作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
肋骨骨折の後遺症|痛みは後遺障害に該当?後遺障害慰謝料はいくら?
この記事のポイント
- 肋骨骨折の後遺障害には「変形障害」「神経障害」などがある
- 慰謝料の金額は後遺障害等級と用いる基準で大きく変動する
- 保険会社提示の金額から2~3倍増額を実現するには弁護士に依頼すべき
肋骨は一本一本が細長く衝撃に弱いため骨折しやすい部位だといわれています。交通事故による強い外傷はもちろん、咳がつづいたり、胸をぶつけたりなど比較的軽い衝撃でも骨折することもあります。
基本的に安静にしていれば骨折は治りますが、場合によっては後遺症が残る可能性もあることを否めません。交通事故で肋骨を骨折し、後遺症が残ったら慰謝料などの補償は得られるのでしょうか。
- 肋骨骨折の後遺症はどのような症状がある?
- 肋骨骨折 の後遺障害認定申請の方法は?
- 肋骨骨折が原因の痛み・しびれは後遺障害になる?
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
肋骨は心臓・肺などの臓器を保護する役割をもっていますが、骨折にともなって臓器を損傷することがあります。臓器の損傷はより重篤な症状がみられる可能性があるので早期に医療機関を受診しましょう。
肋骨骨折の後遺症|後遺障害等級認定と治療・手術・通院
肋骨骨折の症状
肋骨骨折はつぎのような症状がみられます。
- 骨折そのものによる痛み
- 皮下出血
- 腫れ
- 気胸や血胸の合併で胸の痛み、息苦しさ
交通事故では、胸と車両が接触したり、転倒して地面に胸を打ち付けるなどして骨折することが多くなっています。
肋骨骨折の後遺症|痛みは後遺障害に該当する?
後遺症(後遺障害)
十分な治療を受けても、良くも悪くもこれ以上変化しないという状態で残存する症状
交通事故の場合、症状が重いほうから1~14段階の等級で区分されている
肋骨骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害にはつぎのようなものがあげられます。
肋骨骨折の後遺症
- 変形障害
- 神経障害
それぞれはどのような症状で、何級の等級に該当するのかは次章で詳しく説明します。
肋骨骨折の後遺症が残ったら慰謝料が増える?の真実
肋骨骨折の後遺症で増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益
肋骨骨折の後遺症が後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えることになります。後遺障害が残った場合、支払われる金銭の項目が2つ追加されます。
1つ目が後遺障害慰謝料です。
後遺障害慰謝料
後遺障害を負ったことで被った精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
等級に応じた慰謝料が決められている
2つ目が逸失利益です。
逸失利益
後遺障害を負ったことで労働能力が失われ、収入減につながったことへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失率は、障害の部位/傷害の程度/被害者の職業などが考慮されるため、増減することがあります。
主婦の方などの場合における年収算定方法やライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
後遺障害等級の申請方法|肋骨骨折の場合
では、肋骨骨折で後遺障害等級の申請をして後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみたいと思います。
①症状固定の診断
骨折の治療を継続しても、症状の改善が見込めない状態になる場合があります。このような場合は医師から症状固定の診断が出されることになります。
後遺障害等級の認定を受ける場合、事故から約6ヶ月以上経過している必要が原則としてあります。
6ヶ月より治療期間が短いと、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
②後遺障害診断書・医学的所見の用意
症状固定の診断がでたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請は、2通りの方法があります。
- 事前認定:被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出
- 被害者請求:被害者が必要資料を自身で用意して自賠責保険に提出
被害者請求は資料集めの手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料をご自身で精査できるのが強みです。なお弁護士に依頼すれば、資料集めを任せることもできます。
比べる
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料を収集する手間なし | 資料を自ら確認できる |
デメリット | 資料を自ら確認できない | 資料を収集する手間あり |
③認定機関による審査
提出した資料は損害保険料率算出機構が確認し、資料にもとづいて後遺障害等級の審査がおこなわれます。
審査方法は、基本的に提出した資料のみですすめられていくことになります。後遺障害診断書以外の医学的資料が後遺症の残存を証明する証拠としてあつかわれることになるので、資料集めは後遺障害申請では重要です。
審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定をおこなうことになります。
後遺障害等級の申請についての詳細はこちら
肋骨骨折は何科を受診する?
肋骨骨折を負ったら、整形外科を受診しましょう。もっとも肋骨骨折によって気胸・血胸など別の外傷を併発している場合、呼吸器内科/呼吸器外科/救急科でも治療を受ける必要があります。
肋骨骨折の治療・手術|放置でも治る?手術費用は?
肋骨骨折の治療法としては、軽度の骨折と重篤な骨折で治療方法が異なります。
呼吸に異常がなければ、骨折の痛みをおさて自然に治るのを安静にして待つことになります。鎮痛薬や湿布などで痛みを和らげつつ、バストバンドなどと呼ばれる固定具で胸の動きを固定・おさえるようにします。
一方、骨折の程度が重篤であったり、臓器損傷を併発しているような場合は、外科的な治療も検討されることになります。
治療法まとめ
▼軽度の骨折
- 固定具による肋骨の固定
- 痛みに対する鎮痛薬
▼重篤な骨折・臓器損傷の併発
外科的治療
手術費用はいくら?
肋骨骨折は外科手術がとられることは稀で、基本的には骨折部位を固定する骨折非観血的整復術がおこなわれます。加えてギプスによる固定もおこなわれる場合があるので、治療費としてはだいたい2万7000円程度が予想されます。
もっともレントゲン撮影などもおこなわれることになるので、プラス数千円の費用がかかることが考えられます。
肋骨骨折の後遺症①変形障害の後遺障害
肋骨骨折による変形障害の後遺障害等級は何級?
肋骨骨折では、骨折した部分がうまくくっつかずに変形した状態で固まってしまうことがあります。
変形障害で認定が予想される後遺障害等級はつぎのとおりです。
後遺障害等級
肋骨骨折による変形障害
等級 | 内容 |
---|---|
12級5号 | ろく骨に著しい変形を残すもの |
用語解説
▼著しい変形
…服を脱いだ時に目視で変形が確認できる状態のこと
レントゲン写真などでやっと認識できる程度の変形は著しい変形には該当しません。
肋骨骨折による変形障害の後遺障害慰謝料の相場は?
慰謝料の金額は、相手方が用いる基準(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで用いることができる基準(弁護士基準)で大きく異なります。
肋骨骨折による変形障害に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
後遺障害慰謝料
肋骨骨折による変形障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級5号 | 93万円 | 290万円 |
等級にもよりますが弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できることになります。
慰謝料増額を目指すのならば、できるだけ早期に弁護士と相談しておくことが重要です。
肋骨骨折の後遺症②神経障害の後遺障害
肋骨骨折による神経障害の後遺障害等級は何級?
肋骨骨折の外傷が治った後もなお、痛み・しびれなどが残ってしまうことがあります。
神経障害で認定が予想される後遺障害等級はつぎのとおりです。
後遺障害等級
肋骨骨折による神経障害
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
用語解説
▼局部に頑固な神経症状を残すもの
…MRI画像などから確認できる
▼局部に神経症状を残すもの
…自覚症状や神経学的所見*のみ
* 患部に刺激を与えて反応をみる検査
レントゲン・MRI画像などから神経症状の存在を確認できるかどうかが、12級と14級の分かれ目となります。
肋骨骨折による神経障害の後遺障害慰謝料の相場は?
肋骨骨折による神経障害の後遺障害に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
後遺障害慰謝料
肋骨骨折による神経障害の後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
肋骨骨折の後遺症に関するお悩みは弁護士にご相談ください
肋骨骨折は保存療法によって回復がはかられることが多い怪我ですが症状の重さによっては後遺症が残り、肉体的・精神的な被害を被る可能性があります。
それなのにも関わらず相手方保険会社が提示する慰謝料・逸失利益は、損害に対して不十分であることが多いです。
損害に対する適正な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番であると考えます。
保険会社との示談交渉などを一任すれば、
- 慰謝料が増額する可能性が高い
- 面倒な手続き、やり取りから解放される
などさまざまなメリットがあります。
骨折による慰謝料はどのくらいになるのか、通院に関しての注意点、後遺障害等級の申請方法など、どんなことでもご質問ください。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『刑事事件』と『交通事故』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。