作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

肝臓損傷後遺症

交通事故による「肝臓損傷」の後遺症|後遺障害等級9級、11級…それぞれの症状は?

肝臓損傷の後遺症って?

肝臓は、腹腔にある臓器のなかで最も大きいものです。
それだけに、交通事故による腹部の外傷で肝臓損傷してしまうこともあります。
この記事では、肝臓損傷による後遺症(後遺障害)にどのようなものがあるのか紹介していきます。

  • 肝臓損傷の症状とは?
  • 肝臓損傷で後遺症が残ることがある?
  • 後遺症が残った場合、慰謝料はいくらもらうことが出来る?


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交通事故の「肝臓損傷」はどのようなもの?

肝臓損傷の症状

肝臓は腹腔の中では最も大きく、腹部に衝撃があった時に損傷を受けやすい臓器です。
交通事故では衝突などによる腹部への衝撃、折れた肋骨が肝臓を傷つけることなどによって肝臓損傷が発生します。

肝臓損傷の症状

腹腔内の出血、血種(血が溜まって凝固した状態)

腹部の右側~上腹部の痛み

出血性ショック(血圧低下、意識混濁、呼吸不全など)

肝臓内には多くの血管が通っているため、肝臓損傷が起こると腹腔内で出血が起こります。
それにより腹部組織が刺激され、腹痛を伴います。
また、多く出血した場合は出血性ショックにより様々な症状が生じます。

肝臓損傷の治療&入院|3カ月かかるって本当?

肝臓損傷の治療としては、出血が無い場合は経過観察、出血がある場合は輸血などをしながら経過観察します。
バイタルサインが安定していない時には手術せずに血管をふさぐ塞栓術・または開腹手術を行い、傷口の縫合などを行います。
手術を行わない場合はおよそ2~3カ月で回復すると言われています。

肝臓損傷の後遺症

肝臓損傷の後遺症としては、例として以下のものが考えられます。

肝臓損傷の後遺障害

受傷部分の痛み

肝硬変

肝炎

それぞれがどのような症状かは、次の章で詳しく解説します。

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肝臓損傷の後遺症|胸腹部の臓器全般

後遺障害等級は14段階に区分される

十分な治療を行っても、これ以上よくも悪くもならないという状態でなお残存している症状を後遺障害と言います。
後遺障害の重さは、後遺障害等級によって定められます。

後遺障害等級

治療後も体に残る後遺症を部位・程度などによって14段階に区分したもの

交通事故で後遺障害が残った場合、後遺障害等級によって慰謝料の金額などが決定されます。
より高い(数字の小さい)等級に認定されれば慰謝料も増えますので、どの等級に認定されるかは非常に重要です。
実際の申請基準や方法については、以下のページをご覧ください。

胸腹部の臓器に関する後遺障害等級は?

交通事故で胸腹部臓器に後遺症が残った場合、以下の等級に認定される可能性があります。
ここでの胸腹部臓器とは肝臓以外に、心臓、肺臓、胃、十二指腸、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、大腸、小腸を含みます。

内臓の損傷

後遺障害等級表

等級 内容
12号* 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
22号* 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
34 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
53 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
75 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
911 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
1110 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
1311 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの

*別表Ⅰ、この他は別表Ⅱの基準

どのような症状が「障害」にあたるかについては、各臓器ことにそれぞれ具体的な基準があります。

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肝臓損傷の後遺症|肝硬変・肝炎など

肝硬変・肝炎になった場合

肝臓に関する後遺障害等級は、以下のように定められています。
もっとも、症状の程度などによってより上位の等級が認定される場合もあります。

肝臓の損傷

後遺障害等級表

等級 内容
911 肝硬変(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるものに限る。)
1110 慢性肝炎(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST・ALTが持続的に低値であるものに限る。)
用語

肝硬変
…ウィルスの感染などによって肝臓に傷が生じ、その傷を修復する際のたんぱく質が増加して肝臓全体が固くなってしまう症状

肝炎
…ウィルスの感染などにより、肝臓に炎症が起こる症状

ウィルスの持続感染
…感染後もウィルスを体内に保有する状態になること

AST(GOT)・ALT(GPT)
…肝細胞に存在するタンパク質を分解する酵素。正常値は30以下が目安
※AST・ALTが正常な範囲であっても、治療の継続・過労の回避・食事制限が不可欠な状況を後遺障害と評価できるとして、等級該当性を認めた事例もある(大阪地判平成7年12月4日)。

これらは、交通事故により輸血や血液製剤でウィルスに感染してしまった場合の後遺障害です。
もっとも、近年では輸血による肝炎は年間十件程度しか発生しておらず、感染確率は非常に低いと言えます。

肝機能の異常の症状

肝臓には痛みを感じる神経がなく、異常を生じても症状が出にくいことで知られています。
機能がある程度保たれているときは、手指の筋肉がつる症状、掌に斑点などが現れることがあります。
肝機能が低下すると黄疸、腹水などの症状が現れます。
血液検査での早期発見が可能です。定期的に検査を行うよう心がけましょう。

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肝臓損傷の後遺症|痛み・しびれ

痛みやしびれが残った場合

臓器損傷が治癒しても痛みやしびれが残ることがあります。
これらは外傷により神経が損傷したり、圧迫されたりすることで起こる症状です。
こちらも、検査や画像所見によって損傷などが確認できれば後遺障害に認定される可能性があります。

後遺障害等級

肝臓損傷にともなう痛み・しびれ

等級 内容
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの
149 局部に神経症状を残すもの

これらの文言によれば、痛みやしびれの程度によって等級が変化するように思えます。
ですが実際は、主に他覚的所見の有無によって等級は決定されます。

他覚的所見

画像検査や神経学的検査によって確認できる、客観的な身体的異常

通常、後遺障害等級は障害の重さによって決定します。
ですが痛みなどは目視できず、客観的に判断しづらい症状です。そのため、認定の際に他覚的所見が重視されます。

12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは?

局部とは体の一部、神経症状とは痛みやしびれなど神経由来の症状を指します。
「頑固」については明確な基準はなく、

骨の損傷などがMRI検査やCT検査で確認できている

損傷部位と痛み・しびれの生じる部位との医学的な関連性

痛みやしびれの存在を証明する検査結果

などの医学的な裏付けが揃い、痛み・しびれ症状を医学的に証明可能であれば、後遺障害等級12級に認定される可能性があります。

14級9号「局部に神経症状を残すもの」とは?

他覚的所見に乏しい場合、痛みやしびれの原因となった損傷を証明するのは困難です。
それでも一定以上の通院期間があり症状が一貫している・事故直後に損傷が確認できているなど、痛み・しびれ症状を医学的に説明・推定可能であれば、後遺障害等級14級に認定される可能性があります。

肝臓以外にも後遺障害が残った場合は?

腹部に衝撃を受けると、肝臓のみならず他の臓器にも後遺障害が残る場合があります。
そのようなときには、併合により後遺障害等級が繰り上がります。

後遺障害の併合ルール
存在する後遺症 併合の結果
5級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を3つ繰り上げる
8級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を2つ繰り上げる
13級以上の後遺障害が2つ以上残存 重い方の等級を1つ繰り上げる
14級の後遺障害が2つ以上残存 14級のまま
それ以外 最高等級を後遺障害等級とする

例として肝臓に9級、胃に7級の後遺障害が残った場合を考えます。
その場合、重い方の等級が1つくりあがるため、後遺障害等級は併合6級となります。

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肝臓損傷の後遺症の慰謝料はいくら?

後遺障害慰謝料を決める3つの基準

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

慰謝料金額相場の3基準比較

後遺障害等級に認定されると、その等級に応じて後遺障害慰謝料を得ることができます。
後遺障害慰謝料を含む慰謝料には、3つの算定基準があります。

自賠責保険での金額算定に使われる自賠責基準

各保険会社での金額算定に使われる任意保険基準

過去の裁判例に基づいた弁護士基準

肝臓損傷による後遺障害慰謝料の額は、以下の通りになります。

肝硬変・肝炎

後遺障害慰謝料

等級 自賠責基準 弁護士基準
911 245万円 690万円
1110 135万円 420万円
痛み・しびれ

後遺障害慰謝料

自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円

弁護士に依頼することで、2倍以上の慰謝料を請求できるようになります。
示談交渉に精通した保険会社と交渉して増額を目指すことは、個人では非常に困難です。
より多額の慰謝料獲得を目指すときは、ぜひ弁護士にご相談ください。

後遺障害による逸失利益はいくらになる?

また後遺障害等級の認定を受けると、慰謝料以外に逸失利益を受け取ることができます。

逸失利益とは
逸失利益

交通事故の損害賠償’において,その事故がなければ将来的に得たであろうと思われる利益
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
により計算する。

労働能力喪失率は、後遺障害等級によって決定します。

肝臓損傷

労働能力喪失率

等級 労働能力喪失率
911 35%
1110 20%
1213 14%
149 5%

実際の労働能力喪失率は、後遺障害の程度や被害者の職業、実際の業務への支障などで決定します。
肝炎の後遺障害に関しては、交通事故後の手術により肝炎に罹患した医学部の学生が、手術などの際に出血しないよう常に気を付けなければならなくなったことで20%の労働能力喪失が認められた例があります。(大阪地判平成10年9月1日)

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交通事故の肝臓損傷による後遺症は弁護士にご相談ください

記事のまとめ

今回の記事をまとめると、以下のようになります。

肝臓損傷の後遺障害としては痛みやしびれ、肝炎、肝硬変などがある

ウィルス感染により肝炎、肝硬変になることは現在はまれ

後遺障害等級が認められると後遺障害慰謝料、逸失利益が認められる

肝臓損傷の後遺症に関するご相談を受け付けています

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交通事故では、腹部に損傷を受けることで内臓に損傷を受けることも多くあります。
なかでも肝臓は腹腔の中で最も大きく、血管も多く通っており損傷による出血などが発生しやすい臓器です。
一方で異常に気付きにくいとされる臓器でもあり、肝臓損傷の診断を受けてご不安になることも多いと存じます。
交通事故で納得のいく解決を目指すためには、後遺障害などに詳しい弁護士に相談して適切な対応をとることが重要です。
アトム法律事務所ではLINE・電話での無料相談を受け付けています。
治療の方針について、後遺障害について、交通事故相手との交渉についてなど、どんなご不安についてもお気軽にご相談ください。


弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

全国10事務所体制で交通事故被害者の救済に取り組んでいる当事務所の代表弁護士。2008年の創業依頼、幅広い間口で電話・LINE・メール相談などに無料で対応し、2019年現在は交通事故被害者の救済を中心に精力的に活動している。フットワークの軽い行動力とタフな精神力が強み。