作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)

外傷性股関節脱臼後遺症

外傷性股関節脱臼の後遺症|手術や治療は必要?変形や傷痕も後遺症?後遺障害慰謝料はいくら?

外傷性股関節脱臼の後遺症は?
この記事のポイント
  • 外傷性股関節脱臼の後遺障害には「股関節の可動域制限」「骨頭壊死」「人工関節への置換」「骨盤の変形」「痛み・しびれ」などがある
  • 慰謝料の金額は外傷性股関節脱臼の程度、他覚所見の有無などで異なる
  • 弁護士に依頼することで、2~3倍の慰謝料増額が可能

股関節は、足を動かすときに非常に重要な部位です。
そうしたこともあって、もし股関節に後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
外傷性股関節脱臼によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。

  • 外傷性股関節脱臼の治療に手術は必要?
  • 外傷性股関節脱臼の後遺症はどのようなものがある?
  • 痛みしびれは後遺障害になる?

藤井宏真医師

奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医

藤井 宏真医師

外傷性股関節脱臼は、他の脱臼同様、受傷時には激しい痛みを伴い、場合によっては 骨が壊死する可能性もあるため、早期の整復が必要です。

1

外傷性股関節脱臼の基礎知識|外傷性股関節脱臼したら何科に行く?

外傷性股関節脱臼の症状

外傷性股関節脱臼には、以下のような症状があります。

  • 脱臼部位の痛み、腫れ
  • 上記の痛みにより、足を動かすことが出来ない
  • (大腿骨が後ろに押し出されている場合)足が内側に異常に曲がる状態になる、太腿部分が短くなる
  • 足首などの痛み、しびれ

通常、外傷性股関節脱臼ではレントゲンでその状態を確認します。
なお、骨の壊死を防ぐため脱臼後24時間以内に、できるだけ早く骨をもとの位置に戻す必要があります。
股関節に違和感があれば、速やかに病院へ行きましょう。

外傷性股関節脱臼は何科で治療を受けるべき?

外傷性股関節脱臼は、整形外科を受診するようにしましょう。
受傷後は激しい痛みで足を動かせないことが一般的です。
なるべく脱臼部分を動かさず安静にして、救急車を待つことが望ましいです。

外傷性股関節脱臼の治療&整復&手術|放置でもいい?手術費用は?

外傷性股関節脱臼では、基本的には手術は行われません。
ただし、臼蓋の骨折や、骨頭骨折を合併することがあります。
また、医師が骨をもとの位置に戻す際、鎮静薬、鎮痛薬、筋弛緩薬が投与され、場合によっては麻酔も使われます。

その後は5~7日程度で歩けるようになりますが、初めは松葉杖が必要な場合もあります。

なお、以下の場合は外傷性股関節脱臼でも手術を行うことがあります。

  • 他に骨折した部位がある
  • 脱臼の程度が大きい
  • 骨が壊死しているため人工関節を適用する

外傷性股関節脱臼の後遺症|痛みやしびれは後遺障害にあたる?

後遺症(後遺障害)

十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される

外傷性股関節脱臼により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。

外傷性股関節脱臼の後遺症
  • 股関節の可動域制限
  • 股関節への人工骨頭・人工関節の置換
  • 骨盤の変形
  • 片足の短縮
  • 痛み・しびれ

それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。

外傷性股関節脱臼で慰謝料が増えるって本当?

外傷性股関節脱臼の後遺症により増える保険金|後遺障害慰謝料と逸失利益

上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。

後遺障害慰謝料

後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償

また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。

後遺障害の逸失利益

後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数

なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。

注意点として、示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。

後遺障害等級の申請方法|外傷性股関節脱臼の場合

では、実際に外傷性股関節脱臼で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

①症状が固定される

治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。

②後遺障害診断書など書類の用意

症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。

後遺障害の申請には、2種類の方法があります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ
  • 被害者が後遺障害診断書のみを任意保険会社に提出する事前認定
  • 被害者が経過証明書などその他の資料も用意して自賠責保険に提出する被害者請求

被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。

比較

事前認定と被害者請求

事前認定 被害者請求
請求者 相手方保険会社 被害者自身
メリット 資料収集の手間がない 自分で資料を確認できる
デメリット 自分で資料を確認できない 資料収集の手間がかかる

③損害保険料率算出機構による審査

提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。

より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。

2

外傷性股関節脱臼による可動域制限の後遺障害

外傷性股関節脱臼による可動域制限の後遺障害等級は何級?

外傷性股関節脱臼を骨折してしまった場合、股関節の動く範囲が受傷前より制限されるようになったということがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下のようになります。

後遺障害等級

外傷性股関節脱臼による可動域制限

等級 内容
87 股関節の可動域が腱側の10%以下
1011 股関節の可動域が腱側の1/2以下に
127 股関節の可動域が腱側の3/4以下に制限

外傷性股関節脱臼の後遺障害慰謝料の相場は?

慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
外傷性股関節脱臼による可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

外傷性股関節脱臼による可動域制限

等級 自賠責基準 弁護士基準
87 324万円 830万円
1011 187万円 550万円
127 93万円 290万円

等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。

3

外傷性股関節脱臼による人工骨頭・人工関節の置換

人工骨頭・人工関節の置換の後遺障害等級は何級?

外傷性股関節脱臼により骨が壊死し、人工骨頭や人工関節の置換を行った場合、それの後遺障害となります。
この場合に該当する後遺障害等級は、以下のようになります。

後遺障害等級

人工骨頭・人工関節への置換

等級 症状
87 股関節に人工関節・人工骨頭を挿入置換し、1/2以下の可動域となった
1011 股関節に人工関節・人工骨頭を挿入置換した

人工骨頭・人工関節の置換の後遺障害慰謝料の相場は?

外傷性股関節脱臼による人工骨頭・人工関節に置換に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

人工骨頭・人工関節への置換

等級 自賠責基準 弁護士基準
87 324万円 830万円
1011 187万円 550万円
4

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形の後遺障害

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形の後遺障害等級は何級?

股関節を脱臼した場合、股関節を構成している骨盤にも変形が生じることがあります。
その場合の後遺障害等は、以下のようになります。

後遺障害等級

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形

等級 症状
125 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

ここでいう変形は、服を脱いだ時に裸眼で確認できる程度の変形を指します。
そのため、レントゲンなどをとって初めて確認できる程度の変形はこれに該当しません。

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形の後遺障害慰謝料の相場は?

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

外傷性股関節脱臼による骨盤の変形

等級 自賠責基準 弁護士基準
125 93万円 290万円
5

外傷性股関節脱臼による痛み・しびれの後遺障害

外傷性股関節脱臼による痛み・しびれの後遺障害等級は何級?

外傷性股関節脱臼の場合、脱臼自体が治っても痛みやしびれが残る可能性があります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。

後遺障害等級

外傷性股関節脱臼による痛み・しびれ

等級 症状
1213 局部に頑固な神経症状を残すもの
149 局部に神経症状を残すもの

ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。

とはいっても障害の程度のみではなく、

  • 神経学的な検査結果があるか
  • レントゲン・MRI画像などの所見があるか

が大きな判断要素となります。

痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。

ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。

外傷性股関節脱臼による痛み・しびれの後遺障害慰謝料の相場は?

痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。

後遺障害慰謝料

痛み・しびれの後遺障害

等級 自賠責基準 弁護士基準
1213 93万円 290万円
149 32万円 110万円
6

外傷性股関節脱臼の後遺症に関するお悩みは弁護士にご相談ください

LINE相談

脱臼というと軽いけがのように聞こえますが、外傷性股関節脱臼は激しい痛みを伴い、時に骨の壊死も引き起こすけがです。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
まずはお気軽にLINE・電話での無料相談をご利用ください。


弁護士プロフィール

岡野武志弁護士

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。


全国/24時間/無料相談

無料相談窓口のご案内