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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
肝臓は、腹腔にある臓器のなかで最も大きいものです。
それだけに、交通事故による腹部の外傷で肝臓損傷してしまうこともあります。
この記事では、肝臓損傷による後遺症(後遺障害)にどのようなものがあるのか紹介していきます。
肝臓は腹腔の中では最も大きく、腹部に衝撃があった時に損傷を受けやすい臓器です。
交通事故では衝突などによる腹部への衝撃、折れた肋骨が肝臓を傷つけることなどによって肝臓損傷が発生します。
肝臓内には多くの血管が通っているため、肝臓損傷が起こると腹腔内で出血が起こります。
それにより腹部組織が刺激され、腹痛を伴います。
また、多く出血した場合は出血性ショックにより様々な症状が生じます。
肝臓損傷の治療としては、出血が無い場合は経過観察、出血がある場合は輸血などをしながら経過観察します。
バイタルサインが安定していない時には手術せずに血管をふさぐ塞栓術・または開腹手術を行い、傷口の縫合などを行います。
手術を行わない場合はおよそ2~3カ月で回復すると言われています。
肝臓損傷の後遺症としては、例として以下のものが考えられます。
それぞれがどのような症状かは、次の章で詳しく解説します。
十分な治療を行っても、これ以上よくも悪くもならないという状態でなお残存している症状を後遺障害と言います。
後遺障害の重さは、後遺障害等級によって定められます。
治療後も体に残る後遺症を部位・程度などによって14段階に区分したもの
交通事故で後遺障害が残った場合、後遺障害等級によって慰謝料の金額などが決定されます。
より高い(数字の小さい)等級に認定されれば慰謝料も増えますので、どの等級に認定されるかは非常に重要です。
実際の申請基準や方法については、以下のページをご覧ください。
交通事故で胸腹部臓器に後遺症が残った場合、以下の等級に認定される可能性があります。
ここでの胸腹部臓器とは肝臓以外に、心臓、肺臓、胃、十二指腸、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、大腸、小腸を含みます。
後遺障害等級表
等級 | 内容 |
1級2号* | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級2号* | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級4号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級3号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級5号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
13級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
*別表Ⅰ、この他は別表Ⅱの基準
どのような症状が「障害」にあたるかについては、各臓器ことにそれぞれ具体的な基準があります。
肝臓に関する後遺障害等級は、以下のように定められています。
もっとも、症状の程度などによってより上位の等級が認定される場合もあります。
後遺障害等級表
等級 | 内容 |
9級11号 | 肝硬変(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるものに限る。) |
11級10号 | 慢性肝炎(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるものに限る。) |
ウィルスの持続感染
…感染後もウィルスを体内に保有する状態になること
これらは、交通事故により輸血や血液製剤でウィルスに感染してしまった場合の後遺障害です。
もっとも、近年では輸血による肝炎は年間十件程度しか発生しておらず、感染確率は非常に低いと言えます。
肝臓には痛みを感じる神経がなく、異常を生じても症状が出にくいことで知られています。
機能がある程度保たれているときは、手指の筋肉がつる症状、掌に斑点などが現れることがあります。
肝機能が低下すると黄疸、腹水などの症状が現れます。
血液検査での早期発見が可能です。定期的に検査を行うよう心がけましょう。
臓器損傷が治癒しても痛みやしびれが残ることがあります。
これらは外傷により神経が損傷したり、圧迫されたりすることで起こる症状です。
こちらも、検査や画像所見によって損傷などが確認できれば後遺障害に認定される可能性があります。
肝臓損傷にともなう痛み・しびれ
等級 | 内容 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
これらの文言によれば、痛みやしびれの程度によって等級が変化するように思えます。
ですが実際は、主に他覚的所見の有無によって等級は決定されます。
画像検査や神経学的検査によって確認できる、客観的な身体的異常
通常、後遺障害等級は障害の重さによって決定します。
ですが痛みなどは目視できず、客観的に判断しづらい症状です。そのため、認定の際に他覚的所見が重視されます。
局部とは体の一部、神経症状とは痛みやしびれなど神経由来の症状を指します。
「頑固」については明確な基準はなく、
などの医学的な裏付けが揃い、痛み・しびれ症状を医学的に証明可能であれば、後遺障害等級12級に認定される可能性があります。
他覚的所見に乏しい場合、痛みやしびれの原因となった損傷を証明するのは困難です。
それでも一定以上の通院期間があり症状が一貫している・事故直後に損傷が確認できているなど、痛み・しびれ症状を医学的に説明・推定可能であれば、後遺障害等級14級に認定される可能性があります。
腹部に衝撃を受けると、肝臓のみならず他の臓器にも後遺障害が残る場合があります。
そのようなときには、併合により後遺障害等級が繰り上がります。
存在する後遺症 | 併合の結果 |
5級以上の後遺障害が2つ以上残存 | 重い方の等級を3つ繰り上げる |
8級以上の後遺障害が2つ以上残存 | 重い方の等級を2つ繰り上げる |
13級以上の後遺障害が2つ以上残存 | 重い方の等級を1つ繰り上げる |
14級の後遺障害が2つ以上残存 | 14級のまま |
それ以外 | 最高等級を後遺障害等級とする |
例として肝臓に9級、胃に7級の後遺障害が残った場合を考えます。
その場合、重い方の等級が1つくりあがるため、後遺障害等級は併合6級となります。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
後遺障害等級に認定されると、その等級に応じて後遺障害慰謝料を得ることができます。
後遺障害慰謝料を含む慰謝料には、3つの算定基準があります。
肝臓損傷による後遺障害慰謝料の額は、以下の通りになります。
後遺障害慰謝料
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
9級11号 | 245万円 | 690万円 |
11級10号 | 135万円 | 420万円 |
後遺障害慰謝料
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
弁護士に依頼することで、2倍以上の慰謝料を請求できるようになります。
示談交渉に精通した保険会社と交渉して増額を目指すことは、個人では非常に困難です。
より多額の慰謝料獲得を目指すときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
また後遺障害等級の認定を受けると、慰謝料以外に逸失利益を受け取ることができます。
交通事故の損害賠償’において,その事故がなければ将来的に得たであろうと思われる利益
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
により計算する。
労働能力喪失率は、後遺障害等級によって決定します。
労働能力喪失率
等級 | 労働能力喪失率 |
9級11号 | 35% |
11級10号 | 20% |
12級13号 | 14% |
14級9号 | 5% |
実際の労働能力喪失率は、後遺障害の程度や被害者の職業、実際の業務への支障などで決定します。
肝炎の後遺障害に関しては、交通事故後の手術により肝炎に罹患した医学部の学生が、手術などの際に出血しないよう常に気を付けなければならなくなったことで20%の労働能力喪失が認められた例があります。(大阪地判平成10年9月1日)
今回の記事をまとめると、以下のようになります。
交通事故では、腹部に損傷を受けることで内臓に損傷を受けることも多くあります。
なかでも肝臓は腹腔の中で最も大きく、血管も多く通っており損傷による出血などが発生しやすい臓器です。
一方で異常に気付きにくいとされる臓器でもあり、肝臓損傷の診断を受けてご不安になることも多いと存じます。
交通事故で納得のいく解決を目指すためには、後遺障害などに詳しい弁護士に相談して適切な対応をとることが重要です。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。
治療の方針について、後遺障害について、交通事故相手との交渉についてなど、どんなご不安についてもお気軽にご相談ください。
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
交通事故で肝臓損傷を負ったことによる後遺症の症状としては、受傷部分の痛み・肝硬変・肝炎などが主にあげられます。肝臓損傷は適切な治療をつづけたとしても、残念ながら完治せずになんらかの後遺障害が残る可能性があります。 肝臓損傷の後遺症について
肝臓損傷で肝硬変・肝炎になった場合の後遺障害は、9級11号・11級10号の等級認定が予想されます。肝臓に関する後遺障害は、輸血や血液製剤による「ウィルス感染」によるものが想定されています。もっとも近年における肝臓のウィルス感染は年間10件程度の発生にとどまっているようです。 肝臓損傷に関する後遺障害等級
肝臓損傷にともなって痛み・しびれといった神経障害が残った場合、12級13号または14級9号の後遺障害等級認定が予想されます。12級と14級のどちらに該当するかは、神経症状が画像検査・神経学的検査によって確認できるものかどうかという点で判断されることになります。 肝臓損傷にともなう神経障害の後遺障害等級