作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

腕神経叢損傷後遺症

腕神経叢損傷の後遺症|腕が動かない…後遺障害慰謝料はどのくらい?

腕神経叢損傷後遺症と後遺障害
この記事のポイント

腕神経叢損傷は肩や肘の関節が曲がらない痛みなどの後遺障害が残る可能性がある

慰謝料の金額は、関節の可動域などによって決まる

弁護士に示談交渉を依頼すれば2~3倍の慰謝料増額が見込める

鎖骨の下にある腕神経叢(わんしんけいそう)が損傷すると、腕の運動や麻痺・しびれといった症状が出ることになります。
損傷の場所や程度によっては治療をおこなっても後遺症が残ることがあり、将来にわたってさまざまな損害を被る可能性があります。このような場合、適正な補償は得ることはできるのでしょうか。

  • 腕神経叢損傷は自然回復を待つ?手術は必要?
  • 腕神経叢損傷の後遺症はどんな症状?
  • 痛みやしびれでも後遺障害に認定される?

藤井宏真医師

奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医

藤井 宏真医師

事故などによって肩と首が異常に引き伸ばされることで腕神経叢損傷が起こることがあります。鎖骨骨折・肩関節脱臼・上腕骨骨折などの骨折にともなって生じることもあります。

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腕神経叢損傷の基礎知識|何科を受診する?

腕神経叢損傷の症状

腕神経叢損傷は、腕神経叢の損傷した部位や損傷の仕方によって現れる症状が異なります。

腕神経叢損傷の部位・仕方
▼損傷部位
5頚髄神経根
(C5
6頚髄
(C6
ひじの屈曲
7頚髄
(C7
ひじの屈伸、手首の伸展
8頚髄
(C8
手指の屈曲
1胸髄
(T1
手指の伸展
▼損傷の仕方
引き抜き損傷脊髄から神経根が引き抜かれた状態
断裂神経根の先が断裂した状態
軸索損傷神経内部の軸索が損傷した状態
神経虚脱神経自体が一過性のショックで麻痺した状態

腕神経叢損傷は大まかに以下のような症状があります。

症状例

力が入らず腕が上がらない

肘を曲げる力が弱い

指に力が入らず動かない

腕のしびれ

指のしびれ

首から鎖骨にかけての腫れ・痛み など

もっとも重症な引き抜き損傷を負った場合、

眼瞼下垂:まぶたが落ちてくる

ホルネル徴候:自律神経が障害される

などをともなう可能性もあります。

腕神経叢損傷は何科で治療を受ける?

腕神経叢損傷は、整形外科を受診しましょう。
レントゲンやMRI検査、神経学的検査によって、腕神経叢損傷の診断が出されることになります。

腕神経叢損傷の治療・手術|自然に治る?

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損傷部位や程度によって治療方法は変わってきますが、自然回復が見込めるのであれば安静にするのみで済む場合があります。
自然回復が見込めないのであれば手術がおこなわれることになります。

手術の種類

▼神経機能回復の見込みあり

神経移植術

神経移行術

▼神経機能回復の見込みなし

関節の固定

正常な筋肉を肩・ひじに移行する

機能回復のために、リハビリを要することもあります。

腕神経叢損傷の後遺症|腕が動かせない…?

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後遺症(後遺障害)

十分な治療をつづけても回復の見込みがなく残存した症状
交通事故では、障害が残った部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される

腕神経叢損傷により、生じる可能性がある後遺症には以下のようなものがあります。

腕神経叢損傷の後遺症

肩・肘・手首の関節が曲がらない、動かない

指関節が曲がらない、動かない

痛み・しびれ

それぞれどのような症状であり、何級の等級に該当するのかは次章で詳しく説明します。

腕神経叢損傷で慰謝料を増加させるには

腕神経叢損傷の後遺症で増える保険金|後遺障害慰謝料・逸失利益

後遺障害等級に認定されると、後遺障害が残ったことに対する補償として相手方から支払われる金銭が増えます。
追加で支払われる金銭の一つが後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ったことで受けた精神的な苦痛に対する損害賠償

また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。

後遺障害の逸失利益

後遺障害が負ったことで労働能力が失われ、将来的に得られたはずの収入が減ることへの補償
(計算方法)
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数

「労働能力喪失率」は、障害の部位・程度、事故前の収入や職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご確認ください。

後遺障害等級の申請方法|腕神経叢損傷の場合

腕神経叢損傷などが原因で後遺症が残った際の後遺障害等級申請~後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状固定の診断

治療を継続しても症状の改善が期待できなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合、事故から原則として約6ヶ月以上経っている必要があります。
約6ヶ月より治療期間が短い場合、後遺障害としては認められない可能性が高くなるので注意が必要です。

②後遺障害診断書・医証(医学的資料)の準備

医師から症状固定の診断が出たら、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。後遺障害診断書は医師に作成を依頼します。

後遺障害の申請方法は2種類あり、いずれかを選択することができます。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ

事前認定:被害者が、後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出

被害者請求:被害者が、後遺障害診断書やその他の医学的資料も用意して自賠責保険に提出

被害者請求は医学的資料を集める手間が必要になりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みとなっています。なお、弁護士に資料収集作業を任せることも可能です。

まとめ

事前認定と被害者請求

事前認定被害者請求
請求者相手方保険会社被害者自身
メリット資料収集の手間が必要ない自分で資料を確認できる
デメリット自分で資料を確認できない資料収集の手間が必要ある

③損害保険料率算出機構による審査

提出した資料をもとに専門の認定機関である損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。

後遺障害認定の審査において重要なポイントになるのは、

後遺障害診断書の内容が充実していること

画像所見が十分にそろっていること

交通事故と後遺障害の因果関係の説明ができること

主にこのような点です。

審査結果をふまえ、自賠責保険会社が等級認定をおこないます。

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腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」の後遺障害

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腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」の後遺障害等級

腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」の後遺症で認定される可能性がある後遺障害等級はつぎの通りです。

後遺障害等級

腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」

等級症状
14両上肢の用を全廃したもの
561上肢の用を全廃したもの
661上肢の三3大関節中の2関節の用を廃したもの
861上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10101上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
1261上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
用語

▼上肢の用を全廃
…肩・肘・手首すべてがまったく動かないまたは障害のない関節と比べ可動域が1/10程度以下のもの。なおかつすべての指のいずれかの関節が障害のない関節と比べ可動域が1/2以下のもの。
▼関節の用を廃す
… 関節がまったく動かないまたは障害のない関節と比べ可動域が1/10程度以下のもの。
▼関節の機能に著しい障害を残す
… 障害の無い関節と比べ可動域が1/2以下のもの。
▼関節の機能に障害を残す
…障害の無い関節と比べ、可動域が3/4以下に制限されているもの。

後遺障害等級は、肩・肘・手首それぞれの関節の可動域によって決定されます。

肩関節の可動域

肘関節の可動域

手首関節の可動域

それぞれ詳しくみていきます。

もっとも可動域の基準はあくまで基準です。実際には、障害が無いほうの腕の可動域との比較ではかられることになります。

肩関節の可動域

肩関節の可動域は、

屈曲(体の前面で腕をあげる動き)

外転(体の側面で腕をあげる動き)

これらの基準を、

「用廃」の場合は両方

「機能障害」の場合はいずれか一方

を満たしている必要があります。

また、基準となる角度を「わずかに」上回っていたとしても、

伸展(体の背面に腕をあげる動き)

外旋と内旋の合計値(床と並行に腕を移動させる動き)

どちらかの基準を満たしているのであれば等級が認定されます。

「わずかに」とは、10級では10°まで、12級では5°までとなっています。

肩関節の後遺障害等級の目安となる可動域はつぎの通りです。

肩関節の可動域と後遺障害等級
等級
(正常値)
屈曲
180°)
外転
180°)
伸展
50°)
外旋+内旋
140°)
86号*20°20°
101090°90°25°70°
126135°135°40°105°

*数値を超えても肩甲上腕関節の骨性強直がレントゲンで確認れば「関節の用を廃したもの」となる

肘関節の可動域

肘関節の可動域は、

屈曲(肘を肩側に曲げる動き)

伸展(肘を反らす動き)

これらの合計値が基準を満たしている必要があります。

肘関節の後遺障害等級の目安となる可動域はつぎの通りです。

肘関節の可動域と後遺障害等級
等級
(正常値)
屈曲+伸展
150°)
8620°
101080°
126115°

手首関節の可動域

手関節の可動域は、

背屈(手首を反らす運動)

掌屈(手首を倒す運動)

これらの合計値が基準を満たしている必要があります。

また、基準となる角度を「わずかに」上回っていたとしても、

撓屈(手首を親指側に曲げる運動)

尺屈(手首を小指側に曲げる運動)

これらの値のいずれかが基準を満たしているのであれば等級が認定されます。

「わずかに」とは、10級では10°まで、12級では5°までとなっています。

手首関節の後遺障害等級の目安となる可動域はつぎの通りです。

手首関節の可動域と後遺障害等級
等級
(正常値)
背屈+掌屈
160°)
撓屈
25°)
尺屈
55°)
8620°
101080°15°30°
126125°20°45°

腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」の後遺障害慰謝料

慰謝料は、相手方が用いる基準(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士の交渉介入で用いることができる基準(弁護士基準)で大きく金額が変動します。
腕神経叢損傷による「関節が曲がらない・動かない」の症状に対応する後遺障害慰謝料はつぎの通りです。

後遺障害慰謝料

腕神経叢損傷「関節が曲がらない・動かない」

等級自賠責基準弁護士基準
141100万円2800万円
56599万円1400万円
66498万円1180万円
86324万円830万円
1010187万円550万円
12693万円290万円

等級によっても異なりますが弁護士に示談交渉を依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求することができるようになります。
慰謝料の増額をご希望の方は、なるべく早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。

慰謝料金額相場の3基準比較
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腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」の後遺障害

腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」の後遺障害等級

腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」の後遺症で認定される可能性がある後遺障害等級はつぎの通りです。

後遺障害等級

腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」

等級症状
46両手の指全部の用を廃したもの
77片手の指5本の用を廃したもの
片手の親指を含む指4本の用を廃したもの
84片手の親指を含む指3本の用を廃したもの
片手の親指以外の指4本の用を廃したもの
913片手の親指を含む指2本の用を廃したもの
片手の親指以外の指3本の用を廃したもの
107片手の親指の用を廃したもの
片手の親指以外の指2本の用を廃したもの
1210片手の人差し指・中指・薬指の用を廃したもの
136片手の小指の用を廃したもの
147号*²親指以外の指の遠位指節関節*¹を屈伸できなくなったもの

*¹ 指先から数えて1番目の関節
*² 遠位指節関節が強直したもの、または、原因が明らかで自動で屈伸ができない・近い状態にあるもの

用語

▼用を廃したもの

親指の指の関節のいずれかの可動域が障害の無い関節と比べ1/2以下であること。

または

親指を立てる運動のいずれかの可動域が障害の無い指と比べ1/2以下であること。

親指以外の指で、遠位指節間関節をのぞく関節の可動域が、障害の無い関節と比べ1/2以下であること。

後遺障害等級は、指関節の可動域によって決定されます。指関節の可動域について詳しくみていきます。

指関節の可動域

指関節の可動域は、

屈曲(内側に折り曲げる動き)

伸展(外側に反らす動き)

これらの合計値となります。

もっとも、親指についてのみ、

橈側外転(親指を人差し指から遠ざけるように立てる動き)

掌側外転(親指をてのひらから遠ざけるように立てる動き)

それぞれの値が考慮されます。

いずれかの可動域が1/2以下という基準を満たせば後遺障害等級に認定されます。

親指の関節と運動の可動域
MCP関節*¹PIP関節*²橈側外転掌側外転
正常値70°90°60°90°
用廃35°45°30°45°

*¹ てのひらと繋がった部分の関節
*² てのひらから数えて1番目の関節

親指以外の関節と運動の可動域
MCP関節*¹PIP関節*²
正常値135°100°
用廃70°50°

*¹ てのひらと繋がった部分の関節
*² てのひらから数えて1番目の関節

腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」の後遺障害慰謝料

腕神経叢損傷による「指関節が曲がらない・動かない」の症状に対応する後遺障害慰謝料はつぎの通りです。

後遺障害慰謝料

腕神経叢損傷「指関節が曲がらない・動かない」

等級自賠責基準弁護士基準
46712万円1670万円
77409万円1000万円
84324万円830万円
913245万円690万円
107187万円550万円
121093万円290万円
13657万円180万円
14732万円110万円
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腕神経叢損傷「痛み・しびれ」の後遺障害

腕神経叢損傷「痛み・しびれ」の後遺障害等級

腕神経叢損傷「痛み・しびれ」の後遺症で認定される可能性がある後遺障害等級はつぎの通りです。

後遺障害等級

腕神経叢損傷「痛み・しびれ」

等級症状
1213局部に頑固な神経症状を残すもの
149局部に神経症状を残すもの
用語解説

▼局部に頑固な神経症状
…MRIの画像などで医学的に証明できること
▼局部に神経症状
…自覚症状、神経学的所見*で説明できること

* 患部に刺激を与えて反応をみる検査のこと

12級と14級の分かれ目は、レントゲン・MRI画像などから神経症状の存在を確認できるかどうかになっています。

腕神経叢損傷「痛み・しびれ」の後遺障害慰謝料

腕神経叢損傷による「痛み・しびれ」の症状に対応する後遺障害慰謝料はつぎの通りです。

後遺障害慰謝料

腕神経叢損傷「痛み・しびれ」

等級自賠責基準弁護士基準
121393万円290万円
14932万円110万円
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腕神経叢損傷は損傷の部位や程度によって現れる症状は異なりますが、場合によっては麻痺などの後遺障害が残る可能性があります。後遺障害が残ると仕事のみならず何気ない日常生活に大きな影響がおよぶことになります。
それなのにもかかわらず、相手方保険会社から提示される損害賠償の金額は被った損害に対して不十分であることが多いです。
損害に対して十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。