弁護士無料相談をご利用ください
相談依頼は今すぐ!
3人の弁護士がこの記事に回答しています
治療や後遺症等級認定が終わったら、いよいよ加害者側との話し合い、示談交渉が始まります。
対立する相手と話し合わなければいけないというのは、とても不安になるものです。
示談交渉について、今一度どういったものか解説します。
「過失割合」や、「後遺障害等級」はすべて示談金の金額にかかわってくるものです。
これは加害者側の保険会社と被害者との間で行われる示談交渉で決定される中の重要事項です。
ここで改めて、示談とはどういうものかについて確認しておきましょう。
互いに譲歩し、これ以上争わないことを内容とする裁判外の合意
これ以上争わない、つまり示談で支払われる示談金が支払を受けられる「交通事故の損害全額」となります。
示談交渉は相手方にいったいいくら請求できるのかを決める、重要な最終ステップです。
示談交渉が成立することにより生じる法律的な効果を押さえておきましょう。
示談が成立することで、交渉内容にお互いが納得していることになります。
当然、相手方の保険会社もそこで決められた額は必ず払わなければならないのです。
示談をすることで金額は完全に決定し、それ以上を請求することはできなくなります。
「この金額でいい」と互いに合意したのですから、後から「やっぱりもう少し欲しい」と主張することは認められません。
したがって、示談交渉では必ず納得のいく示談金となるよう交渉しなければなりません。
示談交渉は相手方の保険会社から連絡されて始まることが多いです。
ではそれはいつ頃からなのかというと、損害額を算定できるようになってからです。
例えば、損害額の一部である「車の修理費」は具体的な金額がすぐにわかりますが、怪我の場合はそうもいきません。
そこで、傷害事故と死亡事故、それぞれの主な損害項目の算定がいつできるようになるのか、見てみましょう。
では、死亡事故の場合はいつから損害が算定できるようになるのでしょう。
損害項目 | 確定時期 |
治療関係費 | 被害者が死亡した時期 |
看護料 | |
入院雑費 | |
休業損害 | |
傷害慰謝料 | |
葬儀関係費用 | 葬儀が終わったとき |
死亡慰謝料 | 被害者が死亡した時期 |
死亡逸失利益 |
よって、死亡事故の場合
被害者が死亡し、葬儀が終わってその費用が判明した時点から、示談交渉が始められます。
傷害事故の場合は、どの時点で損害が確定するのでしょう。
後遺障害等級認定を行う場合とそうでない場合で異なってきます。
損害項目 | 確定時期 |
治療関係費 | 治療が終了した時 症状が固定した時期 |
看護料 | |
入院雑費 | |
通院交通費 | |
休業損害 | |
傷害慰謝料 | |
逸失利益 | 後遺傷害等級認定が確定した時 |
後遺障害慰謝料 |
よって傷害事故で
後遺障害等級申請を行わない場合は治療が終了した時点
後遺傷害等級申請を行う場合は後遺障害等級の認定がなされた時点から、示談交渉が始められます。
上で述べられているのは、あくまでも示談交渉を始められる時期です。
ですがそうなってからすぐ、焦って示談を開始するのはかえって不利な交渉を招きかねません。
交渉を有利に進められる資料や証拠を集め、損害額を把握しておけるようにしましょう。
実際の示談交渉の流れを時系列でまとめると、以下のようになります。
損害額の計算 | |
↓ | |
示談案の作成・提示* | |
↓ | |
交渉 | |
↓ | |
改めて損害計算・交渉 | |
↓ | ↓ |
示談書の作成 | 裁判など手続き |
↓ | ↓ |
示談 | 和解・判決 |
*実際は相手方保険会社がまず示談案を提示してくることが多い
では具体的な事例で、どのような流れになるか確認してみましょう。
Aさんは38歳のサラリーマン。事故前の年収は500万、3カ月の給与収入は125万円だった。
平成24年4月1日、十字路をバイクで直進中、右側から赤信号を無視して進入してきた車と接触。右橈骨遠位端骨折。
平成24年4月1日~30日まで、合計30日間入院。
妻が4月1日~6日まで付添。
通院日数80日。症状固定は平成24年12月31日。
治療費150万円。通院交通費合計1万2150円。
休業日数80日。
右手関節の可動域制限により、後遺症12級6号認定。
既に治療費・通院交通費は加害者側保険会社より全額支払い済。
休業損害は60日ぶんのみ支払い済。
自賠責保険会社より224万円受領済。
傷害事件の主な損害項目は治療関係費・看護料・入院雑費・通院交通費・休業損害。傷害慰謝料・逸失利益・後遺障害慰謝料でした。
以下の目安は、被害者がより高額を獲得できる可能性のある弁護士基準での金額です。
損害項目 | 内容 | 金額 |
治療関係費 | 治療費・入院費・診断書作成料など | 原則実費 |
看護料 | 看護人などにかかる費用 | 入院で近親者付添いの場合6500円/日 通院付添いの場合3300円/日 |
入院雑費 | 入院中の日用品購入費など | 1500円/日 |
通院交通費 | 通院に要した交通費 | 原則実費 |
休業損害 | 得られなかった収入 | 損害日額×入通院日 |
傷害慰謝料 | 精神的苦痛への賠償 | 入通院期間に基づく |
逸失利益 | 障害等級に基づく | |
後遺障害慰謝料 |
慰謝料や治療費については、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」と様々な基準があります。
初回提示では、加害者側との交渉のたたき台としての金額を示しましょう。
受け取れる額が減るかもしれない過失割合の修正要素など、不確定な事項についてこの時点では計算しなくて構いません。
逆に、相手方不利の事情があればその分増額して慰謝料を算定すべきでしょう。
それぞれの基準については、以下のリンクを参照してください。
弁護士基準でのそれぞれの金額の具体的な目安が知りたい方は以下を参照してください。
損害額の計算をするために、主に用意しなければならない資料は以下の通りです。
用途 | 入手方法 | |
診断書 診療報酬明細書 | 傷害慰謝料・入通院雑費の算定 慰謝料増額の主張 | 保険会社にコピー送付請求 または健康保険組合・労働基準監督署で開示* |
後遺障害診断書 後遺障害等級認定票 | 症状固定の日特定 後遺障害の説明 | 保険会社から送付されてくる されていない場合は送付申請 |
休業損害証明書 | 休業損害の算定 | 勤務先から |
源泉徴収票 | 休業損害・逸失利益の算定 | 勤務先から |
各種領収書など | 診断書作成料などの 金額の特定 | 自分で入手 |
*治療費が支払われておらず、健康保険または労災を適用している場合
今回の事例ですと、具体的な金額は以下のようになります。
損害項目 | 金額 |
治療関係費 | 150万円支払い済 |
看護料 | 6500円×6日=3万9000円 |
入院雑費 | 1500円×30日=4万5000円 |
通院交通費 | 1万2150円支払い済 |
休業損害 | 125万÷90日×80日=111万1120円 |
傷害慰謝料 | 164万 |
逸失利益 | 500万×0.14×ライプニッツ係数*=1059万8770円 |
後遺障害慰謝料 | 290万 |
総額 | 1784万6040円 |
未支払い額 | 1326万890円 |
*一括支払いによる運用などで得られる利益を控除する係数
損害額が算定できたら、加害者側に示談案を提示します。
Aさんの場合、損害の総額から既に支払われた金額を抜いた1326万890円を示した示談案を提示します。
既に払われた金額を除き、最終的に支払われる示談金を示したもの
示談案は証拠として残すため、
必ず書面で作成しましょう。
また主張を明確にし、保険会社の決定がスムーズに下りるように
損害項目ごとに金額を明示しましょう。
また、返答が遅くなるのを防ぐためにも「〇月×日までに回答してほしい」と
期間を区切って提示することも重要です。
示談案を提示したら、Aさんと加害者側の保険会社とで金額をめぐる交渉が行われます。
交渉の際には、どこまで主張を押し通すかがポイントです。
双方折り合いがつかず裁判になった場合、時間や費用が余計にかかり、証拠集めをさらに厳格にしなければなりません。
自分に不利な事情をきちんと認識し、どこまで譲歩するかを常に意識しましょう。
交渉がまとまったならば、示談書を作成し、署名押印をすることで示談が終了します。
通常は加害者側の保険会社が示談書(免責証書と題した文章)を送ってきます。
そこで、以下の点を必ず確認するようにしましょう。
最終支払金額 | 後遺障害部分 | |
確認事項 | 示談交渉でまとまった金額を新たに受け取ると正しく記載されているか | (傷害部分の示談だけをした場合) 後遺障害が発生した場合には別途協議する旨が示されているか |
記載例 | 「既払金を除き、〇〇万の支払い義務があることを認める」 | 「後遺障害が発生した場合には、別途協議する」 |
実際のところ、日々交通事故に接している保険会社の担当者相手に一般の方が交渉を有利にはこぶのは困難です。
示談交渉の方向性はこれで正しいのか、強く主張すべき内容は何なのか。
アトム法律事務所のLINE、電話での相談で、是非ご相談ください。
保険会社の担当者という専門家に対抗するには、別の専門家の手を借りることが一番です。
特に損害の計算は複雑ですから、お一人で抱え込まず、まずは弁護士にご相談ください。
岡野武志
なお、例外として
交渉が終わってから、当初は予見しえなかった新たな後遺症が発生した場合
があります。
その場合は後遺症が示談に考慮されていないとして、新たに損害賠償を獲得できる可能性はあります。
ただしあくまでも例外ですので、後から請求できると思わず示談交渉には慎重にあたりましょう。