作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
交通事故で遷延性意識障害|後遺障害慰謝料の仕組みを弁護士が解説
こちらの記事は「交通事故で遷延性意識障害の後遺障害を負ったときの対応法」について弁護士が解説しています。
- 交通事故が原因の遷延性意識障害とは
- 遷延性意識障害で得られる慰謝料など損害賠償の項目は
- 遷延性意識障害で適正な慰謝料を獲得するには
目次
交通事故の脳損傷が原因の遷延性意識障害
遷延性意識障害とは。植物状態の症状をさす?
遷延性意識障害とは、3ヶ月以上にわたって重度の昏睡状態になる症状がつづき、
- 移動できない
- 食事ができない
- 排泄ができない
- 発語できない
- 意思疎通がとれない
など人間としての生活を送るさまざまな場面で、介護が必要となる状態をさします。
ほとんどの場合が寝たきりの状態のため、植物状態・植物人間などと呼ばれることもあります。
遷延性意識障害を引き起こす原因となるのは、頭部を強打するなどによって受ける脳へのダメージ(脳損傷)です。
このような状態を原因として、遷延性意識障害は引き起こされる可能性があります。遷延性意識障害の約半数は、交通事故が引き金となっているといわれています。
遷延性意識障害からの回復例は?
遷延性意識障害からの回復の見込みは、全体の約5%程度であると言われています。もっとも、回復度合いには個人差があります。
遷延性意識障害からの回復例
- 「はい」や「いいえ」など単純な意思表示であればできるようになる
- ベッドから起き上がって行動ができるようになる
など、どこまで回復に持っていけるかはさまざまです。
しかしどのような場合でも、遷延性意識障害からの回復を目指すには地道なリハビリや治療が必要になってきます。
遷延性意識障害のリハビリ・治療
現在の医学では遷延性意識障害の回復が見込める確立された治療方法はありません。
本人がもつ治癒力にゆだねるのが基本になります。リハビリや治療がおこなわれるというよりも「現状維持を図る」ことがおこなわれます。
寝たきりの状態は、身体にさまざまな悪影響を及ぼすことが考えられます。
- 唾や食べ物が肺に入る誤嚥性肺炎
- 床ずれ
- 関節が固くなって動かしにくくなる
などこのような悪影響を少しでも防ぐ対策がおこなわれます。
機能回復が少しでも促進されるように、声かけ・スキンシップ・音楽などがすすめられることもあるようです。
遷延性意識障害で得られる損害賠償の項目
傷害部分と後遺障害部分の主な損害賠償
遷延性意識障害など交通事故の怪我で後遺障害を負った場合は、損害賠償を事故の相手方に請求することができます。
通常、後遺障害慰謝料などの請求は、
- 交通事故の相手方本人
- 交通事故の相手方が加入する任意保険会社
におこないます。
請求できる損賠賠償の主な項目は大きく、傷害部分と後遺障害部分に分けることができます。
項目の内訳 | |
---|---|
傷害部分 | 治療費 |
治療にかかった費用 | |
通院交通費 | |
通院にかかった交通費 | |
入院雑費 | |
入院にかかった雑費など | |
休業損害 | |
怪我で休業した間の収入減に対する補償 | |
入通院慰謝料 | |
入院や治療で被った精神的苦痛に対する慰謝料 | |
その他 | |
診断書作成にかかった費用など | |
後遺障害部分※ | 逸失利益 |
後遺障害が残って将来的に得られなくなった収入減に対する補償 | |
後遺障害慰謝料 | |
後遺障害が残って被った精神的苦痛に対する慰謝料 |
※後遺障害の認定で請求できる
傷害部分の損害賠償は、交通事故にあったとき~症状固定までのあいだの損害をさします。
後遺障害部分の損害賠償は、後遺障害が認定された場合で、症状固定以降の損害をさします。
交通事故で怪我を負った場合に請求することができる主な損害賠償の項目は以上のとおりです。
後遺障害慰謝料の仕組み
交通事故で得られる主な損害賠償のなかで、後遺障害が認定された場合にのみ請求できる後遺障害慰謝料というものがあります。後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級ごとに慰謝料の金額が決められています。
慰謝料の算定基準は自賠責保険基準/任意保険基準/弁護士基準のいずれかが用いられることになります。最も高い金額で慰謝料が算定されるのは弁護士基準となっています。
それでは、弁護士基準の慰謝料をご覧ください。
等級 | 慰謝料(万円) |
---|---|
1 | 2,800 |
2 | 2,370 |
3 | 1,990 |
4 | 1,670 |
5 | 1,400 |
6 | 1,180 |
7 | 1,000 |
8 | 830 |
9 | 690 |
10 | 550 |
11 | 420 |
12 | 290 |
13 | 180 |
14 | 110 |
後遺障害等級は、障害の内容が重いほうから1~14級まで区分されています。
遷延性意識障害で予想される後遺障害等級はつぎのとおりです。
予想される遷延性意識障害の等級
1級
将来にわたって寝たきりになることが考えられる遷延性意識障害では、最も重い等級の1級が予想されることになります。
遷延性意識障害における損害賠償の特徴
交通事故で怪我を負った場合の主な損害賠償項目は先ほど解説しました。遷延性意識障害の場合は将来にわたって寝たきりになるという可能性が考えられます。
遷延性意識障害の特徴
- 将来治療費
- 将来入院雑費
- 将来付添看護費用
- 将来介護費
- 将来雑費(紙おむつなど介護で必要な消耗品など)
- 装具・器具等購入費
- 家屋等改造費
など、介護に即した損害賠償の項目があげられます。
このほかにも、介護をおこなう家族に対しての慰謝料が認められるケースもあります。
遷延性意識障害で適正な慰謝料を得るには
遷延性意識障害で適正な慰謝料を得るためにおさえておくべきポイントがいくつかあります。
後遺障害等級を申請する
遷延性意識障害という後遺症が残ったとしても、
- 後遺障害等級の申請をしない
- 後遺障害等級の申請をしても認定されない
このような場合は、後遺障害に関する慰謝料などの損害賠償を請求することができません。
後遺障害等級は申請したからといって、必ず希望する等級が認定されるとはかぎりません。一部の症例をのぞいては、専門の認定機関が後遺障害診断書などの必要書類のみで審査するのが原則です。後遺障害診断書は、医師が作成します。
後遺障害の申請をするなら等級認定の可能性を高められる書類をそろえることがポイントになってきます。
これらの書類の重要性を事前に、理解しておくことが大切です。
後遺障害等級の申請について詳しくはこちら
成年後見人を選定する
交通事故にあって怪我などの被害を受けた場合、被害を受けた本人が相手に損害賠償請求する権利を持っています。
しかし、遷延性意識障害におちいった場合、ご本人が事故の相手方に慰謝料等の請求をおこなうことはできません。
このような場合は、各種手続きを代理でおこなう成年後見人を選任する必要があります。
成年後見人となる人
- 家族
- 親族
などが一般的
成年後見人は、家庭裁判所に申請することで、家庭裁判所から選任されることになります。
成年後見人は専門的な知識が必要となることも多いため、弁護士が成年後見人となる場合もあります。
- 弁護士が成年後見人となる
- 成年後見人となったご家族が弁護士に委任する
のいずれかの方法がとられることになります。
弁護士に相談する
大切なご家族が遷延性意識障害となってしまったら、これからどうなってしまうのか不安なことが多いと思います。しかし、そんな辛い状況を乗り越えていくためにも適正な慰謝料が得られるように対応していくことがポイントです。
交通事故にくわしい弁護士に依頼していただければ、可能な限りより多くの慰謝料が得られるように弁護士は尽力します。
アトム法律事務所の弁護士は、交通事故の案件を数多く取りあつかってきた経験があります。無料相談も実施していますので、慰謝料の請求に関して不安がある方は気軽にご相談ください。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。弁護士プロフィール
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