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交通事故の過失割合について以下のような疑問をお持ちの方はいませんか?
こちらの記事では、そのような疑問に交通事故に力を入れている弁護士が回答します。
目次
交通事故の過失割合とは、以下の内容のことをいいます。
交通事故発生に対する加害者側・被害者側双方の責任を割合で示したもの
交通事故では、被害者であっても、発生に対して何らかの責任があることが多いです。
そこで、加害者・被害者双方の責任の比率を数字で分かりやすく示したのが過失割合です。
そして、交通事故における過失割合の役割は、以下のものになります。
過失割合分の損害は自己負担になる
交通事故により損害が生じた場合、加害者は被害者にその賠償をする必要があります。
しかし、損害の発生に対し、被害者にも責任があるのに、全ての賠償義務を負わせるのは
損害の公平な分担
という交通事故のような不法行為制度の理念に反することになります。
そこで、過失割合分の損害を自己負担とすることで、損害の公平な分担を果たしています。
このような過失割合に応じた減額の計算のことを
過失相殺
といいます。
そのため、交通事故における過失割合は、最終的な賠償金額に大きく影響します。
ときには、賠償総額よりも過失割合の方が受け取れる賠償金を左右することもあります。
たとえば、以下のような事例です。
被害者が加害者に対し、損害賠償総額500万円を請求している事例で、以下の2点が争点
そして、上記の2点の争点のうち、
どちらか一つだけ被害者の主張が認められた
場合の、最終的に受け取れる賠償金は以下の表のとおりになります。
①だけが認められた場合 |
---|
500万円×(1–0.2)=400万円 |
②だけが認められた場合 |
450万円×(1–0.1)=405万円 |
上記の事例では、
賠償総額よりも過失割合を有利に認められた方が、受け取れる賠償金は5万円高い
結果になっており、交通事故における過失割合の影響力の大きさがわかります。
特に、損害賠償総額が高額になるほど、過失割合が及ぼす影響も強くなるといえます。
例えば、損害賠償総額が10万円の事例と損害賠償総額が1億円の事例とでは、
と、過失相殺により減額される金額にも大きな違いが出てきます。
以上を踏まえると、交通事故の過失割合でもめる原因は以下の点にあるといえます。
被害者の過失割合分の損害が自己負担になるのは慰謝料だけではありません。
慰謝料は、交通事故における損害賠償金の一部にすぎません。
交通事故における損害の種類には、以下のようなものがあります。
物損 | 人身損害 | ||
---|---|---|---|
財産的損害 | 精神的損害 | ||
積極損害 | 消極損害 | ||
車の修理費用など | 治療費など | 休業損害など | 慰謝料 |
人身損害における財産的損害のうち、積極損害とは
交通事故によりせざるを得なくなった支出
のことをいい、消極損害とは
交通事故により本来得られるはずであった収入や利益の喪失・減少
のことをいいます。
過失割合分の自己負担は慰謝料だけでなく、人身損害全体に及ぶところ、
治療費などの実際の支出を伴う積極損害まで、過失割合分が自己負担
になることについて、被害者が納得できないとしてもめることが特に多いです。
さらに、過失割合分の自己負担は、人身損害だけでなく物損にも及ぶところ、
物損のうち車の修理費用など実際の支出を伴う損害の過失割合分が自己負担
になることについても同様に、被害者が納得できないとしてもめることが多いです。
以上を踏まえると、交通事故の過失割合でもめる原因は以下の点にあるといえます。
過失割合分の自己負担は、人身・物損を含めた損害賠償金全体に及ぶ
→実際の支出を伴う分の自己負担は、心情的に納得できないとして特にもめる可能性高い
交通事故の過失割合がいつ決まるかといえば、基本的には
相手方の保険会社の担当者と交渉した上、示談が成立した時点
になります。
この点、過失割合は警察が決めてくれると誤解されている方もいるようです。
しかし、警察は過失割合の決定には関与してくれません。
なお、交通事故の示談は、人身分と物損分を別々に行う場合があります。
その場合でも、同じ交通事故ですので、過失割合は同じになるのが通常です。
ただし、保険会社が物損分の過失割合だけ譲歩し、過失割合が異なる場合があります。
示談交渉をしたものの、過失割合が決まらない場合、最終的には
裁判
により、過失割合が決まることになります。
過失割合について交渉をする上で、基準となるのは
過去の裁判例をベースに作成された過失相殺率の認定基準表
です。
保険会社の担当者も、通常この表を用いて過失割合を判断しています。
この表は、以下の書籍に掲載されています。
この認定基準表は、様々な事故類型ごとに作成されています。
そして、その表には
が記載されています。
この過失割合の決め方が、もめる原因になっています。
過失割合の決め方を知らない場合、
被害者が基準表や修正要素を前提としない主張
をし、相手方の保険会社の担当者がそれに応じてくれない結果、もめることが多いです。
過失割合の決め方を知っている場合でも、
などの場合、当事者双方が納得できないとしてもめることになることが多いです。
以上のことをまとめると、以下のようになります。
ここからは、交通事故の過失割合が具体的な事例ではどうなるかをお伝えしていきます。
交通事故の類型として一番多いのは、後ろから追突される事故になります。
以下の表のとおり、交通事故全体の1/3以上を占めています。
事故類型 | 全体 | 追突 |
---|---|---|
件数 | 472,165 | 167,845 |
構成率 | 100% | 35.5% |
この後ろから追突される事故は、過失割合10対0の代表的な事例の一つです。
道路に駐停車している四輪車に、別の四輪車が後ろから追突した場合の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【157】の図になります。
過失割合は、交通事故を回避するためになすべき義務違反がある場合に発生します。
しかし、上記の場合、被追突車は交通事故を避けようがないといえます。
つまり、被追突車の義務違反が想定できないため、過失割合が0ということになります。
なお、走行中の四輪車に、別の四輪車が後ろから追突した場合は、注意が必要です。
この場合も、後続車両に車間距離保持義務があるため、基本過失割合は10対0です。
ただし、被追突車が理由のない急ブレーキをかけたために事故が発生した場合
基本過失割合は7対3(追突車(A)7:被追突車(B)3)
になります。
また、道路に駐停車している四輪車に、別の四輪車が後ろから追突した場合でも、
道路交通法上の義務を守っていない状態で駐停車していた場合
は、過失割合の修正要素となり、9対1や8対2になる場合があります。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A:追突車 B:被追突車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 100 | 0 |
B退避不能 | +10 | |
15㎞以上の速度違反 | +10 | |
30㎞以上の速度違反 | +20 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 | |
視認不良 | +10 | |
駐停車禁止場所 | +10 | |
非常点滅灯等の不灯火等 | +10~20 | |
駐停車方法不適切 | +10~20 |
※ 別冊判例タイムズ38号【157】参照
また、過失割合が10対0になる事例として、下記のような赤信号無視も挙げられます。
歩行者が青信号で横断歩道を渡る際、赤信号無視の直進車にひかれた場合の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【1】の図になります。
青信号で横断歩道上を横断する歩行者は強く保護されており、原則過失はありません。
左右の安全確認をしていなくても、それが修正要素として考慮されることもありません。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
直進車 | 歩行者 | |
---|---|---|
基本過失割合 | 100 | 0 |
修正要素 | なし |
※ 別冊判例タイムズ38号【1】参照
ただし、過失割合が10対0になるのは、歩行者が
横断歩道上(横断歩道の端から外側に1~2m内程度)
を渡った場合であるという点には注意が必要です。
横断歩道があるのに、そこ以外を歩行者が横断した場合には、たとえ車の赤信号無視でも
と、歩行者にも一定の過失割合が認められます。
反対に、直進車が青信号で進入した際、赤信号無視の歩行者と接触した場合の過失割合は
7対3(歩行者7:直進車3)
と、歩行者の過失割合の方が大きいものの、10対0にはならない点にも注意が必要です。
過失割合が9対1となる事例としては交差点で一方が優先道路の場合があります。
信号のない交差点における一方が優先道路である場合の直進車同士の事故の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【105】の図になります。
優先道路とは、道路交通法では以下のように定義されています。
道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路
引用元:道路交通法第36条2項かっこ書き
優先道路を通行する車両の優先度は高く、見通しの悪い交差点でも徐行義務はありません。
もっとも、優先道路を通行していても、注意義務が全くなくなるわけではありません。
そのため、事故が発生した場合の基本過失割合は、10対0ではなく9対1になっています。
ただし、劣後車の運転手が飲酒をしていた場合など、修正要素が認められる場合には
過失割合が10対0
になる可能性も当然考えられます。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A:優先車 B:劣後車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 10 | 90 |
Bの明らかな先入 | +10 | |
著しい過失 | +15 | +10 |
重過失 | +25 | +15 |
※ 別冊判例タイムズ38号【105】参照
また、上記の事例は車対車の事例を想定している点にも注意する必要があります。
バイクと車の事例の場合には、過失割合が変わってくる場合があります。
さらに、自転車と車の事例の場合も過失割合が変わる可能性があります。
具体的な過失割合としては
になります。
過失割合が9対1となる事例には、道路外の駐車場などに入る場合もあります。
道路外の駐車場などに入るため右折するBと対向直進車Aが衝突する事故の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【149】の図になります。
道路交通法は、道路外へ出入りする車両が、他の車両の進行を妨げることを禁じてます。
一方、対向直進車も、道路外に出ようとする車両を発見することは難しくありません。
そのため、Aにも軽度の前方注視義務違反があるとして、基本過失割合は9対1になります。
ただし、道路外に出る車両が右折の合図を出していない場合などには
過失割合が10対0
になる可能性も当然考えられます。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A:直進車 B:右折車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 10 | 90 |
既右折 | +10 | |
15㎞以上の速度違反 | +10 | |
30㎞以上の速度違反 | +20 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 | |
幹線道路 | +5 | |
徐行なし | +10 | |
合図なし | +10 |
※ 別冊判例タイムズ38号【149】参照
また、上記の事例は道路外に出る事例を想定している点にも注意する必要があります。
反対に、道路外から道路に合流するため右左折する事例では、基本過失割合が
8対2
になります。
交通事故では、過失割合が10対0か9対1かでもめるようなケースも少なくありません。
双方納得できないとして過失割合が決まらない場合、9対0で示談する場合があります。
では、過失割合が「9対0」となった場合、一体どうなるのか、下記事例を基に説明します。
過失割合が10対0か9対1かで争っている
(Aの方が過失割合が大きいことは争いない)
Aの損害額:200万円
Bの損害額:20万円
物損事故の場合、過失割合の大きい方が損害額が高額になるケースも珍しくありません。
Aが新車の高級車だったのに対し、Bが中古の軽自動車だったようなケースなどです。
この場合に、仮に過失割合9対1で示談するとなると、以下の表のようになります。
Bが受け取るべき賠償金 |
---|
20万円×(1–0.1)=18万円 |
Aが受け取るべき賠償金 |
200万円×(1–0.9)=20万円 |
上記のとおり、過失割合が大きいAの方が受け取れる賠償金が高くなっています。
Bは相殺払いの形を取ると賠償金がもらえないどころか、2万円払うことになります。
それを避けるため、対物賠償保険を使えば、翌年以降の保険料が上がります。
どちらにしても、Bとしては納得できないとして過失割合が決まらない可能性が高いです。
一方Aも、10対0で相手に一切責任がないのは納得できないと主張するケースも多いです。
そこで、妥協案として「9対0」という過失割合で示談交渉がなされることがあります。
過失割合を9対0で示談するA・B双方のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
過失割合9 | 過失割合1 | |
---|---|---|
メリット | ・支払う賠償金を1割減らせる ・相手にも責任認めさせられる |
相手に賠償しなくて済む (保険料上がらない) |
デメリット | 相手に賠償金請求できない | 受け取れる賠償金減る (10対0と比較して) |
過失割合が決まらないと示談はできず、賠償金を受け取ることもできません。
そこで、10対0を主張したい場合でも、9対0で早期解決を図るのも選択肢の一つです。
ただし、9対0の示談を実現させるのは容易ではなく、弁護士に相談するのが確実です。
過失割合が8対2となる事例としては、歩行者が飛び出してくる場合があります。
歩行者が道路を横断するため飛び出してきた際に、車両と衝突する事故の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【37】の図になります。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
車 | 歩行者 | |
---|---|---|
基本過失割合 | 80 | 20 |
夜間 | +5 | |
幹線道路 | +10 | |
横断禁止規制 | +5~10 | |
直前直後横断 | +10 | |
住宅街・商店街 | +5 | |
児童・高齢者 | +5 | |
幼児・身体障害者 | +10 | |
集団横断 | +10 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 | |
歩車道の区別なし | +5 |
※ 別冊判例タイムズ38号【37】参照
また、上記の事例は、歩行者の飛び出しが
以外の場所で行われたケースを想定している点には注意が必要です。
歩行者が飛び出した場所が
が基本過失割合になります。
さらに、上記の事例は車両が前に進んでいる場合を想定している点にも注意が必要です。
歩行者が道路を横断する際に、バックしてきた車両と衝突する事例もあります。
この場合には
が基本過失割合になります。
過失割合が8対2となる事例には、交差点での右折・直進事故もあります。
信号機のない交差点で、右折車と対向直進車が衝突した場合の基本過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【114】の図になります。
道路交通法では、交差点を右折する車両が直進車の進行を妨害することを禁じています。
車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
引用元:道路交通法第37条
一方、直進車にも交差点内はできる限り安全な速度と方法で進行する義務を課しています。
車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは(略)反対方向から進行してきて右折する車両等(略)に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
引用元:道路交通法第36条4項
そのため、具体的事故の場面では直進車にも何らかの過失が肯定されることが多いため
基本過失割合が右折車8:直進車2
となっており、修正要素を記載した基準表は以下のとおりです。
A:直進車 B:右折車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 20 | 80 |
既右折 | +20 | |
15㎞以上の速度違反 | +10 | |
30㎞以上の速度違反 | +20 | |
著しい過失 | +10 | +10 |
重過失 | +20 | |
徐行なし | +10 | |
直近右折 | +10 | |
早回り右折 | +5 | |
大回り右折 | +5 | |
合図なし | +10 |
※ 別冊判例タイムズ38号【114】参照
なお、上記の事例は車対車の事例を想定している点にも注意する必要があります。
バイクと車の事例の場合には、基本過失割合が変わってきます。
自動車同士の場合と比較して、過失割合がバイク側に有利になっています。
具体的には
車が右折・バイクが直進の場合は85対15
と自動車同士の場合より直進バイクの基本過失割合が5%低くなり
バイクが右折・車が直進の場合は7対3
と自動車同士の場合より右折バイクの基本過失割合が10%低くなります。
そして、自転車と自動車の事例では、さらに過失割合が自転車に有利になります。
具体的には
自動車が右折・自転車が直進の場合は9対1
と自動車同士の場合より直進自転車の基本過失割合が10%低くなり
自転車が右折・自動車が直進の場合は5対5
と自動車同士の場合より右折自転車の基本過失割合が30%低くなります。
過失割合が7対3となる事例としては、車線変更時の衝突事故が挙げられます。
同一方向に進行中、車線変更を行った前方車両と後続車両が衝突した場合の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【153】の図になります。
道路交通法では、
理由のない車線変更(進路変更)
を禁止しています。
車両は、みだりにその進路を変更してはならない。
引用元:道路交通法第26条の2第1項
また道路交通法では、
後続車両の速度や方向を急に変更させるおそれがある車線変更(進路変更)
も禁止しています。
車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。
引用元:道路交通法第26条の2第2項
そのため、過失割合は基本的に後続直進車に有利に考えるべきといえます。
もっとも、後続直進車は合図などで前方にいる車両の車線変更を予測できるため、
後続直進車にも前方をよく見ていなかったことに対する過失
が認められます。
そのため、基本過失割合は7対3であり、修正要素を記載した基準表は以下のとおりです。
A:後続直進車 B:車線変更車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 30 | 70 |
15㎞以上の速度違反 | +10 | |
30㎞以上の速度違反 | +20 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 | |
進路変更禁止場所 | +20 | |
合図なし | +20 | |
A初心者マーク等 | +10 |
※ 別冊判例タイムズ38号【153】参照
なお、上記の事例は車対車の事例を想定している点にも注意する必要があります。
バイクと車の事例の場合には、基本過失割合が変わってきます。
自動車同士の場合と比較して、過失割合がバイク側に有利になっています。
具体的には
車が車線変更車・バイクが後続直進車の場合は8対2
と自動車同士の場合より車線変更車の基本過失割合が10%高くなり
バイクが車線変更・車が後続直進車の場合は6対4
と自動車同士の場合より車線変更車の基本過失割合が10%低くなります。
そして、自転車と自動車の事例では、さらに過失割合が自転車に有利になります。
具体的には
自動車が車線変更車・自転車が後続直進車の場合は9対1
と自動車同士の場合より車線変更車の基本過失割合が20%高くなり
自転車が車線変更・自動車が後続直進車の場合は8対2
で車線変更車よりも後続直進車の方が過失割合が大きくなります。
過失割合が7対3となる事例には、T字路での右折・直進事故もあります。
T字路の直進路直進車と突き当たり路右折車との事故の過失割合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【139】の図になります。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A:直進車 B:右折車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 30 | 70 |
Bの明らかな先入 | +10 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 |
※ 別冊判例タイムズ38号【139】参照
なお、上記の事例は、事故が発生したT字路が
場合以外(主に同じ幅の道路)のケースを想定している点には注意が必要です。
事故が発生したT字路が
が基本過失割合になります。
過失割合が6対4となる事例には、交差点での自転車の一時停止無視があります。
信号機のない交差点での直進自転車と自動車の事故(自転車側に一時停止規制あり)です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【244】の図になります。
道路交通法では、車両が走行する道路に一時停止の規制がある場合
ことを義務付けています。
条文は以下のとおりです。
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。
この場合において、当該車両等は(略)交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
引用元:道路交通法第43条
道路交通法上、自転車も車両に含まれるため、上記の義務を課せられています。
もっとも、自転車と自動車との事故においては
ことから過失割合が自転車側に有利に判断されることになります。
その結果、上記の事例でも6対4で、自動車の方の過失割合が大きくなります。
具体的な過失割合の基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A:自転車 B:自動車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 40 | 60 |
夜間 | +5 | |
A右側通行・左方から進入 | +5 | |
著しい過失 | +10 | +10 |
重過失 | +15 | +20 |
A児童等・高齢者 | +10 | |
A一時停止 | +10 | |
A自転車横断帯通行 | +10 | |
A横断歩道通行 | +5 |
※ 別冊判例タイムズ38号【244】参照
上記の基本過失割合は一時停止義務違反があることを前提としています。
そのため、自転車が一時停止したことが修正要素として含まれています。
つまり、上記の事例で自転車が一時停止していた場合の過失割合は7対3になります。
上記の事例とは逆に、自転車ではなく自動車側に一時停止規制があった場合には
9対1
が基本過失割合になります。
また、上記の事例は自転車と自動車双方が直進車の事例である点にも注意が必要です。
自転車に一時停止無視があった直進車と右折車の事例では、
が基本過失割合になります。
過失割合が6対4となる事例には、交差点での出合い頭の衝突事故もあります。
信号機のない同幅員の交差点で、直進車同士が同程度の速度で衝突したような場合です。
別冊判例タイムズ38号でいうと【101】の図になります。
一見すると、過失割合が同等の5対5のような事例にも思えます。
しかし、道路交通法は、交差点での左方優先を定めています。
条文は以下のとおりです。
車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては(略)当該各号に掲げる車両等の進行妨害をしてはならない。
一 車両である場合 その通行している道路と交差する道路(略)を左方から進行してくる車両(以下略)
引用元:道路交通法第36条1項
そのため、左方車の過失割合が少なくなり、
6対4(右方車6:左方車4)
が基本過失割合になり、修正要素は以下の表のとおりです。
A:左方車 B:右方車 |
A | B |
---|---|---|
基本過失割合 | 40 | 60 |
見通しがきく交差点 | +10 | |
夜間 | +10 | +5 |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 |
※ 別冊判例タイムズ38号【101】参照
なお、上記の事例は、同じ程度の道幅の交差点を想定しており、一方の道路が
の場合、基本過失割合が異なり、別の基準表が用いられる点には注意が必要です。
また、上記の事例は双方が同程度の速度であった事例を想定した過失割合です。
そのため、
点にも注意が必要です。
過失割合が5対5となる事例には、駐車場内の交差点での衝突事故があります。
駐車場内では、駐車スペースを探す等のため、不規則な動きをすることが想定されます。
加えて、駐車場内の交差道路は、道路交通法が適用される「道路」にはあたらないため、
などが適用されず、等しく他車との接触・衝突を予見・回避する義務が課されます。
そのため、上記の場合直進、右折・左折の区別なく基本過失割合は5対5になります。
具体的な基準表及び修正要素は以下のとおりです。
A | B | |
---|---|---|
基本過失割合 | 50 | 50 |
他方の通路が明らかに広い | +10 | |
一時停止・通行方向標示等違反 | +15~20 | |
著しい過失 | +10 | |
重過失 | +20 |
※ 別冊判例タイムズ38号【334】参照
通常の交差点での事例とは異なり、
などの事情は、別の基準表が用いられるのではなく、修正要素として考慮されます。
なお、示談交渉の際、保険会社の担当者から
「駐車場内の事故の場合、過失割合は常に5対5になる」
と主張されることがありますが、それは正確ではありません。
駐車場内の事故であっても、過失割合が5対5とはならない事例は数多くあります。
たとえば、駐車する際に、隣に駐車していた車両に接触した場合は当然10対0です。
上記の事例は、「駐車場内の交差点(部分)」での事故を想定しており
駐車スペース退出・進入車と通路を進行する車両との事故
の場合には、異なる基本過失割合が適用されます。
具体的には
と全く基本過失割合が異なってくる点に注意する必要があります。
この過失割合は、車両が前進している場合だけでなく、後退している場合も同様です。
過失割合が5対5となる事例には、交差点を両方赤信号で進入する事故もあります。
赤信号同士の事故の場合には、双方赤信号違反という重大な過失があることになります。
そして、その場合、一般的に行為の危険性に目立った差はないと考えられます。
そのため、上記の事例では基本過失割合は5対5となり、修正要素は以下の表のとおりです。
A | B | |
---|---|---|
基本過失割合 | 50 | 50 |
相手の明らかな先入 | +10 | |
著しい過失 | +5 | |
重過失 | +10 |
※ 別冊判例タイムズ38号【100】参照
なお、上記の事例は車対車の事例を想定している点にも注意する必要があります。
バイクと車の事例の場合には、基本過失割合が変わってきます。
自動車同士の場合と比較して、過失割合がバイク側に有利になっています。
具体的には
6対4
でバイク側の過失割合の方が小さくなります。
そして、自転車と自動車の事例では、さらに過失割合が自転車に有利になります。
具体的には
7対3
が基本過失割合になります。
お伝えしてきたもの以外にも交通事故の過失割合には事例ごとに様々な基準があります。
また、基準や修正要素がわかっても、具体的な適用の点でもめることも多いです。
そのような過失割合に納得できない部分がある場合には弁護士にご相談ください。
アトム法律事務所の弁護士は、事例に即した適切な過失割合は何かを丁寧にお答えします。
特に過失割合を10対0で主張する場合は、弁護士に相談する必要性が高いといえます。
この場合、ご自身の保険会社の担当者は過失割合の示談交渉に関与できないからです。
アトム法律事務所では、人身事故の被害者の方の過失割合などについて
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野尻大輔
実際の交通事故の争いにおいては、
被害者の過失割合分を損害賠償金総額から差し引いて計算
することで、過失割合の果たす役割を実現させています。