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交通事故の過失割合は過去の判例にもとづいて通常は決められます。
「別冊判例タイムズ」という書籍の中に、
10対0、9対1、8対2などの事例
が掲載されていて、通常はこちらを参考にして過失割合の交渉が行われます。
また、過失割合は「交通事故の中でも特にもめる」と聞いたことがありますが、実際そうなのでしょうか。
この章では、
別冊判例タイムズの事例
をいくつか紹介していきます。
別冊判例タイムズの事例を見れば、加害者側の任意保険会社から提示された過失割合が適切かどうか判断しやすくなります。
そのため、
本当にこの過失割合は妥当なのだろうか
という疑問や不安を、別冊判例タイムズを通して解決できる場合もあります。
気になる方は、実際に別冊判例タイムズを購入してみても良いかもしれません。
まず、10対0になる事例はどのようなものになるのでしょうか。
たとえば、
道路脇に駐停車していたところ、後ろから追突された
という場合だと、被害者側には過失は一切無いものとして、10対0になる場合があります。
実際に、別冊判例タイムズにも掲載されている事例を見てみましょう。
A=追突車、B=被追突車
修正要素の点数はすべてAに加算・減算する
例:Aが視認不良だった場合、Aから1減算されて過失割合はA9:B1となる
↓修正要素 | 基本の過失 A 10:B 0 |
Bの退避不能 | +1 |
A15km以上の速度違反 | +1 |
A30km以上の速度違反 | +2 |
Aその他の著しい過失 | +1 |
Aその他の重過失 | +2 |
視認不良 | –1 |
駐停車禁止場所 | –1 |
Bの非常点滅灯等の不灯火等 | –1~2 |
Bの駐停車方法不適切 | –1~2 |
Bその他の著しい過失 | –1 |
Bその他の重過失 | –2 |
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号(2014年07月10日発行)』300頁を参考に作成
基本は10対0の形になっています。
しかし、被害者に過失があった場合などは後ろから追突されても必ずしも10対0にはならない点にご注意ください。
時おり、
歩行者が交通事故の被害に遭った場合、過失割合は10対0になる
という声を耳にします。
それは本当なのでしょうか。
歩行者が横断歩道の手前から飛び出した場合などは9対1あるいはそれ以上になる可能性があります。
歩行者といえども、必ずしも過失が無い・過失が小さくなるとは限りません。
実際に、判例タイムズにも掲載されている事例を見てみましょう。
A=歩行者、B=追突車
*歩行者信号は「青色」、自動車信号は「赤色」で衝突した
修正要素の点数はすべてAに加算・減算する
例:Bに著しい過失があった場合、Aから1減算されて過失割合はA0:B10となる
↓修正要素 | 基本の過失 A 1:B 9 |
夜間 | +0.5 |
幹線道路 | +1 |
直前直後横断 佇立・後退 | +1 |
住宅街・商店街等 | –0.5 |
Aが児童・高齢者 | –0.5 |
Aが幼児・身体障碍者等 | –1 |
集団横断 | –1 |
Bの著しい過失 | –1 |
Bの重過失 | –2 |
歩車道の区別なし | –0.5 |
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号(2014年07月10日発行)』100頁を参考に作成
なお、上記は歩行者信号が「青色」の場合の過失割合ですが、
歩行者信号が「黄色」の場合
⇒基本の過失割合は8対2
歩行者信号が「赤色」の場合
⇒基本の過失割合は7対3
となる点にご注意ください。
次に、基本の過失割合が8対2になる事例はどのようなものになるのでしょうか。
たとえば、
交差点でともに直進していた青信号車A車と赤信号車B車が衝突した
という場合だと、基本は10対0になるのですが、飲酒などをしていた場合は割合が変動する場合があります。
たとえば酒酔い運転だと、A車にも一定の過失が認められ、8対2あるいはそれ以上になる可能性があります。
実際に、別冊判例タイムズにも掲載されている事例を見てみましょう。
A=青信号車、B=赤信号車
*AとBともに直進していたところ交差点内で衝突した
修正要素の点数はすべてAに加算・減算する
例:Aに重過失(酒酔い運転など)があった場合、Aに2加算されて過失割合はA2:B8となる
↓修正要素 | 基本の過失 A 0:B 10 |
Aに何らかの過失あり 又はBの明らかな先入 | +1 |
Aの著しい過失 | +1 |
Aの重過失 | +2 |
Bの著しい過失 | –0.5 |
Bの重過失 | –1 |
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号(2014年07月10日発行)』208頁を参考に作成
なお、酒酔い運転をした場合、道路交通法第117条の2第1号に抵触して刑事罰に処される可能性があります。
次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの
引用元:道路交通法第117条の2第1号
飲酒した後に車を運転し、事故に遭うと、過失が大きくなってしまう可能性が高い点にご注意ください。
酒気帯び運転・酒酔い運転とみなされると過失割合が大きくなる可能性あり
最後に、5対5になる事例はどのようなものになるのでしょうか。
5対5ということは、お互いに同程度の過失があった、ということだと思いますが…
たとえば、夜間の道路に横たわっている歩行者が車にひかれた場合、基本の過失割合は5対5です。
それ以外にも、
駐車場内の通路の交差部分に進入した四輪車同士が出合い頭に衝突した
という場合だと、基本の過失割合は5対5です。
実際に、別冊判例タイムズにも掲載されている事例を見てみましょう。
A=直進又は右左折のための進入
B=直進又は右左折のため交差通路から進入
修正要素の点数はすべてAに加算・減算する
例:Aに重過失があった場合、Aに2加算されて過失割合はA7:B3となる
↓修正要素 | 基本の過失 A 5:B 5 |
A狭路・B明らかに広い通路 B丁字路直進 | +1 |
A一時停止・通行方向表示等違反 | +1.5~2 |
Aその他の著しい過失 | +1 |
Aの重過失 | +2 |
B狭路・A明らかに広い通路 | –1 |
B一時停止・通行方向表示等違反 | –1.5~2 |
Bその他の著しい過失 | –1 |
Bの重過失 | –2 |
『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号(2014年07月10日発行)』498頁を参考に作成
しかし、駐車場内の通路は「道路」と認められる場合もありえます。
その場合であっても、「道路」としての基準ではなく、「駐車場」としての基準で過失割合を求めてもいいのでしょうか。
原則として、別冊判例タイムズに掲載されている「駐車場内の事故」の基準に準拠して問題ありません。
駐車場は、
などの特殊性を持っているため、通常よりも高度な前方注意義務や徐行義務が求められます。
そのため、駐車場内の通路で発生した事故については、上記事情を考慮した上で過失割合を求めるのが相当だとされています。
駐車場の事故の場合、「道路」の事故ではなく、「駐車場」の事故という扱いになる点を覚えておきましょう。
駐車場の事故になるのか?ならないのか?
判断が難しい場合は、弁護士などの専門家に相談することをオススメします。
(通常、「道路の基準」で過失割合を考慮されない)
通常、実際に起こった事故の類型から過失割合は決められる
とのことですが、では、被害者側が、
「こういう事故だったので過失割合は○:○です」
と言いさえすればその主張は素直に認めてもらえるのでしょうか。
当事者双方の見解が同じであれば認めてもらえる可能性があります。
しかし、双方の言い分が食い違ってしまった場合は、客観的な資料を用意して主張したほうが良いでしょう。
特に、
第三者かつ公的な機関が作成した証拠
であれば、過失割合の根拠となる可能性が高まります。
「被害者」だからといっても、こちらの要求をすぐに呑んでくれるわけではないようです。
そのため、適切な過失割合にしてもらうためにも、次節で紹介するような証拠にもとづいて主張することをオススメします。
では、たとえばどのような証拠を集めるべきなのでしょうか。
主に以下の4つが過失割合の証拠として挙げられます。
なお、以下の表で示す通り、人身事故ではない場合、①実況見分調書は作成されないことが多いです。
警察によって事故現場で作成される①実況見分調書は有力な証拠となりうるので、なるべく人身扱いにするよう注意しましょう。
人身・物損どちらで作成されるか | ||
人身 | 物損 | |
実況見分調書 | ○ | × |
供述調書 | ○ | △ |
交通事故証明書 | ○ | ○ |
物件事故報告書 | × | ○ |
最後に、それぞれの資料の特徴を以下の表にまとめたので、ぜひご参考にしてみてください。
実況見分調書 |
《記載内容》 ・事故現場の事故態様を検証した結果 ・現場写真を載せるなど、現場の状況が詳細に記載されている 《開示・発行の依頼先》 ・加害者の送致先検察庁 《注意点》 ・事案が捜査中の際は取り寄せが困難 |
供述調書 |
《記載内容》 ・事故の当事者などが捜査機関に聴取された内容 《開示・発行の依頼先》 ・管轄の裁判所 《注意点》 ・加害者が起訴されなければ開示は困難 |
交通事故証明書 |
《記載内容》 ・事故状況や当事者の氏名などの基本的な情報 ・加害者の送致先検察庁や送致番号など、「刑事記録」の発行・開示に必要な情報 《開示・発行の依頼先》 ・自動車安全運転センター 《注意点》 ・交通事故証明書には基本的な情報を中心に記載されている ・そのため、過失割合を決める根拠とするには弱い可能性あり |
物件事故報告書 |
《記載内容》 ・事故状況の簡単な略図 《開示・発行の依頼先》 ・管轄の警察署 《注意点》 ・裁判前には、原則として弁護士照会をしなければ開示されない |
なお、「実況見分調書」の取得方法は以下のページで解説されているため、ぜひご確認ください。
これまで、別冊判例タイムズの事例や、過失割合の主張に必要な証拠について解説しました。
では、別冊判例タイムズと証拠さえあれば、被害者本人でも加害者側の任意保険会社と交渉することは可能なのでしょうか。
以下のページで解説されている「交渉術」のように、被害者本人でも交渉することは可能です。
ただ、弁護士に依頼すれば、
などのメリットがあるため、弁護士に相談することを推奨します。
確かに、加害者側の任意保険会社の担当者は交渉慣れしているため、被害者本人だと難しい場面に対処しきれないかもしれません。
弁護士に相談・依頼をしていれば、都度アドバイスをもらえることもあります。
たとえば、
最初は「過失割合10:0」という話だったのに、後から「やっぱり8:2です」と変更される
という状況になったときなど、弁護士が納得のいく理由や対応方法を教えてくれる場合があります。
捜査が進み、被害者側にとって「不利な証拠」が出てくると、後から過失割合の変更を言い渡されるケースがあります。
その場合、被害者側の心情としては腑に落ちないかもしれません。
しかし、捜査の結果、8:2が適切とみなされた場合、当初の10:0にすることは難しいでしょう。
弁護士に相談すれば、腑に落ちない点の説明や、裁判で主張が認められる見込みなどを聞ける可能性があります。
交通事故案件の経験豊富な弁護士であれば、過去の裁判例や実務経験に基づいた助言をもらえる場合もあります。
過失割合の「交渉」に関することでお困りの方は、ぜひアトム法律事務所までご相談ください。
交通事故の過失割合でお困りの被害者の方はこちらの窓口をご利用ください。
スマートフォンから弁護士とのLINE相談、対面相談予約などが可能ですので、ぜひお気軽にご利用ください。
受け付けた後に順次、弁護士が対応しています。
いかがでしたでしょうか。
最後に岡野代表弁護士からひと言アドバイスをお願いします。
交通事故の過失割合についておわかりになったでしょうか。
基本的には、別冊判例タイムズを用いて弁護士や任意保険会社の担当者は過失割合の交渉をしていきます。
また、過失割合でもめる場合、「交通事故証明書」などの証拠を用いて論理的な主張をすることが大切です。
過失割合がなかなか決まらない、納得できない場合、弁護士に相談すれば適切なアドバイスをもらえる場合があります。
交通事故案件に対応しているアトム法律事務所は過失割合の交渉も可能なので、ぜひお気軽にご相談ください。
このページを最後までご覧になってくださった方は、
ということなどについて、理解が深まったのではないでしょうか。
交通事故の過失割合に関することで弁護士に相談したい方は、スマホで無料相談よりご相談ください。
また、関連記事もご用意しましたので、過失割合に関する他記事もぜひご覧になってみてください。
このページが、交通事故の過失割合の判例についてお悩みの方のお役に立てれば何よりです。
追突事故の過失割合は、基本的には加害者:被害者=100:0です。しかし、被害者の方が適切な駐車場所・駐車方法で駐車していなかった場合や、車の非常点滅灯がついていなかった場合、その他過失があった場合などは、被害者の方にも過失割合がついてしまう可能性があります。 追突事故の過失割合の解説
被害者の方が飲酒運転中に交通事故に遭った場合、過失割合は通常よりも2割多くつけられてしまいます。このほか、被害者の方でも重過失に当たる過失がある場合には、過失割合が2割増やされてしまいますのでご注意ください。 飲酒運転の過失割合の解説
過失割合の交渉では、事故当時の状況を客観的に記録した資料を準備しておくことがポイントです。過失割合は事故状況をもとに決められるからです。具体的には実況見分調書、供述調書、交通事故証明書、物件事故報告書が事故状況を証明する証拠となります。 資料の内容・請求先のご案内
岡野武志
交通事故において過失割合はもめることが多い分野です。
過失割合に納得できない・決まらないなどの理由で争うことが多く、「裁判」に発展するケースもあります。
適切な過失割合にするにはどうすればいいのかに関してこのページでしっかりと学び、損をしないようにしましょう。