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交通事故示談書が保険会社から届いたら知っておくべき3つのこと

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交通事故の示談がまとまると、基本的に加害者側の任意保険会社から示談書が送られてきます。

この示談書に署名・捺印すれば示談で成立した内容が確定します。

  • 交通事故の示談書の内容は?
  • 交通事故の示談書に署名・捺印したのに保険会社から示談金が振り込まれない…
  • 被害者が交通事故の示談書を作成することはある?

交通事故の示談交渉の総仕上げともいえる示談書について、弁護士とともに解説していきます。

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交通事故示談書の基本|作成者は誰?内容、効力は?

交通事故示談書の作成者と様式・記載内容

示談書の作成者は?

示談交渉において、加害者側が示談書を作成するか被害者側が示談書を作成するかは特に決まっていません。

ただ、示談交渉の相手が加害者側任意保険会社だった場合には、保険会社が示談書を作成することが多いです。

示談書の様式・記載内容は?

交通事故の示談書の形式については、特に規則はありません。

そのため、被害者側で示談書を作成する際にも様式は自由です。

ただし、以下の点は押さえておきましょう。

①様式について
  • 手書きでもパソコンでも可
  • パソコンの場合でも署名欄は必ず手書きにする
  • 当事者の人数分用意する
②基本的な記載内容
  • 当事者名
  • 交通事故の日時、場所等の情報
  • 関係車両の車両番号、保険契約番号
  • 被害状況
  • 示談で決まった賠償金額、支払い条件
  • 清算条項
  • 示談書作成年月日
  • 署名・捺印欄

清算条項については、示談成立を以て、被害者は加害者にそれ以上の賠償請求はしないという旨のものが多いです。

また、上記の内容の他、加害者の謝罪の意を示す文言が入ることもあります。

交通事故の示談書は示談交渉結果についての合意を証明するものです。

示談成立後にトラブルなどが起こった際にはこれが証拠となります。

そのため、様式等に特に決まりがないとは言うものの、FAX感熱紙等保存に向かないものは避けましょう。

交通事故の示談書を作成する際には、トラブルになったときにその示談書がきちんと証拠として機能するかについて気を配りましょう。

示談書が数枚にわたる場合には、

  • ホッチキスで綴じる
  • ページとページに割印を押す

ということをしておくと安心です。

交通事故示談書の効力は?

示談書の内容を確認して、記載内容に間違いを見つけた時には、弁護士や加害者側保険会社に確認しましょう。

そのうえで、示談書を新しく作り直すか、記載内容を訂正して双方の訂正印を押すことが必要です。

示談書に署名・捺印すると、示談書の内容が確定し、被害者はそれ以上の交通事故における損害賠償請求権を失います。

つまり、署名・捺印後に間違いが見つかったり、新たな損害が出てきたりしても、再び示談交渉をすることは難しいということです。

示談書の内容を過信せず、きちんと自分自身の目で確認することが非常に重要です。

1つの事故でも示談書は2通あることも

1つの交通事故でも、示談書が2通になることがあります。

人身部分に関する示談書と物損部分に関する示談交渉を別々に行うことがあるからです。

その理由として、以下のものがあります。

  • 加害者側任意保険会社の示談交渉担当者が、人身部分と物損部分で違う
  • 人身部分と物損部分では、損害額の確定時期が異なる

交通事故の示談交渉は基本的に、交通事故による損害額が確定してから行います。

交通事故の損害額の中でも物損部分は交通事故後早い段階で確定するのに対し、人身部分の損害額は治療や後遺症の等級認定を待たなければ確定しません。

さらに、加害者側任意保険会社と示談交渉を行う場合には、通常、人身部分と物損部分で担当者が異なります。

こうした事情から、人身部分に先立って物損部分の示談交渉を行うことが多いのです。

したがって、示談書も人身部分に関するものと物損部分に関するものの2通になるのです。

人身部分と物損部分で示談書に記載する項目や形式が大きく変わることはありません。

なお、示談書のテンプレート・雛形は、保険会社のホームページで確認・ダウンロードできるものもあります。

示談書が保険会社からなかなか届かない場合の理由

交通事故後、示談交渉はまとまったのに、示談書がなかなか来ない…

こうした場合考えられることとして、以下の2点があります。

  • 保険会社の担当者が忙しく手が回っていない
  • 保険会社内での稟議がなかなか回らない
  • 加害者が署名・捺印を渋っている

示談交渉の相手であり示談書の作成者でもある加害者側任意保険会社は、日常的に示談交渉を行っています。

そのため、他にも示談交渉やその処理をたくさん抱えていて手が回っていない可能性があります。

また、加害者側任意保険会社が先に加害者に示談書への署名・捺印を求めていて、加害者が渋っているという可能性もあります。

いずれにしても、加害者側任意保険会社や弁護士に相談し、状況を確認することが一番です。

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示談書が届いたら知っておくべき3つのポイント

示談書の内容は無効にできる?

たとえ示談交渉を経て至った合意だとしても、以下の場合には示談でまとまった内容を無効にすることができます。

① 一方的に先方の弱みに付け込んで不当な条件でなされた示談

これは民法90条公序良俗に反するとして無効になります。

実際の損害に対し明らかに高すぎる賠償金で合意した場合などがこれに当たります。

② 刑事事件の情状資料として提出するだけで当事者間の合意ではないとして締結

これは、民法93条心裡留保あるいは民法94条Ⅰ項虚偽表示として無効になります。

示談成立より前に加害者の刑事裁判がある場合、情状資料として提出するためにとりあえず示談が成立したことにしてほしいと頼み込まれる場合があります。

こうした場合に示談書に署名・捺印をしても、実際には効力がないということです。

加害者への処罰感情が薄く、刑を軽くしてあげたいと思って応じたことが逆手に取られる場合があるということです。

このようなことを加害者に頼まれた場合には、示談書へのサインではなく、処罰感情が薄い旨を記した嘆願書を作成する方が安全です。

どうしたらいいのか困った場合には、弁護士に相談しましょう。

③ 示談当時紛争の対象外であったり、示談の前提あるいは合意の基礎をなしていた重要な事実関係につき要素の錯誤があった

これは民法95条錯誤に当たるとして無効になります。

例えば、示談交渉の際には被害者のけがは完治したと考えられていたが、示談成立後に後遺障害が発生した場合などがこれに当たります。

詐欺・脅迫による示談成立

脅しなどによって示談が成立させられた場合にも、示談書の内容は無効にできます。

この内容で示談を成立させなければ危害を加えるなどと脅されて示談書にサインしてしまったとしても、取り消せます。

これらの場合、示談内容を無効にすることは可能です。

ただし、示談内容を無効にすることを相手方にも了承してもらう必要があり、了承が得られない場合には法的手段をとることになります。

示談内容を無効にするにあたっては相手方とトラブルになることも考えられます。

合意に際して困った場合には、示談書に署名・捺印する前に弁護士に相談することが何よりも大切です。

示談書サイン後加害者からの支払がないときは?

示談が成立し、お互いに示談書に署名・捺印したにもかかわらず示談金が支払われない…。

示談金が加害者側任意保険会社から支払われる場合にはこのようなことはあまりありません。

しかし、加害者が任意保険に未加入などで、本人から示談金を支払ってもらう場合には、こうしたこともあり得ます。

このようなときには、以下のような処置をとります。

支払い督促、給付訴訟を起こして債務名義を獲得する

債務名義とは、強制執行によって実現されるべき債権を表示した公文書のことです。

示談書に署名・捺印すると、加害者には示談金の支払い義務が生じます。

しかし示談書だけでは、加害者が支払い義務を履行しなかった場合に強制的に支払わせることはできません。

示談書のみでは、署名・捺印した示談書の存在を根拠に支払いを求め続けることしかできないのです。

しかしそれでは埒が明かない…そこで、債務名義を獲得して示談金の支払いを強制するのです。

他にも、加害者の債務不履行を理由に示談成立を解除し、別途適正な賠償金額を請求することもできます。

加害者が示談金の支払い義務を果たさない可能性があるときは、事前にそれを防止する方法もあります。

その方法とは、以下の通りです。

  1. 頭金を多く受け取り、分割支払いの期間を短くする
  2. ② 残債に連絡保証人を付ける
  3. 不動産への抵当権を設定する
  4. ④ 事前に債務名義を取得しておく

事前に債務名義を取得しておく方法としては、

  • 即決和解手続きや調停手続きを経て示談内容を和解調書調停調書にしておく
  • 示談書を執行認諾文言付公正証書として作成する
  • 支払督促・訴訟手続きにより確定判決を取得する

というものがあります。

こうした対策をとっておくことにより、加害者が示談金を支払わないリスクに備えることも大切です。

後遺症の慰謝料は後から請求できる?

示談交渉の際には後遺障害はないと判断されていたものの、のちに後遺障害が出たということもあります。

この場合、「示談書の内容は無効にできる?」の項目でも解説したように、示談成立後でも後遺障害に関する金額を請求することができます。

ただしこの場合、加害者側との間でトラブルになる可能性もあります。

けがは治癒したと思われるものの、今後後遺障害が出る可能性もある、という場合には、

今後後遺障害が発覚した場合には、それに関する賠償金について交渉する

という旨を予め示談書に記載しておく方が安心です。

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保険会社からの交通事故示談書は弁護士に相談

保険会社の示談書を弁護士に相談する理由は?

加害者側任意保険会社との示談交渉及び示談書に関して弁護士に相談するメリットは、以下の通りです。

  • 弁護士に示談交渉を代行してもらえる
  • 示談書に問題点がないか確認してもらえる
  • 示談書が届かない、示談金が支払われないなどのトラブルに対処してもらえる
  • 示談成立後に発生しうるトラブルを予測し、防止策を提案してもらえる

示談交渉の相手である加害者側任意保険会社は、仕事として示談交渉を行うプロです。

被害者に有利な示談金になってしまうと、任意保険会社にとってはそれだけ損になります。

そうした事情から、被害者本人が加害者側任意保険会社と示談交渉をしても、対等な交渉ができない可能性が高いです。

また、示談がまとまってからも、示談書に署名・捺印し、実際に示談金額が支払われるまでは安心できません。

そんな時、弁護士に相談していれば、示談交渉を代行してもらえますし、その他トラブルにも対処してもらえます。

示談は一度成立してしまうと、合意内容は簡単には訂正できません。

そのため、慎重かつ悔いのないようにする必要があります。

そうした意味でも、弁護士に相談することがベストです。

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弁護士に相談することがベストとはいっても、弁護士費用が気になる…

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もちろん、事務所での相談も無料です。

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ご自身が加入していなくても、ご家族が弁護士費用特約に加入していれば利用することができます。

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示談書に関するQ&A

示談書は誰が作成する?書式は?

示談書の作成者に決まりはありませんが、加害者側保険会社が作成することが多いです。示談書の書式にも決まりはないので書き方は自由で、手書きでもパソコンでも構いませんが、署名欄は必須です。作成部数は、当事者の人数分です。 示談書の書式・内容の解説

示談書作成~署名・捺印で起こりうるトラブルは?

示談書作成~署名・捺印までの間で起こりうるトラブルとして、①加害者側保険会社から示談書が届かない②届いた示談書の内容が違うということが考えられます。示談書が届かない場合には、何らかの理由で示談書の作成が滞っていることが考えられます。保険会社に確認してみましょう。示談書の内容が合意内容と違う場合には、新しく作り直すか訂正をするかになります。署名・捺印してしまう前に保険会社に連絡を入れましょう。 示談書作成~署名・捺印までの問題対処法

示談書の内容は無効にできる?

基本的に示談書に署名・捺印してしまうと、示談書の内容の変更・再交渉はできなくなります。しかし、①一方的に先方の弱みに付け込んで不当な条件でなされた場合②刑事事件の情状資料として提出するだけの目的で合意した場合③示談当時はわからなかった事実が発覚した場合や、示談の前提に間違いがあった場合④詐欺・脅迫により示談が成立した場合には、署名・捺印後でも示談書の内容を無効にできる可能性があります。 示談書の内容を無効にできるケース

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