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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
股関節は歩行に大きく影響する部位ということもあって、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
股関節脱臼骨折によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
股関節脱臼骨折は股関節の脱臼に伴い骨盤の一部である寛骨臼が骨折することです。
寛骨臼は骨盤と大腿骨の接続部分で、骨折すると痛みなど様々な症状が出てきます。
股関節脱臼骨折には、以下のような症状があります。
股関節脱臼骨折とは、交通事故により足に衝撃が加わった際に股関節が脱臼し、骨盤の寛骨臼が骨折することです。
寛骨臼とは、骨盤の中で大腿骨との接続部になっている部分です。
股関節脱臼骨折など顔の骨折の場合は、整形外科を受診するようにしましょう。
大腿骨骨頭は、3本の血管から栄養を受け取っています。
しかし股関節脱臼骨折によって血管が損傷すると、そうした栄養を受け取れなくなり、大腿骨骨頭が壊死する可能性もあります。
そうしたことを避けるためにも、治療は24時間以内に受ける必要があります。
股関節脱臼骨折では、骨折による骨のずれが大きくなければ外部から骨折部分を固定し、骨癒合を待つ方法がとられます。
しかし、骨折による骨のずれが大きい場合には、骨折部にスクリューなどを入れて内側からしっかりと固定し、骨癒合を待ちます。
また、大腿骨骨頭が壊死してしまった場合には、人工骨頭や人工関節の置換が必要になるため、手術が必要になります。
股関節脱臼骨折でスクリューなどを埋め込む手術をした場合、保険などを利用して実際に負担するのは6万円~15万円と言われています。
人工骨頭置換術を行った場合には、保険などを利用すると5万円~30万円ほどと言われています。
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
股関節脱臼骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に股関節脱臼骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
股関節脱臼骨折では、股関節を構成する寛骨臼や大腿骨骨頭に損傷が生じるため、股関節の動く範囲が受傷前より制限されるようになったということがあります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下のようになります。
股関節脱臼骨折による可動域制限
等級 | 内容 |
---|---|
8級7号 | 股関節の可動域が腱側の10%以下 |
10級11号 | 股関節の可動域が腱側の1/2以下に |
12級7号 | 股関節の可動域が腱側の3/4以下に制限 |
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
股関節脱臼骨折による可動域制限に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
股関節脱臼骨折による可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級7号 | 324万円 | 830万円 |
10級11号 | 187万円 | 550万円 |
12級7号 | 93万円 | 290万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
股関節脱臼骨折により骨が壊死し、人工骨頭や人工関節の置換を行った場合、それの後遺障害となります。
この場合に該当する後遺障害等級は、以下のようになります。
人工骨頭・人工関節への置換
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 股関節に人工関節・人工骨頭を挿入置換し、1/2以下の可動域となった |
10級11号 | 股関節に人工関節・人工骨頭を挿入置換した |
股関節脱臼骨折による人工骨頭・人工関節に置換に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
人工骨頭・人工関節への置換
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級7号 | 324万円 | 830万円 |
10級11号 | 187万円 | 550万円 |
股関節脱臼骨折で骨折する寛骨臼は骨盤の一部ですので、ここの骨癒合によっては骨盤に変形が残る可能性があります。
その場合の後遺障害等は、以下のようになります。
股関節脱臼骨折による骨盤の変形
等級 | 症状 |
---|---|
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
ここでいう変形は、服を脱いだ時に裸眼で確認できる程度の変形を指します。
そのため、レントゲンなどをとって初めて確認できる程度の変形はこれに該当しません。
股関節脱臼骨折による骨盤の変形に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
股関節脱臼骨折による骨盤の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級5号 | 93万円 | 290万円 |
股関節脱臼骨折では、足が短くなる場合があります。
こうした場合の後遺障害等級は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による足の短縮
等級 | 症状 |
---|---|
8級5号 | 5㎝以上短縮 |
10級8号 | 3㎝以上短縮 |
13級8号 | 1㎝以上短縮 |
股関節脱臼骨折による足の短縮に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
大腿骨転子部骨折による足の短縮
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級5号 | 324万円 | 830万円 |
10級8号 | 187万円 | 550万円 |
13級8号 | 57万円 | 180万円 |
股関節脱臼骨折では、坐骨神経が圧迫されたり損傷したりして坐骨神経痛やしびれが残る可能性があります。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
股関節脱臼骨折による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
とはいっても障害の程度のみではなく、
が大きな判断要素となります。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
痛み・しびれの後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
股関節脱臼は歩行などといった日常的な動作に影響の大きい後遺障害が残る場合もあります。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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