作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

脊髄損傷後遺症

脊髄損傷の後遺症とリハビリ|交通事故における後遺障害等級とは?

脊髄損傷による後遺症とは?

本記事では脊髄損傷の後遺症と後遺障害等級をテーマに弁護士が解説しています。

  • 脊髄損傷後遺症は残るのか
  • 脊髄損傷の後遺症で後遺障害認定の可能性はあるのか
  • 後遺症認定で請求できる慰謝料とは


1

交通事故の脊髄損傷で残る後遺症

脊髄損傷とは|完全損傷と不完全損傷

脊髄損傷は、脊髄神経が損傷を受けて運動障害感覚障害などの障害がおこる状態をいいます。

脊髄は細長い円柱状の神経組織で、脳とつながっています。走ったり手を動かしたり人間の体を動かすための指示は、脳から脊髄をとおって全身に伝わります。

脊髄は脊柱と呼ばれる背骨のなかにあり、硬い骨で通常は保護されています。しかし、交通事故といった激しい衝撃などが原因で脊柱が骨折・脱臼することにより脊髄が損傷し、さまざまな症状を引き起こすことになります。

脊髄損傷では、完全損傷不完全損傷の2つに分けられます。

▼完全損傷と不完全損傷
完全損傷 脊髄が横断的に断裂し、神経伝達の機能が完全に失われる
不完全損傷 脊髄が一部断裂し、神経伝達の機能が一部残る

脊髄が完全に断裂すると、その先の運動機能や感覚機能が完全に失われてしまうことになります。
脊髄の一部損傷であれば、神経伝達の機能がわずかに残る可能性があります。感覚機能だけが残る重症なケースから、ある程度の運動機能が残る軽症なケースまで後遺症の内容はさまざまです。

脳に近い位置で脊髄損傷がおこると重症になります。首の位置で損傷がおきれば首から下に障害が出ます。損傷の場所によっては最悪の場合、植物状態や死亡に至る可能性もあります。

脊髄損傷における後遺症の症状例

脊髄は一度、損傷してしまうと元の状態に戻ることはありません。つまり、基本的に脊髄損傷は損傷時の症状が後遺症としてそのまま残るということになります。

損傷を受けた脊髄の場所によってみられる後遺症の症状はさまざまですが、代表的な後遺症の症状を見ていきたいと思います。

後遺症①運動麻痺・感覚障害

脊髄損傷における後遺症でもっとも代表的な症状なのが、運動麻痺感覚障害といった後遺症です。

具体例
  • 手足が動かせない
  • 手足の感覚がなくなる(痛み、感触を感じないなど)

など、このような後遺症が残ることになります。

後遺症②循環障害

脊髄損傷では、心臓など循環器系に後遺症の障害が残る可能性があります。心臓の動きが悪くなることで、血液を全身に送る力が弱まってしまいます。

具体例
  • 心拍数の低下
  • 血圧の低下
  • 除脈

など、このような後遺症が残ることになります。

後遺症③呼吸障害

脊髄損傷では、呼吸筋の麻痺による呼吸障害の後遺症が残る可能性があります。呼吸障害になると酸素を全身に十分送り届けることができなくなるため呼吸不全をおこします。

後遺症の程度によっては、人工呼吸器なしで呼吸することができなくなることもあります。

後遺症④排尿・排便障害

脊髄損傷では、

  • 膀胱などに後遺症が残ることによる排尿障害
  • 直腸や肛門に後遺障害が残ることによる排便障害

を生じる可能性があります。

排尿・排便障害となると失禁しやすくなり、日常生活に大きな影響をおよぼす可能性が高いです。

後遺症⑤自律神経障害

脊髄損傷では、運動・感覚機能のみならず自律神経系も損傷することで後遺症が残る可能性があります。自律神経は、汗をかいたり、血管を収縮/拡張したりして体温調整をおこなったりしています。

具体例
  • 起立性低血圧(起き上がった時の一時的な脳貧血)
  • 体温が調節できない

などの障害が生じることになります。

2

脊髄損傷で残った後遺症に対するリハビリ

脊髄損傷のリハビリ内容

脊髄損傷の後遺症で一般的におこなわれるリハビリ内容を紹介します。

一般的なリハビリ例
  • ベッドから起き上がる動作訓練
  • 車いすにうつる訓練
  • 車いすで移動する訓練
  • 杖や歩行器を使った歩行訓練
  • 日常生活で必要な動作訓練
  • 排尿、排便といった訓練

などさまざまな訓練を通して、今までの日常生活がおくれるようリハビリがおこなわれます。

リハビリは主に身体的な機能回復を目指すことがイメージされますが、精神的なケアをあわせておこなうことも重要視されています。
脊髄損傷などで後遺症が残ると今まで通りの生活がおくれなくなることが多く、不安や葛藤を抱えることになります。

このような心的負担を軽減するために、リハビリとあわせてカウンセリングもおこなわれるようです。

軽度の脊髄損傷なら回復の可能性はあるのか

脊髄は一度、損傷してしまうと自然に再生することはありません。損傷を根本的に治療する方法は現在の医学では確立されていません

たとえ軽度の脊髄損傷でも、完全に元の状態に戻るという意味では回復の可能性は今の医療技術ではないと言えます。

しかしながら、再生医療分野の研究がすすみ、損傷を受けた脊髄が再生する可能性が出てきたという報告があるようです。そう遠くない未来では、脊髄損傷の完治が期待されるかもしれません。

3

脊髄損傷の後遺症は後遺障害等級認定されるか

脊髄損傷による後遺症が残ってしまったら後遺障害等級の申請をおこなましょう。

後遺障害とは?

後遺症によって労働能力が低下・喪失すること

等級の認定によって、後遺障害に関する慰謝料をはじめとした損害賠償の請求が可能になります。

脊髄損傷で想定される等級は?

後遺障害は、重いほうから1級~14級までの等級で区分されています。脊髄損傷で予想される後遺障害等級はつぎのとおりです。

予想される等級

脊髄損傷は何級?

11号(別表1
高度の四肢麻痺
高度の対麻痺
中等度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する
中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要する
21号(別表1
中等度の四肢麻痺
中等度の対麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する
軽度の四肢麻痺で、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要する
33号(別表2
軽度の四肢麻痺(21号に該当するものは除く)
中等度の対麻痺(11号、21号に該当するものは除く)
52号(別表2
一下肢の高度の単麻痺
軽度の対麻痺
74号(別表2
一下肢の中等度の単麻痺
910号(別表2
一下肢の軽度の単麻痺
1213号(別表2
軽微な麻痺など

脊髄損傷では、このような等級が認定される可能性があります。

等級と後遺障害慰謝料の関係

脊髄損傷で認定される可能性がある等級がおさえられたところで、つづいては等級ごとの慰謝料を確認しておきたいと思います。

弁護士基準

後遺障害等級ごとの慰謝料

等級 慰謝料(万円)
1 2,800
2 2,370
3 1,990
4 1,670
5 1,400
6 1,180
7 1,000
8 830
9 690
10 550
11 420
12 290
13 180
14 110

等級ごとの慰謝料の基準はこのとおりです。ここで紹介した慰謝料の基準は、弁護士基準といわれるものになっています。
算定基準には、他に自賠責保険基準・任意保険基準が用いられることもあります。しかし、最も高い慰謝料を算定できるのは弁護士基準です。

慰謝料金額相場の3基準

最終的に手元に入る慰謝料を適正な金額にするには、「弁護士基準」で算定されることが重要になります。弁護士基準での算定には、弁護士による示談交渉が欠かせません。

増額交渉(弁護士あり)

後遺障害認定につながるポイント

交通事故の被害にあったらさまざまな損害を被ることになり、その損害は事故の相手方に損害賠償請求することができます。

とくに、後遺症が残った場合は損害賠償請求できる項目の中で後遺障害等級の認定によって後遺障害に関する慰謝料をはじめとした損害賠償の請求が可能となります。

つまり、後遺障害認定の有無が最終的に受け取る賠償金額を大きく左右することになります。

後遺障害認定につながるポイント
  • 申請方法は被害者請求を選択する
  • 後遺障害診断書などの医学的資料によって後遺障害を証明する
  • 交通事故が後遺障害の原因である因果関係を示す
  • 認定基準を満たす後遺障害であることを主張する
  • 交通事故に注力する弁護士に相談する

このようなポイントをしっかりおさえて、後遺障害等級の認定につながるよう対応していくことが重要です。

4

脊髄損傷の麻痺・痛みなどの後遺症でお悩みの方

自動計算機で慰謝料の適正金額を知る

脊髄損傷を負うと麻痺や痛みなど、さまざまな苦痛を生涯にわたって受けつづけることになります。後遺症の苦しみは計り知れないと思います。しかし、だからこそ経済的な補償である適正な慰謝料を手に入れるための対応を惜しまないようにしていただきたいと思います。

まずは、ご自身のケースではどのくらいの慰謝料などの損害賠償を得ることができるのか確認することからはじめてみましょう。こちらの自動計算機をお使いください。

慰謝料の相場を知っておけば、保険会社から提示された金額が妥当なものなのか判断することができます。

慰謝料増額の可能性を弁護士に相談

慰謝料増額の可能性はあるのか、保険会社との示談交渉に不安がある、という方は今すぐ弁護士に相談していただきたいと思います。

アトム法律事務所には、交通事故を積極的にあつかってきた経験をもつ弁護士が数多く在籍しています。無料相談も実施していますので気軽にご相談ください。

24時間365日、専属スタッフが弁護士相談のご案内をしています。出勤前や休憩中などご都合の良いタイミングでお問い合わせいただけます。交通事故の被害に関するお悩みは、アトムの弁護士までご相談ください。

弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


全国/24時間/無料相談

無料相談窓口のご案内