作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
椎間板ヘルニアで後遺症認定される方法|手術後にしびれ…交通事故のヘルニア治療法とは
- 交通事故に遭って頸椎・腰椎椎間板ヘルニアを負ってしまった
- 手術後にしびれなどが残ったが、後遺症認定してもらえるだろうか
- 椎間板ヘルニアの治療法や治療期間、リハビリ方法を知りたい
交通事故の被害に遭った場合、頸椎や腰椎に負担がかかり、椎間板ヘルニアになってしまうことがあります。
椎間板ヘルニアとは、
- ① 椎間板の一部が後方に逸脱し、
- ② 神経根または馬尾(脊髄の下端にある脊髄神経の束)が圧迫されて
- ③ 一側性の下肢痛や腰痛など症状を引き起こしたもの を指します。
交通事故でむちうちを負った際などに生じることがある椎間板ヘルニアですが、このページでは、
- しびれなどを後遺症として認定してもらう方法
- 椎間板ヘルニアの具体的な治療法や治療期間など
ということなどについて解説していきます。
椎間板ヘルニアが生じてお困りの方は、ぜひご参考にしてみてください。
目次
椎間板ヘルニアで後遺症(後遺障害)認定してもらう方法とは
手術後にしびれが残った…後遺障害等級は何級が認定される?
冒頭で述べた通り、交通事故で頸椎・腰椎を痛めた際に発症することがある椎間板ヘルニアですが、
椎間板ヘルニアが原因で手足のしびれなどの後遺症が残る場合があります。
その場合、「自賠責損害調査事務所」という組織に後遺障害等級認定の申請を行うことになります。
以下の画像が後遺障害等級認定の手続きの大まかな流れです。
なお、「後遺症」はケガの治療後も完治せず残ってしまった症状や障害一般のことを指します。
「後遺障害」は、治療後に完治しなかった症状の中でも、自賠法施行令が定める一定の条件を満たして等級の認定を受けたものを指します。
後遺障害は1級~14級の14段階で区別されていて、それぞれの等級に応じて「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」の金額が変動します。
では、椎間板ヘルニアだと後遺障害等級は何級が認定される?
そして椎間板ヘルニアでしびれや痛みが残った場合、「14級9号」や「12級13号」が認定されることがあります。
実際、椎間板ヘルニアの症状が固定した後、14級9号と12級13号の後遺障害等級が認定された判例を見てみましょう。
(略)本件事故によって頚椎捻挫,腰椎捻挫,外傷性頚椎椎間板ヘルニアの傷害を受けた。
(略)局部に神経症状を残すものとして自賠責保険後遺障害等級別表第二の14級9号の後遺障害を遺して,平成23年4月19日症状固定(原告当時44歳)に至った。引用元:千葉地方裁判所判決/平成24年(ワ)第1400号
(略)本件事故により頚部挫傷,(略)外傷性頚椎椎間板ヘルニア,(略)の傷害を負い,平成20年3月6日に症状固定となり,後遺障害等級12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当する頚部痛,左上肢知覚障害の後遺障害が残ったものと認められる。
引用元:名古屋地方裁判所判決/平成21年(ワ)第3989号
上記判例より、椎間板ヘルニアでしびれや痛みが残り、後遺障害等級が認定された場合、
主に14級9号・12級13号になる可能性があることがわかります。
ただ、症状が重篤な場合、椎間板ヘルニアであっても更に重い後遺障害等級が認定されるケースがあります。
以下がその判例で、「9級10号」が認定されています。
(略)腰部挫傷,左坐骨神経損傷,頸部挫傷,右腕神経叢損傷,頸髄不全損傷,頸椎椎間板ヘルニアとして,症状固定の診断を受けた(略)
かつ,明らかな脊髄症状が残存しているものとして,後遺障害等級9級10号(精神系統の機能又は精神に障害を残し,服することのできる労務が相当な程度に制限されるもの)に該当し,生涯にわたってその労働能力の35%を喪失したものと認めるのが相当である。引用元:東京地方裁判所判決/平成3年(ワ)第18942号
しかし、交通事故で椎間板ヘルニアを負ってしびれが残ったとしても、必ず後遺障害等級が認定されるわけではありません。
次節でも解説しますが、後遺障害等級を認定してもらうには、交通事故によって椎間板ヘルニアを負ったという因果関係の証明などが必要になってきます。
ここまでのまとめ
椎間板ヘルニアの症状固定時、手足のしびれなどが後遺症として残ることがある
⇒その場合、後遺障害等級「14級9号」や「12級13号」が認定される可能性あり(症状が重篤ならさらに高い等級が認定されうる)
後遺障害等級の認定には因果関係の証明が必要
後遺症(後遺障害)認定されるには交通事故との因果関係が必要
後遺障害等級認定の手続きを行う際、「後遺障害診断書」を医師に作成してもらうことになります。
この後遺障害診断書には、主に以下の事柄を記載してもらいます。
後遺障害診断書の記載内容
- 交通事故との因果関係
- 今後回復が困難である旨
- 後遺障害の存在や症状の医学的な証明
なお、実際の後遺障害等級認定の手続きの流れについては以下のページで解説しています。
椎間板ヘルニアで手足のしびれなどが残った交通事故被害者の方はぜひご参考にしてみてください。
頸椎・腰椎椎間板ヘルニアのしびれ・痛みの治療法
頸椎や腰椎を痛め、椎間板ヘルニアを負った場合、どのような治療を受けることになるのか。
治療法の具体例をこれから解説していくので、今後の治療内容が気になる事故被害者の方はぜひご参考にしてみてください。
椎間板ヘルニアの治療薬は何が処方される?
まず、椎間板ヘルニアを負った場合、どのような治療薬が処方されるのか。
一例として、以下の治療薬が用いられることがあります。
処方タイミング | 治療薬の一例 |
①事故直後 | セレコックス錠(100mg) |
ボルタレンサポ(25・50mg) | |
②神経障害性疼痛が明らかな場合 | リリカカプセル(75mg) |
③上記の処方で疼痛が軽快しない場合 | トラムセット配合錠 |
トラマールOD錠(25mg) | |
④その他 | ミオナール錠(50mg) |
カロナール錠(500mg) |
椎間板ヘルニアの約8割は、安静・薬物療法が主体の保存療法(出血しない治療方法)で痛みが軽快し、ヘルニアも画像上消退することがあります。
事故直後はつらい痛みが続くかもしれませんが、しばらく治療を続けていくと基本的には痛みが治まっていきます。
そのため、痛みのあまり自暴自棄になって通院を途中でやめたりするようなことはせず、
しっかりと通院を続け、痛みのない元の身体に戻れるようにしましょう。
なお、椎間板ヘルニアは保存療法で軽快しない場合でも、手術を受ければ経過は良好なことが多い疾患です。
あまりにも痛みが長引くようであれば、医師と相談した上で、手術を受ける治療方針にしてもらうことも検討しましょう。
ここまでのまとめ
- 椎間板ヘルニアの約8割は保存療法で痛みが軽快する
- 保存療法で軽快しなくても、手術を受ければ経過は良好なことが多い
椎間板ヘルニアのストレッチ|腰痛治療に有効
椎間板ヘルニアで腰痛を感じているとき、治療の一環として、ストレッチを行うケースもあります。
SLRテストで90度ほど足が上がるようになったら、
- 体幹前屈位のストレッチ
- 体幹回旋ストレッチ
などを骨盤牽引、電気治療などと併せて行う場合があります。
ただ、薬物療法やストレッチなどはヘルニアを小さくする治療ではない点をご留意ください。
通常、椎間板ヘルニアは時間が経てば自然に小さくなるものです。
手術を受ければヘルニアを小さくすることが可能ですが、手術にはメリット・デメリットの療法があるため、
医師と十分相談した上でどのような治療を受けるのか判断するようにしましょう。
ここまでのまとめ
- 椎間板ヘルニアの治療の一環としてストレッチを行うこともある
- 通常、ヘルニアは時間経過で軽快する
椎間板ヘルニアの治療期間|通常は3ヶ月以内に痛みが無くなる?
椎間板ヘルニアの治療期間はどの程度になるのか。
被害者の方の年齢や症状にもよりますが、
腰椎椎間板ヘルニアのケースでは、通常は2~3ヶ月程度でヘルニアが退縮すると推定されています。
(略)腰椎椎間板ヘルニアが退縮する具体的な時期は明らかではないが,2〜3ヵ月で著明に退縮するヘルニアが少なくないと推定される.
引用元:https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0017/G0000309/0015(腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)|Mindsガイドラインライブラリ)
そのため、3ヶ月以上痛みが続く場合は、
これまで上で述べた通り、医師と相談した上で手術を受けるかどうか検討するようにしましょう。
ただし、腰椎椎間板ヘルニアによって馬尾症候群が生じ、膀胱直腸障害が発生した場合は、
馬尾症候群発症から48時間以内に手術を受ける必要性が高まります。
(略)馬尾症候群発症から48時間以後の手術では,それ以前の手術例に比べ感覚・運動障害や排尿障害はより多い頻度で残存し,48時間以内と以後では膀胱直腸障害,下肢感覚障害,運動障害の回復に有意差がみられたとの報告がある
引用元:https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0017/G0000309/0042(腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)|Mindsガイドラインライブラリ)
上記の通り、48時間以内に手術を受けた場合、膀胱直腸障害などが回復しやすくなり、後遺症も残りづらくなるとされています。
ここまでのまとめ
- 腰椎椎間板ヘルニアは通常2~3ヶ月程度で退縮する
- 膀胱直腸障害が生じた場合、馬尾症候群発症から48時間以内に手術を受ける必要性が高まる
椎間板ヘルニアの治療費はいくら程度?
椎間板ヘルニアの治療費はいくらかかるのか。
厚生労働省が公表している「医療給付実態調査_報告書_平成28年度」によると、
椎間板ヘルニア(椎間板障害)の治療にかかる治療費の平均自己負担額は、保険の点数1点=10円として計算すると約521,900円となっています。
全体の合計 | |
件数 | 84,825件 |
日数 | 1,002,784日 |
点数 | 4,427,046,571点 |
1件あたりの日数・点数 | |
日数 | 11.8日 |
点数 | 52,190点 |
厚生労働省 医療給付実態調査_報告書_平成28年度 第3表参照
高額ですが、健康保険を使用して治療を受ければ自己負担額を1~3割に抑えることが可能です。
また、以下のページで解説している通り、たとえ交通事故でケガを負った場合でも健康保険を使用して治療を受けることが可能です。
椎間板ヘルニアの治療費負担について更に知りたい方はぜひご参考にしてみてください。
ここまでのまとめ
- 椎間板ヘルニアの治療費は平均約521,900円(平成28年度時点)
- 交通事故の負傷でも健康保険は使用可能
交通事故で椎間板ヘルニアを負った被害者の方は「アトム法律事務所」にご相談ください
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。