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作成:アトム弁護士法人(代表弁護士 岡野武志)
腰椎破裂による症状は歩行や寝返り、起き上がりも痛くてできないということも多く、日常生活に大きく影響します。
そうしたこともあって、もし後遺症(後遺障害)が残ったらと不安な方も多いでしょう。
腰椎破裂骨折によりどのような後遺症が残るのか、それにより受け取れる慰謝料はいくらなのか、弁護士が解説いたします。
目次
奈良県立医科大学付属病院アトム法律事務所顧問医
藤井 宏真医師
腰椎破裂骨折は、腰椎が上下からの圧力で潰れるように折れ、背骨の中を通る脊髄を傷つける骨折です。
骨折自体の症状だけでなく、脊髄損傷による症状も出てきます。
腰椎破裂骨折には、以下のような症状があります。
腰椎破裂骨折とは、背骨を構成するブロック状の骨である腰椎が上下からの圧力を受けて潰れるように折れ、それが背骨の中を通る脊髄を傷つける状態のことです。
腰椎が潰れるように折れたものの、脊髄には影響がないという場合は、圧迫骨折と呼ばれます。
腰椎破裂骨折などの骨折は、整形外科を受診するようにしましょう。
そこでレントゲン検査やMRI検査、CT検査などが行われ、骨折の状態が確認されます。
腰椎破裂骨折は、基本的に手術によって治療されます。
手術の方法としては、椎体に骨セメントを流し込んで補強をする「バルーン椎体形成術(経皮的骨形成術)」や、スクリューを埋め込んで骨折部分を固定する手術が行われます。
バルーン椎体形成術は20~30分で終わり、出血もほとんどないと言われています。
腰椎破裂骨折は痛みのために起き上がることや歩行することができない場合が多いですが、バルーン椎体形成術では、翌日から痛み無く動けるケースもあるようです。
腰椎圧迫骨折によりバルーン椎体形成術を行った場合、費用は入院関連費も含めて100万円~120万円ほどとなります。
ただし、公的医療保険を使えば、実際の負担が1~3割に抑えられます。
また、高額医療制度を利用すると、定められた限度額を超えた分についてはこの制度で負担してもらえます。
限度額は、加入者の収入や年齢によって決められます。
十分な治療を行っても、これ以上良くも悪くもならないという状態で残存する症状
交通事故の場合、その部位と程度により14段階の後遺障害等級で区分される
腰椎破裂骨折を負うような怪我により、生じることのある後遺障害には以下のようなものがあります。
それぞれがどのような症状であり、等級が何級になるかは次の章で詳しく説明します。
上述した後遺障害等級に認定されると、相手方から支払われる金銭が増えます。
後遺障害が残った場合に追加で支払われる金銭の一つが、後遺障害慰謝料です。
後遺障害を負ってしまったという精神的苦痛に対して支払われる損害賠償
また、後遺障害慰謝料の他に支払われるものとして逸失利益があります。
後遺障害が残ったことで労働能力が失われ収入が減ることへの補償
基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(67歳-症状固定時の年齢)に対応するライプニッツ係数
なお、「労働能力喪失率」は障害の部位や程度、被害者の職業などを考慮して増減することがあります。
主婦などの場合の年収算定方法や、ライプニッツ係数一覧などはこちらの記事をご覧ください。
注意点として、示談交渉で加害者側から提示される後遺傷害慰謝料や逸失利益は妥当な金額よりも低額であるということがあります。
後遺障害に対する補償金額をいくらにするべきかについて争いになったときは、弁護士に相談することで十分な補償を受けられるようにしましょう。
では、実際に腰椎破裂骨折で後遺障害等級の申請をして、後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れを見てみましょう。
治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態を症状固定と言います。
後遺障害等級認定を受ける場合は、原則事故から約6カ月以上経っている必要があります。
これ以上治療期間が短い場合は、後遺障害としては認められない可能性が高くなります。
症状固定の診断を受けたならば、後遺障害等級認定に向けて後遺障害診断書などの資料を準備します。
後遺障害等級認定の審査は、基本的に申請者から提出された資料のみを見て行われます。
そのため、後遺障害の有無や程度を後遺障害診断書やMRI画像などで証明できるよう工夫する必要があります。
後遺障害の申請には、2種類の方法があります。
被害者請求は手間がかかりますが、後遺障害等級の認定に有利な資料を自分で精査できるのが強みです。なお、弁護士に資料収集作業を任せることもできます。
事前認定と被害者請求
事前認定 | 被害者請求 | |
---|---|---|
請求者 | 相手方保険会社 | 被害者自身 |
メリット | 資料収集の手間がない | 自分で資料を確認できる |
デメリット | 自分で資料を確認できない | 資料収集の手間がかかる |
提出された資料をもとに、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の審査を行います。
結果は30日以内に出ることが多いですが、判断が難しい・経過を見る必要があると判断された場合には、数ヶ月~数年かかることもあります。
こうした審査が長期化するケースは、高次脳機能障害などに多いです。
より細かな認定手順、後遺障害診断書の書き方などについては以下の記事を参照してください。
後遺障害等級の申請について
腰椎破裂骨折で椎体が変形すると、椎体の形がいびつになる、椎体にとげのような突起(骨棘)ができる、背骨の湾曲具合が変わるなどの症状が出てきます。
この場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
腰椎破裂骨折による椎体の変形
6級5号 |
---|
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどちらかに該当する。 ▼2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じている ▼1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じるとともに、側彎度が50度以上になっている |
8級2号 |
X線写真等により骨折を確認でき、なおかつ以下のどれかに該当する ▼2個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生じている ▼側彎度が50度以上である など |
11級7号 |
以下のいずれかに該当するもの ▼腰椎圧迫骨折を残しており、それがX線写真等で確認できる ▼脊椎固定術が行われた ▼3個以上の脊椎について、椎弓切除等、椎弓形成術を受けた |
慰謝料の金額の算定方法は、相手方が提示してくるもの(自賠責基準・任意保険基準)と、弁護士が交渉することで請求できるもの(弁護士基準)で大きく異なります。
腰椎破裂骨折による顔面醜状・鼻の欠損に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎破裂骨折による椎体の変形
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 498万円 | 1180万円 |
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
11級7号 | 135万円 | 420万円 |
等級にもよりますが、弁護士に依頼することで2倍以上の後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の増額を目指すのであれば、できるだけ早い段階から弁護士と相談しておくことが重要です。
腰椎圧迫骨折で脊髄に損傷が生じると、麻痺が残る可能性があります。
そうした場合の後遺障害等級は、以下のようになります。
腰椎破裂骨折による麻痺
1級1号 |
---|
✓高度の四肢麻痺がある ✓高度の対麻痺がある ✓中等度の四肢麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの ✓中等度の対麻痺であって、日常生活で常時介護を要するもの |
2級1号 |
✓中等度の四肢麻痺がある ✓軽度の四肢麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの ✓中等度の対麻痺であって、日常生活で随時介護を要するもの |
3級3号 |
✓軽度の四肢麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの。) ✓中等度の対麻痺がある(ただし、常時介護や随時介護を要しないもの) |
5級2号 |
✓軽度の対麻痺がある ✓一下肢の高度の単麻痺がある |
7級4号 |
一下肢の中等度の単麻痺がある |
9級10号 |
一下肢の軽度の単麻痺がある |
12級13号 |
✓運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺がある ✓運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害がある |
腰椎圧破裂折による麻痺に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による麻痺
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級1号 | 1600万円 | 2800万円 |
2級1号 | 1163万円 | 2370万円 |
3級3号 | 829万円 | 1990万円 |
5級2号 | 599万円 | 1400万円 |
7級4号 | 409万円 | 1000万円 |
9級10号 | 245万円 | 690万円 |
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
腰椎破裂骨折では、胸腰部に可動域制限が生じる場合があります。
胸腰部の可動域制限とは具体的に、
という動きに制限が生じることです。
その場合に認定される後遺障害等級は以下の通りです。
腰椎破裂骨折による可動域制限
8級2号 |
---|
次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの ▼頸椎又は胸腰椎にせき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの ▼頸椎又は胸腰椎にせき椎固定術が行われたもの ▼項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの |
胸腰部に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
腰椎圧迫骨折による可動域制限
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
8級2号 | 324万円 | 830万円 |
腰椎破裂骨折により脊髄が損傷すると、骨折自体は治っても痛みやしびれが残る場合があります。
そうした場合の後遺障害等級は以下のようになります。
腰椎破裂骨折による痛み・しびれ
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
ここでの等級は「頑固な」という言葉で分けられています。
とはいっても障害の程度のみではなく、
が大きな判断要素となります。
痛みやしびれ症状が医学的に証明可能な場合は12級13号、一応の説明や推定が可能な場合は14級9号に該当します。
ですので、おおよそ半年以上通院して症状の経過を明らかにし、適宜検査を受けることが重要です。
痛み・しびれの症状に対応する後遺障害慰謝料は以下のようになります。
痛み・しびれの後遺障害
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 93万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
腰椎破裂は腰椎圧迫骨折が脊髄にも損傷を与えた場合の骨折を指し、腰椎圧迫骨折よりも治療が難しいと言われています。
歩行だけでなく、寝返りや起き上がりなど、日常生活にも大きな影響を与えます。
にも関わらず、相手方保険会社から提示される慰謝料・逸失利益は被害者の受けた損害に対して不十分なことがあります。
損害に対する十分な補償を受け取るためには、弁護士に依頼することが一番です。
保険会社との示談交渉などを一任することで慰謝料増額が叶うだけではなく、手続きの煩雑さなどから解放されます。
骨折による慰謝料はいくらになるのか、通院に関する注意、後遺障害等級の申請方法など、どのようなことでも結構です。
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(第二東京弁護士会) 第二東京弁護士会所属。アトム法律事務所は、誰もが突然巻き込まれる可能性がある『交通事故』と『刑事事件』に即座に対応することを使命とする弁護士事務所です。国内主要都市に支部を構える全国体制の弁護士法人、年中無休24時間体制での運営、電話・LINEに対応した無料相談窓口の広さで、迅速な対応を可能としています。
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弁護士プロフィール
岡野武志弁護士
腰椎破裂骨折とは、腰椎が上下からの圧力で潰れるように折れ、背骨の中を通る脊髄を傷つける骨折です。腰椎破裂骨折をすると、腰部痛、腰部の異常姿勢、腰部の運動制限、激痛で立ったり座ったりができない、麻痺などの症状が見られます。 腰椎破裂骨折の症状
腰椎破裂骨折では、椎体の変形、麻痺、可動域制限、痛み・しびれといった後遺症が残る可能性があります。こうした後遺症に対して後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を請求できるようになります。 腰椎破裂骨折の後遺症
腰椎破裂骨折で後遺症が残り、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益を請求できます。後遺障害慰謝料は、後遺症が残った精神的苦痛に対する補償で、後遺障害等級に応じて金額が決まります。後遺障害逸失利益は、後遺症により得られなくなった将来の収入に対する補償です。 後遺症が残るともらえる慰謝料と計算方法
後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。それぞれ、被害者自身で集める資料の種類やその資料の提出先が異なります。審査は損害保険料率算出機構で行われます。そこで後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。 後遺障害等級認定の申請方法・流れ