作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
骨盤骨折の後遺症|症状の解説~交通事故の後遺症認定による慰謝料請求まで
本記事は「骨盤骨折の後遺症と後遺障害認定」について弁護士が解説します。
本記事の概要
- 交通事故の骨盤骨折で後遺症を負う可能性がある
- 後遺障害等級の認定によって得られる慰謝料などの損害賠償がある
- 骨盤骨折における後遺症の症状ごとに後遺障害等級が違う
交通事故で骨盤骨折の怪我を負い、さらに後遺症が残ったという場合、
「どのくらいの慰謝料がもらえるのか」
「後遺障害等級は認定されるのか」
などさまざまな不安・心配があると思います。弁護士が、交通事故で後遺症が残った場合の対応方法について解説していきます。
目次
骨盤骨折の基本
骨盤の仕組み
骨盤は、左右の寛骨(恥骨、腸骨、坐骨)・仙骨・尾骨といった複数の骨から構成され、一つの輪の形をしています。
背骨と太ももに連結する骨盤は、
- 上半身と下半身をつなぐ
- 上半身をささえる基盤
- 内臓、生殖器などを保護する
など重要な役割をもっています。
骨盤骨折の症状
多くの役割をになう骨盤が骨折したら、さまざまな症状に見舞われることになります。
骨盤骨折はどんな症状?
骨盤骨折による激痛
血尿・腟粘膜の出血など(骨盤骨折にともなう他臓器の損傷のため)
貧血
など、骨盤骨折では骨折の場所などによって症状が異なります。
骨盤骨折がおこる原因としては、大きな交通事故・転落・転倒などが考えられます。とくに骨粗しょう症を患う高齢者の場合は、軽い転倒だけで骨盤骨折にいたることもあります。
骨盤骨折による後遺症の種類
交通事故などで骨盤が骨折し、治療・リハビリにつとめても残念ながら後遺症が残ることがあります。骨盤骨折で残る可能性として考えられる代表的な後遺症の症状を3つ解説します。
後遺症①変形障害
骨盤骨折における後遺症の代表的な症状として、変形障害があげられます。骨折した箇所が元どおりにくっつかず、変形した状態で固まってしまうことをさします。
骨盤骨折による変形障害は大きく
- 外傷による骨折を原因とした変形障害
- 腸骨採取術を原因とした変形障害
に分けることができます。
腸骨採取術は腸骨以外の骨が欠損したとき、その補てんなどの目的で腸骨を移植する手術です。
通常、骨折はギプスや手術で固定することで骨がくっつきますが、骨折のなかには治療をおこなっても骨がくっつかなかったり骨が再生されずにぐらつく偽関節という状態になることがあります。このような場合、腸骨を採取して欠損部に移植します。
腸骨採取術は、腸骨の一部を採取するので変形障害が残る可能性があります。
後遺症②運動障害(股関節の可動域制限)
骨盤骨折における後遺症の代表的な症状として、股関節の可動域制限があげられます。骨折したことで関節が動きにくくなったり、曲がりにくくなることをさします。
太ももの大腿骨と骨盤は股関節部分が接しています。骨盤骨折によって股関節部分に影響を受ける可能性があります。
後遺症③神経障害
骨盤骨折における後遺症の代表的な症状として、神経障害があげられます。骨盤骨折で負った外傷部分に痛みやしびれなどの神経障害が残ることをさします。
骨盤の骨折箇所が治る過程で仮骨という組織が過剰に発生することがあります。この仮骨が影響して神経障害が生じる可能性があります。
骨盤骨折の後遺症は男性・女性で注意点がある?
骨盤は、男性と女性の性別間で差がみられる骨です。女性の場合、出産の産道としての役割が骨盤にはあります。
骨盤骨折の影響で産道が狭くなり、正常な分娩が困難になる後遺症が残ることがあります。女性が骨盤骨折を負った場合は整形外科だけでなく、産婦人科での検査も受けておく必要があります。
骨盤骨折の後遺障害認定で慰謝料が請求可能に
骨盤骨折の後遺症と後遺障害の違い
骨盤骨折の後遺障害認定についての解説に入る前に、後遺障害とは何なのかという点をおさえておきたいと思います。後遺症と後遺障害は言葉はよく似ていますが、正確には違う言葉の意味を持ちます。
後遺症とは
治療やリハビリをおこなっても怪我が完治せず、痛みやしびれなどの症状が残存すること
後遺障害とは
後遺症が残ったことで、労働能力が低下あるいは喪失すること
交通事故による受傷で後遺症が残り、その後遺症が労働能力に影響を与えると判断されると後遺障害として認められることになります。
後遺障害が認定されることで、後遺障害によって受けた損害を補填する補償が得られることになります。つまり、適正な示談金・損害賠償を得るには、適正な後遺障害認定が必要となるといえます。
骨盤骨折の後遺障害認定と慰謝料の仕組み
事故発生から後遺障害申請、示談金の受け取りまでの大まかな流れはこのとおりです。
申請の詳しい流れについては、「交通事故の後遺障害等級認定|結果通知は遅い?手続きの流れや期間は?」の記事をご覧ください。
後遺障害は、症状に応じて重いほうから1級~14級までの等級で区分されています。
後遺障害等級が認定されたら、等級に応じて慰謝料は算定されることになります。
骨盤骨折で予想される後遺障害等級
骨盤骨折の後遺障害で予想される後遺障害等級を確認しておきます。変形障害/股関節の可動域制限/神経障害ごとに認定される可能性のある等級が異なるので、一つずつみていきたいと思います。
等級 | 後遺障害 | |
---|---|---|
12級 | 5号 | 骨盤骨に著しい変形*が認められる |
*裸体になったとき、外部から見てあきらかに変形している程度
等級 | 後遺障害 | |
---|---|---|
12級 | 7号 | 股関節の可動域が通常の75%以下に制限 |
10級 | 11号 | 股関節の可動域が通常の50%以下に制限 |
人工関節などに置換 | ||
8級 | 7号 | 股関節の関節が硬直 |
股関節の完全弛緩性麻痺(力が入らない状態)またはこれに近い状態 | ||
人工関節などに置換した場合で、その可動域が通常の50%以下に制限 |
等級 | 後遺障害 | |
---|---|---|
14級 | 9号 | 神経症状が骨盤骨の外傷によるものと医学的に説明できる |
12級 | 13号 | 神経症状が骨盤骨の外傷によるものと医学的に証明できる |
骨盤骨折ではこのような等級が認定されることが予想されます。
骨盤骨折の後遺症による慰謝料でお悩みなら
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骨盤骨折で後遺障害が認定されると、等級に応じた慰謝料が算定されるということは先述しました。しかし、ここでポイントとなるのが算定に用いられる基準が3つ存在しているということです。
慰謝料の算定基準
自賠責保険基準
任意保険基準
弁護士基準
これらの基準はそれぞれ設定される金額が違うので、どの基準を用いて算定するかで得られる金額に開きが出てきます。最も高額な慰謝料が得られるのは、弁護士基準を用いて算定されたケースとなります。
ご自身で保険会社と示談交渉をおこなった場合、保険会社は専門用語などを用いて話をむずかしくし、慰謝料など損害賠償の金額をおさえてこようとしてくることがあります。
交通事故の後遺障害や慰謝料に関する知識がなければ、
「保険会社が提示した慰謝料が適正な金額なのか分からない」
「これくらいが妥当だと思った慰謝料が、実は低い金額だった」
保険会社に言われるがまま示談を結んでしまうと、本来得られたであろう金額よりも少ない金額しか手に入らない可能性が高くなります。
保険会社は交通事故処理を専門的にあつかっています。交通事故の知識が豊富な保険会社と対等に示談交渉をおこなうのは限界があります。弁護士なしに弁護士基準で算定してくれるよう交渉しても希望が通る可能性は低いです。
慰謝料増額につなげたいとお考えなのであれば、弁護士にご相談ください。交通事故を専門的にあつかう弁護士であれば、弁護士基準によって慰謝料が算定される可能性が高まります。
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アトムの弁護士は、交通事故に関する案件を積極的に取り扱っています。
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アトムの弁護士に相談してみたいという方は、まず相談の受付窓口までお問い合わせください。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
骨盤骨折の後遺症Q&A
骨盤骨折はどんな症状?
骨盤骨折の症状としては、骨折そのものによる激しい痛み、骨折にともなう他臓器損傷による血尿・膣粘膜の出血などがあげられます。複数の骨から構成される骨盤を骨折すると、骨盤だけでなくその周辺の部分・臓器にも影響がおよぶことが考えられます。 骨盤骨折の症状について
骨盤骨折ではどんな後遺障害が残る?
骨盤骨折における後遺症の症状としては、変形障害・運動障害(股関節の可動域制限)・神経障害などが主にあげられます。骨盤骨折では、適切な治療をつづけても残念ながら完治せずになんらかの後遺障害が残る可能性があります。女性の場合は特に、産道の役割も持つ骨盤に後遺症が残ると分娩に支障をきたす恐れがある点に注意が必要です。 骨盤骨折の後遺障害をくわしく解説
骨盤骨折による後遺障害等級は何級?
骨盤骨折による後遺障害の等級は障害の内容や程度に応じてさまざまです。変形障害の場合は12級5号、運動障害の場合は12級7号・10級11号・8級7号、神経障害の場合は12級13号・14級9号がそれぞれ認定される可能性が考えられます。 予想される後遺障害等級
高額な慰謝料を得るにはどうすべき?
交通事故に注力する弁護士に相談することをおすすめします。慰謝料の算定には自賠責基準/任意保険基準/弁護士基準のいずれかが用いられますが、最も高額な慰謝料となるのは弁護士が介入したことで適応できる弁護士基準です。弁護士なしでの示談交渉は弁護士基準よりもはるかに少ない金額となることが予想されます。弁護士が示談交渉に介入することでより適切な慰謝料が得られる可能性が高まります。 慰謝料の金額に疑問・不安がある