作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
骨盤骨折|後遺症の症状と慰謝料を解説
交通事故で臀部に衝撃が加わると、骨盤骨折が生じる場合があります。
- 骨盤骨折になるとどのような症状が出るのだろう
- 骨盤骨折で後遺症は残るのだろうか
- 骨盤骨折で後遺症が残ったら、慰謝料はいくらもらえる?
一口に骨盤骨折といっても、程度や症状、後遺症は様々です。
それに合わせて、受け取れる慰謝料も変わってきます。
骨盤骨折の後遺症と慰謝料について、詳しく解説していきます。
目次
骨盤骨折とは?症状と原因
骨盤骨折とは?
骨盤骨折とはその名の通り骨盤を骨折するものですが、
- 安定型骨盤骨折
- 不安定型骨盤骨折
の2種類に分けられます。
安定型骨盤骨折
骨盤を構成する仙骨・腸骨・恥骨・坐骨・尾骨の1ヵ所だけが折れた骨折。
1ヵ所折れただけでは骨盤はずれにくいため、安全型骨折といわれる。
治療も、安静にして様子を見ながらリハビリをするといった保存療法が基本。
不安定型骨盤骨折
骨盤を構成する仙骨・腸骨・恥骨・坐骨・尾骨のうち、複数カ所が折れた骨折。
複数カ所が折れると骨盤の形がずれてしまうため、不安定型骨折と呼ばれる。
不安定骨折の場合は、手術が必要になる。
骨盤骨折の症状は?
骨盤骨折で生じる症状には、以下のものがあります。
- 痛み
- 大量出血
- 股関節の可動域制限
- 血尿
- 低血圧
- 意識障害
- 足のしびれ
骨盤は、以下のような重要な臓器を守っています。
- 消化管(S状結腸や直腸など)
- 泌尿器系臓器(膀胱など)
- 生殖系臓器(子宮や卵巣など)
- 動静脈(内腸骨動脈など)
- 神経
骨盤骨折では、このような臓器を損傷する可能性があります。
特に不安定型骨盤骨折は、大量出血をはじめ、重い症状が出やすいのが特徴です。
また、骨盤骨折は、
- エコノミークラス症候群
- 手術部の感染症
- 長期の臥床による肺炎や褥瘡
といった合併症が起こる可能性もあるため、注意が必要です。
骨盤骨折|交通事故での原因は?
骨盤骨折は、臀部に衝撃が加わることで発生します。
交通事故で臀部に衝撃が加わる場面としては、
- 事故車両と骨盤周辺がぶつかった
- 交通事故の衝撃で臀部から地面に落ちた
等の場面が考えられます。
実際に骨盤骨折が生じた交通事故の例を見てみましょう。
交差点の出会い頭で車同士が衝突し、片方の車の運転手・同乗者が路上に転倒。同乗者が骨盤骨折の他、左示指伸筋腱断裂、左中手骨開放骨折の傷害を負った。
(東京地方裁判所平成29年(ワ)第1200号)
被害者が自転車で横断歩道を渡っていたところ、進入してきた大型貨物自動車と衝突し、転倒した上、貨物自動車の左後輪で轢過された。その結果、被害者は骨盤骨折等の障害を負い、死亡した。
(東京地方裁判所平成29年(ワ)第41155号)
被害者が中型貨物自動車を停車させその後ろに立っていたところ、後方から走ってきた加害者運転の車に追突され、貨物自動車と加害車両との間に挟まれた上、転倒。これにより被害者は腹腔内出血、腰椎・仙椎・骨盤骨折、尿道断裂、右手・右足・左大腿裂挫創と診断された。
(金沢地方裁判所平成27年(ワ)第498号)
骨盤骨折|後遺症が残ったら…
骨盤骨折|後遺症の症状は?
骨盤骨折によって残る可能性のある後遺症は、以下の通りです。
- 神経症状:痛み、しびれ
- 変形障害:骨の癒合不全
- 可動域制限
- 正常分娩困難
それぞれの後遺症の原因・影響を見ていきましょう。
骨盤骨折|後遺症①神経症状
原因 | 骨盤骨折により骨盤周辺の神経が損傷 |
---|---|
影響 | ・骨折部位の痛み ・下肢のしびれ ・歩行障害 |
骨盤の周りには、腰下肢の感覚をつかさどる神経が通っています。骨盤骨折でこうした神経が損傷すると、骨折部や腰、下肢に痛みやしびれが残ります。
骨盤骨折|後遺症②変形障害
原因 | 骨盤の骨がうまく癒合しない |
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影響 | ・左右で足の長さが異なる ・痛みにつながる |
骨盤骨折では、手術の他骨折部を固定させて癒合させる、保存療法がとられることがあります。そうするとうまく骨が癒合せず、変形が残る場合があるのです。
骨盤骨折|後遺症③可動域制限
原因 | ・大腿骨との付け根部分の損傷 ・人工関節・人工骨頭の手術の影響 ・股関節の硬化 |
---|---|
影響 | 歩行障害 |
骨盤には、大腿骨とつながっている部分があります。
しかし、骨盤骨折によりこの部分が損傷を受けると、大腿骨を支えたり円滑に動かしたりすることが難しくなります。
また、骨盤骨折では人工関節や人工骨頭の置換術を行うこともありますが、これを原因として可動域制限が発生する可能性もあります。
その他、骨盤骨折を原因に股関節が硬化し、可動域制限に発展することもあります。
骨盤骨折|後遺症④正常分娩困難
原因 | 骨盤の変形で産道が狭くなる |
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影響 | 出産時帝王切開を余儀なくされる |
骨盤骨折は通常、整形外科で診察・治療を受けます。
しかし、正常分娩困難については、産婦人科で診断を受けることになります。
骨盤骨折|後遺症に対する慰謝料
骨盤骨折|後遺症等級と慰謝料
骨盤骨折による後遺症が該当する可能性のある等級とその慰謝料は、以下の通りです。
神経症状
12級13号
- 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 慰謝料:290万円
14級9号
- 局部に神経症状を残すもの
- 慰謝料:110万円
頑固な神経症状とは、神経症状の有無をレントゲン写真やMRI画像などで証明できる症状のことを指します。
レントゲン写真やMRI画像では症状の有無を証明できないが、症状があることは認められるという場合には、14級9号になります。
変形障害
12級5号
- 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 慰謝料:290万円
著しい変形とは、服を脱いだ時に目視で変形を確認できる程度を指します。
レントゲン写真などで初めてわかる程度の変形はこれに該当しません。
可動域制限
8級7号
- 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
- 慰謝料:830万円
10級10号
- 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
- 慰謝料:550万円
12級6号
- 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
- 慰謝料:290万円
骨盤骨折による可動域制限がどの等級に該当するかは、
- 股関節の可動域制限の程度
- 人工関節・人工骨頭を入れたかどうか
で決まります。
人口関節・人工骨頭を入れていない |
---|
・ほとんど動かない:8級7号 ・可動域が1/2以下:10級11号 ・可動域が3/4以下:12級7号 |
人工関節・人工骨頭を入れている |
・可動域が2分の1以下:8級7号 ・8級7号に該当しない:10級11号 |
正常分娩困難
11級10号
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
- 慰謝料:420万円
ただし、ここでご紹介した金額は、示談交渉で被害者が弁護士を立てた場合に提示できる金額です。
この金額のことを、弁護士基準といいます。
示談交渉では加害者側からも金額を提示されます。
これを任意保険基準といいますが、任意保険基準の金額は弁護士基準の金額の半分以下です。
加害者側から提示された金額をいかに弁護士基準の金額に近づけて示談を成立させるかがポイントになります。
後遺症の等級認定ポイント
※後遺障害等級認定の申請の詳細はこちら
後遺症の等級認定におけるポイントは、以下の通りです。
ポイント
- レントゲン写真等は、異常箇所が分かりやすいよう印などをつける
- 自覚症状は実際の影響も合わせて書く
- 診断書は以下の3点をおさえる
- 後遺症と交通事故の因果関係を明確に
- 今後回復が困難であることを明記
- 症状を裏付ける証拠と、後遺症による労働能力の喪失を明記
さらに詳しい解説はこちらをご覧ください。
慰謝料請求時のポイント
慰謝料の請求は基本的に示談交渉の際に行われます。この際、以下の点を押さえておきましょう。
- 交渉相手は基本的に加害者側の保険会社
- 低めの示談金額を提示される
- 保険会社は示談交渉のプロであり、弁護士の主張でないと聞き入れないという方針をとることもある
以上のことから、妥当な示談金額を受け取るためには、
提示された金額を交渉によって増額させなければならないが、被害者自身による交渉で増額させるのは難しい
ということが分かります。
したがって、示談交渉は弁護士に代行してもらうことがお勧めです。
骨盤骨折|後遺症は弁護士にも相談
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弁護士に相談となると費用が気になる方も多いかと思いますが、
- 弁護士費用特約を使うことで弁護士費用を保険会社に支払ってもらえる
- 弁護士費用特約が使えなくても、得られた示談金から弁護士費用を払うことができる
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
弁護士プロフィール
岡野武志弁護士