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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
頸椎は背骨につながる首部分の骨を構成するブロック状の骨です。
首の周りには重要な神経や脊髄も通っていますので、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
頸椎圧迫骨折によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
頸椎圧迫骨折とは、頸椎が上下からの圧力で潰れるように折れることです。後ろの脊髄を傷つけると、骨折自体の症状だけでなく、脊髄損傷による症状も出てきます。
頸椎圧迫骨折には、以下のような症状があります。
また、折れた頸椎が後ろを通る脊髄を損傷している場合には、その部位に応じて以下のような症状が出る場合もあります。
損傷箇所 | 症状 |
---|---|
C4と5の間 | 四肢麻痺 |
C5より上 | 呼吸麻痺 |
C5と6の間 | 下肢麻痺 |
C6と7の間 | 下肢麻痺 手首の麻痺 手の麻痺 |
頸椎圧迫骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
検査では、2方向からX線で写真を撮ります。
その他、必要に応じて両斜位撮影や特殊な肢位での撮影やCT検査等も行われます。
頸椎圧迫骨折では、手術をする場合としない場合があります。
骨のずれが大きくなければ、首をギプスやコルセットなどで固定して安静にし、骨の癒合を待ちます。
骨のすれが大きかったり、脊髄を圧迫していたりする場合には、ネジなどで内部から骨折部を固定し、骨の癒合を待ちます。
このような手術を、骨折観血的手術といいます。
骨折部分にネジなどを埋め込む手術の費用は、使用するネジの種類などによっても異なります。
また、適用される保険などによって負担割合も変わりますが、入院40日程度と仮定した場合の骨折観血的手術の費用の概算は以下のようになります。
1割負担の場合 | 3割負担の場合 |
---|---|
6万円~12万円 | 40~50万円 |
参考:https://www.dou-kouseiren.com/byouin/kutchan/inpatient/vt1bv7000000eti0-att/vt1bv7000000etm3.pdf
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状。
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される。
頸椎圧迫骨折で残る可能性のある後遺障害は、以下の通りです。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ、得られなくなった将来の収入に対する補償。
(異動・退職を余儀なくされた、出生が難しくなったなど)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、
ということがあります。
後遺障害等級認定も示談交渉も、弁護士に相談することで専門家としてのアドバイス・サポートを受けることができます。
加害者側から示談金額の提示を受けたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
では、実際に頸椎圧迫骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。
頸椎圧迫を骨折した場合、頸椎の変形が後遺症として残る場合があります。
その場合の後遺障害等級は、以下の通りです。
頸椎圧迫骨折による頸椎の変形
等級 | 内容 |
---|---|
6級 | 頸椎に著しい変形を残すもの |
8級 | 頸椎に中程度の変形を残すもの |
11級 | 頸椎に変形を残すもの |
それぞれの内容について、より詳しく見ていきます。
以下①に該当し、なおかつ②または③に該当するもの
以下①に該当し、なおかつ②③④のどれかに該当する
以下のどれかに該当する
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
頸椎圧迫骨折による頸椎の変形に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
頸椎圧迫骨折による頸椎の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級 | 498万円 | 1180万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
11級 | 135万円 | 420万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
交通事故で頸椎圧迫骨折が生じた結果、首の可動域制限が後遺症として残る場合があります。
その場合の後遺障害等級は以下のようになります。
頸椎圧迫骨折による首の可動域制限
等級 | 症状 |
---|---|
6級 | ▼頚部と胸腰部の両方に、脱臼・圧迫骨折、固定術がなされている ▼全ての主要運動で完全強直もしくは可動域が10%以下 |
8級 | ▼頚部または腰部のいずれかに脱臼・圧迫骨折、固定術がなされている ▼頸部の前屈・後屈と回旋のいずれか一方が1/2以下に制限されている |
上記の後遺障害等級の解説の中で、主要運動、前屈、後屈、回旋という言葉が出てきました。
これらは首の可動域を測る際に出てくる言葉です。
それぞれ確認していきます。
頸椎圧迫骨折による首の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
頸椎圧迫骨折による首の可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級 | 498万円 | 1180万円 |
8級 | 324万円 | 830万円 |
頸椎圧迫骨折では、後遺症として四肢麻痺・下肢麻痺が残る可能性があります。
その場合の後遺障害等級は以下の通りです。
四肢麻痺の場合
等級 | 症状 |
---|---|
1級 | ①基本的な動作ができない ②できる動作にかなりの制限があり、食事・入浴・用便・更衣等につき常時要介護 |
2級 | ①できる動作にかなりの制限がある ②動作の精密さ、速度に相当の影響があり、食事・入浴・用便・更衣等につき随時要介護 |
3級 | 動作の緻密さ、速度に相当の影響がある |
両下肢麻痺(対麻痺)の場合
等級 | 症状 |
---|---|
1級 | ①基本的な動作ができない ②できる動作にかなりの制限があり、食事・入浴・用便・更衣等につき常時要介護 |
2級 | できる動作にかなりの制限があり、食事・入浴・用便・更衣等につき随時要介護 |
3級 | できる動作にかなりの制限がある |
5級 | 動作の精密さ、速度に相当の影響がある |
1下肢麻痺の場合
等級 | 症状 |
---|---|
5級 | 1上肢または下肢について基本的な動作ができない |
7級 | 1上肢または下肢についてできる動作にかなりの制限がある |
9級 | 1上肢または下肢について動作の精密さ、速度に相当の影響がある |
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
痛み・しびれの後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1600万円 | 2800万円 |
2級 | 1163万円 | 2370万円 |
3級 | 829万円 | 1990万円 |
5級 | 599万円 | 1400万円 |
7級 | 409万円 | 1000万円 |
9級 | 245万円 | 690万円 |
頸椎圧迫骨折では、骨折自体が治っても痛みやしびれが残ってしまう場合があります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
頸椎圧迫骨折による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
具体的には、
が判断を分ける要素となります。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
痛み・しびれの後遺障害
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
首は体の中でも特に重要な部位の1つであり、骨折の程度によっては重大な後遺症を残す可能性があります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
まずはお気軽にLINE・電話での無料相談をご利用ください。
(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
頸椎圧迫骨折では、頭頸部痛、頭頸部の異常姿勢、頸部の運動制限、激痛などの症状が見られます。また、頸椎圧迫骨折に伴って頸髄を損傷した場合には、四肢麻痺・呼吸麻痺・下肢麻痺・手首麻痺・手の麻痺などが発生する場合もあります。 頸椎圧迫骨折の症状の解説
頸椎圧迫骨折では、頸椎の変形、首の可動域制限、体の麻痺、しびれや痛みの残存といった後遺症が残る可能性がります。これらの後遺症に対して後遺障害等級が認められると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できるようになります。 頸椎圧迫骨折による後遺症の解説
頸椎圧迫骨折による後遺症に対して後遺障害等級が認定されると、①後遺障害慰謝料②後遺障害逸失利益が請求できるようになります。後遺障害慰謝料とは後遺症により生じる精神的苦痛に対する補償で、後遺障害逸失利益とは後遺症により得られなくなった将来の収入に対する補償です。 後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の解説
後遺障害等級の認定を受けるためには、後遺障害等級認定の審査を受けなければなりません。審査への申請方法には「被害者請求」「事前認定」の2つがあります。両者は、被害者自身が用意する書類の種類とその提出先が違います。 後遺障害等級認定の申請方法の解説