作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

腓骨神経麻痺後遺障害

腓骨神経麻痺の後遺障害|手術や治療は必要?しびれや痛みも後遺障害?慰謝料はいくら?

腓骨神経麻痺の後遺症は?
この記事のポイント
  • 腓骨神経麻痺の後遺障害には「下垂足」「足首・足指関節の機能障害」「しびれの残存」などがある
  • 慰謝料の金額は後遺障害の程度、他覚所見の有無などで異なる
  • 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額・後遺障害等級認定のサポートが可能

腓骨神経を損傷すると、足首や足の指が動きにくくなったり、ひざ下にしびれが残ったりします。
後遺障害の内容によっては歩行が困難になることもありますし、もし後遺障害(後遺症)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
腓骨神経麻痺によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。

  • 腓骨神経麻痺の治療に手術は必要?
  • 腓骨神経麻痺の後遺障害はどのようなものがある?
  • しびれは後遺障害になる?

藤井宏真医師

奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医

藤井 宏真医師

腓骨神経は、ひざ下を走る神経で、体表に近い場所に位置しているため損傷を受けやすい部分です。
足の感覚だけでなく、足を動かすための筋肉も支配しています。

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腓骨神経麻痺の基礎知識|もしも子供が腓骨神経麻痺したら何科に行く?

腓骨神経麻痺の症状

腓骨神経麻痺には、以下のような症状があります。

  • 下垂足
  • つま先が上がらない
  • ひざ下や足の指付近などがしびれる

腓骨神経は足首や足の指を動かす筋肉を支配しているため、損傷を受けると足首や足指関節がうまく動かせなくなります。

麻痺が重度であると、足首から下がだらんと垂れ下がる下垂足になります。

下垂足になると

  • 鶏歩:つま先を引きずる歩き方
  • スリッパをはいてもすぐに脱げる
  • 車のブレーキを踏めない

といった症状が見られます。

また、腓骨神経麻痺によるしびれは主に、

  • すねの外側から足の甲
  • 足の親指と人差し指の間、付け根

に現れます。

腓骨神経麻痺は何科で治療を受けるべき?

腓骨神経麻痺の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
ひざ下の症状が脳の損傷によるものである可能性がある場合は、脳神経内科に行くと、原因を突き止め正しい受診先を指南してもらえます。

腓骨神経麻痺の治療&整復&手術|放置でもいい?手術費用は?

腓骨神経麻痺の治療としては、手術を行うものと行わないものがあります。
腓骨神経折が軽度なものであれば、手術は行われません。

手術をしない場合
  • テーピングや装具などで足を固定
  • 薬物療法
  • ストレッチや筋力トレーニング
  • 低周波治療
  • 電気療法

などを行い自然治癒を待つ

一方、こうしたいわゆる保存療法では治療が難しいものの場合は、手術が行われます。

腓骨神経麻痺の手術
  • 折れた骨など神経を圧迫している原因を取り除く
  • 損傷を受けた神経の縫合・剥離・移植
  • 損傷を受けた筋肉の代わりを移植する腱移行手術
  • 下垂足となりだらんと垂れ下がる足を固定する距踵関節固定術(きょしょうかんせつこていじゅつ)
補足

神経の縫合がうまくいかず何度も手術を繰返すことになった、長時間かつ体に対する負担の重い手術をしたなどという場合は、その苦痛が慰謝料に反映できる可能性があります。
そうした場合は一度弁護士にご相談ください。

腓骨神経麻痺の後遺症|しびれは後遺障害にあたる?

後遺障害(後遺症)

これ以上治療を継続しても大幅な回復は見込めないとされた症状。
交通事故で後遺障害が残ると、審査を経て14段階に分けられた後遺障害等級が認定される。

腓骨神経麻痺を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。

腓骨神経麻痺の後遺症
  • 下垂足
  • 足首、足関節の可動域制限
  • しびれの残存

それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。

腓骨神経麻痺で慰謝料が増えるって本当?

腓骨神経麻痺の後遺症により増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益

上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害によって今後も受け続ける精神的苦痛に対する賠償

また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。

後遺障害の逸失利益

後遺障害による労働能力の喪失で異動・退職を余儀なくされたり、出世が阻まれたりすることで得られなくなった将来の収入に対する補償。
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数

「労働能力喪失率」は各後遺障害等級に応じて基準が定められています。
しかし、障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。

注意点として、示談交渉で交通事故の加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。

後遺障害等級の申請方法|腓骨神経麻痺の場合

では、実際に腓骨神経麻痺で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。

②後遺障害診断書など書類の用意

症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の申請時に必要な資料は、主に以下のようになっています。

提出資料
  • 後遺障害診断書
  • 医師による診断書
  • 診療報酬明細書
  • 交通事故証明書
  • 後遺障害の存在や症状を裏付ける資料

後遺障害の申請には、2種類の方法があり、どちらを選択するかによって申請者自身で集める資料が変わります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ
  • 事前認定:被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する
  • 被害者請求:被害者が資料一式を用意して自賠責保険に提出する

被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる
ポイント|後遺障害等級が認定されるために

後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。

そのため、

①後遺障害診断書の内容・書き方詳細はこちら

②後遺障害の存在・症状を裏付ける資料

は非常に重要です。

② については、

  • レントゲン写真やMRI画像といった画像
  • 各種検査の結果

を添付することが望ましいです。

③損害保険料率算出機構による審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。

より細かな認定手順についてはこちらの記事を参照してください。

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腓骨神経麻痺による「足関節・足指関節」の機能障害

腓骨神経麻痺による足関節・足指関節の機能障害は何級?

腓骨神経麻痺では、保存療法や手術を行っても足首や足指関節の機能障害が残る場合があります。

具体的には、

  • 下垂足
  • 足首の可動域制限
  • 足指関節の可動域制限

が残ります。

そうした場合の後遺障害等級は以下の通りです。

後遺障害等級

足関節・足首関節の機能障害

等級 症状
8 足関節が全く可動しないか、可動域が10%以下に制限される
9 1足の足指の全部の用を廃した
10 足関節の可動域が1/2以下に制限される
11 1足の親指を含む2以上の足指の用を廃した
12 ▼足関節の可動域が3/4以下に制限される
1足の親指または他の4つの足指の用を廃した
13 1足の人差し指の用を廃した
1足の人差し指を含む2つの足指の用を廃した
1足の中指以下の3つの足指の用を廃した
14 1足の中指以下の1つまたは2つの足指の用を廃した

下垂足の場合は、上記の表のうち

  • 8級:足関節が全く可動しない
  • 9級:1足の足指の前部の用を廃した

の2つに該当します。

そのため、2つの等級を合わせて「併合7級」として扱われます。
後遺障害慰謝料の金額水準は、一般的な後遺障害7級の場合と同じです。

足関節・足指関節の機能障害の後遺障害慰謝料の相場は?

足関節・足首関節の可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

足関節・足首関節の機能障害

等級 自賠責基準 弁護士基準
7 409万円 1000万円
8 324万円 830万円
9 245万円 690万円
10 187万円 550万円
11 135万円 420万円
12 93万円 290万円
13 57万円 180万円
14 32万円 110万円
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腓骨神経麻痺による「しびれ」の後遺障害

腓骨神経麻痺によるしびれの後遺障害等級は何級?

腓骨神経麻痺では、しびれが残る場合もあります。
その場合の後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

腓骨神経麻痺によるしびれ

等級 症状
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの
149 局部に神経症状を残すもの

ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。

何を以てこの区別を行うかについては、

  • 神経学的な検査結果があるか
  • レントゲン・MRI画像などの所見があるか

が大きな判断要素となります。

しびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、医学的な証明が十分とは言えないものの症状があることは推定できるという場合は14級9号に該当します。

ですので、より高い等級に認定されるためには、以下のことが重要になります。

  1. ① おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにする
  2. ② 適宜検査を受ける
  3. ③ 後遺障害等級認定の際、診断書や添付資料を用いて症状の経過や各検査結果をしっかりと伝える

腓骨神経麻痺によるしびれの後遺障害慰謝料の相場は?

しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

腓骨神経麻痺によるしびれ

等級 自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円
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腓骨神経麻痺の後遺障害に関するお悩みは弁護士にご相談ください

LINE相談

腓骨神経は体表に近い位置にあるため、交通事故でも比較的圧迫や損傷を受けやすい部位です。
そして、下垂足をはじめ、歩行に影響を与える可能性があります。
にも関わらず、それらを診断書や添付資料を通してうまく伝えられないと、適切な後遺障害等級が認定されない可能性があります。
また、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益が不十分なこともあります。
適切な後遺障害等級を獲得して十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
後遺障害等級認定の手続きや示談交渉などを一任することで、十分な対策のもと賠償金獲得に向けて動いていくことができます。
腓骨神経麻痺による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


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