作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

交通事故聴覚障害

交通事故で聴力低下の聴覚障害…聴力障害の後遺障害等級は何級?

交通事故で聴力低下・聴覚障害

本記事は「交通事故で聴覚障害が残った場合の後遺障害等級」について弁護士が解説します。

本記事のまとめ
  • 交通事故では聴力低下などの聴覚障害の後遺障害が残ることがある
  • 耳に関する後遺障害の等級は症状ごとにさまざま
  • 後遺症に対する慰謝料などは、後遺障害等級に応じた基準で算定される

交通事故で聴覚障害の後遺症が残って、
「希望する後遺障害等級は認定されるのか」
適正な慰謝料を手にすることはできるのか」
など、多くの不安の声が寄せられています。交通事故による聴覚障害が残った場合の対応について解説してきます。


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交通事故で聴覚障害が残る原因・治療法

交通事故で聴力低下…聴覚障害が残る原因

交通事故で負った怪我の内容や程度によっては、聴力低下難聴などの聴覚障害が残る可能性があります。

交通事故における難聴や聴力低下といった聴力障害は、さまざまな原因が考えられます。

交通事故における聴覚障害の原因

など、このような外傷などを原因として聴覚障害が引き起こされることが多いようです。また、むちうちによって難聴や耳鳴りなどの症状が引き起こされることもあるようです。

聴覚障害とひとくくりにしても、症状はさまざまです。

聴覚障害の症状
  • 音がゆがんだように聴こえる
  • 声がクリアに聞き取れず、こもったような音でしか認識できない
  • 雑音がする環境では音を区別しにくく、会話に支障がでる
  • 音がまったく聴こえなくなる

などの症状が引き起こされることになります。
このような症状によって会話やコミュニケーションに支障をきたし、気持ちをうまく伝えられないために心理的ストレスを感じることもあります。

交通事故の聴覚障害における治療法

聴覚障害における治療法は、原因や障害の程度に応じてそれぞれ異なります。もっとも、

  • 鼓膜に穴があいている
  • 耳小骨が骨折している

といった場合は、手術がおこなわれるケースもあります。

聴覚障害の改善に向けて、補聴器や人工内耳の使用などが検討されることもあります。

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交通事故で負う耳の後遺障害の種類・後遺障害等級

後遺障害の基本

交通事故で負う耳の後遺障害の種類や等級について解説する前に、後遺障害の基本をおさえておきたいと思います。

後遺障害とは

交通事故を原因として聴覚障害などの後遺症が残ったことで、労働能力が低下または喪失すること

適切な治療をおこなっても、残念なことに後遺症が残ってしまう可能性があります。

後遺症が残れば、

  • 将来的に得られたはずの収入が減った
  • 後遺症が残って精神的なダメージを受けた

などの損害を受けることになります。

このような損害に対する適切な損害賠償を受けるには、後遺障害等級の認定によって請求できるかどうかが決まるからです。

では、交通事故で負う耳に関する後遺障害について、後遺障害の種類と予想される後遺障害等級についてみていきます。

耳の障害・等級①聴力障害(聴力低下)

聴力障害(聴力低下)の障害については、両耳1耳(片耳)ごとに分けられています。

両耳の聴力障害

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
4 3 両耳の聴力をまったく失ったもの
6 3 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
4 1耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7 2 両耳の聴力が40cm以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
3 1耳の聴力をまったく失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9 7 両耳の聴力が1m以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
8 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
10 5 両耳の聴力が1m以上の距離では、普通の話声を解することが困難である程度になったもの
11 5 両耳の聴力が1m以上の距離では、小声を解することができない程度になったもの
1耳(片耳)の聴力障害

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
9 9 1耳の聴力をまったく失ったもの
10 6 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
11 6 1耳の聴力が40cm以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
14 3 1耳の聴力が1m以上の距離では、小声を解することができない程度になったもの

ご覧いただいている後遺障害の基準を満たしていると、このような等級が認定される可能性があります。

聴力障害の後遺障害等級は、

  • 純音聴力レベルの測定結果
  • 語音による明瞭度

これらを基礎として算定されることになります。

参考に算定表を紹介します。

atom_jt-317
atom_jt-318

労災の認定基準にもとづいて作成しています。
自賠責保険基準に対応する等級は以下のとおりです。
(労災:自賠責)
4級の3:4級3号
6級の3:6級3号
6級の3の2:6級4号
7級の2:7級2号
7級の2の2:7級3号
9級の6の2:9級7号
9級の6の3:9級8号
10級の3の2:10級5号
11級の3の3:11級5号

耳の障害・等級②耳介の欠損障害

耳介とは、頭部の両側にある軟骨からできた突起で、音を集める働きがあります。交通事故の衝撃によっては、耳介の一部が欠損してしまうことがあります。

耳介の欠損障害

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
12 4 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

大部分の欠損とは、「耳の軟骨部の1/2以上」をさします。両方の耳介が欠損した場合は、片耳ごとに等級が定められるので等級の併合がおこなわれて認定されることになります。

耳介の欠損に関しては外観に醜状を残すとして、醜状障害の後遺障害等級が認定される可能性があります。

醜状障害

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
7 耳の軟骨部の1/2以上の欠損
12 耳の軟骨部の一部(1/2未満)の欠損

耳の欠損と耳の醜状障害のどちらも認められるような場合、

  • 耳の欠損の後遺障害等級
  • 醜状障害の後遺障害等級

いずれか重いほうの等級が認定されることになります。

耳の障害・等級③耳漏

耳漏とは、交通事故の衝撃などで鼓膜が破れて、脳を包む脳脊髄液という液体などが漏れ出すことです。手術などの治療をおこなっても耳漏が改善しなかったり、耳漏によって聴力障害が残った場合に後遺障害が認定されることになります。

耳漏

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
12 相当 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏が常時あるもの
14 相当 鼓膜の外傷性穿孔による耳漏があるもの
外傷による外耳道の高度の狭さくで耳漏を伴わないもの

耳漏の後遺症では、このような後遺障害等級が認定される可能性があります。

耳の障害・等級④耳鳴り

耳鳴りとは、音がないのに「ピーン」「キーン」などの音を感じることを言います。

耳鳴り

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
12 相当 耳鳴りにかかる検査によって難聴に伴い著しい耳鳴りが常時あると評価できる
14 相当 難聴に伴い受持耳鳴りがあることが合理的に説明できる

耳鳴りの後遺症では、このような後遺障害等級が認定される可能性があります。

耳の障害・等級⑤平衡機能障害

耳の損傷でも特に内耳を損傷した場合、平衡機能障害の後遺障害が残ることがあります。平衡機能障害については、神経系統の機能障害の一部として評価されるので、認定基準は神経系統の機能障害における基準が用いられることになります。

平衡機能障害

予想される後遺障害等級

等級 後遺障害
3 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することができないもの
5 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの
7 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの
9 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの

平衡機能障害では、このような後遺障害等級が認定される可能性があります。

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聴覚障害の後遺障害における損害賠償

交通事故示談金の内訳

聴覚障害における損害賠償の内訳

交通事故にあったことで聴覚障害の後遺症が残ったら、交通事故の相手方に対して損害賠償を請求することができます

とはいえ多くの人は自動車の任意保険に加入していますので、ほとんどの場合は事故の相手方が任意で加入する保険会社に対して損害賠償を請求することになります。

交通事故の怪我を負ったことで受けた損害は、大きく傷害部分後遺障害部分に分けられます。それぞれで請求可能な損害賠償の主な項目がありますので確認しておきましょう。

損害賠償の内訳
傷害部分
治療費
怪我の治療で要した費用
✓通院交通費
治療のための通院に要した交通費
✓入院雑費
入院に必要な雑貨などに要した雑費など
休業損害
怪我によって休んだ期間の収入減額分の補償
入通院慰謝料
入院・治療で受けた精神的苦痛に対する補償
✓その他
診断書の作成、その他の資料集めに要した費用など
後遺障害部分
逸失利益*
将来的に得られたはずの収入が後遺障害が残ったことで減額した分に対する収入の補償
後遺障害慰謝料*
後遺障害で受けた精神的苦痛に対する補償

*後遺障害等級の認定で請求できる

交通事故による聴覚障害などで請求される主な損害賠償は以上のとおりです。

聴覚障害における損害賠償の相場

交通事故による聴覚障害の後遺症で得られる慰謝料などは、はっきりいくらになると金額を示すことはむずかしいものがあります。症状の内容、治療にかかった期間、事故前の収入などはお一人ずつ異なるので、損害賠償の金額もそれぞれ変わってくるからです。

とはいっても、ある程度、損害賠償の相場を知っておきたいと思います。そこで、慰謝料の相場をシミュレーションできる自動計算機の紹介です。

事前の会員登録などは一切不要です。年齢や収入など必要な項目を入力いただくだけで、相場を自動で計算してくれます。ぜひお試しください。

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交通事故の聴覚障害における慰謝料でお悩みの方

適正な慰謝料を得るには弁護士に相談

慰謝料などの損害賠償については、相手方の任意保険会社と話し合いによる示談交渉がおこなわれて決定される流れが主に多くなっています。このような示談交渉において適正な慰謝料を得るには、弁護士に相談していただくことをおすすめします。

まず基礎知識として、慰謝料の算定に用いられる基準は自賠責保険基準任意保険基準弁護士基準の3つあります。これらの基準はそれぞれ金額が異なるため、どの基準を用いるかで最終的に手にする損害賠償の金額に影響することになります。

慰謝料金額相場の3基準

3つのうち最も高額な慰謝料が得られるのは、弁護士基準による算定がおこなわれた場合です。

保険会社は交通故処理のスペシャリストであり、示談交渉を専門としています。交通事故の知識なくして、専門家と立ち向かうのはむずかしいものがあります。

増額交渉(弁護士なし)

一方、交通事故を専門的にあつかう弁護士に示談交渉を依頼いただければ、交通事故の知識をもって保険会社と対等に交渉することが可能となります。弁護士基準による算定を実現するには、弁護士による示談交渉が必須となります。

増額交渉(弁護士あり)

ご案内|アトムの無料相談

アトム法律事務所は、交通事故に関する問題に注力している法律事務所です。在籍している弁護士のなかには、

  • 保険会社側の弁護士として活躍し保険会社の裏側に精通した弁護士
  • 示談交渉の経験に富んだ弁護士

など多数、活躍中です。

このような弁護士による無料相談を実施していますので、交通事故に関するお悩みをお話しください。
24時間365日、受付中の窓口までまずはお問い合わせいただき、相談のご予約をお取りください。

相談方法は、電話相談LINE相談対面相談の3つからお選びいただけます。
「聴覚障害の影響で外出しづらい」
「仕事や家事で時間がとれない」
など、訪問しにくいといった方は、電話相談またはLINE相談をご希望ください。

相談するならやはり弁護士と対面で相談したいという方は、対面相談をご希望ください。
交通事故に関する問題は、一人でかかえないでください。
弁護士と一緒に、交通事故における聴覚障害など後遺症に関するお悩みを解決していきましょう。

弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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交通事故による聴力低下に関するQ&A

聴力はなぜ低下する?

聴力低下を引き起こす原因として考えられるのは、内耳振盪症側頭骨の骨折外リンパ瘻(ろう)外傷性鼓膜穿孔耳の欠損などが考えられます。これらは交通事故の強い外傷を受けたことなどによって生じることになるようです。 聴力低下の原因について

聴力低下の後遺障害等級は?

聴力低下による後遺障害では、両耳の聴力障害で4級3号6級3号4号7級2号3号9級7号8号10級5号11級5号、片耳の聴力障害で9級9号10級6号11級6号14級3号の等級が予想されます。等級の数字が低ければ低いほど残存した症状は重くなっています。 聴力低下に関する後遺障害等級

聴力低下の後遺症で請求できる損害賠償の内訳は?

聴力低下の後遺症が後遺障害として認定された場合、傷害部分と後遺障害部分の二つに分けて請求できる損害賠償があります。傷害部分の損害賠償は主に治療費休業損害入通院慰謝料などがあげられます。後遺障害部分の損害賠償としては主に後遺障害慰謝料逸失利益があげられます。 損害賠償の内訳

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