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後遺障害等級の併合とは|労災でも併合する?併合にならない例外は何?

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  • 後遺障害等級併合とは何だろう
  • 併合する条件はあるのだろうか
  • 労災でも併合するのだろうか

後遺障害等級併合とは?

これから併合について、交通事故案件の経験がある弁護士とともに解説していきます。

このページで後遺障害等級の併合をしっかり学び、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」で損をしないようにしましょう。


1

後遺障害等級の併合とは?

Q1

併合の条件は何?

後遺障害の併合の意味

まず、後遺障害等級併合とは何なのでしょうか。

後遺障害等級の併合の意味は以下の通りです。

後遺障害等級の併合

系列を異にする身体障害が2以上ある場合に、重い方の身体障害の等級によるか、又はその重い方の等級を1級ないし3級を繰り上げて当該複数の障害の等級とすること

後遺障害等級の併合とは
  • 別系列で2つ以上の後遺障害
  • 併合すると0~3等級繰上がる

なお、後遺障害等級の併合については、

自動車損害賠償保障法施行令第2条1項3号

で定められています。

三 傷害を受けた者(略)

ロ 別表第二に定める第五級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合における当該後遺障害による損害につき重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ハ 別表第二に定める第八級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる同表に定める金額

ニ 別表第二に定める第十三級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる同表に定める金額(その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額)

ホ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき重い後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

引用元:自動車損害賠償保障法施行令第2条1項3号

上記条文の内容をわかりやすく表で要約すると、以下の通りです。

後遺障害の併合が行われた場合の等級早見表
次に重い等級 一番重い等級
15 68 813 14
15 重い等級+3
68 重い等級+2 重い等級+2
813 重い等級+1 重い等級+1 重い等級+1
14 重い等級 重い等級 重い等級 併合14

※別表第一の後遺障害の場合除く

上記の表があれば、○等級と△等級が併合した場合、いくつ等級が繰り上がるのかということが一目瞭然です。

後遺障害等級が併合すると何等級になるのか?

と疑問に思われたときは、こちらの表を確認することをオススメします。

後遺障害の「系列」はどういう意味?

併合の条件に「系列を異にする」とありますが、そもそも系列とは何なのでしょうか。

後遺障害等級の併合の系列とは、

身体の部位ごとに区分された後遺障害を、さらに生理学的な観点から細分したもの

であり、35の系列に分かれています。

以下のページで後遺障害の系列表が掲載されているので、ぜひご参考にしてみてください。

後遺障害等級の系列とは
  • 身体の部位と障害の症状ごとの区分
  • 35の系列に分かれている

では、「系列を異にする」後遺障害のみが併合の対象になるため、

脊柱に変形を残し(11級7号)、かつ脊柱に運動障害を残した(8級2号)

という場合だと、同じ脊柱に後遺障害が発生しているため、併合はしないのでしょうか。

同じ系列に後遺障害が発生しているため、併合しません。

繰り返しになりますが、異なる系列の後遺障害が発生した場合のみ、併合が認められることを覚えておきましょう。

ここまでのまとめ

後遺障害等級併合とは、異なる系列の身体障害が2つ以上残ること

Q2

後遺障害等級が併合されるメリットは?

もらえるお金が増える?

後遺障害等級の併合が認定された場合、1~3等級繰り上がる場合があることを上述しました。

では、併合されて等級が上がった場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

後遺障害等級が併合された場合、後遺障害慰謝料逸失利益が増額される可能性があります。

後遺障害慰謝料と逸失利益

後遺障害慰謝料…後遺障害が残存したことにより、生活上の不便を強いられるなどの精神的苦痛に対して支払われる金銭。入通院慰謝料とは別に支払われる。

逸失利益…不法行為がなければ被害者が得られたであろう経済的利益を失ったことによる損害。

上記の通り、後遺障害等級が認定されると、治療費や傷害慰謝料とは別に後遺障害慰謝料や逸失利益が支払われます。

後遺障害慰謝料と逸失利益は等級に応じて増減します。

当然、

等級が上位のほうがもらえる金額が高額になる

ので、等級の併合で1~3等級繰り上がることには大きなメリットがあると言えるでしょう。

等級併合のメリット

後遺障害慰謝料逸失利益が増額される

なお、各等級に応じた後遺障害慰謝料の目安の金額は以下の表の通りです。

こちらは過去の裁判例に基づいて算出された裁判基準(弁護士基準)の金額です。

後遺障害慰謝料
等級 後遺障害慰謝料
1 2,800
2 2,370
3 1,990
4 1,670
5 1,400
6 1,180
7 1,000
8 830
9 690
10 550
11 420
12 290
13 180
14 110

*慰謝料の単位は万円

併合14級でもメリットはある?

しかし、ケースによっては併合しても後遺障害等級が繰り上がらないこともあります。

それは「14級と14級が併合して、併合14級になったケース」です。

この場合でも、後遺障害慰謝料逸失利益が増額されるなどといったメリットはあるのでしょうか。

原則、併合14級でも単独の14級と同様の後遺障害慰謝料や逸失利益が支払われます。

ただし、以下のような場合だと、併合14級でも増額される可能性があります。

  • 私生活や就労に支障が出るような症状
  • 労働能力の喪失の程度が大きい

実際、

  • 右下腿部前面にてのひらサイズの醜状(14級5号)
  • 顔面部に10円銅貨大以上の療痕(14級10号)

の後遺障害が残り、併合14級が認定された以下の判例では、通常よりも高額な慰謝料が認められています。

(4) 後遺障害慰謝料

(略)顔面の醜状を含む後遺障害につき症状固定した当時,原告は19歳であった。

一般に,成人前の18~19歳前後の青年期にある者にとって,顔面に瘢痕等が残り続けるということにより,将来の私生活や就労に対する大きな不安が生じたり,積極性を失ったりする可能性があるということができる。原告自身,顔面の醜状により,何事にも自信がもてなくなったと供述している。また,(略)右下腿部の醜状もあることを考慮すべきである。

もっとも,(略)相応の逸失利益を算定していることからすれば,原告の外貌醜状による後遺障害慰謝料としては,180万円を認めるのが相当である。

引用元:横浜地方裁判所判決/平成23年(ワ)第3757号

確かに、上記判例では併合14級にも関わらず、13級相当の後遺障害慰謝料180万円が認められています。

このように、併合14級であっても場合によっては賠償金を増額できるケースがあります。

併合14級の後遺障害慰謝料逸失利益に関することはぜひアトム法律事務所までご相談ください。

併合14級のケース
  • 通常は単独の14級と同じ賠償金額
  • 症状や労働能力喪失の程度によっては増額される可能性あり
Q3

労災でも後遺障害等級併合は存在する?

通勤中・勤務中の交通事故でケガを負った場合、労災が適用されるケースがあります。

労災事故でも後遺障害等級併合は認められるのでしょうか。

労災であっても、自賠責と同様に、併合した場合は以下の等級の繰り上がり方をします。

  1. ① 5級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を3つ繰上げる
  2. ② 8級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を2つ繰上げる
  3. ③ 13級以上の後遺障害が2つ以上残存 ⇒ 重い方の等級を1つ繰上げる
  4. ④ ①~③以外の後遺障害が2つ以上残存する場合⇒重い方の等級

労災の場合であっても、自賠責と同様に等級の併合をしてくれることに安心しました。

では、後遺障害において労災と自賠責には大きな差異はないのでしょうか。

労災の場合、自賠責とは審査方法や等級認定のされやすさなどが異なります。

自賠責の場合は醜状障害等一部の例外を除いて原則書面審査です。

しかし、労災の場合は被害者の方は基本的に「地方労災医員」と面談審査を行うことになります。

また、労災の方が高い等級が認定される可能性が高い傾向にあります。

そのため、労災適用の交通事故の場合は、必ず労災を使用するようにしましょう。

労災の後遺障害認定
  • 労災は原則的に面談審査
  • 労災のほうが高い等級が認定されやすい

労災を使用することにはメリットがあるため、労災適用の事故かどうか知りたいときには弁護士に相談することをオススメします。

2

併合にならないケース|併合・加重・相当の違い

後遺障害等級には併合だけではなく、加重相当というものもあります。

それぞれどういう意味なのか、これから解説していきます。

Q1

後遺障害の「加重」はどういう意味?

まず、後遺障害等級の加重とは何なのでしょうか。

既に後遺障害(既存障害)のある人が、後発事故によって「同一部位(同系列)」に新しい後遺障害(現存障害)を負うことです。

なお、現存障害が既存障害よりも重くならなければ加重には当たらない点にご注意ください。

後遺障害の加重とは

既存障害と同じ部位に現存障害が残ること

かつ、

現存障害の等級が既存障害よりも重いこと

また、後遺障害が加重した場合、現存障害分の保険金額から既存障害分の保険金額が差し引かれて支給されます。

加重した際の保険金額の控除については、以下の自賠法施行令第2条2項で定められています。

法第十三条第一項の保険金額は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによつて同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。

引用元:自動車損害賠償保障法施行令第2条2項

加重した際の保険金額

現存障害分の保険金額 – 既存障害分の保険金額

一例を挙げると、

① 既存障害

  • 小指が動かない(13級6号)
  • 後遺障害慰謝料180万円

② 現存障害

  • 小指が失われた(12級9号)
  • 後遺障害慰謝料290万円

という場合、②現存障害の後遺障害慰謝料290万円から、①既存障害の後遺障害慰謝料180万円が差し引かれるため、

②290万円-①180万円=110万円

110万円が後遺障害慰謝料として支払われることになります。

Q2

後遺障害の「相当」はどういう意味?

次に、後遺障害の相当とは何なのでしょうか。

相当(または準用)とは、

自賠責の後遺障害等級表に該当しない後遺障害でも、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とすることです。

たとえば、「味覚障害」は後遺障害に相当しています。

味覚障害の場合だと、基本的な4つの味覚(甘味、酸味、塩味、苦味)のうち、

  • すべてを喪失すると第12級相当
  • 1つ以上3つ以下を失った場合は第14級相当

とされています。

後遺障害の相当(準用)とは

後遺障害等級表に該当しない後遺障害に等級に割り当てること

実際に後遺障害の相当が認められた裁判の一例として、以下があります。

原告は,(略)頭部外傷に伴う嗅覚障害につき12級相当,頭部外傷に伴う味覚障害につき14級相当で,併せて併合11級相当と認定された。

引用元:大阪地方裁判所判決/平成27年(ワ)第254号

嗅覚障害と味覚障害でそれぞれ後遺障害12級14級に相当すると認められ、最終的に併合11級が認定されています。

このように、後遺障害等級表に該当していない後遺障害であっても、等級が認定されるケースがあることを覚えておきましょう。

等級が認定された場合、後遺障害慰謝料逸失利益が支払われるという大きなメリットがあります。

なお、後遺障害等級表は以下のページで紹介しているため、ぜひご参考にしてみてください。


3

後遺障害等級の併合で弁護士に相談!

Q1

【LINE対応】スマホから弁護士に相談するには?

後遺障害等級併合でお困りの被害者の方はこちらの窓口をご利用ください。

  • LINE電話無料相談可能
  • 24時間365日受付

スマートフォンから弁護士のLINE相談、対面相談予約などが可能ですので、ぜひお気軽にご利用ください。

受け付けた後に順次、弁護士が対応します。

最後に一言アドバイス

いかがでしたでしょうか。

最後に岡野弁護士からひと言アドバイスをお願いします。

後遺障害等級の併合についておわかりになったでしょうか。

系列が異なる後遺障害が2つ以上残った場合、等級が繰り上がり、賠償金額を増額できるケースがあります。

アトム法律事務所に相談すれば、高額な後遺障害慰謝料逸失利益にできる可能性があるため、ぜひご相談ください。

もし「弁護士費用特約」が使えるようであれば、費用をほとんど負担せずに弁護士に依頼可能な場合があります。

また、対面相談が難しい場合は、スマートフォンのLINE無料相談からお気軽にご連絡ください。

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まとめ

このページを最後までご覧になってくださった方は、

まとめ
  • 後遺障害等級併合とは何か
  • 併合・加重・相当(準用)それぞれの仕組み

ということなどについて、理解が深まったのではないでしょうか。

後遺障害等級の併合に関することで弁護士に相談したい方は、スマホで無料相談よりご相談ください。

また、関連記事もご用意しましたので、後遺障害等級に関する他記事もぜひご覧になってみてください。

このページが、後遺障害等級併合についてお悩みの方のお役に立てれば何よりです。

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