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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
第一腰椎は5つある腰椎のうち一番上に位置するもので、L1と呼ばれることもあります。
ここに上下から圧力がかかり潰れたように折れることを、第一腰椎圧迫骨折といいます。
腰椎のすぐ後ろには脊髄が通る脊柱管がありますし、もし後遺障害が残ったらと心配になりますよね。
第一腰椎圧迫骨折によりどのような後遺障害が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
第一腰椎圧迫骨折では脊髄が傷つくこともあります。第一腰椎近くを走る脊髄は下半身の運動や排泄機能に関係しているため、第一腰椎が傷つくことで、これらの機能に障害が残る場合があります。
第一腰椎圧迫骨折が発生した場合、以下のような症状があります。
また、第一腰椎圧迫骨折では、折れた骨が腰椎の後ろを走る脊柱管を傷つけ、その内部を走る脊髄を圧迫することがあります。
第一腰椎近くを走る脊髄は下肢の運動と排泄機能に関係するため、この場合には以下のような症状も見られます。
さらに、第一腰椎近くには神経も走っていますので、この神経を圧迫していた場合には、以下の症状も見られます。
下肢のしびれ
第一腰椎圧迫骨折など骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
第一腰椎圧迫骨折では、寝返りや起き上がりなど体を動かすと非常に強い痛みを感じることが一般的です。
しかし、中にはそれほど痛みを感じなくても第一腰椎圧迫骨折が起こっている場合があります。
また、骨折により脊髄や神経が傷ついた場合には、後遺障害が残る可能性が高くなります。
速やかに病院で受診することをお勧めします。
第一腰椎圧迫では、基本的には手術は行われません。
コルセットなどで骨折部分を固定し、骨が癒合するのを待つという保存療法がとられます。
骨折部が神経や脊柱管を圧迫している場合には、圧迫を取り除くために手術が行われます。
この場合、椎体に骨セメントを流し込んで補償をする「バルーン椎体形成術(経皮的骨形成術)」や、スクリューを埋め込んで骨折部分を固定する手術が行われます。
第一腰椎圧迫骨折によりバルーン椎体形成術を行った場合、費用は入院関連費も含めて100万円~120万円ほどとなります。
ただし、公的医療保険を使えば、実際の負担が1~3割に抑えられます。
また、高額医療制度を利用すると、定められた限度額を超えた分についてはこの制度で負担してもらえます。
限度額は、加入者の収入や年齢によって決められます。
これ以上治療を続けても大幅な改善は期待できないと判断された症状。
交通事故で後遺障害を負うと、損さを経て14段階に分けられた後遺障害等級が認定される。
第一腰椎圧迫骨折により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛に対する補償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害による労働能力の喪失で異動や退職を余儀なくされたり出世が難しくなったりして得られなくなった、将来の収入に対する補償。
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
「労働能力喪失率」は後遺障害等級ごとに決められていますが、障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、
ということがあります。
後遺障害等級認定も示談交渉も、弁護士に相談することで専門家としてのアドバイス・サポートを受けることができます。
加害者側から示談金額の提示を受けたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
では、実際に第一腰椎圧迫骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。
後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
後遺障害等級認定の審査は、基本的に提出された資料のみを見て行われます。
そのため、提出資料で伝えるべきことをしっかり伝えることが重要です。
等級獲得のために伝えるべきことは、以下の3点です。
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。
では最後に、後遺障害等級認定を申請する際のポイントをまとめておきます。
第一腰椎圧迫骨折してしまった場合、腰椎の変形が残ることがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下のようになります。
第一腰椎圧迫骨折による腰椎の変形
6級5号 |
---|
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどちらかに該当する。 ▽2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じている ▽1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、側彎度が50度以上になっている |
8級2号 |
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどれかに該当する ▽2個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じている ▽側彎度が50度以上である など |
11級7号 |
以下のいずれかに該当するもの ▽第一腰椎圧迫骨折を残しており、それがX線写真等で確認できる ▽腰椎固定術が行われた ▽3個以上の脊椎について、椎弓切除等、椎弓形成術を受けた |
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
第一腰椎圧迫骨折による腰椎の変形に対する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
第一腰椎圧迫骨折による腰椎の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 498万円 | 1180万円 |
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
11級7号 | 135万円 | 420万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
第一腰椎圧迫骨折では、胸腰部に可動域制限が生じる場合があります。
胸腰部の可動域制限とは具体的に、
という動きに制限が生じることです。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
胸腰部の可動域制限
8級2号 |
---|
次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの ▽頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの ▽頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの ▽項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの |
第一腰椎圧迫骨折による胸腰部の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
胸腰部の可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
第一腰椎圧迫骨折では、そのすぐ後ろを走る脊髄が損傷することもあります。
第一腰椎周辺の脊髄は下半身の感覚に関係するため、ここを損傷すると足の麻痺が生じます。
その場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
第一腰椎圧迫骨折による足の麻痺
1級1号 |
---|
▽高度の対麻痺がある ▽中等度の対麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの |
2級1号 |
▽中等度の対麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの |
3級3号 |
▽中等度の対麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの) |
5級2号 |
▽軽度の対麻痺がある ▽一下肢の高度の単麻痺がある |
7級4号 |
一下肢の中等度の単麻痺がある |
9級10号 |
一下肢の軽度の単麻痺がある |
12級13号 |
▽運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺がある ▽運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害がある |
第一腰椎圧迫骨折による足の麻痺に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
第一腰椎圧迫骨折による麻痺
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1163万円 | 2370万円 |
3級3号 | 829万円 | 1990万円 |
5級2号 | 599万円 | 1400万円 |
7級4号 | 409万円 | 1000万円 |
9級10号 | 245万円 | 690万円 |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
第一腰椎圧迫骨折では、骨が癒合した後でも痛みや痺れが続くことがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
第一腰椎圧迫骨折による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 痛みがあり、X写真やMRI画像などで骨折部分に異常が確認できる |
14級9号 | X線写真やMRI画像などで骨折部分に異常を確認することはできないが、痛みがあることは推測できる |
後遺障害等級12級と14級は、「頑固な」という言葉で分けられています。
これを区別するための主な判断要素は、
です。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。 ですので、
が重要です。
第一腰椎圧迫骨折による痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
第一腰椎圧迫骨折による痛み
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
第一腰椎圧迫骨折は、寝返りや起き上がりなど基本的な動作によっても非常に強い痛み・苦痛を感じることが多いです。
また、脊髄を損傷してしまう場合もあります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
後遺障害等級認定の手続きや示談交渉などを一任することで、手続きの煩雑さを解消しながらも十分な準備が可能です。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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