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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
腰椎とは背骨の腰部分にある椎体のことで、以下のようになっています。
この腰椎に対して上下から圧力が加わり、つぶれたように折れることを腰椎圧迫骨折といいます。
ポキッと折れるという一般的なイメージとは違い、つぶれるように折れるということで、どのように治療が行われるのか、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
腰椎圧迫骨折によりどのような治療を受けどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
腰椎圧迫骨折は、交通事故では事故の衝撃で臀部から地面に落ちたなどの場合が多く見られます。
高齢者の方など骨密度が低い方は特に骨折しやすい部位となっています。
腰椎圧迫骨折には、以下のような症状があります。
腰椎圧迫骨折は、基本的にはレントゲン写真を撮ることでその状態を確認することができます。
ただし、受傷直後の撮影ではまだ骨の形が保たれていて、レントゲン写真を撮っても骨折の状態を詳しく確認できない場合もあります。
より詳しく検査する必要のある場合やしびれなどの神経症状がある場合には、CT検査やMRI検査も行われます。
腰椎圧迫骨折など骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
腰椎圧迫骨折では、寝返りや起き上がりなど体を動かすと非常に強い痛みを感じることが一般的です。
しかし、中にはそれほど痛みを感じなくても腰椎圧迫骨折が起こっている場合があります。
強い痛みがなくても一度整形外科を受診することをお勧めします。
腰椎圧迫骨折では、基本的には手術は行われません。
コルセットなどで骨折部分を固定し、骨が癒合するのを待つという保存療法がとられます。
ただし、骨折部が神経を圧迫している場合には、圧迫を取り除くために手術が行われます。(これを破裂骨折と呼ぶこともあります。)
この場合、椎体に骨セメントを流し込んで補償をする「バルーン椎体形成術(経皮的骨形成術)」や、スクリューを埋め込んで骨折部分を固定する手術が行われます。
腰椎圧迫骨折によりバルーン椎体形成術を行った場合、費用は入院関連費も含めて100万円~120万円ほどとなります。
ただし、公的医療保険を使えば、実際の負担が1~3割に抑えられます。
また、高額医療制度を利用すると、定められた限度額を超えた分についてはこの制度で負担してもらえます。
限度額は、加入者の収入や年齢によって決められます。
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
腰椎圧迫骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は、低めに計算されているということがあります。
加害者側保険会社からはそれが妥当な金額であると説明されたとしても、弁護士に相談してみると増額の余地が十分あることも珍しくありません。
加害者側から示談金額の提示を受けたら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
では、実際に骨髄圧迫骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
審査は基本的に、申請者から提出された資料のみを見て行われます。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しいもの、経過を見る必要があるものについては数ヶ月から数年かかることもあります。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
腰椎圧迫骨折してしまった場合、腰椎の変形が残ることがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による腰椎の変形
6級5号 |
---|
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどちらかに該当する。 ✓2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じている ✓1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、側彎度が50度以上になっている |
8級2号 |
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどれかに該当する ✓2個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じている ✓側彎度が50度以上である など |
11級7号 |
以下のいずれかに該当するもの ✓腰椎圧迫骨折を残しており、それがX線写真等で確認できる ✓腰椎固定術が行われた ✓3個以上の脊椎について、椎弓切除等、椎弓形成術を受けた |
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
腰椎圧迫骨折による腰椎の変形に対する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による腰椎の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 498万円 | 1180万円 |
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
11級7号 | 135万円 | 420万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
腰椎圧迫骨折により麻痺が発生した場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による麻痺
1級1号 |
---|
✓高度の四肢麻痺がある ✓高度の対麻痺がある ✓中等度の四肢麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの ✓中等度の対麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの |
2級1号 |
✓中等度の四肢麻痺がある ✓軽度の四肢麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの ✓中等度の対麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの |
3級3号 |
✓軽度の四肢麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの。) ✓中等度の対麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの) |
5級2号 |
✓軽度の対麻痺がある ✓一下肢の高度の単麻痺がある |
7級4号 |
一下肢の中等度の単麻痺がある |
9級10号 |
一下肢の軽度の単麻痺がある |
12級13号 |
✓運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺がある ✓運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害がある |
腰椎圧迫骨折による麻痺に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による麻痺
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級1号 | 1100万円 | 2800万円 |
2級1号 | 958万円 | 2370万円 |
3級3号 | 829万円 | 1990万円 |
5級2号 | 599万円 | 1400万円 |
7級4号 | 409万円 | 1000万円 |
9級10号 | 245万円 | 690万円 |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
腰椎圧迫骨折では、骨が癒合した後でも痛みや痺れが続くことがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
腰椎圧迫骨折による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 痛みがあり、X写真やMRI画像などで骨折部分に異常が確認できる |
14級9号 | X線写真やMRI画像などで骨折部分に異常を確認することはできないが、痛みがあることは推測できる |
12級になるか14級になるかについては、
が大きな判断要素となります。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による痛み
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
腰椎圧迫骨折では、胸腰部に可動域制限が生じる場合があります。
胸腰部の可動域制限とは具体的に、
という動きに制限が生じることです。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
腰椎圧迫骨折による可動域制限
8級2号 |
---|
次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの ▼頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの ▼頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの ▼項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの |
胸腰部に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
腰椎圧迫骨折は、寝返りや起き上がりなど基本的な動作によっても非常に強い痛み・苦痛を感じることが多いです。
また、場合によっては手術が必要になることもあります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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岡野武志弁護士