作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

鎖骨骨折後遺症

【交通事故】鎖骨骨折の後遺症認定|痛み、しびれなどの症状…後遺障害等級認定とは?

鎖骨骨折の後遺症って?
この記事のポイント
  • 鎖骨骨折による後遺障害には肩関節の機能障害、鎖骨の変形や偽関節、痛みやしびれなどがある
  • それぞれの後遺障害等級は関節の可動域や他覚所見の有無などで決まる
  • 後遺障害が残った場合、弁護士に依頼することで最低でも100万円以上の後遺障害慰謝料を受け取れる可能性がある

鎖骨は、首の根元から肩まで伸びる骨で、胸骨と肩甲骨をつなぐという重要な枠割を担っています。
ですが細く皮膚に近いため、非常に骨折しやすい部位です。骨折全体の10~15%を占めるとも言われています。
特に交通事故では、自転車やバイクで転倒したとき、追突や衝突によるシートベルトの圧迫、ハンドルにぶつけることなどで容易に骨折してしまいます。
では実際に鎖骨骨折をしてしまったら、どのような後遺症(後遺障害)が残るのでしょうか?
後遺障害に詳しい弁護士が解説します。

  • 鎖骨骨折に手術やリハビリは必要?
  • 鎖骨骨折の後遺症にはどのようなものがある?
  • 後遺症が残ったら慰謝料が受け取れるって本当?


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鎖骨骨折の基礎知識

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以下に述べることは一般的な傾向となります。
特に鎖骨は年齢や普段の生活などによって、治療経過や完治までの期間に大きな個人差があります。
まずは主治医や療法士の方の意見を聞くようにしましょう。

鎖骨骨折の症状

まず、鎖骨を骨折すると以下のような症状が表れます。

  • 骨折部分や肩の痛み、腫れ
  • (上記の痛みにより)肩があげられない
  • 骨が不安定になっている感覚
  • 鎖骨が上側に出っ張る

上記のような症状がある場合、整形外科を受診してください。
鎖骨を骨折しているかどうかは、レントゲン検査でわかります。

鎖骨骨折の治療|保存療法・治療期間・入院期間は?

骨のずれがあまり大きくない鎖骨骨折のケースでは、手術を行わなず自然治癒を待つ保存療法が行われます。
局所麻酔の後に体の外側から骨を整復していきます。
その後、バストバンドやクラビクルバンドを装着して固定し、骨がくっつくのを待ちます。

手術を行った場合にくらべ

  • 骨がくっつくまでの期間が長く、その間に痛みや日常生活への支障がある
  • 治療費は安く済む
  • 手術による傷痕が残らない

という特徴があります。

鎖骨骨折の手術|手術費用&期間は?手術しないことも?

全ての鎖骨骨折が保存療法で治るとは限りません。以下のような場合は、折れた骨をワイヤー、プレートやボルトで保存する手術療法をする必要があります。

  • 骨のズレが大きい場合
  • 靱帯やその他の骨を損傷している場合
  • 骨折部が皮膚を突き破っている場合
  • 第三骨片(3つ以上に骨が分かれてしまっている状態)がある場合
  • 腕神経叢損傷などを併発している場合
  • 高齢者の場合

保存療法にくらべ

  • ほぼ確実に治る
  • 後遺障害は生じにくい
  • 手術による金銭的、体力的負担がある

という特徴があります。
術後の入院期間は5~15日、手術費用は3割負担として12~20万円であることが多いようです。

また、1カ月で入院・手術を行った場合は高額療養費制度の対象となり、払い戻しを受けられる場合もあります。

鎖骨骨折のリハビリ|リハビリ期間は?

骨を固定していた影響で筋力が低下し、腕があがらない・あげにくい症状が出た場合にはリハビリが必要になります。
コッドマン体操という、重りを持って腕をゆらす運動などが代表的です。
もっとも、骨が十分にくっついていない状態で動かすことは骨のズレなどを招きます。
リハビリを行う際は必ず主治医や療法士の指示に従ってください。

鎖骨骨折の完治までの期間は?仕事復帰はいつから?

骨がくっつくまでは成人の場合4~6週間かかりますが、大きな個人差があります。
手術を行った場合、スポーツへ復帰できるのは6~12週ほどと言われています。
完全にくっつくまでは半年以上かかることもあり、大事を取るのなら激しい運動はそれ以後にしましょう。

鎖骨骨折の後遺症|痛み・腕があがらない・肩こり・偽関節とは?

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後遺症(後遺障害)

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状。
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される。

鎖骨骨折の場合、次のような後遺障害が残ることがあります。

  • 鎖骨部分や指先などの痛み、しびれ
  • 肩こり
  • 肩があげられない
  • 鎖骨が変形する
  • 鎖骨に偽関節が残る

それぞれがどのような症状なのかは、次の章で詳しく説明します。

後遺障害が残ると受け取れる「慰謝料」の相場は?

交通事故で後遺障害を負ってしまった場合、その重さ(等級)に応じ後遺障害慰謝料が支払われます。
これは、相手方からの保険金に追加で支払われるものです。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

後遺障害等級は治療後も体に残る後遺症を部位・程度などによって14段階に区分したものです。
より高い(数字の小さい)等級に認定されれば慰謝料も増えますので、どの等級に認定されるかは非常に重要です。
実際の申請基準や方法については、以下のページをご覧ください。

では鎖骨骨折の場合、それぞれの後遺障害の等級は何級になるのでしょうか。

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鎖骨骨折で「痛み・しびれ」が残る後遺障害

鎖骨骨折の「痛み・しびれ」の後遺障害等級は何級?

骨折が治っても、鎖骨部分や肩、手指に痛み・しびれが残ってしまうことがあります。
鎖骨付近には手指の感覚にも関わっている神経があり、骨折の際にそれを損傷して痛み・しびれの症状が出てしまうのです。
それらが後遺障害として認められた場合の後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

鎖骨骨折による痛み・しびれ

等級 症状
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの
149 局部に神経症状を残すもの

ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。

とはいっても障害の程度のみではなく、

  • 神経学的な検査結果があるか
  • レントゲン・MRI画像などの所見があるか

が大きな判断要素となります。

痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。

ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。

鎖骨骨折の「痛み・しびれ」の後遺障害慰謝料はいくら?

痛み・しびれが後遺障害等級として認められた場合の後遺障害慰謝料は以下の通りです。
なお、慰謝料の算定にはいくつかの基準があります。
左の列が最低限の補償を行う自賠責保険の基準、右の列が弁護士に依頼することで請求できる弁護士基準の金額ですので、比較してみます。

後遺障害慰謝料

痛み・しびれの後遺障害

等級 自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円

等級によっては、弁護士に依頼することで相手方から提示される額の3倍以上の後遺障害慰謝料を受け取れることがわかります。
後遺障害は、その後の人生にもずっと影響します。
そのことを考えると、適正な補償としてはやはり弁護士に依頼し、弁護士基準での慰謝料獲得を目指すべきでしょう。

【参考】鎖骨骨折後の肩こりは後遺障害になる?

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鎖骨骨折後に生じた肩こりも後遺障害として認定される可能性があります。
肩こりが後遺症?と疑問に思われるかもしれません。
肩こりには様々な原因がありますが、その1つに血管や神経が圧迫されて起こる神経性由来のものがあります。
その場合、「局部に(頑固な)神経症状を残すもの」として等級に該当する可能性があります。
もっとも、医学的な証明は簡単ではありませんので神経学的検査画像検査で症状がわかることが必須です。

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鎖骨骨折で「肩があげられない」後遺障害

鎖骨骨折で「肩があがらない」後遺障害等級は何級?

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鎖骨は肩関節そのものを構成しているわけではありません。
ですが鎖骨の端の骨折(鎖骨遠位端骨折)をすると、痛みやほかの骨との関係から肩があげられない後遺障害が残ることがあります。
その場合に認められる後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

肩があげられない

等級 内容
86 上肢の3大関節中の1関節*の用を廃したもの
1010 上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
126 上肢の三3関節中の1関節の機能に障害を残すもの

*肘・手首関節にも障害が生じている場合は、より上の後遺障害等級が認定される

用いられている専門用語をわかりやすく言い換えると、以下のようになります。

なおここでの角度は

  • 屈曲(体の前面で腕をあげる動き)
  • 内転+外転の合計値(体の側面で腕をあげる動き)

を計測します。

用語

関節の用を廃す

… 関節がまったく動かない~または障害のない関節と比べ可動域が1/10程度以下のもの

(肩関節では目安として屈曲20度以下、外転20度以下両方の基準を満たす)

関節の機能に著しい障害を残すもの

… 障害の無い関節と比べ可動域が1/2以下のもの

(肩関節では目安として屈曲90度以下、外転90度以下いずれかの基準を満たす)

関節の機能に障害を残すもの

…障害の無い関節と比べ、可動域が3/4以下に制限されているもの

(肩関節では目安として屈曲135度以下、外転135度以下いずれかの基準を満たす)

さらに10級・12級では、可動域がわずかに基準を上回る場合であっても等級に認定されることがあります。

以下の参考運動どちらかが基準を満たす必要があります。

  • 伸展(体の背面に腕をあげる動き)
  • 外旋+内旋(床と並行に腕を移動させる動き)

可動域1/2制限の超過が10度までの場合

…障害の無い関節と比べ参考運動の可動域が1/2以下

(肩関節では目安として伸展25度以下、外旋+内旋70度以下

可動域3/4制限の超過が5度までの場合

…障害の無い関節と比べ参考運動の可動域が3/4以下

(肩関節では目安として伸展40度以下、外旋+内旋105度以下

以上の情報を簡単にまとめなおすと、以下のようになります。

まとめ

鎖骨骨折により肩関節*が動かせない症状

等級 内容
86 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/10程度以下
1010 障害の無い関節と比べ関節の可動域が1/2以下
126 障害の無い関節と比べ関節の可動域が3/4以下

*ここにある基準を超えても、参考運動の可動域によって等級が認められる場合もある

なお、角度については

  • 他者が手を添えて曲げた角度(他動値)で比較を行う
  • 角度は5度単位で切り上げる

ことに気を付けて計測します。

つまり、後遺障害診断書に以下のような記載があれば誤りが疑われるということになります。

×「屈曲、他動値で92度」
(5度単位で切り上げるので正しくは「屈曲95度」)
△「外転、自動値で70度、他動値110度」
(他動値は自動値+5度が目安であり、痛みを無視して関節を動かした恐れがある)

鎖骨骨折で「肩があがらない」後遺障害慰謝料はいくら?

肩をあげられない症状が後遺障害等級として認められた場合、後遺障害慰謝料は以下の通りとなります。

後遺障害慰謝料

肩関節*が動かせない

等級 自賠責基準 弁護士基準
86 324万円 830万円
1010 187万円 550万円
126 93万円 290万円

*肩関節以外に手首・肘関節にも可動域制限がある場合はより上位の等級が認定される

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鎖骨骨折による「偽関節」「鎖骨の変形」の後遺障害

鎖骨骨折で「鎖骨が変形」後遺障害等級は何級?

整復や固定が不十分であると、鎖骨がずれたままくっついてしまうことがあります。
そのように鎖骨が変形してしまったり、くっついた部分がぐらぐらとする偽関節を生じた場合も、後遺障害として認定されます。
その場合の後遺障害慰謝料は、以下のようになります。

後遺障害等級

鎖骨骨折による鎖骨の変形

等級 内容
125 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

ここでいう「変形」とは、裸体になったとき変形が明らかにわかる程度のものであることが必要です。
例えば、レントゲンなどで変形が発覚する程度のものでは12級に該当しません。

なお、後遺障害等級表には8級として「1上肢に偽関節を残すもの」などについて記載がありますが、鎖骨の偽関節はこれにあたりません。
上肢とは腕を指しており、鎖骨部分は範囲外となるためです。

鎖骨骨折で「鎖骨が変形」後遺障害慰謝料はいくら?

鎖骨の変形が後遺障害等級として認められた場合、後遺障害慰謝料は以下の通りとなります。

後遺障害慰謝料

鎖骨骨折による鎖骨の変形

等級 自賠責基準 弁護士基準
125 93万円 290万円
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鎖骨骨折の後遺症のご不安は弁護士にお任せください

LINE相談

鎖骨骨折は交通事故では比較的よく起こる外傷であり、お悩みの方も多いかと思われます。
完治するまでは腕をあげすぎない、重いものを持たないなどの制限も多く、日常に大変な支障が出る可能性があります。
肩があげられない、痛みやしびれがずっと続くなどという後遺症が残った場合はそれ以上です。
にもかかわらず、交通事故の相手方が示してくる損害賠償金は専門家の目から見ると決して十分とは言えません。
ご自身の受けた損害に見合う補償を得るために、弁護士がお手伝いします。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。
提示された金額は適正なものか、治療方針は間違っていないか、現在の労働への支障に関する補償を受けられないか…。
まずは今、ご自身が抱えていらっしゃる不安についてお気軽にご相談ください。


弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。

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鎖骨骨折による後遺障害Q&A

鎖骨骨折はどんな後遺症が残る?

鎖骨を骨折すると、鎖骨や指先の痛み・しびれ肩こり肩があがらないなどの後遺症が残る可能性があります。交通事故で後遺症が残ったら、後遺障害の認定を得ることで後遺症に対する損害賠償を請求することができるようになります。 鎖骨骨折による後遺症

鎖骨骨折で痛み・しびれの後遺症が残ったら?

鎖骨骨折が原因で痛みやしびれの後遺症が残ってしまったら、12級または14級の後遺障害等級に認定される可能性があります。12級と14級のちがいは、「医学的に証明可能」かどうかという点で判断されることになります。 痛み・しびれの後遺障害等級

鎖骨骨折で肩があがらない後遺症が残ったら?

鎖骨骨折が原因で肩が上がらない後遺症が残ってしまったら、8級または10級または12級の後遺障害等級に認定される可能性があります。8級、10級、12級の違いは可動域の範囲によって決まることになります。 肩があがらない場合の後遺障害等級

鎖骨骨折で偽関節/鎖骨変形の後遺症が残ったら?

鎖骨骨折が原因で鎖骨が変形する後遺症が残ってしまったら、12級の後遺障害等級に認定される可能性があります。裸体になった時に「明らかに変形が分かる程度」である場合、後遺障害に認定されることが予想されます。 偽関節/鎖骨の変形の後遺障害等級

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