
  • バイク事故で足の開放骨折などが起こると、足の切断に至ることがある
  • 足切断の後遺障害等級は、切断の位置で異なる
  • 足を切断した際の保険金(損害賠償金)が1億円を超えることもある

バイクに乗っている最中、足を切断してしまったがそのまま気づかずに走り続けた…。
以前、そのようなニュースが話題となりました。
切断に気づかず走り続ける、というのは珍しいですが、実はバイク事故により足を切断してしまうこと自体はそこまで珍しい事故ではありません。
実際の事例を紹介しながら、もしバイク事故で足を切断してしまったら保険金はいくら支払われるのか、後遺障害はどうなるのかといったことを解説していきます。

  • 実際にバイク事故で足を切断した事件ってあるの?
  • 足を切断したら保険金はいくら支払われる?
  • その後の介護費や器具費はどうなる?


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バイク事故で足の切断って本当に起こるの?

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一気にバイクから放り出され崖下に落ちるのは一瞬の出来事で、気がついたときには崖から落ちて偶然、木に抱かれるようなカタチで崖の途中の枝に引っかかっていました。
「ああ、やっちゃった」と思いながらヘルメットを取ってふと自分の足に目をやると、腿のトコロから白い骨が覗いていました。
(略)麻酔からさめて兄から「足を切断した」と言う話を聞いた時
自分自身、かすかな記憶しかないのですが「やっぱりそうか」と答えたようです。

引用元:http://www.katch.ne.jp/~dappy-510/2-2dappy.html

バイク事故などの交通事故で足を切断する、というケースはほとんど毎年起こっています。
厚生労働省が実施する平成26年患者調査によれば、挫滅損傷及び外傷性切断により病院を訪れた・もしくは入院している人は約5000人いると言われています。

なぜバイク事故で足の切断が起こるの?

足の切断に至らざるを得ないような重大な怪我はいくつかありますが、代表的なものは開放骨折粉砕骨折です。

開放骨折

…骨折の際に皮膚が破れて、骨が露出したもの

粉砕骨折

…骨が複雑に粉砕したもの(以前は複雑骨折とも呼ばれていた)

いずれも元通りに骨をくっつけることが難しく、切断に至ってしまう場合があるようです。
バイクなどの自動二輪車は速度が出やすく、かつ走行中は足が露出している状態です。
そのため、足の骨折が比較的起こりやすいと言えます。

実際にバイク事故で足を切断した事例

実際に、バイク事故で足を切断した事例を見てみましょう。

事例①

加害車両がトンネル内道路を走行中、先行車両を追い越そうとして道路右側部分に進出した際に、対向車線を直進してきた被害者の自動二輪車に衝突した事故。
被害者はこれにより大腿部などを開放骨折し、右大腿部を切断した。(福岡地裁平成25年5月31日)

事例②

加害車両が路外施設に入るため、対向車線の車両間を横断して右折進行した際、直進してきた被害者の自動二輪車に衝突した事故。
被害者は右大腿部を開放骨折し、これにより右大腿を切断した。(横浜地裁平成30年2月26日)

事例③

被害者の自動二輪車が、交差点に向けて優先道路を直進中、交差点において右折進行しようとした加害車両と衝突した事故。
被害者は左足関節を開放骨折し、その後壊死が進んだことから左下腿を切断した。(金沢地裁平成22年11月24日)

事例④

被害者の原付自転車が交差点を赤信号で直進していたところ、青信号で直進してきた加害者の自動二輪車が衝突した事故。
被害者は右関節を開放骨折し、これにより右足首を不全切断した。(神戸地裁平成16年1月14日)

様々なシチュエーションの事故がありますが、比較的自動車との衝突事故開放骨折したことで切断に至った事例が多いようです。

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足を切断した時に残る「後遺障害」の等級は何級?

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14段階の後遺障害等級とは?

実際にバイク事故で足を切断した場合、事故後の対応の何が変わるのでしょうか。
まず足の切断など、治療後も残る症状を後遺障害と言います。

後遺症(後遺障害)

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならない(症状固定)という状態で残存する症状。
交通事故の場合、その部位と程度などにより14段階の後遺障害等級で区分される。

この後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料が相手方から追加で支払われます。
等級に認定してもらうまでの手続きは以下の通りです。

バイク事故による足切断で後遺障害等級を認定してもらうには?

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
足切断の場合は、リハビリを続けてもこれ以上歩行能力などが回復しないと判断された時点などです。
怪我から約6カ月以上経った時期が判断の目安とされています。

②後遺障害診断書の用意

症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
その提出には、2種類の方法があります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ
  • 被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する事前認定
  • 被害者がその他の資料も用意して自賠責保険に提出する被害者請求

被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる

③損害保険料率算出機構が後遺障害等級を審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
また提出された審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定を行います。

後遺障害等級は原則として書面のみで審査されるため、提出書類は非常に重要です。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。

バイク事故での足切断は何級になる?

では、足を切断した時の後遺障害は何級になるのでしょうか。
考えられる等級は、以下の通りです。

後遺障害等級

足の切断

等級 症状
15 両下肢を膝関節以上で失つたもの
24 両下肢を足関節以上で失つたもの
45 1下肢を膝関節以上で失つたもの
47 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
55 1下肢を足関節以上で失つたもの
78 1足をリスフラン関節以上で失つたもの

ここで用いられている言葉をさらに具体的に説明すると、以下のようになります。

用語

両下肢/1下肢

…両下肢は両足、1下肢は片足を指す。

「膝関節以上」

…股関節において寛骨(骨盤)と大腿骨(太腿の骨)の間で切断したもの

大腿骨で切断したもの

膝関節において大腿骨と下腿骨(膝下の骨)の間で切断したもの

「足関節以上」

…下腿骨で切断したもの

足関節において下腿骨と距骨(足関節で下腿骨と関節で接する骨)の間で切断したもの

「リスフラン関節」

…足の甲中心部にある、中足骨(足の指の骨)と中根骨(足の甲を構成する骨)の間で切断したもの

中根骨で切断したもの

足の切断に関する後遺障害等級はおおむね、どこの関節以上で切断したかによって区別されています。
切断した足の部位が大きいほど、後遺障害等級が高くなっています。

交通事故により足が短くなった場合にも後遺障害が設定されています。
ですが、切断によって足が短くなった場合は切断のみを後遺障害としてみます。
切断と短縮をそれぞれ後遺障害としてみると、事実の二重評価となってしまうためです。

バイク事故で足を切断した時の「後遺障害慰謝料」はいくら?

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

慰謝料金額相場の3基準比較

後遺障害等級に認定されると、その等級に応じて後遺障害慰謝料を得ることができます。

後遺障害慰謝料を含む慰謝料には、3つの算定基準があります。

  • 自賠責保険での金額算定に使われる自賠責基準
  • 各保険会社での金額算定に使われる任意保険基準
  • 過去の裁判例に基づいた弁護士基準

この中の自賠責基準と弁護士基準の金額を、足を切断した際の後遺障害慰謝料で比較すると以下のようになります。

後遺障害慰謝料

足の切断

等級 自賠責基準 弁護士基準
15
(両下肢を膝関節以上で失つたもの)
1100万円 2800万円
24
(両下肢を足関節以上で失つたもの)
958万円 2370万円
45
1下肢を膝関節以上で失つたもの)
712万円 1670万円
47
(両足をリスフラン関節以上で失つたもの)
712万円 1670万円
55
1下肢を足関節以上で失つたもの)
599万円 1400万円
78
1足をリスフラン関節以上で失つたもの)
409万円 1000万円

通常、相手方が提示してくるのは自賠責基準の金額です。
ですが弁護士に依頼することで、およそ2~2.5倍の弁護士基準の金額にまで増額して請求することが出来ます。
より充実した補償を求めるのであれば、弁護士に依頼することを一考しましょう。
さらに後遺障害慰謝料は、足の切断により受け取れる保険金の一部にすぎません。

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足切断が起こった場合に受け取れる保険金はいくら?

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保険金の内訳|バイク事故で足を切断したとき

保険金とは、示談後に相手方保険会社から支払われる損害賠償金です。
例えば、足を切断した手術代、その後の入院費、その間の収入、切断以降得られなくなった収入…など、様々な損害に対する補償金が含まれています。
主な保険金の内訳は、以下の通りです。

主な保険金の内訳
治療関係費 治療費 入通院のために病院に支払った費用
通院交通費 通院のために必要な交通費
付添費 入通院の付添看護の費用
入院雑費 入院中にかかる雑費
将来介護費 将来の介護にかかる費用
慰謝料 傷害慰謝料 傷害を負った精神的苦痛への補償
後遺障害慰謝料 後遺障害が残った精神的苦痛への補償
逸失利益 休業損害 治療中得られなかった収入
後遺障害逸失利益 治療後得られなくなる収入

足を切断するような事故の場合、特に一千万円単位の高額になりやすいのは慰謝料(傷害慰謝料+後遺障害慰謝料)、逸失利益将来介護費などです。

逸失利益

…交通事故の損害賠償’において,その事故がなければ将来的に得たであろうと思われる利益

基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数で計算する。

将来介護費

…交通事故により介護が必要となった場合、将来的に必要になる介護費用

1日あたりの介護費(※)×365日×平均余命に対応するライプニッツ係数で計算する

※足切断の場合は数千円程度のことが多い

ざっと保険金がいくらになるか知りたい方は、こちらの慰謝料計算機をご利用ください。

なお、この慰謝料計算機には将来介護費義足代、家をバリアフリーにした場合のリフォーム代などは含まれていません。
そのため、実際はこれよりも多くの保険金を受け取れる場合があります。

逸失利益やライプニッツ係数が実際いくつになるのかについて、より詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

バイク事故で足を切断したときの保険金の相場は1億円以上?

では冒頭に紹介した事例で、保険金(損害賠償額)の実際の金額をみていきましょう。

事例①

事例①(福岡地裁平成25年5月31日)

  • 被害者は症状固定時49歳の男性
  • 右大腿部を切断
  • 事故前の年収809万円
主な損害賠償の費目
  • 治療費392万6462円
  • 慰謝料2767万円
  • 逸失利益7474万8742円
  • 将来介護費569万1372円
  • 器具購入費1741万4516円

これらを合計した被害総額1億3360万6912円

切断が大腿部と足の大部分を失っており、入院期間も長かったことで慰謝料が高額になっています。
また被害者は高収入であったため、将来の収入の補償である逸失利益も特に高額になっています。
さらに器具購入費の一部として家屋の改造費約656万円が認められています。

事例②

事例②(横浜地裁平成30年2月26日)

  • 被害者は症状固定時30歳の男性
  • 右大腿部を切断
  • 事故前の年収372万1540円
  • 治療費529万2786円
  • 慰謝料2200万円
  • 逸失利益6370万1821円
  • 器具購入(交換)費521万6319円

これらを合計した被害総額1億1454万1547円

同様に大腿部を切断した例ですが、事例①と比べると若年ではあるものの年収が少ないため、逸失利益はやや少なくなっています。
また、義肢の作成費用を1回あたり95万として、その後12回ぶんの買替費用を認めています。
(実際はライプニッツ係数により単純に×12した金額では無くなっています)

事例③

事例③(金沢地裁平成22年11月24日)

  • 被害者は症状固定時20歳の男性
  • 左下腿部を切断
  • 事故当時は学生だったため年収はなし
  • 治療費151万3420円
  • 慰謝料1826万円
  • 逸失利益8619万1313円
  • 器具購入(交換)費777万49円

これらを合計した被害総額1億1402万1822円

下腿部の切断であり、切断部分は事例①、②より少ないため慰謝料などは比較的少なくなっています。
ただし被害者が若年であるため、約45年分の労働能力喪失期間が認められ、逸失利益が高額になっています。

事例④

事例④(神戸地裁平成16年1月14日)

  • 被害者は症状固定時73歳の男性
  • 左足首を不全切断
  • 事故当時の年収は不明
  • 治療費148万1310円
  • 慰謝料2220万円
  • 逸失利益2293万5059円
  • 器具購入(交換)費16万9494円

これらを合計した被害総額5023万7678円

足首の切断ですがその他の後遺障害も発生したため、慰謝料が高額になっています。
一方で被害者は高齢であり、切断部位も少ないため将来的な影響は低く計算され、逸失利益は少なくなっています。

まとめ|バイク事故の保険金の相場傾向

バイク事故で足の切断が起こった時の損害賠償金は、おおよその傾向として

  • 切断した部位が大きいほど後遺障害慰謝料などが高くなる
  • 被害者の年齢が低いほど逸失利益や将来介護費などが高くなる
  • 被害者の年収が高いほど休業損害や逸失利益が高くなる

と、様々な要素によって変動します。

これらの要素によっては、損害賠償金が1億円を超えることも珍しくありません。

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バイク事故・足切断に関する疑問は弁護士にご相談ください

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足の切断という痛ましい事故にあった場合、受ける衝撃も、その後の生活の不便もとても大きいものです。
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ですが相手方保険会社は必ずしも被害者に寄り添った適正な保険金を提示してくるとは限りません。
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提示された金額は適正か、集めるべき資料は何か、損害額はどう評価するのか、そのようなことを早めに認識しておくこと重要です。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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バイク事故で足切断に関するQ&A

足切断で後遺障害認定を得るための手続きは?

バイク事故で足切断という後遺症を負ったら、後遺障害等級の認定を得るために申請手続きに入りましょう。申請手続きは、①症状固定の診断を受ける、②後遺障害診断書を用意する、③損害保険料率算出機構によって後遺障害等級の審査が行われるといった流れですすんでいきます。 後遺障害等級認定における手続きの流れ

足切断は何級の後遺障害が認定される?

足切断の後遺障害は、1級5号2級4号4級5号4級7号5級5号7級8号の等級認定が予想されます。足切断に関する後遺障害では、足のどの関節より上で切断されることになったか、両足か片足(1足)かという点が考慮されることになります。 足切断の後遺障害等級について

足切断はどのくらい後遺障害慰謝料がもらえる?

足切断が後遺障害等級に認定されると後遺障害慰謝料を受け取ることができるようになります。慰謝料の金額は等級に応じて設定されていますが、算定に用いる基準によっても金額は大きく異なります。たとえば後遺障害1級の場合、自賠責基準は1100万円であるのに対して、弁護士基準は2800万円です。弁護士基準による算定が最も高額な慰謝料が得られることになります。 足切断の後遺障害慰謝料

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